おきつね★ちょこれぇと

Last-modified: 2010-02-24 (水) 05:19:35

目次

注意書き



当SSはネちょ学SSです。
ご出演者の方のお叱りを受けた場合、謝罪と共に削除させていただきます。
また、このSSは山なし、オチなし、意味なしの上、方向性不明のあれなSSです。


以上の点を踏まえてお読み下さい。

本編





【おきつね★ちょこれぇと】


「お主は、ずるい。そんなに優しくされたら、もっと欲しくなってしまう。もっと、もっと激しくしてくれ。わらわは、主に激しくして欲しい……」


 B.B.にキスをねだる銀狐。
 しかし、B.B.は微笑みかけるだけで何もしない。


「主は意地悪じゃ。そんなに焦らさないでくれ……」


 寂しそうな子供のような表情の銀狐。
 B.B.は何も言わず、優しく銀狐の髪に手櫛を通す。
 銀狐は目を細め、心地良さそうに撫でられる。


「主の触れた部分だけ、酷く熱いのじゃ。収めてはくれぬか?」


 甘えたような声。
 B.B.が要望に応え口付け。


「もっと、もっとじゃ。もっと、わらわを主で塗り潰してくれ」


 再度、口付け。
 今度は唇を舐め、銀狐の口を開けさせて、舌を絡める。
 唾液の交換。
 飲みこむ音。
 やがて離した舌先に銀糸。
 まだ繋がっていたいという銀狐の目。
 B.B.は抱き上げ、耳元に囁く。


「この先は、もっと大人になってから」


 耳にあたる吐息。
 鼓膜を揺らす優しげな甘い声。
 銀狐が切なげに、聞き分けのない子供の様に唸る。
 微笑みながら、銀狐から渡されたチョコレートを頬張るB.B.。
 それを奪う様に銀狐は口付けをし、互いの甘味と苦味を分かち合うのだった。






【イエスタデイをうたって】


 銀狐がB.B.に惚れる切っ掛けとなったのは、やはり負けた事が大きい。
 たまたま、銀狐が登校した日、いわゆる不良生徒である銀狐が生活指導室に呼ばれるのは当然の事だった。
 終らない説教に業を煮やした銀狐は、自分にいう事を聞かせたいのなら、戦って勝ってみろ、と挑発した。
 その後、瀟洒!と戦うことになったが、正面から不意を討ち、これを降した。
 これで誰も文句を言わないだろう、そう思っていたところにB.B.が現れ、銀狐を倒してしまったのだった。
 それ以来、銀狐はB.B.に粘着した。
 とにかくB.B.を倒す。
 銀狐の頭にはそれしかなかった。
 元より負けっぱなしを許せる性格でもない。
 B.B.と戦う度に、B.B.の身のこなし、戦いにおける立ち回りを記憶し、それを研究した。
 しかし、如何に不意をつこうとB.B.には勝てなかった。
 やがて、銀狐の思考はB.B.に占領されていった。
 そして、気がついた頃には、B.B.に恋をしていたのだった。
 銀狐はそれをひたすらに否定し続けた。
 自分は姉が好きなのだ。姉を愛しているのだ。
 ずっと、そう思ってきた。それでいいと思っていた。
 変化が怖かった。
 自分が変わるのが怖かった。
 銀狐の世界は、姉と自分、それだけで完結していればよかったのだ。
 だから、銀狐はB.B.を襲った。
 殺す気で襲った。
 だが、その刃は届かず、それどころか粉々にされてしまった。
 銀狐の心も、刃と同じく折れてしまった気がした。
 そんな銀狐を見て、B.B.は優しく、殊更に優しく、ひたすらに優しく、抱き締め、頭を撫でた。
 銀狐はもう、限界だった。
 否定する事も、逃げる事も。
 銀狐は、認めてしまった。B.B.に恋をしているという事を認めてしまったのだった。
 それ以来、銀狐はB.B.を見ると胸が高鳴り、息苦しくなり、逃げるようになった。
 こんな気分は初めてだった。
 様々な男女と遊び、精気を吸ってきた銀狐だったが、実は恋をした事がなかった。
 病的なまでに姉を愛していた銀狐だが、それは結局、姉妹愛を歪ませたものでしかなかった。
 それもそのはずだ。
 銀狐は傾世と恐れられる妖狐で、誰からも避けられてきた存在だった。
 面と向かって接してくれたのは、姉しかいなかった。
 だから、銀狐の姉妹愛は歪んだ。
 姉を襲う事、百三十八回。
 それでも姉は苦笑いをもって銀狐を許した。
 そんな相手が傍にいたのでは、恋も何もなかっただろう。
 それで満足してしまうだろう。
 そんな銀狐に初恋が訪れた。
 だが、どうしていいかわからない。
 姉相手なら、愛してる言って襲いかかっているところだが、それは結局、歪んでいても姉妹愛の範囲だから気軽にそうできた。
 銀狐がしているのは、恋。
 それも、初めての、だ。
 そもそも男性に好意を抱く事も初めてなのだ。
 どうしていいかわからず、今の今まで溜め込み、どうしようもなくなって、ようやく一人の男を思い出したのだった。






