目次
注意書き
このSSはネちょwikiでの設定、他の方々のSSの設定、自分独自で考えた設定などが含まれております。
あらかじめご了承ください・・・・・。
もし嫌な表現が気になった方は、こちらにお知らせください。
次から気をつけるか、訂正などさせていただきます。
なお、先に【酒飲みの学園生活シリーズ】を読むことを強くお勧めします。
後、結構長いので、MAX COFFEEとかピザポテトなど用意して、ゆっくりご覧下さいな。
本編
「スースー! れいなーん!」
そういいながら、夕日をバックに誰かがこちらに走ってきた。
誰か……っていっても、誰だかはもう分かるだろう。
狐先生だ。
狐先生は、そう叫びながら私の向かって突撃してきた。
腹に狐先生がうぐふぉあ!! ダメージが!!
「やめんか馬鹿者!!」
「おうぐふぅ!!」
後からやってきた、B.B.先生に狐先生は殴られた。
まぁ、当然っていうか、うん。
ざまぁって感じだ。
あ、うん、やっぱりなんかごめんなさい!!
「買い物を済ませてきた。食事も済ませたが……お前達はまだか?」
「ううん。スー隊長と食べてきたよ」
「そうか、ならいい。明日にはここから出て行く。準備は済ませろよ。武器の手入れもな」
「はーい」
やれやれ……一日だけか。
だが仕方ない。旅は急いだ方がいい。
長居すればするほど、そこから動きたくなくなるものだ。
私も元の世界に帰れるといいなぁ……。
――――リン。
「!?」
私は身体を勢いよく捻り、後ろを見た。
今確かに……聞こえた!!
「どうしたスー?」
「聞こえた!」
「何がだ?」
「あの鈴の音!」
皆、頭を傾げてなんのことだか分からないと、意思表示をしている。
まぁ、そうだろう。
だけど、私にはとても大切なことだ。
「いるんだ……この村のどこかに」
「おいおいどうした?」
「ちょっと、村を探索してくる!!」
「おい! 待て!!」
私は引き止められたが、それにも関わらず走り出した。
村の人たちが不思議そうに私を見ている。
だが、そんなことはどうでもいい。
私の中の、大切な人のうちの一人が、ここにいる。
「どこだ……?」
――リン。
また鈴の音。
今度ははっきりと聞こえた。
時計塔の方からか……。
「おいスー!!」
後ろから、B.B.先生がやってきた。
それだけではない。
澪も狐先生もやってきた。
皆追いかけてきてくれたのだろう。
「勝手な行動は慎め、馬鹿者!!」
「あ、すみません……」
「スースーどうしたの~いきなりー?」
そう狐先生が聞いてきた。
不思議そうな目でこっちを見ている。
「いや、ちょっと大切な人がいるような気がして……」
「え? もしかして恋人!?」
いや~あはは~。
恋人なら、あなたの隣にいますよ~。
でも言えないのが、めっちゃ寂しい~。
「まぁ、いろいろと。恋人ではないですねぇ」
「ふぅーん、じゃあ、父さんとか! 母さんとか! 弟とか! 妹とか! 兄とか! 姉とか!」
やべ、今この人答え地味に言ってたよ。
っていっても義兄妹だからなんともいえないが。
時計塔の方を私は見た。
時計塔の入り口に誰かが座っている。
――そう。
義妹であるリィさんがそこにいた。
「ちょっと話しいいですか?」
「!?」
私がリィさんに話しかけると、何かを抱えながら私から少し逃げる。
あ、なんか今。私、少し悲しくなった。
抱えてるのは、どうやら猫みたいだ。
やはりあっちの世界と同じ鈴を持っている。
「ど、どちら様ですか?」
「え、えっと……B.B.さんよろしくお願いします」
「俺が説明するのかよ……!!」
そうB.B.先生が私に突っ込んだ。
いやまぁ、なんというか。
私からなんて言えばいいか分からないし? って感じだったから。
「俺達は、クォール村の異界から来た隊長を率いる騎士団だ」
「もしかして異界の隊長さん……?」
「あぁ、こいつがそうだ」
頭に手を当てて、どもっと言いながら、ぎこちなく礼をする自分。
知り合いなのに、知らない人っていうのもなんかやはり変な感覚だ。
何回味わっても、この感覚は変わらないんだろうな。
「やっぱりそうですか……」
「どうかしたのか?」
「……ウチがその隊長の仲間になれと、神様が……」
ビンゴ!
