イベント/魔性変化・両島原決戦編

Last-modified: 2012-06-30 (土) 15:06:41
  • 甘味屋の用心棒
    甘味屋『王獣』を訪れる

    主人公が甘味屋で寛いでいると、何やら外が騒がしい。何事かと思って覗いてみると・・・どうやら単なる喧嘩のようだ。とはいえ、店の目の前でやられていたら迷惑極まりない。仕方なく止めようとして、しかし誰かが手で制した。
    「やいやいやい!店ん前でよくもまぁ騒いでくれるわねぇ。せっかく大好物の羊羹を食べに来たってのに、これじゃくつろげやしない」
    青い短髪の女の子だった。威勢良く前へ躍り出て、恐れ知らずに大見得を切る。
    「喧嘩は江戸の華と言うけれど、迷惑だから余所でやってくれませんかねぇ・・・おいィ?われの店先か?」
    当然、というか喧嘩していた男達はそれで止めるわけもなく。女の子を見て拳を振り上げようと・・・。
    「おおっと!女に手を上げる気?まあ私は相手してやってもいいけど、あんたらはそれでいいのかしら?」
    何だと?言われて、男たちが周りを見渡す。何時の間にか野次馬が集まっている。こんな中で暴力沙汰を起こせば、江戸中に知れ渡るだろう。
    さすがに目が覚めたのか、男達はそそくさと帰っていった。
    「・・・ったく、他愛無いわね」
    「地子ちゃんは頼りになるわねぇ。それに比べウチの男どもは・・・」
    言ってやるな、おトヨさん。どうやらそもそも気付いてなかったみたいだから。
    女の子・・・地子は、何事も無かったかのように羊羹を頬張り、歳相応の可愛らしい表情を見せた。

  • ツヅラオ
    地子の好感度を高い状態で甘味屋『王獣』を訪れる

    王獣を訪れた主人公の目に入ったのは地子と美しい尼僧・・・と、犬?
    「ここだ、ここ。てめェの目にはこのイッスン様の姿が入らねェのか?」
    ・・・ああ、「」確かにな、目にも入りそうなサイズだ。
    「うっせェよ!」
    「小さいのは事実でしょ」
    「言ったなァ!?てめェだって一部ちんまいだろ!」
    「要石でコナゴナに磨り潰してやろうか?」
    「へッ!そんなヘナチョコ攻撃に当たるかってんだ」
    「ああん?喧嘩売ってんの・・・?」
    「上等だ、表出ろやァ・・・」
    「2りとも」
    「「何!?」」
    尼僧は店の一角を指す。
    そこには鬼の形相がオーラとなって目に見えそうになっている・・・いや間違いなく実際に見えている店主がいた!
    「なーにやってんだか」
    「あ、あやね殿の頼みとあっては断れず・・・」
    ・・・オーラの正体は鬼のお面を被っただけの、おトヨの付き人だったのだが、それはまぁ置いといて。
    「命が惜しいなら喧嘩は止める事。分かりましたか?」
    「・・・ちっ」
    「仕方ねェ・・・」
    2りとも、悪態を吐きながらも自分の席に座り直してくれた。
    ありがとう、えーと・・・。
    「ツヅラオ、と申します。以後、お見知りおきを」

  • 亡霊の船
    『ツヅラオ』を見ており、かつ30回以上の戦闘を行い、勝利している

    「貴方たちの腕を見込んで、お願いがあります」
    ある日、突然ツヅラオがそう言ってきた。
    「ボイン姉の頼みなら断れねェや!何でも聞くぜィ?」
    「面白そうな頼みごとなら、まあ考えないでもないわ」
    イッスンと地子が交互に答える。特別、断る理由もないだろう。
    「実は・・・私は元々、「キツネ管」という宝具を所持し、その法力によって多くの妖異を退治てきました。しかし、それを疎んだ妖異によってキツネ管は奪われてしまい、今の私に取り戻そうと言うだけの力は無い。そこで、貴方たちの協力を得ることでキツネ管を取り戻そうと考えているのです」
    「妖異退治か・・・いいんじゃない?楽しそうで」
    「その依頼、快諾させてもらうぜェ!ボイン姉のお宝を奪ったバカヤローを懲らしめればいいんだろォ?お安い御用ってェとこだ」
    ・・・そんな訳で、ツヅラオに協力させてもらうよ。
    「ありがとう、心強い限りです。貴方たちに決めたのは間違いでは無かったようですね・・・」
    「で?肝心の、キツネ管を奪った妖異ってのは、どいつなの?」
    ツヅラオは先日アヤが配った新聞を取り出し見せた。記事は、「飛行幽霊船の恐怖!」
    「・・・この船、存唄由号を操る妖異、村紗水蜜です」

