目次
前書き
このSSは用語集のサ行の『ジャギ同盟』の項目を基に製作されています。
まずはそちらをご覧になることをお薦めいたします。
また、このSSはネちょ学の設定を使っていない部分も数多く含まれています。
予めご承知ください。
それではあまり期待せずに先にお進み下さい。
本編
【history】
音知世軍が自領地を完全に防衛してから一ヶ月、世界の情勢はめまぐるしく変わりつつあった。
アークによって力を得た軍は快進撃を続け、大陸の中程まで勢力を拡大していったのである。
とくに大江戸小隊の活躍はめざましく、各地を転戦し激しい攻撃をものともせずに戦いを続けていった。
修羅の手に落ちた都市を次々と解放し、その派手な活躍により民間人にすら大江戸小隊の名は知れ渡っていた。
そしてついに大陸中央の最大の軍事の要、バルドフェルド要塞にまで軍を進めることに成功したのである。
その時、大江戸小隊に小さな歪みが生まれ始めていた・・・
【Ⅰ】
大陸の中央に位置するバルドフェルド要塞、強固な防壁と進攻困難な地形、そして圧倒的な兵力によって守られたこの地は、大陸で一番の激戦地となっていた。そしてそこを攻略するために、既に攻め落とした西の駐屯所が攻略作戦の本部として利用されており、それはバルドフェルド要塞からは5kmほど離れた場所に建てられている。
敵の基地との距離としては近すぎるが、相手が修羅ならば要塞を攻略するには絶好の場所である。駐屯所には高い塔もあるため、そこから24時間体制で要塞を監視することが出来るのだ。
「ついにここまで来たかぁ。合同演習で来たがでっかい城だったよなぁ?」
「あそこを攻略できればこの戦争も終わりが見えてくるでしょうね。」
「拠点としてバルドフェルド以上のものなどないからな。規模、防衛力、位置、どれも要になるレベルだ。」
「もうそろそろキャンプに着く。降りる用意をしてくれ。」
大江戸小隊はバルドフェルド攻略のため、その西の駐屯所へと車で移動していた。
ハンドルを握るばんじろうの言葉で皆が降りるために荷物をまとめ始める。その時、タイヤが木の根を踏みつけて車体がガタンと大きく揺れた。
「ぅわあ!?」
「おいおい!ばんさんしっかりしてくれよ?」
「うむ、すまない。気をつけよう。」
「・・・・・・・?」
それからすぐに西の駐屯所へと到着し、車から降りると周りにいた兵士にざわめきが起こった。それほど大江戸小隊の噂は広がっているのだ。
周りの兵士の中から一人が歩み出てビシッと敬礼をする。それに対して大江戸ハーマイオニーも敬礼を返す。
「お待ちしておりました!司令から案内するように言われております、どうぞこちらへ!」
「出迎えご苦労。歩きながらよければ簡単でいいから状況を説明していただけるかな?」
「了解しました!ではこちらへどうぞ。」
出迎えの兵士を先頭に大江戸小隊がその後へと続いて駐屯所の中へと入る。
大江戸ハーマイオニーが兵士から簡単な報告を受けつつ歩いている後ろで、B.B.とAAAが会話を交わす。
「にしても、ここまで注目ってーか噂されると居心地はあんまりいいモンじゃねぇなぁ。」
「仕方ないですよ。軍の広報とかにも名前が挙げられてましたし・・・。」
「まぁそれはそれとして、だ・・・」
通路を歩いていて脇によけた女性兵士の視線はAAAへと向けられていた。
多少の親しみ以上のものを込めた瞳で、である。
「な・ん・で!お前ばっか女の子にモテてファンクラブとかできてるワケ!?」
「うっぐぁ!く、首を絞めないで下さいよ!びびさんだってファンクラブあるじゃないですか!」
「ほぼ男のファンクラブの何が嬉しいんだよ!」
B.B.が首を絞めたままAAAをガクガクと揺する。二人の隣を歩くばんじろうはこれもいつものことと無視を決め込んでいる。ちなみに大江戸小隊は全員にファンクラブが発足されており、それぞれ結構な賑わいを見せているらしい。
そこで先頭を歩いていた兵士がくるりと振り返り目を輝かせながら楽しげに宣言した。
「ウス!自分はB.B.さんのファンクラブに入らせてもらってます!かっこいいっす!憧れっす!」
「こんなんばっかなんだぜ!?嬉しくあるかー!」
「まぁまぁ・・・。あ、女性といえばここの司令さんは美人らしいですよ?」
「!そうだったな、噂になるくらいだから結構な美人だろう・・・!」
「アホなこと言ってないで行くぞ。すこし予定よりも遅れているからな。」
大江戸の一言でB.B.がようやくAAAの首から手を離す。
階段を上がり、最上階の一番奥まった場所にある司令室というプレートが掲げられた部屋の前へと辿りついた。先導の兵士がドアをノックする。
「大江戸小隊の四名をお連れしました!」
「うむ、入れ。案内ご苦労だった、通常任務に戻ってくれ。」
「了解しました!」
部屋の中から透き通った女性の声が聞こえてきた。クリアな声だが良く響き、力強さもある声である。
案内してきた兵士は敬礼をすると元来た道を戻っていった。
(おいおい、これは結構期待できるんじゃないのか?)
(またそんな事言って・・・。)
(やれやれ・・・。)
(ふむ。どこかで聞いた声のような?)
ドアを開け中へ入ると、デスクの椅子に腰掛けた女性士官の姿があった。
階級証とその佇まいから察するに基地の司令であろう。
「ようこそ、バルドフェルド攻略本部へ。私がここの総司令の」
「「「 慧音先生ぇーーー!!? 」」」
ばんじろう以外の三人が揃って驚きの声をあげる。
このリアクションに対してちょっと恥ずかしそうに一つコホンと咳払いをしてから改めて慧音先生が口を開く。
「私がここの総司令の慧音先生だ。歓迎するよ大江戸小隊。」
「はぁ・・・。どうも・・・。」
「なるほど、美人司令ね・・・。」
「ほぇー、驚きですねぇ。」
「まったく、勤務時間中は『司令』と呼べ!職業意識が足りんのだお前たちも!」
「も?」
慧音先生がイライラしているようにデスクに指をトントンとつく。眉間にしわを寄せた慧音先生がため息をつくと共に大江戸ハーマイオニー達が入ってきたドアとは別の脇にあるドアがガチャ、と開かれ、誰かが司令室へと入ってきた。
「慧音ー?この書類だけど」
「だから基地では司令と呼べと何度言ったら分かるんだお前は!そしてノックぐらいしろ!」
「「「 ドックンドール(先輩)!!? 」」」
「おお?お前ら来たのか!噂は聞いてるぞー。」
ドックンドールと慧音先生、この二人は士官学校での大江戸小隊の四人の一年先輩であり、四人とはそこそこ付き合いの長い知り合いである。
二人とも成績優秀で士官学校を卒業し、エリートコースを邁進中である。
「色んなところで大活躍らしいじゃないか。ここでも頼むぜー?」
「お二人がここの司令だったんですか。出世を続けているとは聞いていましたが驚きです!」
「まぁ俺らとしちゃあ気楽だが、くされ縁ってヤツか?」
「お久しぶりです!相変わらず仲がいいんですねー!」
司令室がかつてない賑やかさに包まれる。このまま昔話にでも花を咲かせそうな雰囲気だったが、慧音先生がデスクにバンッと手をついて勢いよく立ち上がる。
「ええい!仕事をせんか貴様ら!昔話は夕食の時にでもすればいいだろう!」
「ぅおぅびっくりした!ゴメンゴメン、ついね・・・。」
「何がついだ全くいつもお前は・・・!大江戸!到着の報告!」
「はっはい!大江戸ハーマイオニー以下小隊員三名、バルドフェルド攻略の任を受けてやってきました!」
「了解した。では早速状況の説明をさせてもらおう。」
バルドフェルド要塞、大陸中央に位置する世界最大にして鉄壁を誇る要塞である。そこに務めている修羅兵の数は膨大で、万を超えるとも言われている。加えて要塞に備え付けられた防衛のための兵器も使用されており、攻略の糸口がなかなか見つかっていないのが現在の状況である。
かと言って無視する事もできない存在であるため、ここを落とせば一気に形勢が逆転することは確実視されているのだ。
「これが現在の状況だ。各自渡した内部の見取り図などは頭に入れておいてくれ。何か質問は?」
「要塞の兵器が使用されているとおっしゃいましたが、修羅兵が操作を?だとしたら他の拠点などでもかなりの脅威となりますが・・・。」
「うむ。表向きはそういうことになっている。」
「表向き?」
慧音先生がデスクの引き出しの中から表紙に極秘の判が押された書類を取り出し、大江戸ハーマイオニーに手渡す。その紙には軍の人間と思われる兵士の名前が写真つきでリストアップされていた。
「これは極秘事項なんだが・・・。どうやら奴らに寝返った人間が居るようなのだ。」
「寝返った!?ということはその兵器はその人間達が・・・。」
「そうだ。大体三十人ほどその存在が確認されている。」
「どうしてそんなことを・・・。」
「そんな者達の事など分かりたくもない。・・・情は捨てろよ。」
先ほどまで賑やかだった司令室が一転、重苦しい空気に包まれる。
「裏切った人間などがいると知れては士気が下がるからな。極秘で頼む。」
「・・・そうですね。了解しました。」
「うむ、では大江戸小隊の四名は明日から任務に」
「司令、少々よろしいですか?」
大江戸ハーマイオニーが慧音先生をさえぎるように口を開いた。
その表情は硬く、あまりいい話ではないのが見て取れる。
「ん?なんだ?」
「はい。ばんさん、ちょっとこっちへ。」
大江戸ハーマイオニーがばんじろうを呼び寄せる。何をするつもりなのか全く分からない面々であったが、大江戸ハーマイオニーが一歩前に出たばんじろうの右肩をぐっと握ると、ばんじろうの顔が苦悶にゆがんだ。
「ぐっ・・・!!」
「おい大江戸!何してんだ!?」
「ばんさん、俺はそんなに力を入れてないぜ?」
「・・・・・・・」
「ばんさん、上着を脱いでくれ。」
ばんじろうが観念したように軍服の上着を脱ぐと、タンクトップから覗く右の肩が赤く腫れあがっていた。