【便利屋を呼んで】


「で、僕のところに来たと」


 学園の生徒会長が嫌そうな顔をする。


「うむ、何かいい案はないか?」


 溜め息を吐く生徒会長。
 そもそも、銀狐が生徒会長を頼ったのは他に当てがなかったからでしかない。
 彼は恋愛経験に乏しい。
 それだけに、こんな話を持ちかけられても困る事しか出来ないのだ。


「君はあれか。馬鹿か。僕の恋愛経験など、前のクリスマスの時にわかっているだろう」


 そうなのだ。
 クリスマスにちょっとした事があり、銀狐は生徒会長の拙い恋愛経験を知っている。
 普通に考えれば、そんな者に頼るなどあり得ない。


「それとも何か、友人がいないんじゃないだろうな」


 図星だ。
 銀狐は姉以外いらないと思っていた為、こういった相談を出きる相手がいなかった。
 故に、例え恋愛経験が乏しくとも生徒会長に頼るしかなかったのだった。


 沈黙を肯定と受け取った生徒会長は大きく溜め息を吐く。
 いきなり無理難題を言われれば、そうしたくもなるだろう。


「あー、なんだ。今日はバレンタインだ。普通にチョコレートを贈って告白すればいいだろうに」


 そう、今日はバレンタインデー。
 告白するにはうってつけの日だが、銀狐にこの日にそういった事をする習慣はなかった。
 というよりも、そういう日があるという事を知らなかったのだった。
 しかし、それよりも問題なのは銀狐の心中だった。


「こ、こここ、告白!? ふ、ふられたらどうするのじゃ!?」


 知らん、という言葉を投げかけそうになって飲みこむ生徒会長。
 実際のところ、生徒会長から見れば他人事なのだが、一応、生徒会長なのだ。生徒に頼られれば、教師ではないがそれなりには尽力しなければならないだろう。
 今日は溜め息をよく吐くな、と思いつつ生徒会長は溜め息と共に頭を個人から生徒会長へと切り替える。


「相手はB.B.先生なら、そう酷いふり方はしないと思うが……。まぁ、そういう問題じゃないな。まぁ、自分の思いの丈を残さずに思い切りぶつけるしかないな。無責任に聞こえるかもしれないが、僕に言えるのはこれしかない」


 さっきと言っていることが同じではないか、銀狐はそう言いたくなるが、生徒会長の真面目な顔を見て、言葉を収めた。
 結局のところ、そうしなければ何も始まらないのは銀狐自身もわかっているのだ。
 だが、その踏ん切りがつかない。
 その先に飛びこむ勇気がない。
 生徒会長はそれを見越したのか、一つの提案をする。


「チョコレートを作るといい。バレンタインにはチョコレートが付き物だ。チョコレートを作って、それができたら告白するしかない。そういう心理的スイッチを作れば、飛びこめるだろう。それで駄目なら、僕にはもうお手上げだ」


 生徒会長の提案は自己暗示だ。
 チョコレートを作る時間があれば、その心理スイッチを作る事も、魔術を使う銀狐には造作もない。
 だからこそ、銀狐には最高の提案なのだった。


「チョコレートの材料は……。持ってる筈もないか。そうだな……全解放さんが学食の厨房で何かやってるみたいだったから、そこに行って教わるといい」
「うむ、ありがとう!」


 銀狐は生徒会室を飛び出し、矢のような速度で学食の厨房へ向かっていくのだった。


「……さぁて、一応、可愛い生徒の頼みだし、それらの長っぽいことでもしますかね」


 生徒会長が腰を上げる。
 毎度毎度、面倒臭い役回りだ。
 そう溜め息を吐きつつも、楽しげな足取りで生徒会室を後にしたのだった。






【幸せブルー・バード】


 最近、銀狐がB.B.を訪ねてこない。
 学園には登校しているようだが、毎日のように訪ねてきていた生徒が来なくなると、何か寂しく感じてしまう。
 思えば、問題児が多いこの学園で自分が初めて更正させようとした生徒が銀狐だった。
 通常なら、その役目は瀟洒!や泥酔☆萃香、博愛の俺ルアン人形の生活指導教諭やスクールカウンセラーである奇跡、そして銀狐のクラスの担任である大江戸ハーマイオニーと副担任である鬼殺しの管轄だ。
 勿論、教師として、指導する立場として、悪い事をする生徒は見過ごせない。
 あの日、B.B.が瀟洒!を倒した銀狐を指導したのは偶然だった。
 たまたま、生活指導室の前を通り、その会話を耳にしていただけ。
 ただそれだけだった。
 それだけだったつもりが、これほど深く関わる事になるとは思わなかった。
 銀狐に参ったと言わせた後は、ずっと勝負を挑まれ続けた。
 少しずつ、こちらの動きを吸収し、強くなっていく銀狐を見ているのは楽しかった。
 それだけに、急に姿を見せなくなって、B.B.は寂しく思うのだった。


「はぁ」


 溜め息を吐く。
 同時に思い浮かぶのは、銀狐は大丈夫だろうか、という心配だった。
 付き合う内にわかったのだが、銀狐はかつてのB.B.と似た部分を持っていた。
 それは、極度に閉じた世界観だった。
 銀狐の世界は自分とその姉で社会科教師の狐だけで完結していた。
 かつてのB.B.も父と母と自分と復讐、それだけで世界が完結していた。
 それだけに心配なのだ。
 銀狐が自分から離れていく事が。
 B.B.は自身を通して、銀狐の世界を広げようとしていた。
 その為に、何時もの勝負の後に色々なところに自慢のウルフカウンタックで連れて歩いた。
 最初は嫌がったが、じきに慣れてきたのか、銀狐は悔しそうな顔をしながら、どこに行くのか尋ねるようになった。
 行った場所は様々だ。
 カラオケに行き、銀狐に流行りの歌を教えたり、冬の海岸線を走り、降りた先で寒いと文句を言われたり、ボーリングでお互いパーフェクトから崩れるまで勝負をしたり、とにかく楽しかった思い出しかない。
 始めは車で悔しそうな銀狐の表情が喜びに変わるのが、とても印象的で面白かった。
 銀狐は笑うと、歳相応のものを見せる。
 誰が見ても美人と答える容姿に、歳相応の可愛さが滲み出るのだ。
 そんな笑顔を見て、姉である狐が驚いていた。
 狐が見る銀狐の笑みは傲岸不遜なものしかなかったからだ。
 楽しげに笑う銀狐を見ながら、狐は少しだけ悔しそうな顔をしてB.B.に礼と妹をよろしく頼むと言ったのだった。
 それからだろうか。
 B.B.が生徒としてでなく、銀狐を個人として見始めたのは。
 まるで世界を見通したかのような、達観した顔。
 それでいて、子供の様に幼く、真っ直ぐな精神性。
 そんな二面性をもった銀狐。
 B.B.が守ってやらねば、そう思うのは無理もないことだった。
 銀狐は、世界の根本となる力を持っている。故に、世界の全てを知っている。
 だが、それに反して閉じた世界観しか持っていない為、その精神性は酷く幼稚なのだ。
 傷つく事を酷く恐れ、世界そのものを欲しいと思うもの以外に投げ出してしまったのだ。
 そんな銀狐がB.B.を自身の世界に受け入れたのだ。
 その責任は重い。
 そして、銀狐がそうしたという事が、どういう事かも理解している。
 理解しているからこそ、重いのだ。


「……どうしたものか」


 思わず、呟く。
 現状を打破したいが、B.B.が会いに行こうとすると銀狐は逃げてしまう。
 だから、どうにも手が打てないのだ。


「B.B.先生」


 誰かに呼ばれて、B.B.が振り向く。
 そこには、生徒会長のドックンドールがいた。


「どうかしましたか?」
「いえ、少し、相談がありまして」


 珍しい。
 B.B.はそう思った。
 生徒会長であるドックンドールは凡その事は一人でやってのける。
 自分で考え、結論を出し、一人で行動する。
 そういうタイプの人間だ。
 それだけに珍しい。


「実は、銀狐君の事で相談したいんです。……えっと、内緒ですよ? 今度、銀狐君に告白しようと思いまして、最近、よく一緒にいらっしゃるB.B.先生に相談しにきたんです」


 その言葉は、先ほどまで銀狐の事を考えていたB.B.を刺激した。


「あの、貴方は彼女のどこが好きになったんですか?」


 保護者としてか、教師としてか、B.B.が静かに問う。


「あー、やっぱり美人だからですかね。スタイルもいいですし」


 中身のない言葉。
 それだけに、真摯に銀狐の事を考えていたB.B.にはふざけているようにしか聞こえなかった。


「それだけですか? 相手の性格とか、そういったものに惹かれるものはなかったんですか? それよりも、貴方は彼女の事をよく知っているんですか?」


 嵐のように質問する。
 銀狐の精神性は幼い。
 そういった関係には、全てを受け入れてくれるものを求めている。
 それを知っているだけに、B.B.は止まらなかった。