    幽霊船と戦う方法

    「協力はいいが・・・どうやって幽霊船と戦うんだァ?オイラも普通の幽霊くらいならどうとでも出来るんだがよォ・・・相手は海の上となると、そう簡単には・・・」
    「ええ・・・キツネ管があれば空を飛ぶくらい造作もないのですが・・・」
    キツネ管を取り返さないと始まらないということか。これは困った・・・。
    「うーん・・・私に心当たりがあるわ」
    「何ィー?それは一体どういうこったィ?」
    「相手が海の上なら、私達は海の中から戦うのよ」
    「?・・・すいません、仰る意味がよく分からないのですが・・・」
    地子の言葉に他の皆は混乱する。海の中、とは・・・?
    「ちょっと、海の中に知り合いが居てね」


    地子の言っていたのは、竜宮の協力を仰ぐ事だった。なるほど、海の相手なら海に詳しい者との連携は不可欠だ。
    早速、沖合いに出て地子が大声で誰かの名前を呼ぶ。
    「イクー!イクー出てきなさーい!」
    「はいはい、そんな大声でなくとも聞こえてますよ」
    その呼びかけへの返答はすぐにあった。海の中から女性が現れたのだ。
    「どんな御用ですか、地子さん?・・・おや、ご友人ですか?」
    「そんなところ。それより、私達を竜宮まで連れて行ってくれないかしら?」
    「竜宮へ?またどうしてそんな・・・」
    一行は事情を説明した。キツネ管、村紗、存唄由号・・・。
    「・・・なるほど、分かりました。その妖異に関しては、乙姫様も心を痛めています。残念ながら竜宮城へ招待することは例え私の友人の頼みでも聞けません。ですが、竜宮は貴方たちの戦いを可能な限り援護すると約束しましょう」


    交渉は取り付けた。期待するしかないが・・・我々のやることは変わらない。世を乱す悪を正すだけだ。
    あとは、存唄由号が現れるのを待つだけだ。

  • 揺り篭の海
    『亡霊の船』後、イクに戦闘の用意が完了した旨を伝える

    ある日の夜、両島原の海を見通せる高台にて。
    主人公、地子、イッスン(とアマ公)、ツヅラオ、イクが、月明かりを浴びて不気味に照り返す海を眺めていた。
    「・・・では、始めましょう」
    静かにイクが言い、無言で頷く。
    イクが手の平サイズの玉を取り出し、掲げる。すると、みるみる内に海が道を開いていく。まるでモーセの十戒だ。
    「この路の先、そこに存唄由号が留まっているはずです。・・・お気を付けて」


    しばらく歩くと、ようやく見えた。割れた海の真ん中にポツンと取り残されている船・・・存唄由号だ。
    船に乗り込むと、早速怨霊たちの厚い出迎えがあるが、ツヅラオの法術によって軽くあしらわれてしまう。
    あっさりと船長室まで辿り着き、そこにいた村紗と対峙する。
    「・・・随分とまぁ、いやらしい手を使うのね。海の無い船に・・・船の無い船長にどれほどの価値があるのか」
    「価値など無かったさ、貴様が妖異に成り下がった、その日からずっとな」
    村紗の自虐的な台詞に、ツヅラオは始めて見せる怖い顔で返した。
    「嫌われたもんだ」
    「そんな存在になってしまった時点で、この展開は運命だった。貴様が我らに討ち滅ぼされる、この展開は」
    「・・・ふ・・・ふふっ」
    ツヅラオの強気な発言に村紗はしかし不敵に笑ってみせた。
    「何がおかしいんだよ、亡霊さんよォ?」
    「あんた達は、私に勝てる気でいる。・・・おかしいと思わない?」
    「おかしいのはあんたの頭じゃないの?私達にどれだけ利があると見えてんのよ」
    「利なら・・・ある」
    そう言って、村紗は奇妙な物体を取り出した。幾つかの長さの違う円筒形が階段状に連なっている物体。・・・キツネ管だ。
    「凄いわよね、コレ。そこの雑魚一匹でこの船を撃沈させただけのことはある・・・」
    雑魚、とは言うまでも無くツヅラオのことだ。事実、今の村紗から感じる妖力は、並みのそれではない。
    「コイツの威力・・・あんた達で確かめてあげるっ!!」

    村紗との戦闘

    4対1とかなり有利な戦況だが、実際そうではない。キツネ管を利用して爆発的に力を増した村紗の攻撃は非常に重く、特別な修練や技が無ければ容易く一撃で倒されてしまう。一発以上確実に耐えられるのは場合によって主人公か、あるいは防御魔法で守りを固めた地子だけ。
    イッスンは当たれば落ちるが、その小ささゆえ極端に当たり辛い。自慢の筆業で攻撃から補助まで広く立ち回れる。
    ツヅラオはPTの中では最も高いステータスを持ち、数々の攻撃術を行使できる。攻めの要は彼女だ。
    一定以上のダメージを与えるとイベント発生。


    「キツネ管があれば、こんなヤワな術は!」
    村紗はキツネ管を掲げると船が動き出す。いや、イクが使った宝珠の効力を無理矢理消したのだ。それで海が元に戻っていく。
    「これで元通り!船長・村紗だ!もう勝ち目は無い!!」
    村紗の船は彼女の半身だ。通常ならありえない動きで主人公らを引っ掻き回す。耐え切れず、夜の海へ放り出されてしまう。
    「くっ!?これじゃあ手が出せない・・・!」
    「やべェぞ!こっちに来る!」
    「捻り潰してあげるよ!」
    船が一行を潰そうとする刹那、突如として海から巨大な龍が現れ存唄由号に激突し、その軌道を曲げる。・・・何だ!?
    「竜宮は貴方たちを援護すると約束しました。始めまして、乙姫です」
    乙姫!?この馬鹿でっかい龍が!?
    「話は後です!皆さん、乙姫様に乗って!いやらしい意味ではなく!」
    さすがイクさんだ、こんな状況でもまるで動じてないぜ!
    「いや、あれはむしろすごく動じてるんじゃないかしら」


    乙姫の背中の上で、幽霊船存唄由号との決戦。
    当然、遠距離攻撃しか届かないが、イクさんの雷と乙姫の攻撃もあって、それほど強敵ではないはずだ。スケールの大きいバトルを満喫すると良い。

    船幽霊の最期

    イクと乙姫が加わったことで幽霊船との戦闘に勝利できた。
    「船が・・・!私の船が・・・!!」
    「キツネ管、確かに返却して頂いた。・・・成仏しろよ?」
    捨て台詞を吐いて船を後にするツヅラオ。
    乙姫の背中の上で一行は、幽霊船が海の藻屑となる瞬間を見た。

    「モウレン、ヤッサ、モウレン、ヤッサ、いなが貸せ」

    乙姫の背にて思わず息を吐く一行。
    ・・・その時、この世と思えぬおぞましい絶叫が響き渡る。
    『%%%%%%%%%%%%%%%%・・・・!!』
    な、何だ!?
    思わず、振り向くと海上に柱が立ち上がり、一ツ目、四本足の――巨大な妖異が姿を現した!
    『・・・%%%%%%%%%%%%%%%%%%%!!』
    驚く主人公達、すると何処からか怨嗟に満ちた女性の声が聞こえてくる。
    『・・・成仏しろ・・・・・・?まだ・・・恨みすら・・・晴らしていないのに・・・成仏・・・成仏だと・・・・・!』
    ・・・!
    『ふざけるな・・・ふざけるなっ・・・! そう簡単に・・・消えてたまるかあぁァッッ!!!
    村紗水蜜・・・!? それに、存唄由号・・・・なのか?
    「しつこい野郎だな!成仏しろって言われたばかりじゃねェか!」
    沈めてやる・・・』『・・・水底に・・・沈めてくれる・・・!!
    「・・・沈むのは貴様の方だ、妖異。 今度こそ叩き潰してやる。」
    ツヅラオが吐き捨て、キツネ管を突きつける。
    それを見るや否や、存唄由号は襲い掛かってきた・・・!
    『・・・%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%・・・・!!!』

    "幽霊船魔獣"存唄由との戦闘

    魔獣に変形した存唄由号と海上で戦う。今回、攻撃の際には乙姫が存唄由号に接近してくれるので遠距離攻撃以外の攻撃も有効。
    前回の戦いと異なり、存唄由号は海上に留まって様々な妖術を多様してくる。
    その中でも『怪光線』が特に厄介。命中率こそ低いがその効果は『PT全員の残り体力5/6を吸収し、衰弱状態にさせる』というもの。
    また、戦いが長引くと村紗が嵐を起こしたり舟幽霊を呼び寄せて、海に引きずり込もうとする。短期決戦を心掛けよう。
    見事倒すと秘宝「打ち出の小槌」を落とす。