特に銃床を当てて固定する腋の下から鎖骨の辺りまでは赤黒く変色してしまっている。
「軍服のサイズを変えたりしてうまく隠していたようだが・・・。とても戦える状態じゃないだろう?」
「・・・いつ気付いた?」
「車の運転を失敗していた辺りで不審に思って観察していた。」
「まあ・・・良く考えれば当然のことだあな。」
「ええ、修羅兵の装甲を貫くほどの威力の銃を休みなく連射していればこうなるでしょうね・・・。」
ばんじろうが上着を羽織る。
大江戸ハーマイオニーがばんじろうから慧音先生のほうへと向き直り、頭を下げる。
「申し訳ありません。隊の管理もできていなかった私の責任です。」
「いや、黙っていたのは私だ。問題ない。」
「問題がないわけはないだろう!」
自分への苛立ちもあるのか大江戸ハーマイオニーがばんじろうに対して声を荒げる。
しかし慧音先生は大江戸ハーマイオニーを責めたりはしなかった。
「まぁまぁ落ち着け。ばんじろう、お前は休め。」
「しかし・・・。」
「それが隊を殺すことになるかもしれんのだぞ?十分すぎる戦果は上げている。休むことも重要だ。」
「・・・分かりました。」
話の成り行きを見守っていたドックンドールがここで口を開いた。
手には先ほど慧音先生に確認を取ろうとしていた書類が握られている。
「司令、ばんじろうにはこの任務についてもらってはどうですか?」
「む?」
慧音先生がドックンドールから書類を受け取る。
一通り報告書と思しき書類に目を通すと「ふむ」と少し考えるような仕草を見せる。
「なるほど。ばんじろう、お前はこれの調査に向かってくれ。」
「はぁ・・・。」
慧音先生が先ほどドックンドールから渡された書類をばんじろうに手渡す。
ばんじろうがその書類に目を通すと、そこには『古代遺跡で新たなアークを発見した』という報告が記されていた。
「銃型のアークが発見された。報告によればお前のものと全く同じ形のものらしい。だが白い拳銃なのだそうだ。」
「同型、ですか。」
「趣味の悪い拳銃だなぁ白って。」
「でも白と黒ならバランスもいいんじゃないです?」
ばんじろうが少し考えた後で、コクンと頷いた。
「よし決まりだ。ついたばかりで悪いが至急のようなのですぐに発ってくれるか?車と運転手はこちらで出す。」
「了解。」
「ばんさん、こっちの心配はいいからゆっくり休んでくれ。」
「帰ってくるまでにあそこ落としてやるよ!」
「ばんさんいってらっしゃい!」
「では失礼します。」
ばんじろうが敬礼してからくるりと向きを変え、司令室を出て行った。
大江戸小隊が四人以外で行動するのはかなり久しぶりの事である。
「よし、では諸君らには明日から働いてもらう。今日はもう休んでくれ。」
「ここの食堂はうまいんだ。食べながら話でもしよう。」
「ええ、そうしましょうか。」
「あー・・・久しぶりにゆっくり寝れるぜ!」
「いつもは夜営かテントですからね、久々にゆっくり眠れそうです。」
大江戸小隊の三人がそれぞれリラックスした表情になる。
すでに話題は夕飯のメニューのことで盛り上がっている。
「戦争中だというのに気楽な奴らだ・・・。」
「そういう司令も少し表情が緩んでますよ?」
「・・・・ふん。」
若くして昇進し、人員不足や指揮能力などから大抜擢された慧音先生にはかなりの精神的負担があった。ドックンドールという知った顔が補佐しているものの、プレッシャーは相当なものであろう。
大江戸ハーマイオニーらがやってきたことで少しでも気が楽になればいい、そんな目論見を持ってドックンドールが彼らをここへ呼び寄せたのである。これでまずはプレッシャーを和らげることに成功した、次は負担そのものを取り除かなくてはならない。
(これでようやくあの笑顔が見られるようになるだろうか?)
(いや、やってみせる。どんな手を使ってでも・・・。)
慧音先生と同等、もしくはそれ以上の才能を持ったドックンドールが副官に収まっているのは彼女のサポートをするためだ。
しかし、彼は『忠実な補佐』という訳ではなかったのであった。
【Ⅱ】
大江戸小隊が基地に到着してから二日が過ぎた。しかし、目立った戦果は上がってはいない。今日も一日の戦闘を大した戦果もなく終えることになった大江戸ハーマイオニーたち三人は基地に戻ってきていた。
要塞の内部に入り込めればいいのだが、敵は要塞から打って出てくることはなく兵器での反撃と外で待機していた修羅兵による攻撃しか行ってこないため思うように動くことが出来ないのだ。
「あーもう!じれったい戦いだぜ・・・。」
「仕方ありませんよ。いつもならばんさんが工作活動で活躍する場面ですけど今は居ませんし。」
「そうなんだよなぁ・・・。外壁を壊して突破ってわけにもいかないしな。」
「ハニーのアークなら破壊できますけど要塞が全壊しかねないですからね・・・。」
宿舎で割り当てられた部屋でB.B.とAAAがぼやく。大江戸ハーマイオニーは慧音先生のところへ報告に行っている最中だ。少し休んだ後、夕食の時間も近いので二人が揃って食堂へと向かう。食堂へと向かう途中で二人は後ろから声をかけられた。
「あっあの!」
「ん?」
「助けていただいてありがとうございました!」
声をかけてきたのは薙刀のアーク使いで、それぞれ火、氷、風、雷を操る力を持った薙刀を駆る戦場の華と呼ばれている四人小隊の内の一人だ。
炎の薙刀を操るのはそのチームの中で最も活発的なこあくまである。
「あの時AAAさんに助けてもらってなかったら砲撃が直撃していました・・・。ありがとうございます!」
「ああ、いやいや。こちらこそ修羅兵の数を相手にするのは骨でしたから助かりましたよ。」
「またAAAかよ・・・。」
「こあくまー?どうしたのよ急に走ってー?」
AAAの姿を見かけて駆け出したこあくまを追いかけてきた他の三人もやってくる。
ちょうどそこへ大江戸ハーマイオニーも報告を終えてやってきた。
「何やってんだこんなところで?」
「あ、ハニーおかえりー。あの薙刀の四人の方々ですよ!」
「おお、あの薙刀の!初めまして、大江戸小隊隊長の大江戸ハーマイオニーです。」
「初めまして。私がこの隊の隊長のエミーと申します。」
四人揃ったところで、この小隊の隊長であるエミーが一歩前に出て自己紹介をする。エミーが操るのは氷の薙刀だ。そして大江戸ハーマイオニーとエミーが隊長ならではの会話を交わす。
「いやぁ、有名になってはいますけどこの隊の管理はやはり大変ですよ。」
「アークがあるとどうしても周りとの協調性が欠如しやすくなってしまいますからね。」
「いやまったくですよー。はっはっは。」
「ふふっ、ゆっくりお話してみたいですわね。夕食はご一緒してもよろしいかしら?」
「ええ、是非に。」
隊長同士で通じるものがあるらしく会話も弾んでいるようだ。そのまま七人という大所帯で食堂へと移動する。歩きながらB.B.が薙刀の四人の中できょろきょろと何かを探しているような一人に声をかけた。もちろん爽やかフェイスを装うのは忘れない。
「あの、どうかされました?あ、俺はB.B.って言います。」
「あらーご丁寧にありがとうございます。わたくしはぽきと申します。雷の薙刀をいただいております。」
「はい、ぽきさんですね?それで何かお探しで?」
「あのー・・・ばんじろうさんはいらっしゃらないのですか?」
「え?ええ、今他の任務で少し隊を離れてます。」
それを聞いてぽきが残念そうにふぅ、と悩ましげなため息をついた。
その物憂げな表情にB.B.のテンションも下がっていく。
「以前助けて頂いたのですがお礼を言っても『気にするな』とだけ残して去ってしまわれたので改めて、と思ったのですがー・・・。」
「アア、ソウナンデスカー。スグモドッテクルトオモウノデダイジョウブデスヨー。」
「まぁ!そうなんですかー。それは楽しみですわ。」
ぽきが満面の笑みを浮かべるが、逆にB.B.のテンションはかなり低くなってしまっていた。
AAAも大江戸ハーマイオニーもそれぞれこあくま、エミーと楽しそうに会話しているし、ぽきはその笑顔がまぶしいくらいだ。
「あぁもうどうでもいいや・・・。」
「B.B.さん!そんな落ち込まないで下さいよ!ウチはB.B.さんが一番か、か・・・カッコイイと思います!」
背中からかけられた声にB.B.がその声に反応する。
そのテンションも一気に急上昇だ。
「(そうか、四人居たはずだ!)そんなことないですよー!でもあり・・・が・・・?」
後ろを振り返るがそこには誰の姿も見えなかった。B.B.がおかしいと思って首をかしげていると下の方から服をくいくい、と引っ張られた。何かと思って視線を下げると、どこか恥ずかしそうにしている顔がそこにあった。
「ウチ狐っていいます!その・・・前からずっと、その、B.B.さんが憧れで!」
声をかけてきていたのは、B.B.の鳩尾ほどまでしか身長がない狐であった。着用しているのはSサイズの軍服であるが、少し袖が余ってしまっている。
狐は風の薙刀を使い、周囲からはこの四人の中のマスコットキャラクターのような扱いをされていた。
「あらあら、狐ちゃんも大胆ねぇ。こんなところで告白だなんて・・・。」
「ちっちがっ!告白とかじゃないです!ただ憧れだってだけで!」
「ふ・・・」
B.B.の中で何かが弾ける音がした。
「ふっざけんな!なんで他が綺麗な人と仲良くなってるのに俺はお前みたいなちんちくりんなんだよ!?」
「ち、ちんちくりん!?なんて事を言いやがるですか!」
「ホントのことじゃねーか!俺はガキには興味ないんだよー!」
「子供扱いするなです!第一そのサングラス全く似合ってないんですよ!」
「な!?ばっかお前これ超カッコイイだろーが!?」