やっぱりか!
私は信じてたぞおおおおお!!
「では一緒に俺達にくると?」
「でも……御免なさい。今はちょっとお断りします」
うごぉぉぉおおお!?
私のテンションがガタ落ちした。
もしこれが澪だったら、灰になっていたかもしれない。
あ、うん、こんな人で御免なさいね!!
「何故だ? お前も魔の根源を倒したいはずだ。神に呼ばれるのなら相当の実力者でもあるはずなのだが……」
「いいえ。確かに師匠に教わった魔法は強いですし、こう見えてもウチは武器もいろいろ扱えます。――でも、守らないといけないものがあるから駄目なの」
守るものがある?
一体何なのだろうか。
この村のことなら、尚更魔の根源を倒そうと思うのだが。
「守るものって……なんですか?」
「それは……これです」
リィさんが見たのは……時計塔だった。
「この時計塔の地下に、師匠が残してくれた財宝が残っているのです」
「師匠?」
「ウチに魔法を教えてくれた、らいぶらり~師匠です」
ありゃ?
らいぶらり~先生の名まで出てきちゃった。
なんか運命感じてきた……。
――だけど、その後の言葉に私は驚くことになる。
「でも……師匠。数ヶ月に死んじゃった……病気で……っ」
リィさんはそのまま泣いてしまっていた。
猫がにゃーっと一声、鳴く。
とても寂しそうな声で……。
彼女はとても悲しい顔をしていた。
――嘘だろ?
「なんで……? なんで、らいぶらり~先生がいなくなってることになってんだ……?」
「スースー……? どうしたの?」
「……あ、いや、なんでもない。大丈夫」
「うむぅ~?」
狐先生が心配そうにこっちを眺める。
首をかしげながら。
例え違う世界だとしても、らいぶらり~先生……ネちょ民が死んでることもあるのか?
まぁ、本人とは違うけれども。
精神にくるぞまったくこれは……。
「大丈夫ですか? リィさん」
「うん……って、ウチ……名前名乗りましたっけ?」
「あ、いやー、いろいろありまして」
まさかあっちの世界で、私の義妹なんですよあなた、とか言えるわけがない。
澪に向かって、あっちの世界で私の彼女なんですよとか、もっと言えないわ。
「だから……ウチは時計塔の番人なんです。行くわけにはいきません」
「ふむ……そうですか。ちなみに財宝ってなんですか……?」
「ウチもよく知りません……でも師匠はウチにくれるといってくれたので。そもそも鍵が掛かっていて、宝のある部屋の扉が開かないので……」
あら。
もらえると言ったけれども、なんなのかは見たことはないのか……。
まぁいいや。これないというのなら仕方がない。
「皆、行こう」
「いいのか? これは神に逆らってることに……」
「その人のことは、その人が決めるべきでしょう? 彼女がそういったのならいいじゃないですか」
ぶっちゃけると、結構悲しいけどね!
ちくしょうべらぼーめ!
だけれども、あっちの世界とこっちの世界は違うのだ。
何でもかんでも、あっちの世界と同じ関係でいられると思ってはいけないだろう。
「狐さん、行きますよ?」
「……うん」
立ち止まって、何かを眺めていた狐先生の名を、私は呼ぶ。
私達は宿に戻ることにした。
師匠の宝を守るために、ここに残るか……。
いい弟子だなぁ……。
――でも、この時私は心の片隅で、一人で寂しくないのかなって思っていたんだよな。
――聞いたか?
――あぁ。
――仲間に呼びかけろ、あいつがいない間にでもすぐ行く。
――……いいのか?
――いいだろどうせ。そろそろ皆限界だしな。
~@~
日は暮れ、夜が訪れた。
時計塔はこの時間帯になると不気味に見える。
大きな時計の針が動き、11時を指し示した。
ゴーン……ゴーン……。
時計塔の鐘がなる。
長い間動き続けてるにも関わらず、未だに時計は動き続けていた。
昼ならば美しく聞こえる鐘の音も、この時間になるとどこか寂しげだ。
そんな時計塔の入り口に、忍び寄る怪しげな影が月の光を浴びて映っていた。
「よし、扉を開けろ」
「分かりやした」
数人の中の二人がそう言い合うと、開けろと頼まれた方が時計塔の扉に手を触れた。
しかし、手を触れた瞬間……。
バチッ!