    『%%%%%%%%%%%%%%%・・・・』


    咆哮をあげ、溶けるように海中に没する存唄由号。
    苛烈な怨霊の最期にしてはそれはあまりにもあっさりしたものだった。
    ・・・本当に終わったのか?
    「おそらくは。もう妖異の気配は感じません」
    「一見落着って事か、しっかし本当にしつこい奴だったなァ。」
    「ええ、これで海に平穏が訪れればいいのですが・・・」
    すっかり波も静まっていますし。多分大丈夫でしょう。・・・多分。


    ・・・乙姫に乗って一行は立ち去る。後には揺り篭のようにゆらゆらと揺れる海がそこに在った。

  • 九十九尾
    『揺り篭の海』をクリアする

    江戸の町にアヤの新聞が風に煽られて舞う。
    記事の内容は、『旅絵師イッスンと相棒アマ公、尼僧ツヅラオ、ついでに地子と主人公が幽霊船を沈めた』というものだ。ちなみに情報提供者はイッスン。竜宮はイクが謹んでお断りしたため、記事にはされていない。
    一躍時の人だ。特に、以前から目立っていた地子やツヅラオは連日人が会いに来るらしい。
    「・・・オイラんトコには、なんで誰も来ねェんだろうな」
    目立たないからじゃないかな、物理的に。
    「ちくしょう、オイラも頑張ったのによォ!トヨ姉、酒持って来い!」
    溺れる気かよ。
    「失礼します、こちらに地子さんはいらっしゃいますか?よく訪れるのだと聞いて・・・」
    「あン?ありゃァ・・・竜宮のパッツン姉じゃねェか」
    地子を探してるみたいだな。というかパッツン姉て。
    「呼んだー?ああ、イク。地上に来てたのね」
    「先日は、どうもお世話になりました」
    タイミング良く地子とツヅラオが戻ってきた。
    「皆さんに、乙姫様から『竜宮城へ招待するように』と言われまして。村紗を討った礼を改めてしたいと」
    ほう・・・。
    「竜宮に行けるの!?やったー!」
    「海の底なんだよなァ。・・・息出来るよな?」
    「分かりました。喜んで参りましょう」
    「乙姫様も喜びますよ」


    イクさんに連れられ気付けば海の底。両島原に来てからは海の渦に飛び込まされて、次に目を開けたら到着していた。
    「わぁ・・・ここ、本当に海の底?綺麗ね・・・」
    「・・・うん、大丈夫だ、息出来る。オイラ泳げないモンで、初めて海に潜ったなァ」
    「ここが、竜宮・・・」
    皆、それぞれ感慨深そうに辺りを見渡している。
    「こちらですよ」
    先導するイクさんに付いていくと、豪奢な部屋に出た。奥の大きな椅子に綺麗な女性が座っていた。
    「お待ちしておりました、皆様。この姿では始めましてですね、乙姫です」
    普段はアレだが一応は良家の出、地子が恭しく頭を下げるのを見て、慌ててそれに習う。ツヅラオと、ちょっと見づらいがイッスンもちゃんとしているようだ。
    「貴方達のおかげで海の平和は守られました。そこで、何か礼をしたく思います。・・・言ってみて下さいな?」
    えーと、何がいいかな・・・。
    そんな風に悩んでいると、ツヅラオが皆より前に出る。
    「乙姫様。私は奪われたキツネ管を取り戻し、今回の件で名声も得ました。これ以上を望むとなれば僧として失格でございます」
    「ふむ・・・」
    「ですが・・・もし、聞いて頂けるのならば。私の欲しいものは・・・」