食堂の入り口付近でB.B.と狐が口論を始める。夕食時の食堂なのでかなりの注目が集まっているが、二人は全く気にせずにさらにヒートアップしていく。他のメンバーがオロオロしたり呆れ返ったりしていると、ドックンドールがそこへ通りかかった。
「何をしているんだお前達は・・・。邪魔になるからいちゃつくなら他所でやれ。」
「「いちゃついてなんかいるかー!!」」
「ドックンさんも一緒に夕食を食べませんか?」
「いや、まだ仕事が残ってるんでな。後で食べるよ。ところで慧音を見なかったか?」
「俺も探してたんですが会えなかったので報告書を司令室のポストに入れておいたんですが・・・。」
「ふむ・・・。また探してみるよ。じゃあな。」
「はい、お疲れさまです。」
ドックンドールが足早に食堂前から正面玄関のほうへと去っていった。
大江戸ハーマイオニーはドックンドールを見送り、B.B.と狐の口論の収集にかかったのであった。
食堂の前で大江戸ハーマイオニーらと別れた後もドックンドールは慧音先生を探して基地内を廻っていた。しかし目撃証言もなく、司令室に戻ってきているかもしれないと思い元の場所へと戻ってきたのだ。だが司令室のドアをノックしても返事はなかった。そこでドアノブに手を伸ばすといつも不在の時には閉まってるはずドアに鍵がかかっていなかった。
「おーいけい・・・っと司令ー?」
ドックンドールがドアを開け司令室の中に顔を覗かせると、そこには誰の姿も確認できなかった。しかし電気は点けっぱなしでデスクに書類も放置されている。几帳面な慧音先生は絶対にこういうことはしないはずだ。
ドックンドールがどこか様子がおかしい、と感じて部屋の中に入った。
ドアで繋がった隣の副指令執務室にもその姿はなく、やはり慧音先生の姿は確認できない。ドックンドールがふと慧音先生のデスクの上に視線を落とすと、書類にまぎれている折りたたまれた紙切れを発見した。それを手に取り、書いてある内容に目を通す。
「っ・・・。」
ドックンドールがその紙をぐしゃっと握りつぶして、司令室を後にした。
翌朝、起床時間前に基地内に警報が鳴り響いた。
大江戸小隊の三人もこれを聞いて飛び起きる。すぐさま着替えて部屋の外へ出ると、最初に基地の中を案内した兵士と出くわした。その様子はパニック寸前といった感じである。
「おい!どうした?」
「あ、大江戸さん!敵の奇襲です!」
「なに!規模は!?」
「既に基地は包囲されてしまっています!」
「なんだって!?」
大江戸ハーマイオニーが近くの窓から外の様子を伺うと、確かに防壁の外は修羅兵で埋め尽くされていた。
「見張りの目をかいくぐってここまで近付いたってことか・・・?」
「大江戸さん!ど、どうしましょう!?」
「どうしましょうって司令はどうしたんだ?」
「それが・・・司令も副指令もどこにも居ないんです!」
「なんだと!?・・・なら俺が臨時に指揮を執る!本部へ案内してくれ!」
「了解!」
本部へと駆け込むやいなや、司令の不在によって基地がパニックに陥っている状態を解消するために大江戸が指示を飛ばす。
しばらくしてなんとかパニックが収まったときには色々な情報が集まってきていた。
「司令と副指令は昨日の夜から行方不明、ですか・・・。」
「外の修羅兵も見張りの目をかいくぐって接近したようですね・・・。」
「修羅兵がいったいどうやっでそんな器用なマネしたんだろうな?」
「それよりも今はこの危機を乗り越えることが大事だ。」
なんとか事態を収拾させた昼過ぎ、大江戸小隊とエミー小隊など今基地に居る中での上層部が作戦会議を行っている。
この基地は慧音先生がほぼ全てを仕切っていたのだが、基地の内部にはやはり慧音先生とドックンドールの姿はなく、この基地を運営していた二人が揃って行方不明になってしまっていた。優秀だが若い人材だけで運営していた脆さと、人員不足による弱点が浮き彫りになってしまってる状況だ。
ここで、基地に備蓄された食糧などを確認したエミーが現状を報告する。
「この基地で篭城戦は厳しいかと思われます。食糧の備蓄は篭城するほどありませんし、何より修羅兵相手に篭城は無意味かと。」
「しかしここが落とされるわけにもいかない・・・。防衛力は欲しいところだ。」
「打って出てもバルドフェルドを落とせるかどうか・・・。」
作戦会議は続けられるが、八方ふさがりであるという事以外何も進展がないまま時間が過ぎてゆく。
話をすべて聞いた上で大江戸ハーマイオニーが会議をまとめにかかる。
「このままでは全滅必死、だが打って出るにも防衛は必須、ならば少数精鋭で要塞内部に潜入して一気に要塞を掌握するしかないな。」
「では大江戸小隊が・・・?」
「いや、三人では心許ない。エミーさん、二人ほど人員を借りられるか?」
「はい、了解しました。」
「よし、では今日の深夜に大江戸小隊三名にエミー小隊のこあくま、狐を加えた五名で要塞内部に潜入する!」
『了解!』
「エミーさんとぽきさんはここでの防衛を頼む。各自陽が沈むまでに用意しておくこと、以上!」
作戦会議は終了するも、出した結論は上策とは言うことの出来ない分の悪い賭けだ。
しかしそれ以外に手がないのもまた事実である。
ここで大江戸ハーマイオニーの中にはある疑問が生まれていた。
(タイミングがよすぎる・・・。基地の内部事情を把握したものが相手側にいる・・・?)
(考えたくはないが・・・。)
それぞれの思いを胸に、陽は沈み夜を迎えた。
「今から要塞攻略を開始する。ここからびびさんのアークを使って外に飛び降りて着地、もう形振り構っていられないから正面の門をを破壊して中に入る。」
「中は修羅兵で埋め尽くされてるんじゃないですか?」
「いや、ここの包囲にかなりの兵を割いているはずだ。問題は門をうまく抜けられるかだな。何か質問は?」
「・・・・・・」
「では作戦開始!」
合図と共に五人が基地の防壁から一斉に飛び降り、黒鉄丸の能力で重力を制御して包囲の外側へ着地することに成功する。五人はそのまま東へと走り、バルドフェルド要塞へとまっすぐ向かう。
五分ほど走り続けると、要塞の正門が見えてきた。
しかし妙なことに見えた正門はなぜか開かれていたのだった。罠の可能性も考えたが、どうせ中に入るのだから関係ないと判断し、五人は正面に配置された少数の修羅兵を撃破して要塞内部へと侵入することに成功する。
正門をくぐり、要塞の正面入り口も突破しようと前進するが、正面玄関の前では予想だにしない人物が待ち構えていた。
「来たか。やはり少数精鋭による電撃作戦しか手はなかったようだな。」
「・・・冗談だろ?」
「なんで・・・・なんであなたがここに居るんですか!!」
AAAとB.B.がその姿に足を止め、信じられないものを見る目をその人間に向ける。
大江戸ハーマイオニーにはある程度予想出来ていたのだろう、落ち着いた様子でまっすぐと声の主を見据える。
「答えてくださいよ!ドックンドール先輩!!」
【Ⅲ】
修羅兵による襲撃の前夜、司令室のデスクの上にあった紙切れを読んだドックンドールは基地の外へと飛び出していた。ドックンドールが握りつぶしたその紙にはこう書かれていた。
『司令は人質として預かっている。一人でバルドフェルドの西門へ来い。』
ドックンドールが自分のアークを手に、要塞との間にある森を全速力で駆け抜け、バルドフェルド要塞に到着した。そこでは裏切ったとされている兵士らが四人ほど待ち構えていた。
「慧音はどうした?」
「この距離を全力疾走して息も切らさないとはさすがだねぇ副指令?」
「答えろ!慧音はどこだ!」
「おおっと下手なことはしない方がいいぜ?丁重におもてなししてますよ。今頃は地下牢で目を覚ましてる頃じゃないですかねぇ?」
ドックンドールがギリ、と奥歯を噛む。裏切り者が居るのを隠しておいた事が裏目に出たことを悔いているのだ。
しかし今は嘆いている場合ではない。
「・・・貴様らの要求はなんだ。」
「話が早いねぇ!なぁに、俺らに協力してくれればいいんだよ。」
「西の駐屯所を落とせ、ということか。」
「そういうこと。あんなにアーク使いが居たんじゃあ俺たちも危ういんでね・・・。」
ここでドックンドールにようやくクリアな思考が戻ってくる。一つ呼吸をして、迷うふりをしながら状況の分析を始める。
(なぜ今になってこいつが表に出てきた?こちらの勢力が拡大したからか・・・向こうに後がないと判断する。)
(落とせ、というからには修羅兵を使う・・・ならば多少長引かせることも可能だ。だがしかし奴らを納得させてそれでいて向こうの被害を抑えるには・・・。)
「さぁ、さっさと決めてもらおうじゃねぇか!愛しの司令さまがどうなってもいいってのか?」
「・・・わかった。ならば早速俺に指揮を任せてもらおう。」
「ほう、殊勝じゃねぇか。いいだろう、こっちはいつでも人質を殺せる準備があるってことを忘れるなよ?」
そこからは内部の事情と見張りの死角を完全に把握したドックンドールによって、修羅兵がその存在を気付かれることなく歩を進めていく。
その手際には文句のつけようもないほどに見事なものであった。
「へぇ、見事なモンじゃないか。じゃあさっさと攻め落としてくれよ!」
「これでは不完全だ。アーク使いがあれだけ居るところに手を出しては大打撃を受けるがそれでもいいのか?」
「じゃあどうするって言うんだよ?」
「このまま囲む。食料も豊富というわけではないからな。持久戦に持ち込めば確実に勝てるだろう。」
「元の仲間に対してえげつないことするねぇ・・・。アンタも元々こっちにつくつもりだったんじゃないのか?」
周りにいた人間達から下卑た笑い声が上がる。どの顔もリストで見た奴らばかりだ。どうやら外に居る見張りも含めればほぼ全員がここに居るようである。
ドックンドールの実力を以てすればここで全員を切って捨てることもできるが、慧音先生の安全が確保できない以上ことを起こすわけにはいかない。だが、これだけ言われて黙っていられるほど彼はお人好しというわけでもない。
