炎の騎士~Knight of the fire~ 第二章 前編

Last-modified: 2009-09-27 (日) 10:25:40

目次

注意書き

このSSはネちょwikiでの設定、他の方々のSSの設定、自分独自で考えた設定などが含まれております。
あらかじめご了承ください・・・・・。


もし嫌な表現が気になった方は、こちらにお知らせください。
次から気をつけるか、訂正などさせていただきます。


なお、先に【酒飲みの学園生活シリーズ】を読むことを強くお勧めします。
後、結構長いので、MAX COFFEEとかピザポテトなど用意して、ゆっくりご覧下さいな。

本編



                 【2】第二章~人々の世界~




 ――守らなきゃ。


 ――この場所を。


 ――守らなきゃ。


 ――ウチしか、いないんだから。


 ――師匠……。




 ――なんで死んでしまったの……?




                      ~@~




 天候は晴天。
 雲一つ無く、いい天気である。


 ジェネ村に向かって、旅立った私達。
 クォール村から北へ、数十キロメートル先にあるらしい。
 馬車の中に入り、ガタガタと揺られながら進んでいく。


 左右にはあたり一面、何もない荒野。
 昔、ここらへんにも草木が存在していたらしいが、とある魔物に焼き払われ、荒野になってしまったらしい。
 しかしそんなところにも、少しは草は生え始めており、花も多々見られる。


 そういや、馬車に乗るなんて初めてだ。
 馬車の中は、思ったよりも広い。
 12人程度は乗れそうだ。
 だが、沢山荷物もあるため、せいぜい10人程度が限界だろうか。


 馬もこんなに近くで見るのも初めてかもしれない。
 ずっと昔に見た気もするが……。


「うがー暇だー!!」


 狐先生が、そう叫んだ。
 うん、まぁ……暇だねぇ。
 でも、そんなもんだろう。旅なんて。


 大体が移動して、そして村について、次の村に。
 そうそういろんなことが起こっては堪らない。


「警戒を怠るなよ。魔物もどこからくるか分からんのだから」


 そう言う、B.B.先生。
 ……そうそういろんなことが起こりませんように。
 祈る私であった。
 ヘタレな隊長でごめんなさい!


 それにしても、私は何でここにいるのだろうか……?
 やはり思い出せない。
 何か……何か大切なものを忘れている気がする。
 ここに来る前……確かに私は学園にいた。
 登校したのは覚えてるんだ。


 ――でも、記憶はそこで終わっている。


「スー隊長? どうかしました?」
「ん? いやー……この世界に来る瞬間の記憶が無くてねー」
「え?」
「実はなんでここに私がいるのか、全然分からないんですよねぇ……」


 そんなことを言っていると、B.B.先生が一つため息をついた。


「まったく……本当にお前、大丈夫なのか?」
「はぁ……多分」
「まぁいい。これから、足を引っ張らないようにな」


 そう言ってきたB.B.先生。
 うわー……怖いー。
 だが、彼が一番熱心だということは、よく分かる。
 多分このメンバーを纏めてくれる中心人物になりそうだなぁ……。


 そう思いながら、馬を眺める。
 リズムよく、足音を鳴らしながらどんどん進んでいく。


 馬も可哀想に……と、ずっと前は思っていたが。
 実際乗ると、やはり役立つものだ。
 考えたついた人は凄いと思う。
 もちろん馬も。


「お前……」
「ん?」
「もしかして、馬車は初めてか?」


 あら……。
 さっきから不思議そうにしていたからだろうか。
 B.B.先生にそう聞かれた。


「はい。乗ったことがないですねぇ」
「……本当にか?」
「はい」


 信じられないような顔でこっちを見てくるB.B.先生。
 B.B.先生だけではない。
 澪も、狐先生も信じられないような顔で、私を見ていた。


「いやー……こっちの世界。そんなものなかったので」
「信じられん……そっちでの交通手段はどうなってるんだ?」
「えっと……車って乗り物があって、それが一般的ですね」
「クルマ? なんかの新種の生き物か!?」


 うぁー!
 なんて説明すればいいんだこれー!
 この世界で車なんて説明したって分かるわけないだろぉぉぉおおお!!


