イベント/RED & CHASER

Last-modified: 2012-10-22 (月) 23:52:06

シナリオ/世界移動シナリオ-Shoot the Bullet編のイベント

RED & CHASER

  • 射命丸 文とレミリア、若しくはフランドールを僚機にした回数が3回以上で発生
     
     
     
    久々の何もない週末。
     
    「たまーには作戦エリアじゃなくて、R-11S2を高速でもギュィィィィンって走らせたいもんねぇ」
     
    射命丸 文が最近の悩みをぼやきながら機体の整備の為にガレージに戻ると、珍しい人影が見えた。
     
    「おや? 其方にいらっしゃるは『天使』の…… あのー、どうかしましたかー?」
     
    姉妹が振り向いた。PCの僚機として一緒に出撃した……レミリアとフランドールだったか。
    天使のコスチュームではなく、普通の制服姿である。
    声を掛けられた姉妹は射命丸の方を見ると、
    「ん? ああ……ちょっとこれが気になっただけ」
     
    そういって目線を向けるのは、射命丸の愛機 R-11S2 "NO CHASER"(ノーチェイサー)だった。
    フロントの回転式補助ブースターの付属及び速度に合わせた対G構造の強化によって、
    都市部での戦闘ではその名の通り「追い付ける者無し」と言われる機体である。
     
    「? ……R-11S2がですか?」
    「えっと、子供の時に見たR戦闘機に少し似ているなってお姉さまと話してたの」
    「子供の時に見たR戦闘機……ですか」
    射命丸が首を傾げるとレミリアがくすくす笑う。
    「もう昔の事よ。最早記憶も覚束ない」
     
    「ところで、その見た事があるR戦闘機って何でしょうか。R-9aIIかR-Xですか?」
    彼女達が幼い頃には、確かサタニック・ラプソディーの自体解決を行ったR戦闘機が凱旋に市街を巡った筈だ。
    それだろうかと思ったが、姉妹の口から出てきたのは意外な言葉だった。
    「なんて事はない、パトロールスピナーよ」
    「民営の警察でよく使われてるやつで……なんて名前だったっけ……」
    「――R-11B "PEACE MAKER"(ピース・メーカー)ですね」
    「……さらりと出たわね」
     
    地球連邦の警備部隊ならR-11A "FUTURE WORLD"(フューチャー・ワールド)だが、
    民営警察で使われているR戦闘機、といえば大抵R-11Bが当てはまる。
    といってもまあ、すぐに答えが出た理由はそれだけではないのだが。
     
    「さらりと出ます。私が初めて乗ったR戦闘機がR-11Bでしたので……忘れ難いですな」
    「け、警察だったの!?」
    フランが驚きの顔を見せた。レミリアも目を丸くしてる。
    「……恥ずかしながら、まあ」
    素直な驚きを見て、なんだかむず痒くなる。
     
    ちなみに忍者がその事を初めて知った時、あの目線は「似合わねーwwww」と腹ァ抱えて爆笑しおった。
    その時は忍者を雁字搦めにさせて整備班の逞しい兄貴達に突き出してやった……気がする。
    なぜ曖昧な言い方なのかというと、あの後すぐに輝夜達と一緒に飲み会に行って酔いつぶれてしまい、
    そのまま詳細を忘れてしまったからだ。
    覚えていない=あまり重要ではない事柄というし、忍者もあの後何も言ってこなかったので、
    結局、互いに大事に至らなかったとかそう言うことなのでしょう。やたらと青い顔してたのが気になるけど。
    まあ、それはさて置いて。
     
    「すごいわね。バリバリ検挙していたんでしょう?」
    顔を輝かせるフランに対し、射命丸は首を横に振った。
    「いいえ。その一回きりで警察はやめてしまいました」
    「「え……」」
    驚愕を見せる姉妹。苦笑しながら射命丸は語った。
    「デモンシード・クライシスって知ってます?」
    「ええ……」
    「……知らないわけがない」
    僅かながら、今度は射命丸が驚いた。しかし素振りを見せずに
    「……ま、R-11Bに乗っての初陣がよりにもよってそれだった訳なのですよ」
    姉妹がとてとて驚愕した表情を浮かべた。
     
    今思ってみると、我ながらよく生きていたと思う。
    生きているからこそ、この場で彼女達に話せているのだが。
    あの頃のR-11Bはフォースを装備しておらず(民営用なのだから当たり前といえば当たり前だが)
    搭載されていた兵装もロックオン波動砲ではなく、ロックオンレーザーと呼ばれるものだった。
     
    「恐怖からなんでしょうか、ずっとアクセル踏み続けて、無我夢中で走らせながら、
     バイドに汚染された兵器にロックオンレーザーを叩き込み続けてました。
     特に巨大な汚染体を破壊し終わるまでは、過程が頭に全く入ってませんが……。
     ――結局、担当したエリアで、生き残ったのは私だけでした」
     
    勇敢なものが戦場で死に、臆病者が生き残る、という話は聞いたことがある。
    あの時の自分がそれだった。
    とにかく、生き残ることに必死だったのだ。
     
    「――と、それが切欠でR戦闘機部隊にヘッドハンティングされて、色々あって今に至る訳です」
    『高い生存能力が評価された』そうだがあまり嬉しくなかった。
    自分は、警察に所属していた。あの時の自分は護ることが仕事だった。
    しかし結果は――警察組織含め、被害は甚大だった。
    自身の対処に必死で、冷静さを欠きすぎて、頭が真っ白になって、目茶苦茶のがむしゃらに動かしていて、
    最短のルートを選ばなかった結果だと思う。
    「たまに思うのですよ。あの時、自分は何か守れたのかな、なんて――」
    そこまで言って思わず口を噤んだ。
    「あ、ははは……すいません。長々と話してしまいました……。簡単に聞き流してくださいな」
     
    いかん、話に熱が入り過ぎて喋りすぎた。自慢話になっていないといいのだが……。
    姉妹の様子を窺うと、真剣な表情で自分の話を聞いていた。
    (……?)
    少し、尋常ではないと怪訝に思っていると、
     
    「守れたと思うわ」
    「え?」
    「バイド汚染を食い止められた。それだけでも、何かを守ったことになるんじゃないかしら」
    「貴方の話を聞いて、少なくとも私達はそう思う」
     
    「なんか、照れくさいですね。…………でも、そう言う考え方もありますか……」
    「ええ。デモンシード・クライシスは凄惨だったけど……
     バイド汚染を未然に食い止めたおかげで助かった人もいたわ」
     
    ……今、なんて言った? というか、何故この二人は饒舌なんだ……?
    まるで当時の事を知り得ているみたいな――
    そこで、思わずハッとした。
     
     
     
    「あの……!」
    「「っ?」」
     
    「次の週末、一緒に食事に行ってみませんか?!」
     
    ……。
     
    ……ナンパかよ。しかも相手は同性。
    自分でもそう思ったが、ここでもう一踏ん張りだ。
     
    「えーっとですね、ちょっと、色々話したい事がありまして……!
     親睦というか、女子会的な!
     オススメのラーメン屋があるんです! 素手で熱湯の中に手を突っ込んで麺をほぐす変わったラーメン屋!」
     
    きょとんとした姉妹だったが、吹き出して、楽しそうに微笑んだ。
    「……そうね。きっと話したい事あると思うわ。お互いに」
    「ブランデー以外のお酒は飲めないけど、それでいいのなら」
     
     
     
     
     
     
    デモンシード・クライシスから10年近く経ったが――
    思いがけない巡り合わせもあったものだと、久々にそう思った。