しとしと

Last-modified: 2015-11-01 (日) 00:37:32

目次

注意書き



当SSはアリス・マーガトロイド、フランドール・スカーレットのカップリング的SSです。
そういうのが嫌いな方は本編を読まれる前に回避した方がいいと思われます。
後、カップリングSSなのにあんまり、イチャイチャしていません。
イチャイチャなんて書けない作者ですので悪しからず。


以上の点を踏まえてお読みください。

アリス・マーガトロイド





 私たち、付き合ってるの。
 そう言われたわ。ああ、そうなのか。最初はそう思ったわ。どういう事なのかはわからなかったけれど、家に帰って、食事をして、お風呂に入ってしばらくしてようやくわかったの。ああ、私はそうなれなかったんだって。それから泣いたわ。だけども、全然諦められないの。やっぱり好きだからかしら。諦めたくなかったの。
 初めは陰気で、不躾で、魅力も何も感じなかったわ。彼女の後ろにある、図書館だけが魅力的だった。本を読ませてもらう、それだけの関係にしかならないと思っていたわ。そう思っていたはずなのよ。でも、そうじゃなくなってしまったの。
 彼女が不躾に言ってきたの。知識が足りないって。そんなことは言われなくても分かっているわ。わかっているから、こうして調べ物をしに来ているのに、わざわざそんなことを言うなんて、馬鹿にしに来たのかしら、そう思ってすぐに言葉を返そうとしたの。苛立ちに任せてね。そんな私の感情なんか無視して、彼女はさらに言ったわ、あなたに必要な知識はこっちだって、本も一緒に。毒気を抜かれてしまって、思わずありがとう、なんてらしくないことを言ってしまったわ。それからよ。彼女とよく話すようになったのは。
 やっぱり、同じ種族同士ね。話はとても弾んだわ。私が知らないことを教えて貰ったり、逆に私の発想から研究が発展したり。彼女ね。不躾だし、陰気だし、いつだって人を突き放すような言葉ばかりを言うの。言われるたびに傷ついたりもしたけれど、だけど彼女、その後に親切に教えてくれるのよ。わざわざ必要な本まで持ってきてよ。そんなギャップが魅力的に思えたの。彼女のこんな魅力をわかるのは私だけなんだろうなぁって。私なんかより付き合いの長い友人がいるのにね。私だけって思っしまったの。馬鹿でしょう。でもそれを信じたいっていうのが恋なのよ。私だけって思いたいのよ。私だけの彼女があるって思いたいのよ。それが恋。破れてしまったんだけどね。
 彼女がオーロラを空に見てからかしら。それから実体験も重視するようになったわ。外出も少しだけ増えていったわ。私一人で調べ物をする時間も増えていったの。後はあの通り。あいつに取られてしまった。思えば、外を見るのにあいつくらい適任はいないものね。色んな所に出入りしているもの。彼女が知らない体験を沢山知っているから。傍から見ていれば生き急いでるみたいにしか見えないのにね。だから、彼女は惹かれたのよ。知らないことを親切に教えてくれるっていうのは、本当にそれだけで惹かれてしまうものなのよ。
 あなたもあいつのそんなところに惹かれたんでしょう。わかるわ。私だって彼女にそうだったんだもの。同じ理由で恋に落ちて、同じ理由で恋敵に負けたの。だからかしら。諦めたくないのは。
 でも。でもね。やっぱり、諦めてしまいたいのよ。気持ちが萎えてしまうの。諦めたくないのに、恋を終わらせてしまいたいの。苦しいから、それもあるわ。彼女の隣にいられないのは辛いもの。だけどね、それよりもどうしようもないものがあるのよ。だって、彼女、あいつといると笑うのよ。幸せそうに。笑い合ってるの。自然と、心から幸せが溢れるみたいに。そんな笑顔を見てるとね、私は彼女をあんな風に笑わせられるのかなって考えて、きっと無理なんだろうって思ってしまうのよ。あいつに勝てないって。隣に座るだけで、話しかけるだけで、手を握るだけで、見つめ合うだけで、たったそれだけで幸せにできないって思ってしまうの。
 ねぇ、あなたならわかるでしょう。だから、壊してあげるなんて言えるんでしょう。あなただって同じ気持ちだから。だから、だからね。