 とりあえず、自分の知っている車の知識を全部話す事にした。
 ちゃんと伝わっていたらいいが……。


「信じられん……動物の力を一切使わず、しかも人間が作り上げ、人間が操作する乗り物など……」
「まぁ……確かにこっちの世界だと信じてもらえなそうだけど……いろいろとこちら側だと便利な世の中になってるんですよ」
「そうなのか……」


 B.B.先生は考え込んでしまった。
 どうやら勉強とかにも対して、熱心に取り組んでいたようだ。
 澪も狐先生もへー、っと感嘆しているが。
 あんまり信じてもらえてないんだろうなぁ……。


 あ、そうだ。


「そういえば、B.B.せんせ……B.B.さん」
「ん? なんだ?」
「ジェネ村って、後どのくらいかかるんですか?」


 このことを聞くのを忘れてた。
 馬車の速度も、車と比べたらそこまで早くない。
 何よりもこの世界の広さも知らない。
 次の村がどのくらいかかるかなんて、分かったもんじゃなかった。
 大方、6時間程度とかかかりそうだなぁ……。


「一日だ」
「やっぱりそのくらいかかるっすよねぇ……。――って、え!?」
「ん? どうした?」
「一日かかるんですか!?」
「あぁ、野宿になるだろうな」


 うえ、ちょ、そんなにかかるのか……!?
 だって、ずっと馬も歩きっぱなしで、もう随分遠くにやってきた。既に、三時間程度過ぎたはずだ。
 うわー……そんな日々が続いてくのかー……。


「――そんなに不思議か? まぁ、一人で馬に乗って走れば、半日程度だと思うが……」
「はぁ……」
「ちなみに魔物が出る可能性もあるからな。夜は交代交代で見張りだ」
「まじっすか!?」
「ん……マジッスカってなんだ? 異界の言葉か?」


 えぇぇ……。
 そこも? ねぇ、そこも!?
 そこも説明しないといけないのか……。


「まぁ、異界の言葉……でいいですね。本当ですか? って意味です」
「へー!」


 その話を聞いて、狐先生が関心を抱いてきた。
 あ、うん。この人、あっちの世界ではよく使ってたのにな。


「まじっすか!?」
「え、えぇ……まじっす」
「ましっすか!?」
「まじっすよ!!」


 狐先生……気に入ったようだ。
 うん、まぁそうだろうな……。
 てか、ちんちくりんって言葉はこっちでは使われてるのか。
 不思議……。


「ということだ。交代交代、夜は見張りをする」
「了解しました」


 さて……いろいろとキツイ旅になりそうだ……。
 だって……。


 ゆっくり寝られないなんて、皆嫌だもんな?




 ――この頃は、まだこんな甘いことを思っていたな。




                      ~@~




 ガタン!!




 突然馬車の動きが止まった。
 どうしたんだろうか?


「一体何が……?」
「――運がないな」


 B.B.先生は外の様子を見ながらそう呟いた。
 一体……。
 私もすぐに外の様子を覗く。


 剣や斧を持った人たちが、馬車の周りを囲んでいる。
 10人程度いるぞおい……。


「――盗賊だ」
「盗賊!?」


 おいおい……。
 ここはなんだ、そんなゲームに出てきそうな輩もいる世界なのか?
 あーでも、いるかもしれないか……現実にも。


 私達は武器を手に取ると――といっても、私は武器はないわけだが。
 馬車の外に勢いよく飛び出した。
 いかにも盗賊っぽい顔をしている。
 顔に大きな傷ついてるよおい……。


「おいてめぇら! 命欲しくば、食料と金をだしな!!」


 うわー……悪役っぽーい。
 てか、悪だよね。きっと。


「俺達は、魔の根源を倒そうと旅立った、異界から来た隊長で率いる騎士団。クォール村ものだ。お前らも話くらい分かるだろう。神のお告げがあったのだからな」


 …………なんていうか。
 そこまで大げさにしなくていいんじゃないっすかね……神様。


 しかもこの人数で騎士団となってるのか……不安が沢山ありそうな騎士団だなぁ。


「だからどうしたっていうんだ?」
「この世界を救うために旅している。邪魔しないでくれないか?」
「――断る」


 盗賊のリーダーらしきものが、そうはっきりとそう答える。
 まぁそうだろう。
 これでやすやすはいどーぞって言ってくれたら、人生そう簡単にはいかない。
 もちろんこの旅も、そう簡単に上手くいかないだろう。


「世界を救う? 異界の隊長? 騎士団? っへ、そう簡単に世界が平和になりゃあ、苦労しないんだよ」
「辛いたびになるのは、もう承知の上だ。だからそこを……」
「そんなことよりも、人のもん盗んで! 幸せを掴もうとした方が手っ取り早いんだよ!!」


 そういって、盗賊のリーダーは斧を上げ、仲間に何かしら命令をした。
 盗賊の仲間が一気に、武器を構える。
 おいおい……まずいんじゃないのかこれ……?