「面白い事を言うやつだな。殺すのは最後にしてやろう。」
絶対の殺気を籠めて周りを睨みつける。すると嘲笑する声は即座に収まり、全員が一斉にドックンドールに向けて銃を構えた。腐っても軍人なのだろう。反応がなかなかに速い。
先ほどからしゃべっていたリーダー格と思しき男が右手を上げて仲間を制止する。
「・・・あんまり舐めた事言うとぶっ殺すぞ。」
「フッ、冗談の通じない奴らだ・・・。」
「こっちには人質が居るんだぞ!ちょっとでも変な動きをしたらボン、ってやっちまうぜ?」
「わかったよ・・・。」
ドックンドールは打てるだけの策を打った。あとは思惑通りに大江戸ハーマイオニーたちが少数精鋭で切り込んできてくれるの待つだけだ。
その時の混乱に乗じて慧音先生を助け出すしかチャンスない、と考えているのであった。
一方その頃、地下牢では慧音先生が目を覚ましていた。
司令室に入ってきた兵士の顔にどこか違和感を感じ、それが裏切ったものたちのリストで見た顔だということに気付いた時には薬を嗅がされていたのだ。そのまま意識を失ってしまい、気がついたら牢屋のような場所に閉じ込められていたのだ。
入ってきた兵士がすぐにそいつらだと気付けなかった自分に憤りを覚えるが、今は状況把握が最優先である。窓はないので外の様子は分からない、ということは地下、可能性として最も高いのはバルドフェルドの地下牢だろう。自分の体調などからそんなに時間も経っていないと判断する。体も拘束されてはいないようだが、首に何かがつけられていた。
『目が覚めたか・・・。』
声がした方へ振り向くと、牢の外に修羅兵が立っていた。
喋る修羅兵となると以前大江戸小隊からの報告にあったハクという修羅兵しか思い当たる節はない。
しかし報告されていた外見とは異なるため、他の指揮官なのだろう。
「貴様は・・・!」
『私の名はサイという。まずは非礼を詫びよう・・・。』
サイと名乗った修羅兵が深々とお辞儀をする。
慧音先生は少々戸惑いつつもサイに食って掛かる。
「私を捕らえてどうするつもりだ!貴様らがこんな手段に出るとはよほど切羽詰ってきたのか!?」
『・・・此度の作戦はあやつらが考えて勝手に実行したものだ。私は関与していない。』
「おやつら?勝手に?ずいぶんと虫がいいものだな。」
『信じろとは言わん。それに副指令とやらもお主を助け出そうと虎口に飛び込んで来たところだ。』
「あいつが!?」
考えてみれば、自分を人質に取ることでドックンドールをおびき出すのは容易なことであろう。軍の統制力と戦力を同時に奪う手だ。
ますます自分に警戒心が足らなかったことに対しての苛立ちが募る。
『さて・・・私はこの基地を離れる。』
「なに?これからが作戦の本番じゃないのか?」
『ここに敵を招き入れた時点で勝ちはない。これ以上ここに居る意味はない。』
「貴様・・・。」
『首についているのは爆弾だ。扱いに気をつけた方がいい。』
それだけ言うと、サイは地下牢から姿を消した。
慧音先生が修羅との会合に思うところもあったが、今の状況を整理する作業に戻る。
(考えろ。あいつならどうする?)
(あいつの考えそうなこと・・・それは被害の少なさ、私の救出のどちらも達成する方法・・・)
最終的に慧音先生もドックンドールと同じ一旦協力する振りをするという考えへと至った。それが実行されるのであれば、ここで死ぬことはできない。人質として残っていると思わせたまま死ぬのはデメリットしか生まず、死ぬのならドックンドールの視界内で死ななければ人質としての効果を消すことが出来ないからだ。
つまり、いま自分に出来ることは何もないということだ。
「・・・くそっ!」
慧音先生は備え付けの寝台に腰を下ろし、ただ唇を噛み締め耐え忍ぶ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、慧音先生が捕らわれてから一日が過ぎ、ドックンドールは正面玄関前で侵入してきた大江戸ハーマイオニーらと対峙していた。ドックンドールの右手には彼の使うレイピアのアークが握られている。
「本気、のようですね。」
「やれやれだ・・・。」
大江戸ハーマイオニーとB.B.がそれぞれアークを構える。
しかしAAAは戸惑いを隠すことが出来ない。
「ちょっと待ってくださいよ!何で僕達が殺し合わないといけないんですか!?」
「いや、大江戸とB.B.の反応が正しい。AAA、お前は死ぬ気か?」
「でも!」
なにか理由が、そう言いかけたAAAの足元に一瞬のうちに斬撃が走り地面をえぐる。
AAAにはドックンドールが動いた瞬間を見ることが出来なかった。つまり本気で攻撃を仕掛けてきたという事である。
「先輩・・・!」
「死にたくなければ掛かってこい。全力で、だ。」
「くっ・・・!」
ここで全員に手渡され耳にセットした無線機から大江戸ハーマイオニーの声が聞こえてくる。
『指示を伝える。俺とこあくま、B.B.と狐の二人組でそれぞれ内部に侵入する。AAA、お前はここでアレの相手を頼む。』
「・・・・・・。」
『AAA、気持ちは分かるが耐えてくれ。ここのどこかに司令が捕まっている可能性は高い、解放できれば一気に叩ける。』
「・・・・!」
『勝負を一番長引かせられるのはお前だ、頼んだぞ。では散開!』
大江戸ハーマイオニーの合図と共に全員が指示された通り二手に散開してそれぞれ左右に分かれる。
AAAはその場に残り、構えを作り腰を落とす。
「おいドックンドール!何を大人しく見逃してやがる!」
「今動いたら目の前のこいつにやられていた、黙ってろ!」
要塞の上から裏切った兵士と思われる男が覗いていた、これで人質が居るという可能性は濃厚になった。
リーダー格の男がチッと舌打ちをして押し黙る。
「さぁ掛かって来い。久しぶりに稽古をつけてやる。」
「・・・今日こそ一本取らせていただきますよ!」
正面玄関でこの戦争で初めてとなるアーク使い同士による戦いが始まった。
その戦いは苛烈を極めることは必死。夜の闇に激しい戦いの音が響き渡る。
正面玄関で戦闘が始まった頃には、散開した大江戸ハーマイオニーとこあくまは通用口から要塞の内部に侵入していた。できるだけ気配を消したまま地下牢への最短ルートを行くつもりなのだ。
「どうして気配を消していくんです?いくら大規模破壊特化で大江戸さんのアークが存分に使えなくても突破出来ると思いますが・・・。」
「びびさんと狐さんで行かせたからな。こっちはこっそりと行った方がいい。」
「・・・?」
地下牢といっても、この要塞には地下牢と呼ばれるものがいくつか存在する。それをしらみ潰しに当たっていくしかない。こあくまは突破していった方が時間もかからないのでは、と考えていた。
だが大江戸ハーマイオニーには何か考えがあるのだろう、そのまま大江戸ハーマイオニーについて要塞内部を進んで行く。そして一つ目の地下牢の入り口に差し掛かったところで、通路の横からいきなり銃撃を受けた。
「いたぞ!」
牢の入り口付近で銃を持った男達が三人ほど待ち伏せしていたのである。さすがに狙いはバレていたようだ。
大江戸ハーマイオニーとこあくまが奇襲を受けるも素早く一旦曲がり角に身を隠す。
「やれやれ、面倒なことだ。」
「でも、これで人質が居るという確信は持てましたね。」
「そういうことだね。つまりここを突破する必要があるってことでもある。」
大江戸ハーマイオニーが隠れたままアマテラスを曲がり角から覗かせ、強烈な光を放った。
光にひるみ、待ち伏せしていた連中からの銃撃が止んだその一瞬にこあくまが飛び出し、一気に距離を詰める。
「燃えろォ!」
小悪魔が薙刀を振るうと、切っ先から炎が噴出して一瞬のうちに天井までが炎に包まれる。
光と炎によってパニックに陥った男達をこあくまが薙刀の柄で後頭部を強打し、気絶させる。
「人間相手ってのもやりづらいね・・・。」
「お見事な急襲だね。調べたが下には居ないようだ、探索を続けよう。」
「はい!」
その時、大江戸たち二人が居るのとは反対の方から派手な爆発音が響いた。
「びびさんも頑張ってるねぇ・・・。こっちはやりやすくなるんだが。」
「なるほど・・・こういうことですか。さっきの奴らは地下牢にでも入れておきますね。」
「そうしてくれ、次は南の方へ向かうぞ!」
「了解。」
こあくまが薙刀から出た炎を消滅させ、気を失った男達を地下牢に放りんでから次の牢へと向かう。
一方その頃、B.B.と狐は歩いているところを発見され、銃撃から通路を逃げているうちに袋小路へと追い詰められてしまっていた。今は何とか曲がり角で持ちこたえているが、いつまで持つか分からない。
「うーんまずった。」
「まずったじゃないですよ!見取り図を覚えてなかったんですか!?」
「覚えてるっつーの!アバウトに!」
「正確に覚えておいてくださいよー!!」
狐が涙目になりつつ、角から風の刃を飛ばして応戦するものの、弾幕の量では勝てるわけがない。
テンパってしまっている狐の訴えにB.B.がむっとした表情で反論する。
「ちゃんと覚えてるっつーの!この向こうが通路だろ!?」
「だからどうしたって言うんですか!ちゃんと考えて行動しないからこんなことになるんですよ!」
「考えてるっつーの!いいか?向こうが通路ならここをぶち抜きゃ逃げられるだろうが!」
B.B.が黒鉄丸を構えて、重力制御の能力を使い力まかせに石で出来た壁をぶち抜く。
派手な音と共に壁が崩れてなんとか向こうへの道と呼べるものが出来た。
「よし!」
「どこがよしですか!こんな派手にやったらまた・・・!」
狐が言い終わらないうちにぶち抜いた方の通路からこちらへと走ってくる足音が響いてきた。
「こっちからなにか派手な音がしたぞー!」