フランドール・スカーレット





 私たち、付き合ってるんだ。
 魔理沙にそう言われたの。隣にはパチュリーがいたわ。もう私をかまってくれる大好きな魔理沙はいないんだって、パチュリーに取られちゃったんだって、そう思って自分の部屋に泣きながら帰ったわ。私に割く時間が減るだけで、かまってくれなくなるなんてないのに。でもそれだけ好きだったの。今でも好きなの。だからね、二人の関係を壊しちゃおうって思ってたし、どうすればそうできるか考えてたわ。そうしたら、あなたがいた。私と同じあなたが。どこまでも同じ思いのあなたが。
 そう、同じなのよ。諦められないのも、でも壊せないのも。全部同じ。あなたが壊してって、そう言ってくれれば、私はあなたを理由にして二人を引き裂けたのに。あの二人の笑顔を、半分こにしてあなたと分けられたのに。なんで壊してって言ってくれないの。
 魔理沙はね。私の知らないことを一杯知ってるの。経験してるの。パチュリーなんか比べ物にならないくらい体験してるの。話してくれることみんな、私には物語みたいでいつも楽しみにしてたの。魔理沙がいない時は、きっと色んなことをしているんだろうなぁって、それを私に聞かせてくれるんだろうなぁって、そう信じてたわ。一緒にいても、離れていても、魔理沙はずっと私にわくわくをくれるの。魔理沙のことを考えない時間なんてないって思えるくらいに好きなの。
 私は魔理沙が好き。あなたはパチュリーが好き。二人を引き裂く理由なんてそれでいいし、二人が悲しんでも私たちが癒してあげれば、それでいいでしょ。最低でも、そうしなきゃ手に入れられないんだから、仕方ないでしょ。恋をしたことがないやつらに何を言われてもいいじゃない。だから、壊してって言ってよ。お願いだから、ねぇ。
 私だって本当は、わかってるの。お願いされても、壊せないって。二人が泣く姿を見たくない、勿論それもあるけど、そんなことはどうでもいいことで、私じゃあの笑顔を、幸せそうな笑顔を引き出せるってそう思えないから、信じられないから、壊せないの。
 なんでこんな思いをしなきゃいけないんだろう。好きなのに、一緒にいられるだけで、ううん、魔理沙が生きてるってだけで幸せだったのに、なんでこんなに辛くならなきゃいけないの。なんでパチュリーから取り返しちゃいけないって思っちゃうの。私が一番、魔理沙を好きなのに。そのはずなのに。好きな気持ちを比べられないのは分かってるけど、私が一番だって信じたいの。だってもう、それしかないんだから。だから、二人を引き裂けない。好きだから、笑顔でいられることが嬉しいの。私に向けてもらえないのが、凄く凄く辛いけど、とってもとっても痛いけど、嬉しいの。泣きたいくらいに。
 あなたも同じでしょ。だから、だからね。









アリス・マーガトロイドとフランドール・スカーレット





 私たち、付き合うことにしたの。
 そう二人に言ったわ。二人は喜んでくれた。私たちがどんな思いでそうなったのかも知らないで。二人でいる時の、あの幸せそうな笑顔で祝福してくれたわ。
 多分、私たちはお互いをまだ好きじゃないし、愛してもいないわ。だって、同じ気持ちでいるってだけだもの。傷の舐め合い、それだけの関係だわ。でも、でもね。手を繋いでいれば、過ぎる時間と共にきっと愛せるって、そう思えたの。だから、だからね、あなたのことを愛せそうって、手を握ったの。
 でもまさか、その瞬間がこんなにも早く来るとは思わなかったわ。
 二人が笑いかけてくれるの。いいものでしょって。そんないい気持ちで結ばれていない私たちを祝ってくれるの。それだけで、手を取り合ってよかったって思っちゃうの。馬鹿だなぁって思うわ。本当に。結局、二人が好きなのは、一番なのは変わらないの。私たちが手を取り合っていれば、二人の笑顔の中に入っていける、そう思えて嬉しくなったの。
 それから、それからよ。私たちがお互いに温かい気持ちを持てたのは。ああ、愛するって、こんな気持ちなんだって、そう思ったわ。この気持ちがあれば、お互いの手を取り合っていられるって思ったの。それから、敵わないって、ようやく諦められたわ。二人が一番なのは多分、一生変わらないと思うわ。でも私たちは二人を愛せないって気付いたの。私たちが愛せるのはお互いだけだって、それがわかったから。
 ずっと、一生、一番になれなかった私たちは、それを悔やみ続けるわ。でも隣で、手を握って、温めてくれる人がいるんだもの、どんな辛くても、苦しくても、平気なのよ。









後書き





原点回帰です。
初めて書いた東方SSもアリフラでした。
あれから何年、というとなんかもう、こう、あれですね。
うん……うんorz


それでは最後に、東方シリーズ原作者であるZUN氏に多大な感謝を!
読んでくれた読者様にありがとうを送ります。


以上。



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