イベント/虚ろう叢雲

Last-modified: 2013-09-07 (土) 02:39:21

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


虚ろう叢雲

「嘗て」と「此れから」をクリア後、しばらくして輝夜姫に話しかける。

オロチの不安

オロチが取り込んだ穢れの檻を取り除いてからしばらくして。
主人公が永遠亭を訪れたところ、輝夜姫から「オロチの様子がおかしい」ことを聞かされた。
またオロチに不吉な事が起きているのかというと、

 

「何と言えばいいのか難しいけど…どうやら、不安がっているみたいなの」

 

不安がっている…?

 

オロチが杞憂していた事案はこの前の一件で解決した筈だった。
「忘れられる」ことを忌避していた寂しがり屋の龍神は、それが思い過ごしだと納得して、元の立ち位置へと収まった筈だ。

 

オロチとの「約束」を守り続けた冴月の末裔…冴月麟に、感謝の言葉を述べながら。

 

「少し前にオロチが私たちに声をかけてきたの。
 "よくないものが近付きつつある"…と」

 

よくないもの…?

 

「麟にも相談しようと思っているのだけど…
 良かったら、あなたもオロチに会ってもらえるかしら?」

 

オロチに? ……どうやって?

 

「この永遠亭はオロチの生命の流れである龍脈の直下にある。
 外に出て、オロチに呼び掛けてみて」

 

呼びかける…

 

「オロチはこの国そのものといっていい存在よ。
 会いたいという意思さえ示せば、耳を傾けてくれるでしょう」

 
 
 
 

輝夜姫の要請を承諾し、主人公は永遠亭の外へ出た。
言われた通り、オロチに呼びかけてみる。
最初は声で、次は心中で。次は動作で。
すると……

 

――おい

 

不思議な声が頭の中に降りかかってきた。
男性とも女性とも取れる中性的な声音だった。

 

 

辺りを見回しても、誰もいない。
空耳ではないのは確かだが…
訝しんでいると、先程の声が鳴り響いてきた。

 
 

――そこのおまえ だ。
はたして、きこえているだろうか。

 

――ふしぎなかおをするなよ…
おまえがおれをよんだのだろう?

 
 

それはオロチの声だった。
荒ぶる災厄だったものとは思えない、茶飲み友達に話しかける様な気やすさで
龍神は主人公に語りかけてきた。

 
 

――かぐやひめのはなしを、きいてくれたのだな?
さつきのゆうじんだけはある。

 
 

何故麟の名前が出てくるのか。

 

――りんはおまえのはなしをするときはたのしそうだったぞ。

 

……話し相手をしてもらってたらしい。
一応納得した上で一体何を不安がっているのか、そう尋ねた。

 
 

――よくないものが、このくに に ちかづきつつある

 
 

それについては輝夜姫から聞いた通りだった。
詳しく知りたいと尋ねると、オロチは困った様に答えた。

 

――おれにも、それがなんなのかははっきりとはいえない
おまえたちにわかるように、ことば を えらぶなら…

 

――それは、うつろ を わたりあるくもの

 

虚ろを渡り歩くもの…?

 

――…このせかい に いないそんざい だ
おれには、そうつたえることしかできない
それ は もうすぐこのくに に あらわれようとする
じかん は あまりない

 

――ひとがいる。おまえ の ちからをかしてほしい

 

随分と唐突な頼みだった。
神様に頼まれるのは悪い気がしないが、ややいきなりに感じた。
……何故自分が? 思わずそう返すと…

 
 

――やつらはうつろなかべをとおして、せかいを わたりあるく
おまえ も おなじだろう?

 
 

心臓が跳ね上がるような返事が返った。
主人公の出自――可能性空間移動船を通して、異なる次元からこの世界にやってきた異邦人――を的確に評した指摘。
神様にとっては、その程度の察知は容易とでもいうのか。
オロチの思念は主人公の驚愕を気にした様子もなく、穏やかに語りかけた。

 
 

――だが、おまえはちがう。
おまえは、さつきのゆうじんだ。さつきは、おまえにしんらいをおいている。
だから、さつきがしんじたおまえを、おれもしんじようとおもう。

 

――……だから おまえのちから を かしてほしい
おまえからかんじる つよい つながりを

 