「だぁー!また来たです!さっさと逃げますよ!」
「・・・なぁ?普通捕らえるって言ったらどこなんだろうな?」
「やっぱり考えてないんじゃないですかー!」
狐とB.B.が三階のフロアを縦横無尽に逃げ回る。いつの間にか二人を追う人数はかなり膨れ上がっていた。
B.B.が走りながら後ろに居る人数を数える。
「そろそろこのフロアに居たやつらは全員合流したっぽいな。」
「大人数で追ってきてますよ!銃を持ったあの人数相手はさすがに無理です!」
「ならまともに相手しなけりゃいいんだよ!」
B.B.が曲がり角を曲がったところで立ち止まり、タイミングを計って黒鉄丸を構えたまま来た方へと飛び出した。追っていた相手が曲がり角から急に向かってきたので男達の反応が一瞬遅れる。そしてその隙を逃すB.B.ではない。
「潰れろ!」
ここでアークの能力を使い、兵士達に何十倍もの重力をかける。狭い通路で並んでいるならばB.B.の重力制御の能力の範囲内に十分納まる。
トリガーに指をかける暇もなく男達は床にはいつくばらざるを得なくなり、数秒で意識を失った。
「ふむ・・・。人間相手は加減が難しいな・・・。」
「やるならやるって言ってくださいよ!びっくりしたじゃないですか!」
「はいはいやるやる。」
「おそーい!!!」
二人が気絶させた敵兵を近くの部屋に放り込んで鍵をかけ、二人が目的地も不明瞭なままに移動を再開する。通路を進みながら全く緊張感のない子供のようなやり取りを続けていると通路の向こう、狐の背後から銃を構えて飛び出す影をB.B.が視界の端に捉えた。
「大体ですね!あなたにはデリカシーってものがですね・・・」
「っ!あぶねぇ!」
「はわぁ!?」
狐がB.B.にいきなり腕を引っ張られて、そのまま通路から近くの部屋の中にドアを破って飛び込む。
部屋の中へと倒れこんだ直後に二人が居た場所を銃弾の嵐が襲った。
「ふぅ、危なかったな。」
「・・・・・・・っ!」
B.B.が狐にも怪我がないかを確認するために目線を下げると、狐が顔を真っ赤にして固まっていた。
「おい、なんでお前は人の腕の中に収まって顔を真っ赤にして固まってるんだ?」
「そっ・・・!そっちが勝手に抱き寄せたんでしょうが!このヘンタイ!」
「へんた・・・!そういう事はもっと抱きしめた時の感触がよくなってから言え!」
「なんですとー!変態の上にセクハラじゃないですか!・・・?」
狐がB.B.の腕からの出血を見つける。
弾がかすった程度のようだが、狐を助けた時のものであろう。
「すぐ手当てをします!」
「そんな暇ねーよ。さっきの連中が来てるぞ?」
バタバタと足音が近付き、部屋の入り口付近に三人の銃を持った男達が集まってきた。
「いたぞ!撃・・・」
「邪魔です!」
B.B.が黒鉄丸を構えるが、その前に狐が手にした薙刀を一振りすると、圧縮された空気の塊が入り口の方へと放たれた。その結果、轟音と共に部屋の壁と通路の壁をも巻き込んで三人を外へと吹き飛ばしてしまった。薙刀を振っただけの攻撃のあまりの威力にB.B.は開いた口が塞がらない。
「すぐ手当てしますから!えっと、包帯と、消毒と・・・。」
「まぁ自分で処理できる傷だからいいんだが・・・。さっきの連中は生きてるか・・・?」
「ふっ飛ばしただけですし大丈夫ですよ。ウチは手加減も完璧です!」
「ここ三階だぞ?」
「・・・・・・・・はっ!」
狐が慌てて外を覗くと、吹き飛ばした連中は偶然にも外の木に引っかかっており、どうやら死んではいないようだ。
「け、計画通り・・・。」
(駄目だこいつ、早く何とかしないと・・・。)
内部へ侵入した二組がそれぞれ行動を続けている頃、正面玄関の前ではAAAとドックンドールが交戦を続けていた。剣術の達人として知られているドックンドールには、刃の細いレイピアのアークが軍から渡されている。学生時代に何度も稽古をつけてもらったことがあるが、AAAは一本も取ったことはない。しかしAAAはそのような相手と互角に渡り合っていた。
「腕を上げたじゃないか。お前は素手の方が性に合っているようだな。」
「はぁ、はぁ・・・。まだこれからですよ!」
しかし息を切らせているAAAに対し、ドックンドールは汗一つ浮かべてはいない。実力の差は明白であった。だが勝負に進展する様子は見られないまま真剣勝負にしては長い時間が経過していた。
要塞の屋上からこれを見ていたリーダー格の男がチッと舌打ちをする。
「野郎・・・長引かせようと手を抜いてやがるな。おい!地下牢に行って人質を連れて来い!」
「了解!」
指示された兵士二人が屋上から基地の中へと入っていく。内部の至るところで爆発音などが聞こえてくることから考えて、先ほど分かれた連中が暴れているのだろう。だが、慧音先生が捕らわれている地下牢へは一階から屋上までエレベータが通っているため途中で妨害される可能性は低い。
「こっちにゃあ人質が居るんだ、負けるはずがねぇ・・・。フン、いざとなったら・・・ククッ。」
指示を出したリーダー格の男が一人になった要塞の屋上で正面玄関の方へと向き直り、ポケットから何かのスイッチを取り出す。これさえあればドックンドールは言いなりなのは確実なのだ、自分たちの計画に間違いは無い。
そんな確信を持って邪悪な笑みを浮かべたまま切り札の到着を待つ。
一方、正面玄関の前ではAAAとドックンドールの戦闘がいまだ続いていた。ドックンドールのアークの『同じ相手と戦えば戦うほど自身のスピードがだんだんと増していく』という能力は、本来は長期戦のない修羅兵との戦闘においてほぼ意味のない能力である。しかし、アーク使い同士での戦いにおいてこれほど有利な能力は他にない。
それでもこれだけ長く戦闘が続くのは、AAAの能力が攻撃を感知さえ出来れば気を集中させるだけで防御できる性能を持っているからだ。加えてドックンドールが型にはまった攻撃を行っているため、ある程度は攻撃を予測できるという点も大きい。
「動きが鈍ってきているぞ、もう限界か?」
「ぐっ!そっちが速くなって来てるんですよっ!」
かなりの長期戦になってきているが故に、ドックンドールの能力はかなりの位置にまで高まっていた。
型にはまった攻撃とはいえ、AAAが反応できる速度の限界も近い。
ドックンドールが速度を維持する必要があると考え始めた時、要塞の上から声が響いた。
そこには両手を後ろで拘束された慧音先生の姿があった。
「おいドックンドール!さっさとそいつを殺して中に入ったやつらも殲滅しろ!」
「慧音・・・!」
「はあはあ・・・くそっ!やっぱり司令は捕まってたのか・・・!」
ドックンドールとAAAが慧音先生へと向き直る。慧音先生は二人がかりでしっかりと拘束されているため逃げられず、猿ぐつわのせいで声を出すことも出来ずに、ただ身をよじったりして抵抗することしか出来ない。
「どうしたさっさと殺せ!人質が吹っ飛ばされてえのか!?」
「吹っ飛ぶのはお前だよ。」
背後から届いた声に振り向くと慧音先生を拘束していた二人は意識を失って倒れており、そこには要塞の内部へと侵入していた四人の姿があった。慧音先生も押さえられていた二人の手から逃れている。
「ば、バカな!?この短時間でこの要塞にいた兵を全員制圧しただと!」
「要塞の広さに対する人数としては少なすぎたな。残るはお前だけだ。」
こあくまが慧音先生の拘束された手と噛まされていた猿ぐつわを解放する。
どうやら怪我などはしていないようだ。
「大丈夫ですか司令!」
「ぷはっ!お前達今すぐ私から離れろ!」
「ど、どうしてですか?」
「この首輪は爆弾だ!」
慧音先生がこあくまを突き飛ばすようにして距離をとる。
いつの間にかスイッチを取り出した男がさっきまでの狼狽ぶりが嘘のように高笑いをあげた。
「はっはははははは!そうだこっちには人質が居るんだぜ?動くんじゃねぇぞテメェら!」
「慧音・・・!」
「そこの二人も動くんじゃねぇ!」
「くそっ・・・なんとかあのリモコンを弾き飛ばせれば・・・。」
リーダー格の男がジリジリと下がって大江戸たち四人との距離を開けていく。今ここに居るメンバーでスイッチを押す前に手からスイッチのついた機械を弾き飛ばせるのは速度を上げたドックンドールと、AAAの遠隔攻撃だけである。しかしその二人は下の地面に居るため弾き飛ばすことは出来ない。無理をすれば壁を登れるかもしれないが絶対に間に合わないだろう。
「私のことはいい!そいつを捕まえろ!」
「そんなこと出来るわけないでしょう!」
「命令だ、早くするんだ・・・!」
「慧音よせ!」
慧音先生が屋上の淵の段差の上に立つ。
何をしようとしているのか、それは誰の目にも明らかである。
「司令!降りてくださ・・・」
「来るな!」
近くに寄ろうとしたこあくまが怒鳴りつけられビクッと身を引く。
「さぁ命令だ。あいつを拘束しろ。」
「しかし・・・!」
「何をごちゃごちゃとやってやがる!そんなに死にたいならすぐに殺してやろうか!」
追い詰められた男が大声を上げる。今の状態ではいつスイッチを押してもおかしくない。
ドックンドールが下から慧音先生を必死に説得する。
「やめろ慧音!死んでもどうにもならない!」
「すくなくともこの状況は打開できるさ。」
いつも冷静で飄々としているドックンドールが誰にも見せたことのない表情で慧音先生の心に訴える。
「基地の指揮はどうする!」
「お前だけでもできるさ、私より優秀なくせに何を言っているんだ・・・。」
それでも慧音先生の心には届かない。
「じゃあ、じゃあ!」
アーク使いでも、副指令でもない、ただ一人としてのドックンドールが声を絞り出し、
言葉ではなく、心を伝える一言を放つ。
「指輪を渡した時の返事はまだもらってないぞ・・・!」
この一言にドックンドールの目に映る慧音先生の背中がわずかに反応した。