「――物分かりの悪いものたちだ」
「本当にそうだね。レナ、少し懲らしめたくなっちゃった」
「どうする、スー?」


 いやいや、私に聞かれましても。
 ……と、いってもやはり私が言うしかないんだろうな。


「とりあえず、懲らしめた方がいいかもしれませんね。殺しちゃいけないですけどね」
「了解しましたスー隊長!」


 ギャィィィィン!!


 そういうと、澪が動き出し、一人の盗賊の斧を鉈で弾き飛ばした。
 おーすげーかっけー……。
 そしてそのまま相手を澪は蹴り倒す。


「てめぇ!」
「ウォータ・ブレイク!」


 狐先生がそう唱えると、盗賊たちの目の前に水が収縮された状態で出現し、一気にはじけ、相手を襲った。


 私も何かしないといけないか……。
 腰からスペルカードを取り出す。


 炎符『火炎拳』


 私の両手に、膨大な炎が宿った。
 盗賊数人に向かって歩き出し、炎で脅す。。


「な、なんだこいつらぁ!?」


 すっかりびびってしまったようだ。
 良かった……これでびびらなかったら、普通に戦うことになっていたからねぇ。
 そうなると、多少はダメージ私受けるだろうな……。
 さーて、B.B.先生はどうしたかな?


 B.B.先生の方を見ると、槍の先を相手のリーダーらしきもの首の寸前で止め、脅していた。
 こっわ~……。


「どうだ? 諦めるか……?」
「てめぇら……!」


 まだ戦う気力はありそうだ。
 さて……どうしようかねぇ……。


「あんたら何をやってるんだい!?」


 いきなり、誰かが叫んだ。
 ここにいる盗賊たちでも、私でも私の仲間でもない。
 声の聞こえた方を見ると……そこには……。


「あたいがいない間に……勝手なことしないで欲しいね?」
「刹那さん……!?」


 そこには……刹那さんがいた。
 鎖鎌を持ち、いつも通りの面影……刹那さんだ。


 ただ少し様子が違った。
 何かがおかしい。


 いきなり倒れていた盗賊たちは立ち上がり、刹那さんの元に走り出した。


「もうしわけねぇ! 親方!」
「あぁ、なんであんたらはそんな勝手なことするのかねぇ!? 最近は特にひどいよ!!」




 そこには……盗賊の姿をし、盗賊の頭となっている刹那さんがいたのである。




「刹那さん!?」
「ん? アンタ誰だい?」


 私が彼女の名を呼んだが、相手は私が誰だか分からないようだ。
 まぁ、知っているはずがない。
 あっちの世界とは違う世界の刹那さんなのだから。


「なんで盗賊なんかを……」
「――誰だか知らないが、余計なお世話だよ」
「だけど、こっちの世界の刹那さんを知らないけど! あなたはそんなことをする人じゃ……!」
「うるさいねぇ……よく分からないけど、痛い目にあいたいのかい?」


 鎖鎌をひゅんひゅんと回し始める刹那さん。
 駄目だ……話が伝わらないみたいだ。


「盗賊の頭……か?」


 いきなりB.B.先生が、刹那さんに向かって話し始めた。


「んー? そうだよ?」
「女がか?」
「女がなって、何が悪いんだい?」
「それにお前……刹那……? もしや……」


 目を細め、何か考え始めたB.B.先生だったが。
 思い出せないのだろうか、諦めた様子で、私達のことについて自己紹介し始めた。


「俺達は、クォール村の異界から来た隊長で率いる騎士団。魔の根源を倒すために、旅を始めた」
「クォール村……。異界の隊長……!?」


 そういうと、いきなり刹那さんは私をみつめ始めた。
 そんなにきつい目で見ないで下さい。なんかうれしくなっちゃうわ!
 って、そんなこと思っている場合じゃないか……。


「そうか……あんたが……」


 しばらく刹那さんは腕を組んで、こっちをずっと見つめている。
 何か、考えているらしい……一体どうしたんだろうか?