少量の電流が男にはしり、男は退いてしまった。
「厄介な罠をしやがって」
「開きますかね?」
「あぁ、こうなったら、この扉を強引にでも……」
「何をやってるの……?」
男達の背後から、少女らしき声が聞こえる。
振り向くと……そこにリィが立っていた。
片手に本を持って、男達を睨みつけている。
「何で気づいた? 時計塔の番人」
「電流の罠があったでしょ? それ、ウチに侵入者のことを知らせてくれる機能もついている魔法なの」
「……さすが。『大魔導師らいぶらり~』の弟子だけはあるな」
「…………」
だが、その師匠は既にこの世にいない。
あの尊敬していた師匠は……病気で死んだ。
――ここは、ウチが何とかしないと。
リィは心の片隅でそう誓う。
「今すぐ立ち去ってくれませんか? 時計塔には何もありません。それに、この村のシンボルの時計塔を荒らしてほしくはないです」
「――そうはいかんな。宝があるんだろう?」
――な……っ
なんでその事を……!?
ウチ、この事を人に話したことは、今日が初めてだったのに……。
――まさか。
「残念だったな。さっきの奴らが教えてくれたんだ。恨むんならあっちを恨めよ」
「そんな……っ!?」
「おいお前。気絶程度でやれ」
「へい」
リィが驚いている間に、男達の間で会話が飛び交う。
一人の男が、リィに向かって歩いてきた。
片手には、大きな刀。
普段の彼女なら、これをすぐに裁けるくらいの能力はあるだろう。
しかし、クォール村の者に裏切られたショックがでかかった成果、反応が遅れる。
男は刀を構え、峰打ちをしてきた。
――しまっ……!
ガキィィィン!!
「よくやった狐。大手柄だ」
リィの目の前に、誰かがいきなり現れた。
青色に輝く槍が、リィに向かって振り下ろされた刀の攻撃を受け止めている。
――そこにはクォール村の者達。私達がいた。
B.B.先生は、男の刀を弾き飛ばす。
刀は遠くに飛んでいき、離れたところに落ちた。
「でしょー!? ウチの耳は誰にだって負けないんだからー!!」
「いつもこの位役立ってくれると有難いのだがな」
「なんだってー!? どういう意味さー!?」
B.B.先生と狐先生がそう言い争っていた。
まったく……いつも通り元気なんだから。
「お前達!? 何故ここに」
「お前達が夕べ。俺達の話を盗み聞きしていたらしいな? この狐がそのことに勘付いたからここに来たということだ」
「ちくしょう……おいお前ら! 全員出て来い!!」
一人の頭らしき男がそう叫ぶと、時計塔の周りからぞろぞろと男達が現れた。
おいおい……仲間がまだいたんですか。
――あれ?
「あれ?」
「どうしました? スー隊長?」
「いや、こいつら……どこかで見たことあるのですが……」
「……あぁ!!」
そうだ。
どっかで見たことあったと思ったら……昨日の盗賊。
まさかこんなとこにまでいたなんて……!
頭らしきものはいるが……刹那さんではない。
違う大きな刀を持った男である。
この人が、いろいろと命令しているみたいだ。
刹那さんがいないかどうか、私は見渡したが、彼女の姿は見えなかった。
彼女が命令させてこんなことさせているのだろうか……?
「お前ら! 扉を壊せ!!」
「へい!!」
「盗賊の底力……見せるときだ!!」
そう盗賊たちは叫びだした。
夜の村によく響く……。
何人かの村人は目が覚めたのだろうか、家の中からこっそりとこっちを見ている者がいた。
だが、そんなことも構わず、何人かの盗賊は扉をあっという間に壊し、時計塔の中に入っていってしまう。
「しまった……!」
「すみません皆さん……巻き込んでしまって」
リィさんがこちらに走って近づいてきて、私達に謝ってきた。
「いやいや大丈夫っすよ。てか、こちら側も警戒してなかったのは悪かったですからねぇ……」
「はい……」
「では、話は後で。私とB.B.さんで時計塔の中の人を。他の人たちは、これ以上時計塔に入れないように、ここの盗賊を始末してください」
「――分かりました」
たまには隊長らしく命令してもいいよね。
うん、柄にあってないと思うけど、頑張ってみたんだ。
後悔は……多分していない。
「外の皆さんは大丈夫で……」
私が呼びかけた瞬間。
時計塔の目の前にいた男達が、突風で吹き飛んでいった。
リィさんの持っていた本が光っている。
うわー……これは心配しなくても大丈夫そうだなぁ……。
「B.B.さん、急ぎましょう」
「了解だ。足引っ張るなよ?」
「努力します……」
私達は時計塔の中に入っていった……。
スーさんとB.B.を見送った三人は、目の前にいる盗賊達を眺める。
10・・・20人くらいだろうか?