心からの声に返せる言葉は心からの声以外にありえない。
「軍人だから、と言って先延ばしにしただけじゃないか。俺は答えをもらってない!」
「・・・・・・ごめん。」
「謝るな!そこから降りるんだ!」
「ごめん・・・・・ごめん・・・・!」
「やめろ!死ぬ必要なんかどこにもない!」
「お前ら何を勝手にごちゃごちゃと!もういい!吹っ飛ばしてやるよ!」
追い詰められて恐慌状態の男が、その手に持っていたスイッチを掲げ誤動作防止のカバーを弾き飛ばす。
そして指をスイッチレバーにかけようとした瞬間、無線から声が届く。
『副指令の言うとおりだ、死ぬ必要などどこにもない。』
無線機から聞きなれた声が届くと同時に爆弾のスイッチがそれを握った手から弾き飛ばされ、一瞬後に銃声が響いた。弾き飛ばされたスイッチがカラカラと床を転がっていき、そこへすかさずB.B.が距離を詰めてその勢いのまま右手を撃たれてパニックになっている男を蹴り飛ばした。
「ばんさんナイスタイミング!」
「銃声のが後に聞こえたってことは1kmほど離れた距離からの狙撃ですね・・・。」
『無線から会話が聞こえてきたのでな、接近をやめて近くの木に登ったがどうやら正解だったようだ。』
「よかった・・・。これで誰も死なずに乗り切れた・・・。」
ドックンドールが気が抜けたように座り込み、こあくまに支えられるようにして淵から降りた慧音先生も安堵の吐息を漏らす。
全員がほんの少し気を抜いた瞬間、蹴り飛ばされた男が口の端から血を流しながら叫びを上げた。その左手には、先ほどと似たようなスイッチが握られていた。
「馬鹿め!油断しやがって・・・。基地の弾薬庫に爆薬を仕掛けてあったんだよ!」
「あいつ意識があったのか・・・!」
「ばんさん!」
『・・・駄目だ。淵の柵の死角に入っている。』
今度は人質も居ないが、向こうにも躊躇う理由がない。
「へ、へへ・・・。お前らも道連れだ!死ねぇ!」
『死ぬのは貴様だ。』
次の瞬間、男が頭を撃ち抜かれ、床へと崩れ落ちた。
撃たれたのは上、つまり空からだ。全員が上を見上げると、そこには牢屋でサイと名乗った修羅が宙に浮いていた。
『見苦しい。負けを素直に認めていればよかったものを。』
「また指揮官クラスか・・・!」
『お前達がハクが言っていた奴らか・・・。連携も指示も見事だった。今回は負けを認めよう。』
それだけを言うとサイは背を向けて、飛び去ろうとする。
「待て!・・・なぜ助けた?」
『我々とて矜持も誇りもないままに戦いを挑んでいるわけではないのだよ。・・・大陸の東の端で待っているぞ。』
そう言うと、サイはすごいスピードで空の彼方へと飛んでいった。
「大陸の東・・・本拠地に来い、ということか・・・。」
次はもっと大きな戦いになる。そう感じさせるのは十分な言葉である。
今回の戦闘は損害は少なかったが、今までで一番激しい戦闘を繰り広げたバルドフェルド要塞攻略戦は朝陽が昇ると共に終焉を迎えたのであった。
【Ⅳ】
こあくまが床に転がった爆弾のスイッチを拾いあげ、ついていた解除ボタンを押すと、慧音先生の首につけられていた爆弾を外すことが出来た。
ようやく一段落着いたところに、AAAとドックンドールも屋上へと到着した。
「慧音!無事でよかった・・・。」
「・・・。」
ドックンドールが一直線に慧音先生に近付く。
パシン。
慧音先生が振り向きざまにドックンドールの頬をはたいた。
その目には涙が溜まっており、今にもこぼれ落ちそうだ。
「お前は何をしたか分かっているのか!」
「司令!あなたを助けるために・・・」
たまらず声を上げたこあくまを大江戸ハーマイオニーが手を上げて静止する。
そして口出し無用といわんばかりに首を振る。
「戦闘にしてもそうだ。ばんじろうの判断と敵の気まぐれという二度の偶然があったからこそ損害もないが一歩間違っていたらどうなっていたか・・・。」
「損害、の一言では済ませなかっただろうな。」
「そしてAAAとの戦闘だ。実際に殺してはいないし傷つけてもいないものの・・・!」
慧音先生の言葉は止まらない。ドックンドールはただその言葉をを受け入れる。
「私がいなくなった時点でお前ならこの事態を想定出来たはずだ!それがなぜ軍を裏切るようなマネをした!」
「・・・・。」
「よくて除隊、銃殺刑だって十分に有り得る・・・!なんで、なんでっ・・・!」
そこまで言って慧音先生の目じりに溜まった涙がこぼれ落ちる。
同時に慧音先生もずるずるとその場に力なく座り込んでしまう。ドックンドールも膝をつき、慟哭する慧音先生をそっと抱きしめた。
慧音先生がドックンドールの胸を力なく叩きながら嗚咽を漏らす。
「お前はバカだ・・・ほんとうにバカなやつだ・・・!」
「ああ、そうだな・・・。」
ドックンドールが抱きしめた腕は優しく、慈しむように慧音先生を包み込む。
「うっ・・・ぐすっ・・・本当にバカだお前は・・・!」
「ごめん・・・ごめんな・・・。」
大江戸たちはひとまずその場を離れ、正面玄関前に全員が移動を開始する。
玄関から出るとばんじろうもそこへ合流した。
「どうにかなったようだな。」
「ばんさんも無事でよかった。基地の方は?」
「私と一緒にやってきた翁小隊と中の兵力で協力して修羅兵を殲滅している。もう終わった頃だろう。」
「そうか・・・。」
これでひとまず当面の危機は回避することが出来た。
全員がここで一息つく。
「そういやばんさん、白い拳銃はどうなったんだ?」
「うむ、これなんだが・・・。」
ばんじろうが懐から白い拳銃を取り出す。
報告にあった通り、形はもう一つのアークとまったく同じである。
「ほう、これがねぇ・・・。」
『やい、じろじろ見るんじゃねーよ!』
そこで聞こえるはずのない場所から声が響いた。
「俺の仲間だ、そう邪険にするな。」
『む、旦那がそう言うんなら仕方ねえ。俺様はガンフリード、ガンちゃんとでも呼んでくれ!』
「銃が・・・」
「しゃべった・・・!」
周囲の驚きをよそに、ばんじろうが説明を始める。
「能力は、持ち主の体の異常を修正する能力だ。肩も手に入れてすぐに治ってしまったからな。結構な能力だろう。」
『よせやい、そう褒めるなって!まぁよろしくな!』
なぜかテンションの高い無機物にペースを握られたまま話が終了し、一同は頭の処理が追いつかない。
「はぁ・・・。」
「よろしく・・・。」
『おいおい元気がねぇなぁ大丈夫かそんなんで!』
かくして心強い味方を得たばんじろうが大江戸小隊に復帰したのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
戦いから一夜明け、司令部をバルドフェルドへと移した後もそれに伴う処理と報告とで慧音先生は忙殺されていた。ドックンドールは地下の牢屋に入り、処分の通知を待っている状態だ。本部からの通信があるたびに慧音先生は処分についてのことかと身構えてしまい、雑務の処理のスピードも鈍り気味である。
ここで、またバルドフェルド要塞へと通信が入る。
「司令、通信です。」
「誰からだ?」
「・・・てんこあいしてぬ司令からです。」
「そうか・・・。」
軍の上層部が浮き足立っている今、てんこあいしてぬは実質軍の最高責任者である。
そのてんこあいしてぬからの直接の通信ということは間違いなく処分のことについてであろう。
「・・・スピーカーに繋げ。」
「了解。」
『やぁご苦労だったね慧音くん。』
「いえ、とんでもありません。それで直接の通信ということは・・・。」
『あぁ、君達の処分について通達する。』
要塞の司令部に緊張が走る。
全員が慧音先生が捕まっていたこととドックンドールがとった行動について知っている今、誰もがそれを気にしていたのだ。その場にいた全員が手を止め、てんこあいしてぬの次の言葉に耳を傾ける。
『まず慧音先生、キミの処分は期限付きで司令の任を外す。そしてドックンドールについてだが・・・』
生きてさえいてくれればいい、そんな気持ちで慧音先生が次の言葉を待つ。
しかし、次の言葉は誰もが全く予測していないものであった。
『彼も副指令の任を期限付きで外れてもらう。処分は以上だ。』
これは慧音先生とドックンドールが全く同じ処分ということだ。
司令部にざわめきが走る。
『その期限についてだが・・・』
「あの、それは一体どういう・・・!」
『まぁ話は最後まで聞きたまえ。期限は今日の午後五時から明日の朝八時まで。その間君達は軍人ではないということさ。』
「実質お咎めなしなのでは・・・?」
『いやいや、その間は司令でも副指令でもないんだ。存分に決着をつけるといい。』
てんこあいしてぬの声はすこし楽しそうだ。
決着とは何のことだろうか、慧音先生が頭を捻っているといつの間にか施設移転の指揮を執っていた大江戸ハーマイオニーがやってきていて紙の束を慧音先生に手渡した。
今回の件の報告書らしきそれをパラパラとめくると、指輪云々の会話が忠実に、余すことなく、さらには下線を引いて強調までされた状態でてんこあいしてぬへと報告されていた。
これを読んだ慧音先生が大江戸を怒鳴りつけようと顔を真っ赤にして立ち上がったが、大江戸ハーマイオニーの姿は既に司令室から消え失せていた。怒りのやり場を見失ったまま慧音先生が椅子に腰を下ろす。この報告書が上へと提出したものであるならばてんこあいしてぬの態度にも頷ける。
『もう逃げられないからねぇ・・・十分処分に値すると思うけどね?』
「本当に・・・なんてことを考え付くんですかあなたは。」
『いや褒めるな褒めるな!うーん私も指輪を送りたくなってきたねぇ。和鬼くん、どんな指輪がほしいかね?』
『今の気分だけで言うならメリケンサックが欲しいですわ。』
『ハハハ冗談がうまいね!・・・まぁそういうこと。今日の終業から明日の朝までは最低限の人員以外の基地の人間全員を休ませなさい。』