「――くッ」


 そう言うと、私を見つめるのをやめ、私達に背を向けた。
 盗賊たちもそれに合わせ、動き始める。


「お前達いくよ! そいつらはほおっときな!」
「し、しかし親方……!」
「そんなに仕留めたいのかい……勝手な行動してんじゃないよ!!」
「へ、へい!」
「さっさと行くよ!」


 そういうと、刹那さんと盗賊たちは、どこかに走り去っていった。
 私は、刹那さんが言ってしまう前に、彼女の名を呼んだが……届かなかったようだ。
 既に、刹那さん達の姿は見えなくなろうとしていた……。


「いくぞ、スー」
「――あ、あぁ……はい」


 B.B.先生に言われ、私達はまた馬車に乗る。
 馬は再び歩き始めた。


 ――刹那さんが盗賊?
 例え世界が違ったとしても……そんなことをする人には思えない……。


「スー隊長、大丈夫ですか?」
「え、あぁ……ちょっと、あっちの世界のことと、こんがらがってしまって……」
「……そうなんですか」


 澪が心配してくれている。
 例え違う世界の人だとしても、とてもありがたいと思えた。
 大丈夫……きっと、なんとかなるさ。


 そう信じて、私は旅を続ける。


 ――本当にこの時、盗賊になっていた刹那さんに会った時は驚いたもんだ。




                      ~@~




 ジェネ村に到着するまでの間。
 それはもうひどいもんだった……。


 馬車の車輪が沼地に引っかかり、皆で馬車を押したり、妙な虫が馬車の中に入ってきて、澪と狐先生が大騒ぎしたり。
 おまけに、夜になんか黒い人型をしていた魔物に襲われ、寝ている最中に叩き起こされる。


 そして、朝がきた。
 今は澪と狐先生が寝ている。
 私とB.B.先生が起きていて、見張りすることになった。
 まぁ、レディファーストだから、別にいいんだが……。


 はっきりいう。
 寝不足だ。かなり眠い。
 襲うんだったら、攻めて昼間にしてくださいよ魔物さんとやら……。


「ふぁ~……眠い」
「まったく、だらしないぞ。これから先、大丈夫か?」
「あぁ……はぁ~い。大丈夫でれぇ~すはぁ~い。はい。はぁーい……いやだ~まだ死にたくない~……うぐぅ~……たすけれぇ~」


 なんか知らないが、寝ぼけて変なことを私は言っていたらしい。


 ドカッ!!


 B.B.先生は思いっきり、私の頭をぶん殴った。


「――目が覚めたか?」
「はい、とても気持ちいい目覚めで」
「それが気持ち良いのか? もっと殴ろうか?」
「いえ、結構です! はい!」


 別にまだ殴られても良かったが、止めとくことにした。
 そんな何度も殴られるわけにもいかないからな……。


「まったく……そんなに寝たいなら、俺に任せてお前も寝るか?」
「いえ、そういうわけにもいかないので」
「ほぅ。そこのところしっかりはしてるんだな」
「まぁ、足手まといになるわけにはいきませんし……」


 そう、足手まといになるわけにはいかない。
 なんか唐突に巻き込まれたことであったとしても、人の迷惑になるのはもう沢山である。
 できる限り協力していきたい。


 っと思っていたとしても、やはり眠い。
 気を抜くとすぐ寝てしまいそうだ……。


「っと、そろそろ見えてきたみたいだぞ」
「お、やっとか!」


 やってまいりました。
 ついに村につくみたいだひゃっほぉーう!
 一日馬車の中で寝た……っといっても邪魔されたわけであるが、やはりベットが恋しいのだ。
 早く寝たい……うん、寝たい寝たい連呼して御免なさい!


 目の前に見える村は、一つだけ目立つものがあった。


 大きな時計塔。
 三角錐の赤い屋根でできた塔、そして大きな時計が時計塔の壁に取り付けられていた。
 さらに時計のある上に、鐘を吊るす為のスペースがあり、そこに大きな鐘が取り付けられている。


「何時見ても、あの時計塔は素晴らしい。この世界で唯一の時計塔……誰が作ったのだろうな」


 どうやらこの世界には、時計塔みたいなものはジェネ村にしかないらしい。
 私の世界は相当科学の力なんかが進歩しているんだな……っと思わざる得なかったのである。
 そして……やはりこの世界にきてしまってからか、いろいろと不便利なことが多い。
 自分の世界がどれほど便利なところなのか、思い知らされることになったのであった。