こちらの方を睨みつけていて、殺気を放っていた。
「ねぇ、れいなん」
「なに? コンちゃん?」
「大魔導師らいぶらり~……って誰?」
「……もぅ。それくらい覚えときなさい」
リィはまた本を開きだし、周囲に風を集めだす。
それを見て零奈は、鉈に黒い闇を集める。
「昔、魔の根源を倒そうと旅をしていた一人。凄腕の魔導師のことだよ」
零奈とリィが同時に魔法を発動した。
風と闇は、時計塔に侵入しようとする輩全てを拒むかのように、盗賊達をまた吹き飛ばす。
近づいてきたら、容赦しない……。
そんなプレッシャーをこの三人は出していた。
「さぁーさぁー! とーぞくさぁーん! こっから先は通さないからねー!」
「く、こいつら……!」
大の男達が、たった三人の女性達に完封されていた。
彼女らは一体、何を経験してきたのか……。
盗賊達には想像すらできなかった。
~@~
その頃、はるか上空の時計塔の屋根。
男らしき人影は、マントで身を包み込み佇む男。
そこから男はとある者達の様子を見守っていた。
「……見てるか。絶対、私は約束を果たしてみせる」
男はそう呟くと、鈍く光る装飾銃を右手に構え、夜空を見上げる。
男は目的を果たす為に、今動く。
~@~
私達は時計塔の中に既に侵入した盗賊を追いかけていた。
中は広く、月の光が差し込んで、薄っすらと室内の様子が分かる。
上に行く階段、そして地下に行く階段。
宝は地下にあるはず……急がなくては。
私達は、地下の階段を使って下に……下に下りていく。
螺旋状になっている階段だったため、盗賊達が反対側の遥か下に存在しているのが、よく分かった。
手間取りすぎたか……これじゃ、間に合わないんじゃ……。
「飛び降りるぞ」
え?
そう私が思った瞬間。
螺旋階段の手すりを越え、B.B.先生は飛び降りた。
ちょ! まじで!?
螺旋階段の中央は奈落の底のように、地面が見えない。
B.B.先生は飛び降りて、途中で手すりを掴み、盗賊達のところまでショートカットしていっていた。
「あいつやるなぁ! お前ら! 舐められないように真似ろぉ!」
「「「おう!!」」」
盗賊達はそう叫ぶと、B.B.先生と同じように、螺旋階段の手すりを乗り越え、中央に存在する奈落の底に落ちていく。
そして、また手すりを掴み、また落ちる。
こいつら化け物か!?
しかし、この世界ならこれくらいできる人が多いのかもしれない。
私に出来るのか……!?
「スー! 早くしろ!!」
遥か下からB.B.先生はそう叫んでいた。
あぁもう! 私にそんなことできるか馬鹿!!
何か……もっと簡単な方法は……。
うーん……。
「あ、そうだ……多少怖いけど……能力を上手く使えばッ!」
私は螺旋階段の手すりを乗り越え、中央に存在する奈落の底に落ちていく。
B.B.先生と盗賊達は、途中で手すりを掴みながら落ちていっているが……。
私は、そのまま下まで落ちていった。
「おいスー!! 何、馬鹿なことをしてる!?」
そんな叫びが落下中に聞こえてきたが、関係ない。
私はそのまま落下していく……。
私は手から火の玉を作り出し、地面に向かって投げる。
ボンッ!
やがて、コンクリートで出来た地面が炎によって照らされ、見えてきた。
ここが一番下か……!
