女子力料理教室だよ~

Last-modified: 2017-07-18 (火) 23:52:44

休日の讃州中学校の廊下を駆けているのは犬吠埼風。ご存知勇者部の部長である。
休みの日だと言うのに何故彼女が慌てて部室に向かっているかというと…

「あの犬吠埼さん…相談が有るのだけれど…。」
おずおずと話しかけているのは郡千景。
先日の水着の一件から千景は風に相談事をするようになっていた。
「どうしたの?千景」
「料理を教えてほしいの…。」

風が部室前に着くと、中から何やら賑やかな声が聞こえてきた。
「あれ?」
約束していたのは千景と妹の樹だけのはずだが…
不思議に思いながら戸を開けると
「ああ~!またやられちゃった…」
「うおっ!このっ!てりゃあ!」
「三ノ輪さん、まだまだ動きが荒いわね…」
「千景アンタどんだけこのゲームやりこんでるのよ!」
「ふふ…答える必要はないわね…三好さん…!」(ドギャーン!!
部屋に入るとちょうど決着が着いたところだったようで
東郷のPCモニターには1位千景、2位夏凜、3位銀、4位樹と順位が表示されていた。
「お~お~これはこれは…」
「あ、お姉ちゃん~待ってたよ~」
「犬吠埼さん、今日はよろしくお願いするわ」
樹と千景に答えて胸を叩いて答える風
「ふふふ…この女子力高い系部長にドーンと任せておきなさい!
 …それはそうと銀と夏凜はどうしてここに?」
そういってなにやら楽しそうな2人の方を見る
「アタシは千景さんに料理教室やるって聞いたからアタシも!って思って!
 須美と園子びっくりさせたいし!」
「ほうほう…いい心がけね…!
 で、夏凜は一人で寂しかったから樹に着いてきた、と。」
「そうそう…って誰が寂しがりか!部室に来たら皆居ただけよ!」
華麗なノリツッコミを繰り出すがその顔は真っ赤だ。
ただこのノリが若干心地よくなっているようなのが最近の夏凜なのである。

「それでは…私!犬吠埼風の女子力アップ料理教室を始めるとしますか!」
部室から調理室に移動した一行は…黒板を背にする風と郡・夏凜、樹・銀と分かれて調理台に立っていた。
 「風先生!女子力が上がれば須美みたいになれますか!」
一番年下の銀が元気よく質問する。
「なる!なるわよ銀!何を隠そうアタシも結構なものよ!」
「確かに…!」
この後メガロポリスに成長する同級生のことを考えると銀も気になるようで
風もそれに答えて決して小さくはない(東郷には負けるが)胸を思って答える。
「もう、お姉ちゃんったらまたわけの分かんないことを…」
「ホントよくわかんないわー、胸なんて剣を振る邪魔にしかなんないのに」
「三好さんのその考えもどうかと思うわ…」
二人の受け答えに何とも言えない表情を浮かべる3人であった。

「うどんを茹でるにはたっぷりのお湯が必要よ
 15倍が理想だから今から茹でるうどんの量から計算するのよー」
「お…重い…」
「樹さん大丈夫!?」
「私の方がお姉ちゃんだから…大丈…夫!」
勇者部では一番年下の妹分の樹だが自分より年下の銀の前で
お姉さんをしようと必死に頑張っている、その姿を見て目頭を熱くしてしまう風。
「えらい…えらいわよ樹…!頑張って!」
その一方のチームは…
「はい、これで水は大丈夫ね…」
「千景って思ったより力あるのね…なかなかのもんじゃない」
たっぷり水をはった鍋を樹とはまるで対象的に軽々と扱う千景を見て感心する夏凜。
「ああ…ここにいる皆は武器を持ち歩いていないのね
 私や高嶋さん、西暦組は自分たちの武器は常に持ち歩いているから…」
「ってことはあの大鎌持ち歩いてたってこと?それなら納得ね~」
過去の勇者との違いをひょんなことから知りつつ感嘆しつつコンロに火をつけ調理を始めていく。

風の的確な指導と千景、樹にそれぞれ付いた夏凜と銀のサポートも甲斐もあり
うどんにトッピングも順調に仕上がっていった。

一通りの調理を終え、配膳をする一同。
「樹も千景もなんていうか…基本的な所を知らないだけよ
 そこさえ覚えたら簡単にできるようになるわ!」
皆の様子を眺めながらそうつぶやく様子には包容力すら感じてしまう。
「まるで母親みたいねー、ハイお茶」
「誰がオカンか!」
そんな風に飲み物を渡しながら茶化す夏凜とツッコミを返す風。
「えへへ…みんなとこうやってお料理するの楽しい」
「そうね、私もこんな形で台所に立ったことはなかったわ…
 犬吠埼さんたちには感謝しないと…」
いつものコントをする2人を横目に樹と千景が微笑ましく言葉を交わしていたが
ふいに樹が真剣な眼差しで千景に話を繰り出した。
「あ、あの…千景さん、私は樹って読んで下さい…!
 お姉ちゃんと一緒になっちゃうから…えへへ」
照れ隠しに笑ってしまったものの要件を伝えられてホッとしていると
つられて真剣な顔になっていた千景も頬を染める。
「そ…それじゃあ、風さん…樹さん…これで、いいかしら…。
 なんだか照れるわね…。」
「おおっ!珍しく樹が積極的だわ…!いいわよいいわよ!」
妹と新しい仲間との友情が育まれる様を見て感動する風。そして
「ビュオオオオオオオオオゥ」
吹き荒れる風の音…ではなく
「うわ園子さん」
「乃木居たの…?」
「楽しそうだったからこっそり見てたよ~」
「見てたよ~」
「園子ちゃんまで…」
「まぁ5人でうどんたっぷり作ったところだし
 W乃木が来てくれてむしろ助かったかもしれないわね!
 みんなでうどんパーティと洒落込みましょ!」
『はーい!』