「今晩は、あそこで寝泊りだ。いろいろと準備も必要だしな」
「分かりました」
「それに――俺達と同じように、仲間になる人もいるかもな」


 あ、そうか。
 既になんだっけか、神様とやらに仲間を決められてしまったんだっけ。
 だから、どこにその仲間がいるかなんて、分からないですからねぇ……。
 ――選ばれた人はかわいそうだ……まったく。


 まぁいいか。
 私についてくるかどうかは、その人の自由だし。
 ついてくるかどうかは、一応聞いておくことにするけど。


 そんなこと考えている間にも、馬車はジェネ村に向かって進んでいったのである。




                      ~@~




 私達はジェネ村に到着した。
 私の事……異界からきたジェネ村の隊長だということを知らせると、ジェネ村の人びとは凄く歓迎してくれる。
 あ、え……あ、うん。
 本当に期待されてるんだな……っと、なんだか複雑な気分になった。


 とりあえず、私達は昨日全然寝ていなかったため、宿を借りて寝ることになる。
 私は、ベットにダイブして、そのまま寝てしまった……。












 ――聞こえますか?


 ん?


 ――私の声が聞こえますか?




 目を覚ますと、真っ暗だった。
 暗い空間……。
 辺り一面真っ暗である。
 あれ……なんだここ?


「――気がつきましたか」


 真っ暗の中、一つの白い光があった。
 暖かい光……。


「誰ですかあなた?」


 私がそう光に向かって聞いた。


「――私はこの世界の神。この世界を作ったもの」
「なんだって?」
「――あなたの夢の中を利用して、今ここにいます」
「ふむ……」
「――夢を見る時間は短い……その間にあなたにいろいろ伝えます」


 といってもなぁ……。
 はっはっは……。


 まさかの神様のおでましだよ。
 人間の前に現れる神っていうのも、今まで信じられなかったのですけれどねぇ。
 でも、今目の前に神と呼ばれている人がいる。
 信じられるわけが……。


「――そうですね……信じられるわけがないでしょう」
「!? あなた……心が読めるのですか!?」
「――えぇ、神ですから」


 うーん……。
 どうやら本物っぽい感じがしてきたなぁ……。


「――感じだけでも結構です。私の話を聞いてくれませんか?」
「……いいですよ」


 まぁ、断る理由もないしね。
 何が起こってるか、全然分からないという状況。
 これはいい機会である。


「――はい。それでは話します」
「おーぅ」
「――この世界は、ヒューイと呼ばれた惑星。あなたを確かめるための星」


 ――は?


 確かめる?
 何を?
 私の何を?


「――分からないのですね。仕方ありません」
「あ、はい……」
「――本当はこんなこと言うのは、私からはなかなかありません。でも……あなたは特別な形でこの世界にやってきた」


 ん~……?


 全然ッ、訳がわからない!
 うぼぁー!!


「――あなたは、どうかこの世界で生き延びて欲しい。何故ここにあなたがきたかは分かりません。でも、あなたは生き延びてください」
「えっと……とりあえず、生き延びろと?」
「――はい」


 えー……。
 それだけ?
 ただそれだけなのか?


「――すみません。あなたも一応、通常の方々と同じ方法なので……あまり深くは言えません」
「通常ねぇ……」
「――答えは、あなたで見つけ出してください。この先にきっとあります」


 そう神様とやらが、伝えると。
 少しずつ、光が失われようとしていた。
 ちょ、もっとなにかいうことはないのか!?




「――これは、あなたの試練なのですから」












「うぉ!?」
「きゃ!?」


 私はいきなり目を覚まし、起き上がった。
 そのせいか、隣で私の様子を見ていた澪は驚いている。
 狐先生とB.B.先生はいないようだ。


「スー隊長!? 大丈夫ですか!?」
「あ、あぁうん。大丈夫ですよ」
「ならいいですけど……」


 心配そうにこっちを見る澪。
 うん、やっぱり可愛いなぁ……こんな人でごめんなさい。
 しかしまぁ、なんというか。
 妙な夢だったな……いや、おそらく夢じゃないだろう。


 一体なんなんだ……?


 神? 試練? 特別? 通常? 生き延びろ?


 訳分からん。
 第一、なんでこの世界にきたのかも……。


 ――もしかして。


 この世界にきたのが……なにか鍵になっているのかもしれない。
 どうしてこっちにきてしまったのか。
 その理由が分からなければ、なにも分からないんじゃないか?