    竜宮の秘法「龍玉」でございます


    言うや否やツヅラオはどこからともなく「九又の剣」を取り出すと目にも留まらぬ速さで乙姫に切りかかった。
    阻止など間に合わず倒れ付す乙姫。それには横目もくれず、彼女の後ろに飾られた「龍玉」を手にした。
    「何っ!?」
    「ボイン姉、こいつは一体、何の真似だ!?」
    「初めから目的は決めていた。『大結界守護に関わる三家の内、どれかの秘法を手に入れる』とな」
    どうしてそんな事を!
    「力を得るためだ。もう二度と、あの船幽霊の時のような無様な結果にならぬような、妖異すべてを殲滅できるような、圧倒的な力が!」
    「ボイン姉、騙してたのか・・・!?」
    「狐は化かすもの、だろう・・・?」
    言うと、ツヅラオは九つの尾を露にした。同時に気苦しそうな服を乱暴に破り、その頭から生える耳も見えた。
    狐・・・!?
    九尾の藍。これが妖異を滅ぼす者の名だ、記憶しておけ」
    ツヅラオ・・・いや藍は龍玉を掲げる。すると体が光に包まれ、消える。瞬間移動でもしたのか。
    後には、呆然とする一行と、血を流して動かない乙姫だけが残った。

  • 巫女の勘
    『九十九尾』の次の日

    ツヅラオが藍という名と正体を現した次の日。
    主人公と地子、イッスンは暗い面持ちで竜宮に居た。
    「皆さん・・・」
    「イク、乙姫様は・・・?」
    「残念ながら・・・」
    なんという事だ・・・今まで一緒に行動していたツヅラオが実は悪い妖怪で、乙姫様を殺めただなんて・・・。


    「・・・ん?なんか、不謹慎な話してない?私、生きてるわよ?」


    なんか部屋の奥から乙姫様に良く似た声が聞こえた気もするが、悲しむあまり無意識が生んだ幻聴だろう。
    「仇は取らねェとな・・・」
    「ええ、乙姫様の無念を晴らしてあげましょう」


    「あれ!?聞こえてないの!?え、そんなはず無いわよね?何で私、時既に過去の人なの?」


    「皆さんに集まってもらったのは他でもありません。九尾の藍についてです」
    「藍が持っていった龍玉とやら・・・一体何なの?」
    「龍玉は竜宮の保管する秘法で、名居の緋想剣、博麗の陰陽玉と同じく、結界の維持に強い役割を持つ物です。龍玉は大結界に通じる秘法で、結界内部の様子を見たり天気予報したり力が強化されたりします。その際には結界の一部を切り崩して使用するので、絶対に多用は出来ませんが・・・」
    リスク付きのパワーアップアイテムってことか。しかも、リスクが発生するのは国規模と来たもんだ。


    「何で!?何で無視するの!?怪我人虐めてそんなに愉しいの!?あなたたち揃いも揃って『さでずむ』なの!?」


    さすがに可哀想になったのか、地子が言った。
    「藍を懲らしめたらウチ秘蔵の桃持ってきますので、少し大人しくしてて下さーい!」
    「え、桃?わーい」
    どうやら桃ひとつで落ち着いたらしい。あんな人がトップで大丈夫か、竜宮。
    「他も割とこんな感じだァ、気にした方が負けだぜ?」
    どこ行ってもこんなんばっかか!
    「えー・・・藍の行方についてなんですが。龍玉を使って竜宮の外に出たのは間違いありませんが、外では龍玉は瞬間移動できなくなります。元々緊急用の機能でしたし、悪用を食い止めるためのものではありますが、正直気休め程度ですね・・・」
    つまり、完全にいくえ不明ってことなのか・・・。
    「・・・仕方ないわ、最終手段よ」
    「お、まだ何かあンのか?」
    「巫女の勘に頼りましょう」


    普通なら馬鹿らしいと一蹴されるところだが、あの霊夢の勘なら信憑性は高いだろう。っていうか頼らざるを得ない。
    早速神社に赴くと、彼女は面倒臭そうにぶつぶつ言いながらも何やら儀式っぽいことを始めた。
    「うーん・・・鬼ヶ島」
    「鬼ヶ島ァ?なんだ、鬼退治でもしろって?」
    「あんたたちがやりたいのは狐退治でしょうが」
    「藍は鬼ヶ島に居るのね?」
    鬼ヶ島で狐退治か。まあ、乙なものだ。
    「・・・ですが、鬼ヶ島は日の出と共に姿を現し、日の入りと共に姿を消す。その度にその位置を変えてしまう結界を張っている。これはワダツミ様が島に施した仕掛けなのですが、今は厄介の種ですね・・・」
    「・・・お願い!」
    「はいはい位置も割り出せばいいんでしょう?地図貸して。・・・ほら、ここよ。明日の日の出と共にここに現れるわ」
    「ありがとう霊夢!」
    「はいはいどういたしまして」
    随分とあっさりだが、藍の居場所も割り出した。船は竜宮で用意するそうなので、次の日まで英気を養おう。

