目次
注意書き
当SSはネちょ学SSです。
ご出演者の方のお叱りを受けた場合、謝罪と共に削除させていただきます。
また、このSSは山なし、オチなし、意味なしのあれなSSです。
以上の点を踏まえてお読み下さい。
本編
【暇な時の妄想は誰の為にもならないものである】
夏。
高い湿度と温度で、茹だるような毎日が続いている。
職員室にはクーラーがある為、それらとは無関係だと思われがちだが、つい先日、省エネ強化週間に突入してしまい、クーラーの活動も大人しい。
そんな職員室の中、てんこあいしてぬは一人置かれていた。
教頭である彼には担当教科がない為、授業時間になってしまうと、こうして一人職員室にいることも珍しくない。
一人の時間というのは酷く暇なもので、様々な想像を膨らませ、妄想へ昇華し、終いにはろくでもない事を行動してしまうものである。
現在、絶賛暇持て余し中のてんこあいしてぬの脳内活動も、妄想の段階へ入っていた。その妄想を行動に起そうとするのも時間の問題だが、今日は妄想の段階でその思考を打ち切った。
というのも、今日は既に行動を起して、瀟洒! のナイフを味わい尽くしていたからだ。
しかし、思考を打ち切っても暇なのは変わりない。
どうしようか、とてんこあいしてぬが考えていると今、二年⑨組が体育の時間だという事を思い出し、何とはなしに校庭の方を見てみるが、そこには誰もいなかった。
何故だろう、とてんこあいしてぬは一瞬考えてしまうが、この時期で体育の授業と言えば、プールである。
一人、省エネ強化週間が施行される部屋で茹っているてんこあいしてぬは、体育教師である僕の顔をお食べを羨ましく思う。同時に、僕の顔をお食べが水に浸かっても大丈夫なのか心配になる。
すると、案の定というか何というか、失礼しますと言う声と共に、職員室のドアが開けられる。
入ってきたのは二年⑨組のクラス副委員長のしらすだった。
てんこあいしてぬが用件を訊くと、やはりと言うか何と言うか、僕の顔をお食べは顔が濡れて力を失い倒れてしまったらしい。その為、監督者がいなくなってしまい、こうして代理の監督者を呼びに来たという事だった。
一人、職員室で茹っているてんこあいしてぬには願ってもない申し出だったので、すぐさま、しらすと共にプールへ向かうのだった。
【青春語りをしてみても結局、青春てなんなのさで終るよね】
プールに着くと、絶叫がこだましていた。
「ちょ、やめ! 砕けるから、要石砕けちゃうから! 悔しい。でも……砕けちゃう」
「ド、ドMだから受け止めるんじゃないからね! 要石さんが砕けないように受け止めてあげてるだけだからね! あのごつごつとした感触が最高、という事はないんだからね!」
「スぅぅぅぅぅさぁぁぁぁぁぁん!」
「要石さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
空中で酒飲みスーさんと要石の体がぶつかり合った。酒飲みスーさんの厚い胸板は、意外なほど柔らかい筋肉で構成されており、要石の体を優しく抱き止める。互いの体から飛び散る水滴が光を反射し、結果として空中で抱き合う形となった二人を演出していた。
因みに何が起こっているか、説明する必要も感じないが一応、言っておくと監督者がいなくなり、暇になった二年⑨組一同はクラスメイトである要石を捕獲し、水球を始めたらしい。思い切り投げられる要石を守るべく、酒飲みスーさんが体を張っているようだ。
決して、ドM的な好奇心とか快楽とかそういったものとは無縁である。あくまで、要石が砕けないように守っているだけである。くどいようだが、要石を砕けないように守っているだけである。大事な事なので何度も言います。酒飲みスーさんは、要石を、守っているだけです。違う図に見える方は心が汚れています。悔い改めなさい。悔い改める気すらない方には、各々方が嫁と主張する存在にミッドナイトブリスを使わざるを得ない。
「若いって良いですねぇ」
この惨状を見て、てんこあいしてぬはしみじみと呟く。
「年寄りめいた言葉ですねぇ」
「ですねぇ。最近じゃ、無茶すると筋肉痛が一日遅れで来ますしねぇ」
「年ですねぇ」
「いやぁ、まだまだ、ナウなヤングで通ると思うんですけどねぇ」