「うぉりゃぁ!!」
私は手から炎を地に向かって、噴射させた。
それと共に、私の落下速度はがくんと減少する。
やがて落下の勢いは、炎の噴射によって相殺され、私はゆっくりと地面に着地した。
「うまくいったぁ~……」
私のいるところは月の光も入ってこず、真っ暗闇であった。
手から炎を出して、辺りを照らす。
すると、松明らしきものがあったので、そこに向かって火をほおり投げた。
辺り一面松明により、様子が明らかになっていった。
相変わらず、何もない空間。
しかし、松明の光によって……一つの扉が照らされていた。
これが……財宝に繋がる道なのだろうか……?
「お前が隊長か……ちったぁやるようだな」
あ……。
私は振り向くと……そこには頭とその手下5人かな。
私の目の前に立ちふさがっていた。
やべ、B.B.先生まだきてないわ……。
「お前ら!こいつをやっちまえ!」
「「「へい!!」」」
そう言うと、私に向かって5人の盗賊は刀を振り回してきた。
うふぉ!? 洒落にならないからやめてぇ!!
刀の攻撃を私は避け……なかった。
腕で全て受け止め……そしてそのまま体を一回転させ、周囲の盗賊をぶん殴り、ぶっ飛ばした。
腕から血が流れる。
だが、これ位の攻撃なら……まだ気持ちいいわぁ!!
刀の攻撃をこの程度の傷ですんだのは――と言っても、多少血はでているのだが――丹田に膨大な力を込めているからである。
丹田にというのは、気力が集まるとされる所。
へその少し下のところに存在する。
底に力を込め、気功を練る事により、体を硬化させることができるのだった。
ずっと昔に、空手の師範と師範代に教えてもらったもの……丹田法である。
「――といっても、昔から攻撃受けすぎて、体が慣れてきてしまっているのかもな……」
「おらおら! もっとやらんかいお前ら!」
そういうと、盗賊達は刀をブンブンと振り回してきた。
腕で刀の攻撃をガードするものの、相変わらず血がぽたぽたと流れている。
だけど……血は『俺』の攻撃成分だ。
今まで流れていた血に、炎が宿る。
それに驚いた盗賊達は、退いてしまった。
「悪いが……『俺』はこっちの世界じゃ、使い放題なんだよ」
一人称が俺に変わる。
頬から涙が流れ出す。
別に私は別人になったわけじゃない。
ただ俺は怒りが篭ると、こんな性格になってしまうだけだ。
――今回の怒りは、自分で意思的に起こしたものだけれども。
俺は空に向かって、血を飛ばした。
その血はやがて炎に変わり、盗賊たちに降り注いだ。
スペルカード――。
血雨『フレアレイン』
盗賊達の頭に火がついて、髪の毛が燃えていた。
手加減しているから殺傷能力ないけれども……なんか熱そうである。
私の怒りも技を出したと同時に、気性をコントロールして、元に戻った。
こんなコロコロ性格かえる人で御免なさい!!
訳わかんないだろうけど、ついてきてね!!
これで攻撃が収まってくれればいいが……。
何かしら、血を使う炎は体力の消耗が著しいという欠点がある。
そのかわり、普段よりも威力は上がるけれども……。
ってあれ!?
「一人いない!?」
そう叫んだ瞬間。
背後からガシャン!! という、大きな音が聞こえた。
――まさか。
そのまさかだった。
振り返ると、扉をぶっ壊して先に進もうとする、盗賊の頭らしきもの。
ランタンを持って、光を照らしながら扉の奥に進んでいく。
しまった、いつの間に回りこんだんだ……!?
「待て!!」
そう叫んで追いかけようとしたが、残りの生き残りの盗賊が何人か立ち上がり、また私に襲い掛かってきた。
くそ……!
私は相手の刀を受け止めようと、また構える。
だが相手の攻撃は、私に届くことはなかった。
「ふんッ!!」
上からようやく降りてきたB.B.先生が槍を使い、刀の攻撃を受け止めた。
うぉぉ……かっけぇ!
そこに痺れる憧れる!
「大丈夫か!?」
「はい、大丈夫です!」
「いや……どう見ても、お前死にそうな気がするのだが……」
まぁ、腕が血まみれになっているのを見ればそう思うだろう。
でもネちょ民にはいつも攻撃されて、血まみれになっているから大丈夫。
いや……ドMじゃないんだよ本当に……。
「それよりスー。ここは俺が始末するから、先にあいつを止めにいけ」
「了解っす!」
「無事に帰ってこいよ」
「まかせろやああああ!」
大きな声を上げながら、頭らしき人物を追いかけた。
やばい、テンション上がってきたわ。
攻撃されたことによってじゃないからね!