もし、たすけてくれるなら… ねのくに の さかさごじゅうのとう にきてくれ。
やつら は そこからやってくる。

虚無の四神

  • PTを組んだ状態で、根の国の逆さ五重塔のオロチの思念と会話する。
    条件を満たしていると、逆さ五重塔に輝夜姫、永琳、ゲッショー、妹紅、セーガwithヨシカ、麟がいる。
     
     

仲間に声を掛け、逆さ五重塔を訪れると、小さな蛇のような雲が宙を待っていた。
…オロチの意思の一部が顕現したのだ。

 

――まにあったか。もうやつらが うつしよに あしをふみいれようとしている。

 

オロチの言葉に、妹紅がやや不審げに言葉を返した。

 

「本当に来ているのか? それらしい兆候は私にはわからないが…」

 

――おれ は いったぞ。やつら は うつろなかべ を いききする、と。
ふかいなけはい が おれのなか に うごめいている。

 

外敵の存在に僅かな殺意を言葉に滲ませ、オロチが言葉を紡ぐ。

 

――でてこい、おくびょうもの!

 

オロチの意思が、怒号を放った。

 

空気がビリビリと震え、凄まじい風切り音が耳を劈く。
そして、SF映画の光学迷彩が解けるワンシーンように…何もない虚空から巨獣が姿を現した。
巨獣の姿を見て、麟が悲鳴交じりに言葉を漏らした。
その姿はまるで…

 
 

「麒麟…!?」

 
 

その姿は、ひんがしの国を守るために戦い、穢れ、滅びた神獣……麒麟そのものだった。
麒麟に似た魔物に続き、新しい魔物が虚空から姿を現す。
…四神に酷似した、異形の神々が。

 

「四神…滅びた筈では…!」
――よくにているが…ちがう。やつらは……

 

不意に、オロチが言葉を止めた。
最適な言葉が見つからず、ため息をついているようにも思えた。

 

「私たちが戦った麒麟たちとは違う…ということですね? 死人返りでもないようですし」
――そうだ、な。やつらは、おれたち が しる きりんではない。

 

そして、オロチの意思は首をもたげて、何処かへと呼びかけた。

 

――……つちにかえったものたちよ。きこえているか。
おれはこのだいちそのものだ。くに が ちからをちょくせつふるうことはできない。

 

――だけど おれは、おまえたち に なんどもめいわくをかけた。
…くに を まもるためにたたかった おまえたちにも。

 

――それを、なんども くりかえさせるわけにはいかない。
だから、ちからをかしてくれ ひんがしのくに に すむものよ。
そのために おれ も…よろこんで、このちからをふるう。

 
 

次の瞬間、強い清風が根の国を吹きつける。
風が止むが早いか…雲の体を持つ巨大な七首龍が姿を現した。
穢れに取り込まれた黒い体躯ではない、白い雲龍の姿が。

 

その姿を見て、五神そっくりの魔物が吼え、襲いかかる。
しかし、その間に割って入る者達がいる。

 

「まさか、オロチが腰を動かすとはな!」
「この間の件が尾を引いている、ということかしら」
「あらら、蛇だけに?」
「セーガったら、上手い事を言ったつもり?」
「美味しくないの?」
「冗談を言っている余裕はありませんよ。…行きましょう!」

 

助力を請われた以上、こちらも全力で挑まねばならない。

 

――さあ、ちからみなぎる、おれたちがあいてだ!

 
  • 大規模戦闘
    泡沫、哀のまほろば
    勝利条件:チーリンの撃破
    敗北条件:主人公、オロチの戦闘不能
     
    マンティコア族のチーリン(麒麟)とその配下との大規模戦闘。
    チーリンはチンロン(青龍)、スーツェー(朱雀)、バイフー(白虎)、シェンウー(玄武)を引き連れている。
    何れの敵も元々の敵を強くしたような相手。チーリンにはそこそこのリジェネ効果があるため、総攻撃によるラッシュが必要となる。そのため、四神を撃破しつつ、チーリンのHPを削っていく戦い方が基本になる。
    まともに戦うと辛いが、この戦闘ではオロチが味方NPCとして加勢してくる。
    敵対時同様にアホのように高いHPを持ち、普通に戦えば倒れることはまずない。
    また、属性耐性の関係で青龍と玄武の攻撃の大半を無効化あるいは吸収できるため、盾役にうってつけ。
    ただしチーリンだけは敵対心に関係なく、残HPの平均が一番低いユニットを優先的に狙ってくるため注意。
     