  • 決戦の鬼ヶ島
    『巫女の勘』の次の日

    遂にこの日が来た。・・・と言っても敵対したのはつい一昨日なのだが。
    両島原へ赴くと、そこにはイクと乙姫が。
    乙姫様、もう起き上がって大丈夫なんですか?
    「ちょっとクラクラするけど・・・まあ、私がいなきゃ駄目だから」
    「どういうこと?船、用意してくれるんじゃなかったの?」
    「だから、私が船代わりなのよ」
    「おいおいィ・・・乙姫サマが龍に変身できるのはしってるけど、怪我人が無理することはねェんじゃねェか?」
    ずずいっとイクさんが前に出る。
    「鬼ヶ島には結界がある。それを破れるのは龍玉か・・・あるいは、結界を張ったワダツミ様と同じ力を持つ乙姫様だけなのです」
    「えへんっ!褒め称えよ~崇め奉れ~」
    調子乗ってるから藍に痛い目に合わされたんじゃないかな・・・。
    「それでも、この戦いに私は必要ひ可決なのです!」
    「・・・もういいから出発しましょう」
    乙姫が光に包まれ、次に目を開けると巨大な龍へ変じていた。
    「鬼ヶ島の狐退治か・・・さしずめ、オイラ達は桃太郎ってところだな」
    「桃姫でいい」
    「それ、先客がいるので駄目です」
    「ええー!?」
    何はともあれ、鬼ヶ島が出現すると予測される位置へ移動を始めた。

    鬼ヶ島に到着

    着いた。かつて、桃太郎が三匹の家来と共に鬼を討った、恐らくは日ノ本一有名なダンジョン、鬼ヶ島。
    そしてそこに確かに居た。龍玉を携え、暴力的なまでの威圧を放つ大妖怪・・・九尾の、藍。
    「・・・博霊の巫女。警戒が強すぎて近寄りがたかったのだが・・・無理してでも仕留めておくべきだったな」
    「ボイン姉・・・今からでも遅くねェ、こんな馬鹿な真似は止めにしようぜ?」
    「無理な相談だな。私にはお前たちを敵に回してでも滅ぼしたい者たちが居る」
    そももも、どうしてそこまで妖異を嫌うんだ?
    「認識が甘いな。コレは好き嫌いで語れるモノではない・・・本能が奴らを滅ぼせと囁くのだよ」
    龍玉を返す気はない、と?
    「無論。そして・・・問答は無用だ!!」

    九尾の藍との戦闘

    藍はキツネ管を取り戻して村紗と同等の、本来の力を発揮している上、一定ターン毎に龍玉を通じて大結界の力を吸収し強化されていく。短期決戦でないと手が付けられなくなってしまう。
    一撃は村紗ほど重くは無いが、村紗は使用しなかった妖術・状態異常系の行動を頻繁に行う。下手すると一切の身動きを取れないまま全滅させられる場合もあり得る。逐一イッスンの筆しらべで無効化していくこと。
    さらに分身を作り出すが、分身を倒す度に尻尾が一本ずつ減っていく。計八本の尻尾を減らせば遂に化け狐の本性を現す。この状態だと厄介な術は使わなくなるが攻撃力と素早さが格段に上昇する。
    また、乙姫が傷ついた体ながら強烈な援護攻撃をしてくれるので、藍の動きを阻害するように動くと効果的。

    藍を撃破する

    「か、はっ・・・!」
    藍が血を吐き、膝を折る。
    「・・・ク、ハハハ・・・見事だ、貴様たち。龍玉を使ってでも負けていては、妖異の殲滅など到底不可能だな・・・」
    「ボイン姉・・・」
    「・・・ふん、安易な同情は止めろ。私は自分の欲のために戦った。そして敗れた。妖怪として、これがあるべき形なのだ」
    お前、それでいいのか?
    「良かったんだよ、これで。・・・まあ、なかなか充実した一生だったかな。・・・お前たちとは、良かったぞ」
    それが藍の最期の台詞だった。藍は人の形を保てず、狐の姿に戻り・・・それっきり、動かなくなった。
    終わったのか、これで。
    「お仕舞いです、これっきりで」
    鬼ヶ島の狐退治は、思ったほどの高揚感も無く終了した。


    魔性変化・両島原決戦編、これにて閉幕で御座います。お後は次の、お楽しみ・・・。