「いやいや、そんな事を言ってる内は駄目なんじゃないんですかねぇ」
「いやいやいや、流行は一周すると言いますし、先取りしてると言えるんじゃないんですかねぇ」
「そんなもんですかねぇ」
「そんなもんです。ところで、貴方は何をしているんですか?」
水球をやっている生徒達から視線を外し、話し相手の方に目を向けると、暢気に浮いているオワタの姿が見えた。
「浮いてると楽なんですよー。プールサイドは照返しとかで暑いですし」
「貴方も中々に若さがありませんねぇ」
「いやいや、青春を全力で楽しもうと頑張ってますよー」
「どの辺りがですか……」
「見てればわかりますよー」
オワタにそう言われ、てんこあいしてぬはしばらく様子を見ることにした。
水球はより激しさを増し、その余波でオワタが少しずつ流されている。
要石は投げられる度に酒飲みスーさんに受け止められているようで、破損はなさそうだ。
酒飲みスーさんはと言えば、何度も同じ場所で要石を受け止めている為か、その部分だけ真っ赤になっていた。
内出血などしていないだろうか、とてんこあいしてぬは教員としては当然の心配をし、水球を止めようとしたが、オワタの空を見ろと言う声によってそれを制止された。
促されるままに空を見るてんこあいしてぬ。
「青春でしょう?」
「青春ですねぇ」
二人の視線の先には、軽やかにプールの柵を蹴り、天を舞う瀟洒! の姿。特注のメイド服から僅かに覗く夜空は二人の青春を痛く刺激した。
「貴方達は……もっと静かに泳ぎなさい!」
水球で遊ぶ生徒達は、その声で自分達に逃げ場がない事がわかった。だが、それでも、恐ろしいものからは逃げたくなるものだ。蜘蛛の子を散らしたかのように、生徒達が逃げる。
しかし、もう遅い。ナイフの投擲は既に終わっている。瀟洒! が投擲するナイフは百発百中、変幻自在。刃を潰したナイフが生徒達の額を確実に打つ。
逃げ惑う悲鳴が、断末魔に変わる。
ものの数秒もしない間に、プールには気を失い、ただ己の浮力で浮かぶ生徒が量産されたのだった。
「……なんで、私にも刺さっているんでしょうね。というか、なんで私に投げるナイフだけ、刃が潰されてないんでしょうね」
「青春は痛いものなんですよ。黒歴史的に考えて」
「なるほど。青春ですねぇ」
「でも、それがいいでしょう?」
「そうですねぇ。それが青春ですからねぇ。というか、何故、貴方はそんなに悟っているんですか」
「いやぁ、ナイフが迫ってるんで」
「なるほど」
更なる追撃が来たのか、その言葉を最後にてんこあいしてぬの意識は黒く塗り潰されたのだった。
【空飛ぶ人と黒鳥には青い空が良く似合う】
「というわけで、悪い事しませんか」
昼休み。
水泳の授業での負傷から回復したてんこあいしてぬは、職員室でB.B.と昼食を摂っていた。
「取り敢えず、悪い事はいけないと思うんですけど。それ以前に、というわけで、に行き着く経緯がわかりませんし」
B.B.の言う事は尤もだ。
そもそも、生徒達の模範となるべき教師が悪事を画策するなど、本来ならあってはならない。
その辺りは、ネちょ学紳士ランキング毎年一位のB.B.だ。徹底している。
しかし、余程の事でない限り、楽しみに水を差さないのも紳士の役目である。
「で、何をするんですか?」
B.B.は身を乗り出して、てんこあいしてぬの話を聞こうとする。
その姿に、流石、とてんこあいしてぬは笑む。
「いやぁ、実は二年⑨組の水泳の授業に代理の監督者に呼ばれたんですけどね。そこで、恥ずかしながら青春を刺激されまして」
「なるほど。確かにあのクラスを見ていると、そういう気分になるかもしれませんね」
「まぁ、そういうわけで、青春してみようかなぁ、と思ったんですよ」
「なんだかんだで、教頭先生も若いですねぇ。十代でも通るんじゃないですか?」
「マジですか? 十代で通りますか。いやぁ、嬉しい。握手しましょう」
「……あ、やっぱり、十代はなしで」
割と本気目に肩を落とすてんこあいしてぬ。
冗談という言葉で脱線した会話を流しつつ、B.B.は話を本題に戻す。
無論、冗談という言葉の中にはフォローの意味もある。その辺りの積み重ねが、紳士と呼ばれる所以だろう。
「で、具体的には何をするんですか?」