 こっちに来る前の記憶……。
 あー……んー……うぐぅー……。


 あーもう! 全然分からん!!
 何で覚えてないんだ、大切なところをぉぉぉぉおおおおお!!


 まぁいいや……。
 嫌でも生き延びれば、何か思い出すだろう。
 私が特別だといった。
 つまり、通常ではない方法でこっちにきてしまったということだろうか?

 
 ぐぅ~……。


「腹減った……」
「あぁ、そういえばレナも何も食べてなかったなぁ……」
「何か食べに行きますか?」
「はい! 了解です!」


 嬉しそうに澪はそう言った。
 うーん……やっぱり澪の面影はあるんだけど、何か違うなぁ……。


 私達は宿屋から抜け出して、ご飯を食べに行くことにした。




                      ~@~




「いらっしゃいませー」
「うぉ!? ぽきさん!?」


 飯屋に入ると、いきなりどこかで見たことある人。
 ぽきさんがそこにいた。
 浴衣姿で、店の手伝いをしていた。飯を人に運んでいる。
 ふよふよと歩いていて、足取りがなんだか危なっかしい。


「あらぁ~? 私あなたとあったことありましたっけ~?」
「あ、いや……なんでもないです!」
「そうならいいけどねぇ~」


 いや~……いきなり知り合いに合うと思わなかった。
 って待てよ?


「すみません……ぽきさんですよね?」
「ん~そうですけど~?」


 のほほんとした声で答えるぽきさん。
 う~ん……やっぱり何かが違う。
 てか、多少ゆゆ様っぽいぽきさんだな……。


「私、なんというか、異界からきたクォール村の隊長……みたいのものなんですが」


 なんだか、自分で言ってて恥ずかしくなった。
 うわー! ネちょ学でこんなこといったら、恥ずかしさマックスだー!


「あらら~。そうなんですかぁ~応援してますよぉ~」
「あの……あなたはその……仲間ですか?」
「ん~? なんのことでしょうか?」


 ありゃ?
 違うのか?


「い、いえ。分からないのなら結構です」
「あらら~、なんかごめんなさいね~」
「いえいえ。大丈夫ですよ」
「では仕事があるので~」


 ふむ。
 どうやら、ネちょ民だからって、仲間になるわけではないのか。
 まぁ、そしたら大量のメンバーになりそうだからかなぁ……。


「スー隊長?」
「ん?」


 隣の席に座っていた澪が話しかけてきた。
 何時見てもコスプレしてるようにしか見えない服装だなぁ……。


「あの人も仲間なんですか?」
「いや、どうやら違ったらしい。なんか、知ってる人だからって、全員が全員仲間じゃないみたいだ」
「そうなのですか……」


 では、誰が仲間になっていくんだろう?
 それは……やっぱり、誰かしらなるのだろう。
 私は、とにかく生き延びるために旅をする。
 今はそれだけを考えることにした。


 ――ここで食べたお茶漬けはけっこうおいしかったなぁ……。




                      ~@~




「にゃー……」
「ん? どうかしたのかな……」


 少女は黒い子猫を見て、少し心配になりました。
 いつもよりなんか元気がないなぁ……。


「にゃー」
「――大丈夫だよ。親がいなくても、ウチがいるよ」


 少女は一人ぼっちになっていた、子猫を持ち上げました。
 子猫は嬉しそうに少女を舐めます。
 少女は笑いました。


 ――でも、少女の心は泣いていました。






 ――彼女も……一人だったから。



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コメント欄:

  • BBさんの拳骨かなり脳髄に響きそうだ。寝るのは狐さんの授業だけにしておくか -- ? 2009-09-05 (土) 00:51:05
  • 刹那さんが盗賊で、ぽきさんが食堂の従業員……。他の方々はどうなっているのだろう。うーむ、気になるぜ。最後の人は……あの方かな? 何か、こう、色々と楽しめる要素が多くていいですねw -- ドックンドール? 2009-09-05 (土) 04:56:16
  • とりあえずおぼろんには水かけといてと← 刹那姉ぇ・・・盗賊・・・不思議としっくりくる!← ぽきさんは違ったのかぁ・・・となると猫と一緒にいるあの人ですね! -- きつね? 2009-09-08 (火) 10:30:40
  • スーさんはきつい目で見られると、うれしくなっちゃうのかー。ふーん……(冷めきった目) そして、うん。 みんなさ…… あんまり違和感ないね(スキマ -- 闇夜? 2009-09-27 (日) 10:25:39