友わしだよ~

Last-modified: 2017-07-04 (火) 12:15:48

「須美ちゃんは可愛いねぇ」
そう言って私の頭を撫でてくれる友奈さん。
その手は大きくて、温かい。

膝の上に座らせて貰って、撫でられるのはとても安らぐ。
背中に感じる友奈さんの体温のぬくもりは、今は会えない母親を想起させる。
…恥ずかしいから、私だけの秘密だ。

時々、友奈さんが私を通して未来の私を見ていることがある。
少し面白くないけれど、友奈さんはすぐに私の不機嫌に気づいてごめんね?と言いながら抱きしめてくれる。
首筋を友奈さんの髪が、吐息がくすぐってくる。
友奈さんの唇が、私の頬に触れるか触れないかの距離で動く。
服から覗く私の傷を、友奈さんの全てが優しく撫でてくれる。
体温が上がって、鼓動が早くなってしまっているのは、きっとバレバレで。

それで許してしまう私も、現金なものだけれど…。
でも、すぐに許したら友奈さんは身体を離してしまうから、暫くは怒ったフリを続けるのだ。
友奈さんも私のポーズにはきっと気づいているのだけれど、付き合って抱きしめてくれている。

でも、この御役目が終われば、幸福な逢瀬も終わってしまう。
今の私はもう逢えなくなってしまう。
いつかの未来には、また巡り逢えると分かっていても、
それは実感としては余りに遠い先の話で、今の私にはどうしようもなく辛いことだ。

それが少し…いいえ、とても悲しくて、友奈さんの手に触れる。
少しでもこの時を、友奈さんを感じたいと指を絡める。
友奈さんはそれだけで察してくれたのだろう、これまでよりもずっと強く、
ずっと優しく、ずっと愛おしげに私を抱きしめてくれた。
「今日はもうちょっとこうしていようか…須美ちゃんは、可愛いねぇ」
えぇ、もっとこうしていましょう。この不思議な逢瀬が終わるまで、
願わくば何時までも。
そう願って、私は目を閉じ、友奈さんに身を委ねた。