「やっぱり、あれでしょう。夜中のプールに忍び込む、というのが王道でしょう」
「……あの、教員が忍び込むのは全然、楽なんじゃないんですか?」
「いえ、大丈夫です。スリルの種は蒔いておきましたから」
そう言って、てんこあいしてぬが目配せをする。
その視線の先には、こちらの話を盗み聞きしようと耳を傾ける狐の姿があった。
日々、てんこあいしてぬに弄られ、からかわれる狐は何時か仕返しをしてやろうと画策している。そこに、悪い事しませんか、と悪巧みをしているように見せる事で付入る隙を与えたのだ。この時点で瀟洒! に報告すると言う選択肢もあるが、仕返しとして最高の形は目論みが成功する直前で潰す事だ。無論、日々、仕返しを目論む狐が最高の形に全てを賭けるのは、てんこあいしてぬには手に取るようにわかっている。だからこそ、B.B.との会話の最初だけを聞かせたのだった。
それを狐とてんこあいしてぬの関係から推理し、B.B.は理解した。
「では、他の先生方も誘っておいてくださいね。人選は任せます」
「了解しました。てんこぬ教頭は?」
「油を注いできます」
弁当箱に蓋をして、てんこあいしてぬは狐の机へ向かう。
B.B.はその姿を尻目に学食で食事を摂っている教員にメールを送る。
やがて、てんこあいしてぬが狐をからかい始めた。
周囲はそれをまたか、と静かに見守る。
そうしている内に、昼休みの終りを告げるチャイムが鳴ったのだった。
【祭の主役といえば】
決行日。
集まった教員は狐と生活指導の三人を除いて全員だった。
だが、プールを目前にして、ネちょ学の教員が全員、集まってしまった。
つまり、生活指導の瀟洒! 、泥酔☆萃香、博愛の俺ルアン人形に狐を加えた四名に待ち伏せされていたのだった。
てんこあいしてぬとB.B.によって集められた教員達は思わず、戦慄する。
皆、瀟洒! のナイフの恐ろしさを知っているのだ。
しかし、てんこあいしてぬにはその恐ろしさよりも、何故ばれたのか、という疑問が強く浮かんだ。
てんこあいしてぬも、その他の教員も狐と生活指導教諭の三人にばれないように細心の注意を払っていた。
確かにスリルを得る為の種は蒔いたが、決定打になり得るものではなかった筈だ。
てんこあいしてぬが幾ら思い返してみても、プールに忍び込むという目的を看破される情報は洩れていない筈だったのだ。
「……なんで、なんで、わかったんですか」
幾ら考えてもわからなかったてんこあいしてぬが、搾り出すように仁王立ちする四人に問う。
その図はさながら、二時間ドラマの犯人だ。
「いやー、こーんな楽しそーな事をアタイ抜きでやろうなんて許すはずがないじゃん?」
愉快で楽しそうな事をどこからともなく察知し、気が付けば中心にいる泥酔☆萃香。考えずとも彼女が、こんなイベントを見逃す筈がないのだ。最早、彼女がイベントの中心にいるのは大宇宙の意思かなにかなのだろう。
それを失念していたてんこあいしてぬ達はここで捕まる運命だったのだ。
「それじゃー、覚悟はできてるかなー?」
今回の目論みを看破した功労者、泥酔☆萃香が前に出る。
てんこあいしてぬ達の言葉を待たずに泥酔☆萃香は制裁の合図を出すだろう。
その雰囲気を肌で感じていたてんこあいしてぬ達はせめて、迫るナイフを目に焼き付けないよう、その目を閉じた。
「うんうん、覚悟はできてるみたいだね。じゃあ――」
「え、で、泥酔先生?」
「楽しい時間の始まりだー!」
泥酔☆萃香の声から数瞬遅れて水音が響く。
何事かとてんこあいしてぬ達が目を開けると、そこに泥酔☆萃香を除いた瀟洒! 、博愛の俺ルアン人形、狐の三人が消えていた。
「泥酔先生! 何するんですか!」
遠くから聞こえる瀟洒! の声。
てんこあいしてぬ達は、この突然の事態についていけない。
「えー? いやー、なんだかんだで、瀟洒! 先生も混じりたそうだったじゃん? 私達だけ除け者かって呟いてたじゃん。いやー、若い若い。皆、若い。だから、この際、皆で楽しもうぜー! うにゅほー!」
そう言う泥酔☆萃香の手には何時の間にか要石が握られている。
「へ? 何? なんで俺こんなところにいるの?」
「やー、要石水球やろうかと思って」
「ちょ、やめ。砕けちゃう。要石、砕けちゃうから!」