そんな理由で上がったんじゃないからね!
ドMじゃないんだからね!!
長い廊下が続いていた。
真っ暗闇である。
火で辺りを照らして、私は走る……走る……走り続けた。
長い長い通路。
私は走り続ける。
未だに通路が続いていた。
一体どこまで続いているのだろうか……?
ガシャン!!
「なんだ……?」
今の音は……何かが壊された音。
まさか、扉の鍵が壊されたのか!?
「急げ……急げ!!」
全力疾走。
私の限界のスピードで走った。
何かされる前に、止めないと……!
その時、開いている扉がやっと見えた。
ここか!
目の前には、何らかの箱を開けて中身を見ている頭の姿。
このやろう……!
「人のものぉにぃ……!」
「なんだこれは!? そんな馬鹿な……!!」
「手ぇを出してるんじゃぁ! ねえええええええええええええええええ!!」
スーパー若本ボイスで私は叫びながら、相手の背中めがけて、ドロップキックを喰らわせた。
ぐふぇあ!! と言いながら、頭らしきものはぶっ飛んで、壁に叩き付けれらた。
「よし、かかってこんかい!!」
そういって、私は構える。
ここで負けるわけにはいかない……。
返してもらうぞ、私の義妹の為の宝を!!
いや、こっちじゃ違うけれども!!
って……あれ?
「気絶してる……」
盗賊の頭らしきものは、既に気絶していた。
あはは……うん、そんなに思いっきりしたかな……。
なんか御免なさい。
そう盗賊の頭らしきものに向かって謝る。
いやー……なんか悪いことしちゃった気もするけど、実はそうじゃなかったりするね……。
「ん?」
私は地面に何か落ちているものを発見した。
どうやら木で出来た箱みたいだ。
もしかして……これが宝?
「意外とちっちゃいんだな……って、箱空いてるし」
私はちょろっと、中身を覗いた。
――ぇ?
更に中身にあるものを見る。
らいぶらり~先生……。
――私は一粒、涙を零した。
――彼女の宝……それは……。
~@~
時計塔の外。
さすがに盗賊である。
一筋縄ではいかなそうだ。
何度も何度も吹き飛ばしたが、彼らはズンズンと前に出てこようとする。
これではここを破られるのも時間の問題……。
「あっ……!」
リィが風の魔法を使い、相手を吹き飛ばした。
しかし……たった一人だけ、その攻撃に耐えてしまったのである。
それを機に、その盗賊は刀をリィに向かって振り下ろそうとした。
「リィさん!」
零奈がリィの前に立ち、リィを刀の攻撃から守ろうとする。
鉈を持ち……相手の攻撃を受け止めようと。
しかし、力の強い男の攻撃を、零奈が受け止めきれるかどうかは不明だった。
――全力で止めてみせる!
鉈を構え、零奈が攻撃を受け止めようとした瞬間……。
ドォォォン!!
ガキィン!!
――振り下ろされる刀は、何かの衝撃によって破壊されてしまった。
刀の金属の破片が散らばり、刀を持っていた手が痺れてしまったのだろう。
盗賊は、手を押さえつけながら痛みを堪えている。
「狐式ウルトラハイパースペシャルレヴァーテインキィィィィック!! おりゃあああ!!」
狐が、力いっぱいの蹴りをくらわした。
精一杯名前を叫んでいたが、普通の蹴りである。
ちなみに狐は、この名前を5時間位考えてつけた名前らしい。
その成果かどうかは知らないが、蹴られた盗賊は遠くまでぶっ飛んでいった。
「うっし! ウチったら最強ね!」
「……今のは一体?」
リィは不思議に思っていた。
何故いきなり、刀が砕けたのか……。
だが、辺りを見渡しても、盗賊達以外に外には存在していなかった。
――……一体何が?
