シナリオ/世界移動シナリオ-異空幸福追求編のイベント。
ワンダフル・アタック その1
- 主人公がワンダフル・ヘヴンに所属した状態でイベントの日に達する
その現象は、麟によるとかつてS.Q.U.I.D.が出現したときに観測されたデータと似ているという。
落ちた場所を計測すると、そこは大戦の墓場と呼ばれるイザヨイローン要塞跡だった。
たまたま近くにいたので急行できたこともあり、自分たちが一番乗りのようだ。だが、クルーは不自然さを感じる
少し直せば使えそうなキャノン砲のような武器など、貴重な物品を少数だが拾うことをできた。
ここは定説としては、いくら掘り出してもガラクタと暴走メカしかなく、
危険度ばかり高いということで、どの勢力も興味を持たず放棄されていたはずだが……
調べていくとどうやら、落雷の衝撃で地中深くに埋まっていた物が散らばったようだ。
何にしても目的はそれではないので、ガラクタ集めもそこそこにS.Q.U.I.D.を求めて進んでいく。
「なんだこりゃ? S.Q.U.I.D.じゃないぞ」
「次元連結システム、という名前か。何かのエンジンらしいな。S.Q.U.I.D.と同じ技術を使えば今すぐに動かせるようだ」
回収した物体をメカニック班が解析している。これもS.Q.U.I.D.のように何らかの原因で異世界から来たのだろうか?
一方のブリッジでは、どこからか音声と画像が送られてきた。
ウィンドウには大きく「BOS」のマーク。
『あー、こちらブラザーフッド・オブ・スティールの指導者エルダーだ。
お前ら、そこから離れるんだぜ。そこには下手に触れてはいけない危険な物体があるぜ。
金や物品が欲しいなら後で交渉してやるから、とにかく今は離れるんだぜ』
「それって次元連結システムとかいう物体のこと? 残念、もう拾っちゃった」
『何!? それは『人類がまだ持ってはいけない危険なもの』だ。
手に入れた物を全てその場に廃棄し、艦の武装を解除し、即刻そこから立ち引くんだ。
命令に従わない場合は爆撃を行う。爆撃機から確認できる位置にそれを廃棄するんだ。以上!』
エルダーはそれだけ言って通信を切ってしまった。
空は苦々しげに舌打ちした。BOSには過去に何度も『お宝』を奪われており、天子以外のクルーの心象は悪い。
「事情も話さずに、これは『危険なモノ』だから捨てろってことらしいぜ」
「さすがに、『危険なモノ』で頭がいっぱいの奴らは言うことが違う」
ダールとアイザックが皮肉を言う。
《レーダーで敵機を補足。エンブレムを照合。BOS所有の爆撃機です。
このイザヨイローン要塞跡に来るまでのタイムリミット、およそ2時間40分59秒》
麟がレーダーで空飛ぶ飛行機を補足して、位置を画面に映し出した。
「3時間もあるの? やった、その間に逃げよう!」
「いや、逃げたとしても爆撃機が追ってくる。この艦のスピードじゃ飛行機は撒けない。動くのは危険だ」
ピンチである。遥か上空を飛ぶ爆撃機には攻撃が届かず、武装のないワンダフル・ヘヴンでは太刀打ちができない。
これを差し出して逃げるか、抵抗するか……
>反撃しよう
「反撃? 武器もないのにどうやって?」
「武器、まさか、さっき拾った……アイザック、あの武器は使えるか?」
「確かに少し手を加えれば使えそうだが、十分には動かせないぞ。S.Q.U.I.D.だけじゃ出力が足りないんだ」
「出力、そうか……あのエンジンなら!」
湊の案は、先ほど拾った次元連結システムと武器らしき物体を組み合わせるものだった。
武器は古いが使えそうな物が多いし、S.Q.U.I.D.からエネルギーを抽出する技術を応用すればシステムも使えるだろう。
だが、いくらなんでも不確定要素が多すぎる。爆撃されるかもしれない状況でそんな賭けは……
「いい案ね参謀。やりましょう」
天子ちゃん!?
「それ、とても楽しそうよ」
《爆撃機がラインXを突破。依然として接近中。引き返す様子はありません》
爆撃機には「近づいたら撃ち落とす」と連絡を入れておいたが、返信はなかった。
「警告は聞こえているはずだよね? 本当に撃ち落としちゃうの?」
「従うことは到底不可能な命令を出して、逆らったら殺して相手のせいにする。あいつらの十八番だ、気にすんな」
心配そうな空にダールが声をかける。
ブリッジのスクリーンには、相変わらず爆撃機の色のないシルエットが映し出されている。
「上空を飛ばれちゃ、うちの削岩レーザーや爆弾カタパルトといった工具じゃ届かないし当たらないわね。でも……」
「うちには『兵器』がある。やれ、お前ら!」
ダールの指示によって、クルーは一斉に動き出した。
そこは艦の外側に急遽取り付けられ、次元連結システムと繋げられたキャノン砲。
「エネルギー充填100パーセント、システムオールクリーン」
この武器をセッティングしたアイザックが、コンソールを見てシステムをチェックする。
「進路修正。敵機の装甲は物質組成光子共鳴障壁と3rdGの金属系概念によって補強されたビブラニウム合金。
任務の障害となる確率は……0パーセント」
キリコが麟から送られてきたデータを元に演算を行う。
>敵は一直線に向かってきている。簡単に狙うことができる。
湊が銃座で照準をつける。
「終わりにしましょう。『ベクターキャノン』、発射!」
キャノン砲から閃光が轟き、はるか遠くの爆撃機を包みこみ、吹き飛ばした。
「ふん、タフな奴だ」
撃った機体が炎に包まれて落下し、反応がストップすると同時に連絡が入ってきた。
『お前たち、自分が何をしたのか一体分かっているのか!?
次元連結システムを使うなんて……それは人類には手に余るものなんだぜ!
ちょっと貸すんだぜ! 言うことを聞かないと攻撃するぜ!』
「イ・ヤ・よ。説得したいならもっとお話の上手な人間を連れてくるのね。それとエルダー」
『なんだぜ』
「今から倒しに行くから待ってなさい」
天子は通信を切った。
てへ、と天子は舌を出して笑った。
「私、同じ気持ちだよ! あいつら好き放題して、許せない! あいつらは暴力で他人を動かしてるだけだよ!」
空は怒った。
「どうせこうなった以上、どこへ逃げても追ってくるしな……」
老獪なアイザックが苦笑いする
「いいんじゃないか艦長、面白くてよ?」
ダールが楽しげに笑う。
「どうでもいい」
湊はいつもと同じだった。
そしてあなたは、また天子の『いつもの』が始まったか……と肩をすくめた。