「大丈夫! 欠ける程度に抑えるから!」
「大丈夫じゃないから! 大丈夫じゃないからああああぁぁぁぁぁぁっっ!」
プールに投げられる要石。
「皆で遊ぼうぜー!」
泥酔☆萃香の声に、ある者は突き動かされるようにプールに飛びこみ、ある者は仕方ないと一つ溜め息をついて投げ入れられた要石を掴む。それぞれが泥酔☆萃香の作り出した雰囲気に後押しされ、この青い夜を楽しもうと騒ぎ出す。
幾つになろうとも、全力で楽しむ心を忘れなければ、あの頃の青さは何時だって傍にあるのだ。
てんこあいしてぬはそれを実感すると、プールに飛びこみ、思い切り要石をぶつけられたのだった。
後書き
フェードアウト気味でそろそろ、誰テメェと言われそうなドックンドールです。
色々あって、創作から一月くらい離れてました。
今回はリハビリです。
かなり、適当に書いてます。
いや、離れると本当に書く手が進まない……。
何か色々と枯れてきているだけのような気もしますがー。
まぁ、適当に楽しんでいただけたのならば幸いです。
楽しめなかった場合は知りません。
では、最後にご出演者の皆様と!
お付き合いいただいた読者様に最大限の感謝を!
ありがとうございました!
感想スペース
コメント欄:
- ドックンさん来た!これでかつる!ひさしぶりですね~。でも相変わらずキレのあるカオス!wドMだから受け止めてあげるんだからねに吹きましたw面白かったですよ~。次作も楽しみ! -- 奇跡? 2009-07-04 (土) 08:56:00
- 一番乗り逃した……、何時もながら楽しいssですねえ、きっとあの後要石さん粉々に砕けるんでしょうね、合掌。次回作も楽しみにしてます -- ファンネル@漏斗? 2009-07-04 (土) 09:32:39
- ぐぁぁぁ!! 一番取りのがしたぜ どっくん先生のSSはわかりやすくて良いですね 文で図をしっかりイメージできます 今回は・・・おいィ!?俺本当に教頭なのか(゜Д゜) と思いましたが楽しかったのでもーまんたい あと狐さんが素敵でしたwww -- てんぬ? 2009-07-04 (土) 18:23:04
- あらwお久しぶりです~夏らしい楽しげで涼しげな、そしてノスタルジックな作品ですね!そしてさりげに出演してる私wこういう主人公ではなく、火付け役というか脇役で重要人物的なポジション大好きですwww ってか、リハビリでこのクオリティ・・・やりおる! -- B.B.? 2009-07-06 (月) 21:08:21
- あーーはっはっはーーみんあでプールにとかいいねーーwwおもしろそうだねーーーwww -- 泥酔? 2009-07-06 (月) 21:27:28
- ドックンさんおひさですヽ(`w´)ノ てんこぬ先生がいい感じに教頭先生してましたw 確かに教頭先生ってこういうこと言ってそうですw そしててんこぬ先生策士!まんまと利用されてますうち← 夏ですねー! -- 狐? 2009-07-07 (火) 17:21:41
- 要石危険すぎるってwww そして私は身を削ってまで、要石を守ったんですね(;w;) い、いや、気持ちよさそうとかそんなこと考えてませんからっ! ドックンさんの作品がくるだけでわくわくしますねw 面白かったですw -- 酒飲みスーさん? 2009-07-07 (火) 23:16:32
- なんか自分がめっさ年寄りっぽい、むっつりスケベみたいなキャラに…
だがそれがイイb(( 登場させてくれてありがとうですよ。 スーさんは相変わらずドMですね(バッサリ そしててんぬさんが不憫すぎる(ノ∀`) でもなんか笑える不思議w 最後にいい方向にもってった泥酔先生さすがだねb 青春ってのはみんな平等に訪れるものじゃないけど、楽しむ心を忘れない…ってのはホント大事なことかも。 心だけは歳を取らない。 そう思いたいもんですねぇ…。リハビリっていっても、十分楽しめるSS。 それがドックンさんクオリティ。 -- オワタ☆残骸? 2009-09-27 (日) 06:56:17 - その後要石さんの姿を見たものはry 職員室の教師二人のやり取りに吹きましたw -- アオカビモチ? 2009-12-23 (水) 21:00:03