     

戦いに敗れ、地に伏した五神は靄のように消え失せた。
あとには何もない。根の国の陰鬱な空気があるだけだ。

 

「どうしてお前も出張ろうと思ったんだ?」

 

先程の戦いを思い返し、呆れたように妹紅がぼやいた。
この龍神はひんがしの国を塵に帰すほどの怪物だ。得体が知れない侵略者が相手とはいえ、その力は圧倒的なものだった。

 

――それでは、いみがない。
おまえたち と ならばなくては、いみがないのだ。

 

「意味…でござるか?」

 

――「かつて」 と 「これから」。

 

――このくに も こんこんとねむっていたあのときとは、ちがう。
これが おまえたちがいう じだい が かわるということなのだろう。
おれも、かわらなくてはいけない。
きりん も そのともがら も すでにきえてしまった。

 

「……」

 

重苦しい沈黙を打破しようと思ったのか、ゲッショーが一声をあげた。

 

「…オロチどの。貴殿は奴らについて勘付いておられた様子。
 あの麒麟と四神にそっくりなもんすたあは…彼奴等は一体何者なのでござろうか?」

 

オロチは天をしばし仰いでいたが、やがて首をもたげ、ゲッショーの問いに応えた。

 

――やつら は このせかい には いないもの。
こことは ちがうばしょからやってきたもの。

 

「面妖な…彼岸からの侵略者でござるか」

 

――やつら の かんがえていることは、わからん。
わかろうともおもわない。
ただ…
――やつらとおなじ、うつろなかべをわたりあるくもの は…
おれ が しらないだけ で このせかい に おおくいるはずだ。

 

周囲は誰も気が付かなかったが…その時のオロチの視線は主人公を向いていた。

 

……すべて が すべて、てきとは、かぎらん が。

 

最後のオロチの言葉は、ほとんどぼやきだった。

雲が流れるように

オロチの懸念、異世界からの敵は、オロチと主人公らの手によって打ち倒された。
もはやここに長居は無用とばかりに、一同は陰鬱な根の国を抜け出す。

 

あの敵は一体何者なのか、何の目的で現れたのか。
オロチは「虚空を歩き渡る者」とだけしか語らなかった。

 

ただ、主人公自身が「それ」に当て嵌まる存在だとすれば…
アレもまた、主人公と同じ「異なる世界の住民」なのだろう。
もっとも、旅行者気分でやってきたわけではないだろうが…。

 

そして、「それ」がこの世界に散らばっているのではないかという言葉。
何が切っ掛けで現れたのは定かではないが…。

 
 

――じき に なるようになる。 くもがながれるように、どうとでも。

 
 

オロチはそう言ってあくびをかくと、とぐろを巻いて空気に溶けてしまった。

 
 

――ひつようなのは…… うん おまえたち の おかげでわかったとも。

 
 

オロチが消えた場所に、ポツンと包みが置いてあった。

 

――こころばかり の れいだ。"じんけんひ" というらしい?

 

…それきり声は途絶えてしまった。

 

「不安がったり意味深なことを言ったかと思えば…わからない奴だ」
「むう……危急は一先ず去ったようでござるが…」

 

包みはともかく、要領を得ないオロチの言葉に首を捻っていると、ふと麟が呟いた。

 

「輝夜姫さま達に手を貸すことが嬉しかったのかもしれませんね」
え?
「あ…いえ。少しだけ、張り切っているように見えましたから」

 

その言葉を受けたセーガが悪戯っぽく微笑む。

 

「そういえば…龍神が自分から声をかけて…しかも不安がってるなんて、
 まずありえないことでしたねぇ。可愛いところがあると感心したものですけど」
「……おいおい」

 

そんなまさかと苦笑する一方で輝夜姫が空を仰ぐ。

 

「『かつて』と『これから』、か」

 

見上げた空には大きな雲が一つだけポツンと浮かんでいる。

 

「変わろうと、自分なりに動いたのね。オロチは…」

 
 

……気のせいか、雲が昼寝している龍神の姿に見えた。

 

 
  • クリア報酬
    両手刀「天羽々斬剣」
    足部装備「ファジンブーツ」