Lollipop candy

Last-modified: 2009-03-05 (木) 00:37:41

目次

注意書き



当SSはネちょ学SSです。
出演者のお叱りを受けた場合、謝罪と共に削除させていただきます。

Lollipop candy





「ねぇ、何か言ってよ」


 言葉に詰まる朧月を、ぱたもふが泣きそうな顔で見つめていた。
 朧月の手にはぱたもふから送られたバレンタインのチョコレート。
 これを渡された時にこんな展開になるとは朧月は思っていなかった。


「どうして、私を見てくれないの?」


 刺々しい雰囲気が吐き出される。
 ぱたもふの言葉一つ一つが朧月の心に刺さる。
 だが、朧月にはわからなかった。
 朧月は確りと、ぱたもふの声を聞き、ぱたもふの姿をその目で取られているはずだった。
 私を見て、と責められるような事は何もしていないはずだ。
 しかし、今、そう責められている。
 どういう事なのか、と朧月が思考を回す間にぱたもふが言葉を紡ぐ。


「私には朧月君の背中しか見えないよ。私が我が侭を言わなきゃ、ずっと、そうしてるんだもん。なんで、私を見てくれないの?」


 朧月にはそんな気はなかった。そんなつもりもなかった。
 それ以前に、ぱたもふが何を言いたいのかわからなかった。
 ぱたもふの我が侭には何時も応えてきた。
 何か足らなかったのだろうか。何か違う事をしてしまったのだろうか。
 朧月の思考だけが空回りする。


「何で、私に甘えないの? 何で、私にどうして欲しいか言ってくれないの? 朧月君一人で全部抱えて。一方通行過ぎるよ」


 そう言われて、朧月は気付く。
 朧月は求められる事に、幸せを見出してしまっていた。
 それこそが、ぱたもふが朧月を責める最大の原因だった。
 求められる幸せで満足してしまっている朧月は、求める事を忘れてしまっていた。
 どこまでも受動的な恋人にぱたもふは怒っているのだ。
 それで愛されていると、誤魔化せるだけの愚かさがぱたもふにあればよかったが、求めなければ背を見せ続ける恋人の姿に酷い寂しさを感じてしまった。
 それは、人形を愛でるのと変らないからだった。それは、恋人という関係と言うよりも主従と言った方がいい関係だった。
 だから、ぱたもふは怒る。


「告白の時だって……! 告白の時だって、そうだった! 私は言ったよ? 戦う前の日に。憶えてる?」


 朧月は思考を巡らせる。
 ぱたもふと恋人となる為の戦い。
 あの時、朧月は勝利し、ぱたもふと付き合う権利を得た。
 そして、本当に自分でいいのかとぱたもふに問うた。
 それの何が悪かったのだろう。
 その前日に何を言われたのだろう。
 朧月は必死に思い出す。
 ここで思い出せなければ、恐らくこの関係も終わってしまう。
 そんな思考が朧月を焦らせる。


「……思い、出せないの?」


 ぱたもふの寂しそうな、悲壮に満ちた言葉。
 朧月は彼女のそんな表情をさせたくなかった。
 恋人となったときから、ずっと笑顔でいてもらいたかった。
 その為に努力してきたつもりだった。
 だが、ぱたもふは今にも泣きそうな顔をしている。
 朧月は自分の不甲斐なさを憎んだ。
 憎んで、やがて、自分そのものが酷く疎ましくなる。
 そんな思いを一人で抱え、それでも朧月は思い出そうと焦る。
 そして、ようやく思い出し、あの告白の時の行動を後悔した。


「……俺となら、勝負なしでも付き合いたい」


 後悔と共に吐き出される答え。
 それはぱたもふからの告白だった。
 朧月は一度、告白を受けているのだ。
 だが、それを一度、断っている。
 その上で、ぱたもふと恋人となる権利を賭けて戦い、勝利し、本当に自分でいいのか問うたのだ。
 その事実はぱたもふにとって、残酷過ぎた。
 しかし、ぱたもふはそれを飲みこんで、朧月と付き合う事を選んだ。
 その事実に耐えて、ぱたもふは朧月と付き合い続けた。
 確かに恋人として反応が返ってくる日々は幸せだった。
 幸せだったのだが、こちらから求めなければ、愛される事もなかった。
 いや、朧月は朧月でぱたもふを愛しているのだろう。
 ただ、愛し方がわからないのだ。
 だから、求められるがままになっていた。
 それが二人を擦れ違わせる原因だった。