それだけ言うと、後は任せると言わんばかりに通信は切れてしまった。
休みという言葉に全員が目を輝かせるが、慧音先生にとっては気が重くなるものでしかない。
ため息を漏らす慧音先生にドックンドールが慰めるようにポン、と肩に手を置いた。
「いいじゃないか。処分は軽かったんだし。」
「まぁそうだが・・・ってお前どうやって地下牢から出てきた!」
「さっき大江戸が出してくれたよ。その時に処分の内容も聞いた。」
その言葉に慧音先生が耳まで真っ赤にして俯いてしまう。二人の成り行きに周りの隊員たちが手を止めて注目しているのに気付いた慧音先生が照れ隠しなのか、声を荒げる。
「お、お前達!ボサッとしてないでさっさと仕事をせんか!終業からきっちりと休みたいのならば、それまでに今の仕事を全部終わらせなくちゃいかんのだぞ!」
成り行きをニヤニヤと見守っていた隊員たちが慌てて仕事に戻る。
慧音先生はぜえぜえと肩で息をして椅子に座りなおしてから仕事に取り掛かった。
「お前もボーっとしてないで倉庫の整理の指示でもして来い!」
「はいはい、了解しましたよっと。」
そう楽しそうに言うと、ドックンドールが司令部を出て行った。
結局、大江戸小隊と翁小隊、エミー小隊のアークの能力の使用なども手伝って仕事の量も多かったがなんとか終業時間には全てを片付けることが出来た。
そして西の駐屯所と要塞の食料、翁小隊が共に運搬してきた食料の在庫をチェックした結果、保存しておくにはスペースが足りないと判明したのでせっかくだからと今日の夕食に盛大に振舞われることとなった。全員が一度に食べるとなると食堂では場所が足りないので中庭での夕食となり、実質立食パーティーになってしまっていた。
バーベキューコンロなども総動員しての宴会とみまごうばかりの規模である。
「あっ!そのお肉ウチが育ててたやつなのに!」
「それなら名前でも書いとけよ、分からないから喰っちまったじゃないか。」
「なに子供みたいなこと言ってるんですか!大事に育ててたのに!」
「子供みたいな奴が何言ってやがる!取られないようにしときゃよかっただろうが!」
「こ、こども・・・!もう許しません!吹き飛ばしてやるー!」
「上等だ、かかって来いよちんちくりんが!」
「ちんちくりんって言うなー!シルフ!あいつを吹っ飛ばすですよ!」
「黒鉄丸!・・・って部屋に忘れて今持ってねー!?」
ぎゃあああああというB.B.の叫び声と爆発音が会場となっている要塞の中庭に響き渡るが、それを意にも介さないほど宴会は盛り上がっていた。
誰の顔も要塞を取り戻したことと、それによって戦争が終わりに近付いたことを喜んでいる表情だ。
そんな中、慧音先生は中庭の隅の植え込みの影に隠れてちびちびと酒を飲みつつおいしい料理をつついていた。
エミーと大江戸ハーマイオニーも一緒である。
「まったく戦争中にこんなことをやっている余裕があるわけないだろうに・・・。」
「まぁまぁ、腐らせるよりかはいいじゃないですか。」
「皆さん楽しそうですし、それに今は司令でもなんでもないんでしょう?」
「むぅ・・・。」
慧音先生は終業のチャイムが鳴ると同時に逃げるように司令部から出て行き、宴会が始まって少ししてからこっそりと中庭に現れたのである。そこで一人で居ると目立つので、近くを歩いていた大江戸ハーマイオニーとエミーを隅へと呼んで二人を隠れ蓑にしつつ宴会に参加しているのだ。
もっとも、隠れ蓑にする代わりに小言を言われているのであるが。
「そろそろ覚悟を決めてはどうです?」
「ドックンドールさんがさっきあなたを探してらっしゃいましたよ?」
「うぅ・・・。」
「なんだ、ここに居たのか。」
三人の姿を見つけ、ドックンドールが近付いてくる。
慧音先生が咄嗟に逃げようとするが、左右からエミーと大江戸ハーマイオニーががっしりと捕まえる。
「お、お前達!謀ったな!?」
「俺が頼んでおいたんだよ。」
「それじゃごゆっくり~。びびさん救助しないと・・・。」
「少々羽目を外しすぎてますわね・・・。」
やることはやったとばかりに大江戸ハーマイオニーとエミーがAAAとこあくまがガレキに埋まったB.B.の救助をしている方へとそそくさと離れていった。
二人の間が居心地の悪い空気で満たされる。
「その、なんだ?過程はどうあれ結果はよかったじゃないか。」
「ふん、結果的にはな。」
「まぁそう言ってくれるな。で、だな?がっついてるようでアレなんだが、答えが欲しいかなー、とか思ったりしてな?」
「ぐ・・・。」
そこの異様なじれったい雰囲気を感じ取ったのか、中庭の隅の二人に少し注目が集まり始める。慧音先生がその視線に気付いて俯きかけたその時、中庭の中心から見て、二人が居る側とは反対側の空に大きな花火が上がった。
二人に集まりかけていた視線が全てその花火へと向けられる。
「誰が上げてるんだ・・・?近くの一般人か?」
「そんなことは今はいいじゃないか、綺麗なんだし。」
ドン、ドン、と続けて花火が上がる。
中庭の隅では、その音にかき消されそうな慧音先生の声が、確かにドックンドールへと届いていた。
「・・・その、なんだ。やぶさかではないぞ?だが私にも心の準備があってだな・・・。」
「ああ、それだけ聞ければ今は十分だ・・・。ずいぶんと遠回りした感じはするけど。」
「む、いや、すまないとは思っているのだぞ?先延ばしにしすぎていたとは思うし・・・。」
「へぇ、じゃあ何かしてくれるのか?」
「・・・何をしろというんだ?」
「それはちゃんと考えてもらわないとね?」
「うぅ・・・。」
ドックンドールが壁に寄りかかったまま、手にしたコップに注がれた酒をちびちびと飲む。
対する慧音先生はコップを両手で握り締めるように持って俯いたまま、花火の音をバックに久々に迎えた軍人ではない二人の時間が流れている。まわりは全員花火に夢中になっているから、二人に注目している者はいない。
ここで慧音先生が決心したようにコップの中身を一気に飲み干し、ドックンドールのネクタイを掴んで引っ張る。
微妙な距離感を残していた二人の距離が一気に縮まる。
「その、なんだ・・・。お前は結構昔から知り合いでだな・・・?」
「そうだな。」
「二人で居ることも多かったけど、別に友達のような感じで見てたんだがな?」
「ふむ。」
「まぁ、いつの間にか、その、隣に居て欲しく・・・なったりしてだな?」
「ほうほう。」
その後もネクタイを掴んで引き寄せ続け、視線をさまよわせたまま慧音先生の愚痴は続いた。
しかしその間も段々と引っ張る力が強まり、二人の間の距離は縮まってゆく。
「それでいて成績が・・・あぁもう止めだ!」
「自分でやっておいて何を言ってるんだよ。」
ここで至近距離で二人の視線がまっすぐにぶつかる。
「うるさい!お前はバカでずるがしこくて・・・・・・っ恥ずかしいから目を閉じろ・・・!」
「それは命令ですかな司令官殿?」
「っ・・・おまけに意地悪だ・・・!」
ドン、とひと際大きな花火が上がる。
手からネクタイが離れても二人の影は重なったまま、ドン、ドン、と花火が上がり宴は続いていく。
『旦那もお人好しですねぇ。色恋沙汰の手助けなんかをしてやることないのに。』
「そう言うなガンフリード。今回は迷惑をかけたからこのくらいはな。」
要塞の外、周囲に茂った森の中の少し拓けた場所でばんじろうがアークを使って花火を撃ち上げていた。酒とつまみを確保して、慧音先生の居る場所にドックンドールがやってきたのを確認してからここへやってきて、タイミングを計って花火の撃ち上げを行っていたのだ。
新たな戦友も少々うるさいところもあるが、喧騒から離れたこの場所では丁度いいだろう。
何十発と撃ち上げたところでアークを懐にしまい、その場に座って酒をまた飲み始める。
もう一方の銃のホルダーから声が響いた。
『それにしてもアークで花火を上げるなんて考えもしませんでしたぜ・・・。』
「なに、条件さえごまかせば何でもできるさ。」
「ここにいらしたんですね~。」
ガサガサと草を掻き分け、一人の女性兵士がばんじろうが座っている広場へとやってきた。
その手にはさらに綺麗に盛られた料理と酒の瓶、二人分のグラスを持っている。
「あなたは・・・」
「申し遅れました、わたくしぽきと申します。以前に一度・・・。」
「ハイド湿原での戦闘で一度お会いしましたね。」
「覚えていてくださったんですか?もう一度改めてお礼をと思いまして・・・。」
「あの時言ったとおり礼など無用だよ。俺に構う必要などないさ。」
「わかりました。では好きにさせていただきますね~。」
そう言うと、ぽきはばんじろうの横に腰を下ろした。
目を丸くするばんじろうをよそに、ぽきが空になったばんじろうのグラスに持参した酒を注ぐ。
「もの好きな人だ・・・。」
「いえいえ♪」
先ほどまでうるさく騒いでいたガンフリードは一言もしゃべらない。
空気の読める新たな相棒に苦笑いを零しつつ、ばんじろうが酒を呷る。
こうして酒と、勝利に酔った夜は更けてゆく。
戦争の終わりも見え始めた今、これからさらに激しくなるであろう戦いを忘れ、宴は朝まで続いた。
あとがき
さて、一週間上げるのを先延ばしにしたらかんなり長くなってしまったジャギ同盟SSの第二話で御座います。
ばんじろうです。
今回もキャラがかなり多いです。どうしてもその人に対しては固定されたイメージというものが存在するので学園記の方とキャラが似ている方もいらっしゃいますね。全く違う方もいらっしゃいますけれども。
そしてたぶん今までで最長のSSとなっていると思われます。修正してたらいつの間にかね・・・
そしてこれを読んだ未来のドックンさんから叫びが聞こえてきたのでお答えしようかと思います。
○ド→ドックンドールさん ○ば→ばんじろう
ド:何でまた僕がこんな役のSSなんだ・・・!しかも甘ったるい・・・!
