子供のように手を握り、妹のように手を引かれ

Last-modified: 2019-02-14 (木) 00:14:37

目次

注意書き



当SSは十六夜咲夜、フランドール・スカーレットのカップリングSSに見せかけた別の何かです。
そういうのが嫌いな方は本編を読まれる前に回避した方がいいと思われます。
イチャイチャなんて書けない作者ですので悪しからず。


以上の点を踏まえてお読みください。

本編





 今日はバレンタイン。咲夜は慕っている主レミリアの妹フランドールへチョコレートを届けようと捜し歩いてました。他の誰に言っても信じてはもらえないけれど、フランドールは咲夜にとってとても面倒見のいい、姉のような存在でした。いまでは、昔のようにお姉ちゃんと呼ぶこともできなくなってしまったけれど、それでも慕う気持ちは今も昔も変わりません。そんな姉を探すうちに、咲夜はふと昔の、まだまだ小さかったころの、紅魔館へ来たばかりの気持ちを思い出してしまいました。
 それは、不意に咲夜の中の、子供の頃の、意味もなく寂しい、不安な気持ちを蘇らせます。そうなってしまえば、一歩も動けなくなってしまいます。誰かに手を握ってもらうまで、安心をもらうまで、その場に立ち竦んでしまいます。そんな咲夜を救うのは、決まってフランドールでした。
 咲夜は泣かない子供で、例外と言えば、誘われて共にフランドールと悪戯や盗み食いをしてレミリアに怒られている時くらいでした。フランドールが咲夜をかばうように立ち、怯えないように手を握っていて、そんな姉のような姿に咲夜は、自分もなにかしないと考えて、でもなにも思いつかなくて、最後には泣くしかなくなってしまって。そうなってしまえば、後は泣く子供にレミリアが手をこまねいて、その間にフランドールが咲夜の手を引いて逃げるのがいつもでした。
 そんな子供の頃を不意に思い出してしまう度に、咲夜はフランドールを求めてしまいます。今では背も追い抜いてしまい、メイド長という立場もあって、そんな姿は見せられないのに、見せられないから、あるとき突然、不意に、どうしようもなく溢れてきます。良いとは言い切れないけれど、確かに年上の、姉として振る舞っていたフランドールを求める気持ちが。
 でも、咲夜は決してフランドールを求めません。求められません。子供の頃はまだ立場の自覚なく、気軽にフランドールを呼べたのだけれど、今ではもう、そうしてはならないことをわかってしまっているから、ただ立ち竦むしかできません。
「まったく、咲夜はいつまでも子供なんだから」
 そんな声とともに、咲夜の手には温もりが伝わってきました。いつも握ってもらっている手。いつまでも忘れられない温かさ。それを感じるだけで、咲夜は手の主がわかります。
「フランドールさ――」
 思わず、名前を呼びますが、咲夜の唇に、手の主は指を当てて止めました。違うでしょ、と声に出さずに、表情で、なんと呼べばいいのか咲夜に伝えます。
 咲夜はそれを察して、気恥ずかしさを覚えました。いっしょに懐かしさも。それから、恥ずかしさに負けないように意を決して、その言葉を言います。
「お姉様」
 お姉様はお姉様で、私は違うでしょ、と首を横に振りました。 お姉様とはレミリアのことなのですから、咲夜にそう返すのは当然です。
 しかし、咲夜は主従を理解していて、主の妹をそう呼ぶことが悪いことだとわかっています。呼べません。
 それでもと、大丈夫だからと、握っている手で、見つめている目で、伝えます。
 咲夜は、その目で見られると、もう、そう応えるしかなくなってしまいます。でも、そう呼べることがどれだけ自分を救ってきたか、自分にとって幸せか、わかっています。だからこそ、甘えるように握られた手の主を呼びます。
「お姉ちゃん」
「よくできました。じゃあ、ご褒美あげないとね」
 そういうとフランドールはポケットからチョコレートを取り出しました。それを咲夜の口に運びます。
「はい、あーん。本当はお姉様のなんだけど、まぁ、怒られたら怒られたで、その時は咲夜が泣いてくれればいいから」
「もう、あんな風には泣けません」
「あーあ、咲夜も大きくなっちゃったなぁ。私の隣は泣き虫咲夜はどこに行っちゃったのかしら」
「いまでも横にいますわ。涙は流れなくても、やっぱり、子供の、妹のままですから」
「あ、そうだ。咲夜、なにか替わりになるようなのある? あれでお姉様に許してもらおう」
「バレンタインチョコレートならありますわ」
「じゃあ、それで誤魔化そっか。ああ、それはそれとして、私の分は」
「もちろん、ありますわ」





後書き





なんかもう本当にね、取ってつけたかのようにしかできないなら初めからやらなければいいのにね(挨拶)
というわけで、毎度書かない書けない言っている割に書いている例のあれです。


なんというか、こう、毎年のことですが深刻にネタがないので色々とあかんかったですorz
うん、うん……orz
後書きに書くことすら思い浮かばない。
来年こそは書かない。


それでは最後に、東方シリーズ原作者であるZUN氏に多大な感謝を!
読んでくれた読者様にありがとうを送ります。


以上。



感想スペース

コメント欄: