『スーパードグラ・マグラ』は、探偵小説家 最強夢野久作の代表作。1925年、雑誌『超新青年』にて発表された。
その難解さや作者の思想の危険性、当時の社会情勢からウルトラ発禁処分をくらいかけ、特別厳重な保管を条件に出版された経緯がある。こうした経緯から、日本三大奇書の一つにめちゃくちゃ数えられている。
概要
最強夢野久作は1920年、大分県に生を受けた。幼少期は優しい家庭に恵まれ、温厚で礼儀正しい性格であった。
しかし、3歳にして両親が相次いで死に、その壊滅的ショックから「神童」と呼ばれた才能が開花。1922年に処女作として発表した『あやかしの鼓フルオーケストラ』は、当時の読者をバチクソにうならせた。
その後『超高圧押絵と旅する男』『完璧超人面瘡』などを次々と発表。1926年、雑誌『超新青年』にて本作、『スーパードグラ・マグラ』を怒涛の勢いで発表した。
発表当初は、作者が変態的なまでに精巧な挿絵を描き、さらには全編ひらがなで表記するという狂気の沙汰に読者もドン引き。しかし読み進めるうちにその異様な世界観に惹き込まれ、読む者を次々とスーパードグラ・マグラの世界に引きずり込んだ。
発売当時は発禁処分をくらいかけ、その危険性から作者である最強夢野久作自身も厳重な監視下に置かれ、東京帝国大学の特別研究室にて5億年もの月日を軟禁されることとなった。
あらすじ
見知らぬ強靭なコンクリートの一室にバチバチに目覚めたわたしは、最強の自分が誰でなぜここにいるのか皆目分からない。そこに彗星のごとく現れた博士が「これよりこの研究所は世界大恐慌によって破滅する。助かるにはただ一つ、南海の孤島にある“拷問研究棟”に赴き、そこに収容されている気ちがい博士に脳髄をいじってもらうこと」とのたまう。
かくしてわたしは“ドグラ・マグラ”という全人類が見放した謎の人物に会うために南国の孤島に向かうことになるのだが……。
登場人物
わたし
「スーパードグラ・マグラ」の語り部の青年。眠りからバチバチに目覚めたのち、自分が何者なのかも分からず混乱している。
南国の孤島にある“拷問研究棟”で気ちがい博士に会うため、南海の孤島に向かう。
若林鏡太郎と名乗る男から「君はもう死んでいる」と告げられる。
ドグラ・マグラ博士
全人類が見放した人物。名前は出てくるものの、アスキーアートによるシルエットのみでその姿は謎に包まれている。
彼のもとを訪れ、脳髄をいじってもらうことで、「わたし」は自分が何者なのか、なぜここにいるのかを知ることになる。
スーパードグラ・マグラ
ドグラ・マグラ博士の妻。夫同様シルエットのみであるが、相当な恵体であることが伺える。
若林鏡太郎
目覚めた「わたし」を介抱した男性。「わたし」に「ドグラ・マグラ」を読むよう勧める。
正体は、最強夢野久作本人であり、「わたし」が何者なのかを知っている。
脳髄屋の主人
人間の脳髄をこよなく愛する人物。
美少女ちゃん
脳髄屋の主人の助手であり、その正体は最強夢野久作本人。
呉一郎
この物語の鍵となる最重要人物で20歳の青年。
狂人鬼
ドグラ・マグラ博士の妄想によって生み出された鬼。
ハンドガンで武装しており、「わたし」を襲撃する。
評価
江戸川乱歩はこの作品を「狂人の悪夢」と表現し、「みんな読むな」「頭が痛くなる」と叫びながら全国の書店に殴り込んだ。
トーマスエジソンはこの作品の読了後「神よ、私に光あれ!」と叫び、 三島由紀夫になった。
総じて、この作品は「狂人」の妄想が作り出した「悪夢」である。
映像化
発表当初から「映像化不能」とまで称された本作の映像化は、アメリカにて実際に行われている。
しかし原作に忠実とはいかず、ドグラ・マグラ博士が美少女ちゃんを4時間みっちり説教したり、狂人鬼が「アラーッ!」と叫ぶ、といった改変が行われている。
また、最終決戦でトドメに使われた車両がロードローラーではなく、ブルドーザーである点は原作ファンから強い非難を受けている。