ば:いやー、司令と副指令って言うとどうしてもこの二人しか思い浮かばなくて・・・。
ド:他にも色々あるでしょう!
ば:学園記五話の二人がかなり気に入ってるんですよね・・・
こんな感じでしょうか・・・。(勝手に)出演いただいたドックンドールさんに感謝。
なんで私の頭の中はこんなにもピンクラブコメワールドなんでしょうね・・・。
では今回も用語集を設けさせていただきました。
脳内設定も多いですしここでしか出てこない設定もあると思うので辻褄合わせに劇中で使えなかった設定もここで記しておきます。
また何か~の設定を書いて欲しいということがあったら遠慮なくおっしゃってくださいな。
あんまり叩かれるとへこみますが、感想などあれば頂けると嬉しいです。
それではまた第三話で!
人物設定、用語解説
『慧音先生』
大江戸小隊の四人の一年先輩。面倒見がよく曲がったことは許さない。しかし一度言い出したら融通が利かない面もある。規則で自分を縛ってしまうタイプで、就業時間などは必ず守るし仕事が残っていれば迷わず残業する。部下からの信望も厚いが、それに応えようとして一人で走りすぎてしまうこともある。
戦闘能力はそこそこだが、アークは持っていない。
『ドックンドール』
慧音先生と同じく大江戸小隊の一年先輩。気さくな態度で後輩人気が高い。成績優秀だが、どこか抜けている面を見せるがそれはわざとである。慧音先生のサポートをするために成績などを調整したりしており、それを巧妙に隠しているが実は慧音先生はそれに気付いている。剣術の達人で世界大会に出場を決めたこともある。しかし本人はその道で上に立つつもりはなかったので辞退している。
・アーク【 エクステンドギア 】
同じ相手と戦えば戦うほどに使用者の速度を増していくという刀身の細い剣。
もっとも素の状態でもドックンドールの速度ならば問題ないのでいつもはただの丈夫な剣となってしまっている。
『ファンクラブ』
さまざまなファンクラブが存在し、掛け持ちも可能でかなり節操のない集団となっている。
軍外部からでも入会が可能で、軍の広報などは高値で取引されているとかいないとか。
大江戸小隊の各ファンクラブの人数と内訳は以下の通りである。
・大江戸ハーマイオニー
会員数:1248 男:588人 女:660人
最も人数が多く、子供からの人気も高い。
・B.B.
会員数:854 男:811人 女:43人
B.B.を慕う男の集団、ファンクラブ内ではB.B.は『アニキ』と呼ばれている。
・AAA
会員数:751 男:39人 女:712人
戦場を駆け抜けるAAAはとても絵になる上にイケメンなので女性の比率がかなり高い。
・ばんじろう
会員数:506 男:223人 女:283人
通好みとされるファンクラブ。隊長や軍上層部にも会員が居るとか居ないとか。
また、薙刀四人のエミー小隊にもファンクラブが近々発足するらしい。
秘密裏に結成されていた慧音先生とドックンドールのファンクラブは最近活動を停止したようだ。
『エミー』
エミー小隊の隊長。指揮能力、状況判断能力共に高いレベルで、ゆくゆくは士官候補生として有望視されている。ただし、男性があまり得意ではないので上司の計らいで女性ばかりの隊になった。
可愛いものに目がないが、それを恥ずかしがっており人目のないところで狐をよく撫で回している。
・アーク【 シヴァ 】
氷を操る能力のついた薙刀。空気中の水分を凍らて氷の刃を作ることも出来る。生体相手だと殺傷能力がかなり高いが、修羅兵相手では凍らせることも出来ないので氷の質量を増大させて相手を粉砕する戦法を取っている。
実は使用者のエミーは寒いのが苦手。
『こあくま』
エミー小隊の切り込み隊長。性格は活発そのものだが無謀ではない。突破力に優れており、先陣を切って敵に突っ込んでいく。スカートが苦手なので軍の制服も男性用のものを好んで着用している。袖をまくるのが癖。
笑顔の時にのぞく八重歯がチャームポイント。
・アーク【 イフリート 】
炎を操る能力を持った薙刀。その刃から出た炎は使用者の意識したもの以外を燃やすことはない。瞬発的に燃え上がるので周囲の酸素が足りなくなって室内で多用すると酸欠を起こすこともしばしば。
金属を溶かすまで温度を上げることも出来るので修羅兵相手にはかなりの威力を発揮する。
『ぽき』
エミー小隊のサポート役。本人の気性とは裏腹にかなりの素早い動きを見せる。間延びしたしゃべり方をするためにどんくさそうに見られがちだが電子機器に対してかなり強い。
軍のレーダーシステムを構築したのもぽきで、小隊から外れて別任務につくことも多いが他の部署に移ろうとはしない。
・アーク【 ヴォルト 】
雷を操る能力を持った薙刀。雷とは言っても電子機器へのアクセスもこなす万能さを見せる。修羅兵は電気に対して耐性があるのでどちらかというと拠点の掌握に用いられることが多い。
しかしぽきに薙刀の心得があるので戦力にならないわけではない。
『狐』
士官学校を卒業したばかりの新兵。エミーの強い推薦によりエミー小隊へと配属された。
視覚、聴覚、嗅覚など五感が人よりも優れているために偵察任務につくことが多い。しかしそれ故に敵の内部に入りすぎてしまい、危機を招いてしまうこともある。耳が弱点。
・アーク【 シルフ 】
風を操る能力を持った薙刀。風というよりも空気を操っており、圧縮された空気の塊を放出することで敵にダメージを与える。他にはカマイタチなどを作り出すことも可能だが、大味な攻撃が多いので乱戦では最大限に効果を発揮できない。
『サイ』
修羅の指揮官であり、ハクと並んで修羅の幹部である。空を飛ぶ能力を持っており、武器として銃を使用するが、その威力は腕に持てるサイズの銃にしては異様に高く、殺傷能力がかなり高い。
アーク【 ガンフリード 】 所有者:ばんじろう
ばんじろうのアーク『銃工』と同じ形をしたアーク。元々セットで使われていたらしい。
持ち主が所持している間は、傷ついた箇所を修復する能力を持つ。その能力は破格の能力であり、切られた腕も時間が経てば修復してしまうほどの力を持つ。しかし痛覚はそのままなので大抵の場合はその前にショックで脳がやられてしまう。
意思を持ったアークであり、その性格はおしゃべりで自信過剰。気に入らないことに対してはストレートにものを言う。所有者を選ぶ傲慢さもあるが、基本的にはいい奴で空気も読める。
アーク【 双竜刃 】 所有者:翁
龍をかたどった双剣。かなり小回りの効く武器で、投げても自動で手の中に戻ってくる。
すさまじい切れ味を持ち、軽く薙いだだけで修羅兵の装甲を両断する。また持ち主の身体能力を向上させる効果もあり、敵を翻弄する戦い方を得意とする。
コメント欄
- またですか……orz しかも、言いたい事を言われてしまっているしorz 僕に逃げ場はないのか……orz にしても、こうして完璧超人っぽく自分を書かれると物凄い、恥かしいですねぇ……。と、自分の事はここまでにして。ばんじろうさん、役どころが美味し過ぎますw 格好いいとしか言い様がありませんよ! そして、B.B.さんと狐さんのコンビは正にデコボコ。まごうことなく、デコボコで吹きましたw 皆、結構、キャラが変わっている中で狐さんのキャラ変更だけ妙に馴染んでいるのは何故だろうw 今回も楽しませていただきました! -- ドックンドール? 2009-03-08 (日) 10:02:46
- こ・れ・は・・・ゲーム化を希望ですね← いや、楽しませてもらいましたw うちはまたでこぼこコンビ(上の人談)なるものを組まされちんちく言われ・・・いいぞもっとやれー← そして熟年夫婦(Ⅴ話より)で糖分補給。らぶらぶだね!← -- きつね? 2009-03-08 (日) 12:30:57
- ほとんど方のキャラが変わっているにも関わらず違和感なく読めた。不思議w 狐さんとB.B.さんのコンビが面白かったしドックンさんと慧音先生のカップリングも楽しませていただきましたw しゃべる修羅兵、ハクサイ(ぁ も何か気になるですょ・・・・。 -- リィ? 2009-03-08 (日) 19:43:46
- とりあえずB.B.さんのファンクラブ入っとく -- 大江戸ハーマイオニー? 2009-03-11 (水) 23:53:50
- B.BさんのFCに入らせていただきます ヽ(`Д´)/ いやいや今回も面白く読ませていただきました。 学園記とは別の面白さですね。 落とし所もしっかりしてるし。 あと自分、このSS内での自分がとても好きですw これからもあの調子で頑張らせてやってください。 -- てんこあいしてぬ? 2009-04-06 (月) 23:00:22
- B.B.さんと狐さんいいコンビだなぁ・・・w 慧音先生とドックンさんはニヤニヤしながら見てました。それをドックンさんがこれを読んで、どんな風に叫んでいるのかを想像したら、もっとニヤニヤしました。ばんじろう先生が渋いいいいいいッ!キャー!バンジロウセンセー!! 次回も期待して待ってますw -- 酒飲みスーさん? 2009-04-10 (金) 15:57:46
- B.B.さん×狐さんがなんかイイ感じのカポーに…!? ちょっとB.B.さんのキャラが違う気がするけど、気にしたら負けなんですねわかりますw 慧音先生×ドックンさんにニヤリッ ばんさんのムード作りもぐっじょーぶb ファンクラブ一つに絞れない…; 二股かけちゃダメかなぁ(蹴 -- オワタ☆残骸? 2009-04-24 (金) 11:17:36