「おいお前ら!」
いきなり、時計塔から誰かが出てきた。
私達……スーさんとB.B.先生である。
なんとか、私達は宝を阻止することに成功した。
腕が血まみれだが、既に血は止まっていて、傷も塞がりかけている。
どっかの誰かさんたちから攻撃受け続けて、耐性が出来てしまった結果だろうなぁ……。
B.B.先生は、腕と足をロープで縛りつけた盗賊の頭らしきものを引っ張り出して、外にいる盗賊に見せ付けた。
「――まだやるか?」
そう挑発すると、盗賊達は恐れをなしたか、走って逃げ去っていってしまう。
全く……もう二度とくんなよ。
「よっしゃー終わったー!」
「って、スー隊長大丈夫ですか!?」
「ん? あー大丈夫、ほおっておけばすぐに治るでしょ」
そんなこと言った瞬間。
優しい風が私を包んで、腕の怪我が治った。
「うお!? 治った!? まじっすか!?」
「ちんちくりん……どう見ても魔法じゃないか今の……」
「スースー、ちんちくりんっていうなあああああああああああああ!!」
そう叫ぶ狐先生。
今怪我が瞬間に治ったのは……どう見てもリィさんの魔法だねぇ。
「リィさんありがとうございます」
「ぃぇぃぇ……こちらこそ、ウチの大切なもの守ってくれて……」
「あ、それなんですが……」
んー……。
先に見てしまったのはまずかったかもなぁ……。
私は、さっきの箱を取り出し、リィさんに渡した。
「これ。あなたの師匠の宝みたいですよ」
「――ぇ?」
「ごめんなさい……成り行き上、私が先に見てしまいました……けれども、これはリィさんが見るべきものだと思いましたから持ってきてしまいました」
リィさんは、私から箱を受け取った。
手が少し震えている。
今始めて師匠の宝を見るとき……。
リィさんは、箱を開ける。
――リン。
「……鈴?」
箱の中には……一つの鈴と、手紙が一枚封筒されていた。
リィさんは、手紙を広げてそれを読み始める。
――彼女の目に、涙が浮かんできていた。
――リィへ
――いやっほーい、元気にしてるかー? 私は元気だぞーっ。
――って、んなわけないかな。もうすぐ死ぬっていうのに。
――魔の根源から貰った糞まずい病気。そのせいで私は死んでしまうみたい。
――まったく……まだまだ弟子に教えたいこと沢山あったのにねぇ。
――でも、これを見るとき、多分あなたが旅立つ時なのかもね。
――大丈夫。私はこれでもあなたに色々教えてきた……つもりさ。
「…………」
――そいつは私から、あなたに最後のプレゼント。
――鈴の音が好きなあなたには、ピッタリじゃない?
――あんた鈴好きだったし、新しいの買ってやりたかったしね。
――私のセンスどうかな?
「師匠……これ、ウチの今もっているものと同じ鈴だょ……」
――それで、私の宝。
――何だと思う? 私の宝……。
――すぐ傍にあったんだよねぇ。私の宝。
――私の宝は……リィ。あなた自身よ。
「――ぇ?」
――困ったような表情をするリィ。
――怒った表情をするリィ。
――嬉しそうな表情をリィ。
――可愛いく笑う……リィ。
――私は、幸せだった。
――こんなにも私を思ってくれる弟子をもらえて。
――こんなにも立派な弟子をもらえて。
――私のこれ以上にない自慢の宝。
――そうでしょ……リィ?
「…………っ……」
――今までありがとう。
――そしてさようなら。
――あなたが大好きだった。あなたの師匠……。
――らいぶらり~より。
「ぅあああぁぁぁっぁぁぁぁっ…………!!」
リィさんは足が地につき……その場で泣き崩れてしまった。
らいぶらり~先生……師匠の残した宝は、彼女自身。
その事実を知ったリィさんは、嬉しくもあり、そして悲しくもあった。
今日は月が綺麗だ。
彼女の師匠は、空から見守ってくれているのだろう。
弟子をいつまでも、見守ってくれている。
きっと、そうに違いない。
いつまでも……いつまでも…………。
――見守ってくれているのだろう。
~@~
次の日。
おう、絶賛寝不足中です。
昨日あんだけ暴れたのに、朝早く出発することになったからだ。
まぁ、できるだけ昼間に移動しないと危険だからねぇ……夜に魔物に襲われるのがつらいことだというのは、既に体験済みである。
どこから襲ってくるかが分かり辛く、更に眠気がひどい……。
そんなことがあるから、朝早く出発して、なるべく襲われても平気なようにしないといけない。
まぁ、仕方がないことだろうなぁ……。
そろそろ自分の家のベットが恋しくなってきた。
学校で寝落ちしたい……いや、冗談だけど。
「そろそろ行くぞ」
「ふぇーい……」
「――相変わらず眠そうだなお前は」
うん、よく言われる。
なんかいつも眠そうだねって。
うーん……学校でたまに寝ているのが悪かったのかねぇ……。
最近は先生に狙われるようになったから、授業中には寝てはいないけれども。
「あの……」
馬車に乗ろうとした刹那。
背後から聞きなれた声が聞こえる。
振り向くと、リィさんが立っていた。
片手には弓らしきものを持ち、バックを背負っている。
「すみません……ウチも……」
「ついてくる……ってことですよね?」
私がそう聞くと、リィさんはコクリと首を縦に振った。
心の底でガッツポーズを私はとる。
仲間ゲットォォォオオオッ
「はい、歓迎いたします。リィ様」
「ふぇ……!?」
大げさにそういいながら、片足をつけて右手をゆるりと動かし、ポーズを決める。
そんなことしていたら、頭に何か衝撃が加わってきた。
「うぐふぉあ!」
「何をしている馬鹿者」
「いやー、あはははー!」
「――頼むから、隊長らしくしてくれ……」
隊長らしく……。
うん、無理ですごめん!