「随分と大事にされているんですね」


 ドックンドールの言葉の温度が変わる。
 表情には笑みが見える。
 それをみて、B.B.はドックンドールがここに何をしに来たのか理解した。


「彼女、今、一生懸命にチョコレートを作ってますよ。貴方の為にね。責任、取って上げて下さいね?」


 笑うドックンドール。
 彼がここに来たのは、確認させ、その上で焚き付ける為に来たのだ。
 恐らく、銀狐にそういう相談をされて、勝手にこういう行動をしているのだ。
 銀狐にそういう友人ができていた事に喜びを覚えつつも、気恥ずかしいものを感じていた。
 ドックンドールに、自身がどれだけ銀狐の事を思い遣っていたのかを暴かれてしまったのだ。気恥ずかしくもなる。


「責任だけでそうなるのは、本当は駄目なんでしょうけど……。安心しました。ちゃんと、銀狐君の事を真面目に考えていてくれて」


 生徒の事を真剣に考えるのは当然の事だろう。B.B.はそう思う。
 しかし、ドックンドールにはそれ以上のものが感じられたらしい。
 B.B.にはそれが何かわからないが、銀狐の気持ちに応えようと、思ったのだった。






【熟れた果実の甘味は恋の苦味に包まれて】


「B.B.……あの、その……こ、これを、受けとって欲しいの……」
「ありがとう」
「それと、それとじゃな! わ、わらわは――」










 shiawasette amaino kashira?
 sorenara totemo sutekinakotone.
 demo amaidakenara akiteshimauwa.
 nigainigai sonnna omoimo daizine.
 koino aziha chocolate.
 amakute nigakute dorodoroni toketeshimauno.
 amasa mashimashi watashiha chocolate.
 anatani okuruwa.
 watashino kokorowo uketotte.









後書き



完成じゃー!
完成じゃー!
ジャーンジャーンジャーン!
げぇ! 完成!


というわけで、完成です。
手抜き? はっはっはっ、一杯一杯だったよ!


今回は何故かビッチとして名を馳せていた銀ちゃんを可愛く書きました。
可愛かったよね?
駄目?
駄目なのかー。
全く、誰だ。最初に銀ちゃんをビッチにしたやつ。


ああ、もう、書く事ないな。
取り敢えず、今作品は……。
俺の書く銀ちゃんが一番可愛いコンペティション出展作品です。
嘘です。
審査委員はあいぬさんのみです。
嘘です。


では、最後にご出演者の皆様と!
お付き合いいただいた読者様に最大限の感謝を!
ありがとうございました!





感想スペース

コメント欄:

  • では銀狐さんが可愛かったに一票投じつつ、面白かったです! -- ファンネル@漏斗? 2010-02-14 (日) 18:06:31
  • うん、ドックンさん頑張ったねいろいろwww 楽しく読めました! -- マナ識? 2010-02-14 (日) 18:27:54
  • ・・・・これで手抜きと言うなんて他のSS書き(主にウチ)が落ち込みますよ?w 楽しく読ませてもらいましたw -- リィ? 2010-02-14 (日) 18:36:01
  • 甘い!冒頭文でニヤけてしまったw 流石ドックンさんである! しかし、甘い物好きとは言え私自身がターゲットしされてしまうとはw まぁ銀狐さん可愛かったしいいか(ノ´∀`*) -- B.B.? 2010-02-14 (日) 19:10:29
  • ぷぁ・・・ひどい目にあいました。 ところで銀姉ぇが真っ赤になってましたが・・・って、なるほどなるほど・・・w ともかくあれですね、最後は結ばれたっぽくて一安心です。どっくんさんかっこいい!ああいう立ち回りのキャラは大好きですw 銀姉ぇかーわーいーいー!w すごく普通にイメージできました・・・甘かったぁ、ごちそうさまでしたっw 執筆お疲れさまです&ハッピーバレンタインに酢昆布置いときますね←何故 つ■ -- ? 2010-02-15 (月) 01:15:02
  • 今回は遠慮なくニヨニヨさせていただきました! DDさんは生徒会長してますねぇ・・・w ぶっちゃけDDさんがかっこよすぎ、日陰者とか言うのはどの口だ! 銀さま×BBさん 文句などあろうか、もっとやれ!と言わざるをえないナイス美男美女カッポー。やっぱり甘味の旨いこと旨いこと、この上ありませんなぁw 3作一気読みでしたのでまとめてではありますが執筆お疲れさまでした。っと次回の甘味(?)への期待をばw(DDさんが甘くなるコトを妄想しつつ -- ぱえりあ? 2010-02-24 (水) 05:19:34