「……私は、朧月君が好き。朧月君は何時も、俺もぱたもふさんが好き、としか言ってくれない。何時になったら、俺はぱたもふさんが好きだって言ってくれるの?」


 それは愛を求める言葉。
 ぱたもふは愛されたかった。
 誰にでも愛されたいわけではない。
 恋人に愛されたいのだ。
 朧月の愛は受動的。
 ぱたもふが求める愛は能動的。
 恋人は人形でも主従でもない。
 互いを認め合い、互いを尊重し、譲り合い、我が侭を通す。
 朧月は尊重し、譲るだけだった。
 それでは駄目なのだ。人形と変らない。
 そんな愛され方にぱたもふは疲れてしまったのだ。
 愛を求める事に疲れてしまったのだ。
 朧月はようやく、その事に気付いた。気付けた。
 だから、朧月は口を開く。


「俺は、ぱたもふさんが好きだよ」


 精一杯の言葉。
 今までは返事でしか言った事がない言葉。
 何時もは、俺も、と言っていた言葉。
 だが、今回は違う。
 俺は、と自分から言った言葉だ。
 俺は、と言って欲しいと言われたから言う自分を自嘲しながらも、朧月は素直な気持ちを精一杯に篭めた。
 精一杯の気持ちが届くだろうか。そんな不安が朧月を襲う。
 朧月は臆病だった。
 求める事は朧月の心に多大な恐怖を齎す。
 だからこそ、求めなかった。だからこそ、求められる事が幸せだった。
 だが、それだけでは駄目なのだ。
 朧月はそう知ったからこそ、もう一度、精一杯の気持ちを表す。


「俺は、ぱたもふさんが好きだ」


 そう言って、朧月はぱたもふの手を握り引き寄せる。
 それから、キス。
 奪うようなキスにぱたもふは驚き、目を閉じる暇さえ与えられなかった。
 しかし、ぱたもふはそんな強引なキスに満足した。
 奪うようにしながらも、結局は啄ばむようにしかできなかった朧月らしさも含めて。
 唇を離すと、朧月の真っ赤に染まった顔があった。
 ぱたもふはその表情が堪らなく愛しくなって、朧月の唇を奪う。
 奪い合うような愛。
 愛を待つだけだった二人に、チョコレートの苦味はいらない。
 愛を待つだけだった二人に、飴を舐め溶かす時間はいらない。






 噛み砕いたロリポップ・キャンディ。
 それは鋭く、痛くて、血の味がした。
 でも、それは確かに甘かった。





後書き





バレンタインSSです。
当日に書いて、当日に上げてます。
というか、何で僕、こんなの書いてるんだろうね!


因みにこのSS。
最後の三行だけ書ければ満足だったのです。
ぶっちゃけ。


……他にいう事ないや。
後書きは、いつも書く事なくて困るぜー!


では、最後にご出演者の皆様と!
お付き合いいただいた読者様に最大限の感謝を!
ありがとうございました!





感想スペース

コメント欄:

  • こういうのもいいかもですねー、僕案外こういうの好きなほうだったりするwこれからもSS楽しみにしてるですよー -- ぱたもふ? 2009-02-14 (土) 15:07:54
  • おーぼろさんが…wヘタレじゃないおーぼろさんはかっこいい(真面目に。じれったい流れで最後のあの結末、綺麗な展開に楽しませていただきました。 -- 鈴にゃん? 2009-02-14 (土) 15:09:44
  • 確かに言われてみれば、あの時も・・・・引き込まれる文章でしたw今後もSS楽しみにさせていただきます -- おぼろ? 2009-02-14 (土) 22:23:02
  • ヘタレさんが受動的で一皮剥けたと思ったら全く剥けて無かったがどこもおかしくは無かった(何)妬ましい二人に幸あれ。あったらあったで妬むけど(ぉ -- 当身達の宴? 2009-02-17 (火) 01:56:24
  • うむ~できれば当日に読みたかったですねこれはw うん、甘い!この時期にぴったりの作品ですね~所々に見える詩的な表現。私は大好きですw -- B.B.? 2009-02-18 (水) 22:18:09
  • 甘す!だがそれがいい!!ww これは祝福せざるを得ないのぜb -- きつね? 2009-02-19 (木) 22:51:36
  • 朧さん…やるじゃない! ドックンさんの書く甘い話、やっぱりいいなぁ…。ちょっと頭の中で映像化してしまいました (^-^ -- オワタ☆残骸? 2009-02-28 (土) 13:56:21
  • あまあまwww ドックンさんの餌食になった俺が華麗に感想ヽ(´ー`)ノw ちなみにぱたもふさんに勝ったら恋人or主人になれる権利は空気読まずに俺がゲットしてしまったという苦い過去が…。 -- てんこあいしてぬ? 2009-03-05 (木) 00:37:05