とりあえず明るく振舞っていくことにはしているけれども。
後は……出来れば攻撃を受け止めて、皆を守れたらそれでいいね。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「こちらこそ。ファイ、オーだッ」
頑張っていきまっしょい。
さぁ、次はどこに行くのだろうか……。
「ふぁいおー……?」
「ん?」
「それ、異界の言葉?」
うえぇぇぇ……!
それ……知らないのか、こっちのリィさんは……。
――あっちの世界とは違うということを、改めて思い知らされた。
一度そのことを忘れ、そしてまた思い知らされる。
なんか、悲しくなってきたな。
本当にあの世界に帰れるのだろうか……?
「えぇっと……」
「?」
「い、異界の言葉! 意味は……頑張るってことっすよ!」
「そーなのかー……」
「それじゃあ改めて……ファイ、オー!」
「ふぁい、おー♪」
元気よく、私達はそう言った。
――その刹那。私は瞳から涙が零れる。
「え……? どうしたの……?」
「い、いや……大丈夫です……」
「ふむ……」
今のことで、少しあっちの世界のことを思い出してしまった。
ネちょ学のこと。
ネちょ学の皆のこと。
あの場所。
あの風景。
なんだか、いきなり思い出して泣きたくなって、いつの間にか涙が流れた。
頭がぐるぐるおかしくなって、なんか……複雑な気分。
でも、旅は始まったばかり。
まだまだ……頑張らないと。
「大丈夫か?」
B.B.先生がそう聞いてきた。
……心配してくれてるのか。
「……うん」
「そうか。何があったか知らんが、行くぞ」
「……おう!」
私達は馬車に乗り、先に進みだす。
これから先何があるのか、何が起こるのか、あの世界に帰れるのか。
そんなこといろいろ頭の中で考えていた。
でも、それでも私は……旅する。
――私、まだまだ心弱いなって、この時思ったんだよな……。
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コメント欄:
- 「私はドMじゃないんです」← ゚ ゚ (Д ) -- 朧? 2009-09-05 (土) 00:56:44
- ふーむ、何か少し、深読みをしすぎたようだ……。そして、リィさんが仲間に! 読めてたぜ。仲間が増える度に、話をいれていくと、凄く長くなりそうだし、後一人か二人くらいで終わりかな? 何にせよ、続きに期待! -- ドックンドール? 2009-09-05 (土) 04:56:54
- うちは接近戦もこなすんですね←違う びびさんかっこいい・・・まさに兄貴役ですね!攻m(強制終了) らいぶらさんとリィさんの関係が・・・ぐっときます・・・(ノw`) そしてリィさんうぇるかむ!最後に一言、このドM!!← -- きつね? 2009-09-08 (火) 10:50:15
- ふふ…… どう見てもドMさんジャナイカ(*´艸`) でも、自信なさげだけどなんだかんだでしっかり活躍してるスーさん流石デス。 そしてらいぶ先生(うω;`) それでも、リィさんっていう自慢の弟子を持てたことで、悔いなく旅立てたハズ(だと思いたい) 心配でしょうがない弟子を置いて旅立つよりは、よっぽどイイと思うんだ。 そして、ちょっとセンチになってるスーさんが気になったけど、次回の活躍にも期待b -- 闇夜? 2009-09-27 (日) 10:28:10