東わしだよ~

Last-modified: 2017-07-21 (金) 01:29:35

「東郷さん!また銀に水着を着せて何をしているんですか!!」
「鍛錬よ」
「これのどこが鍛錬になるんですか!?」
ある昼下がりの勇者部でのこと。
ここ最近頻度が多くなった怒号が落ちた。
「どうして貴方はそんな自由人なんですか!?」
怒号を発する主は鷲尾須美。
真面目な彼女は最近どうしても見過ごせないことがあった。
「自由じゃないわ。私は……今も束縛されている、もの」
「こうしないとまた貴方は逃げ出すでしょう!」
そう、それはこの東郷美森の存在である。
東郷は未来の自分である。
初めは綺麗な大和撫子だと思っていた。思っていたが…
「須美ちゃん良い?あれは体幹トレーニングなの」
「そんなのに騙されるかぁぁぁ!!」
東郷はあまりにも須美にとって型にはまらなかったのだ。
しかも未来の自分なのに悪ふざけが過ぎるのも助力している。
今日も東郷は彼女の親友の銀にスクール水着のままソファの上に寝転がして白い棒アイスを食べさせていた。
その光景があまりにも…あまりにも淫靡を醸し出して須美はとうとう激怒したのである。
「まあまあ須美は怒りすぎだって。大きな須美を見習おう!」
彼女の怒りを宥めようとしているのは被害者である銀だ(スク水装着)。
しかし、銀は気づかない。それが彼女の怒りに油を注いでいることを。
「銀は黙ってって!」
「……はい。銀は黙ってます」
そんなコントのような二人を見て東郷はクスクスと笑っている。
「東郷さん、これは見世物じゃないですよ!」
「ご、ごめんね須美ちゃん。……ただ、いいなあって」
「人の友達をこんなもの着せて何がいいんですか!」
訳が分からない。なんでこんな人が私の未来なのだろう。
須美は自分の半生を振り返るがこんな突然変異する要素がないと自問自答する。
「わあ、またわっしーとリトルわっしーがなにかやっているよ~」
「ホントだ~。あ、ミノさんが水着きてる涼しそう~」
「今の私は軽装甲勇者だー!」
須美と東郷とは違う、まるでそっくり姉妹のような二人が部屋に入る。
またややこしそうなのがきた。須美は頭を抱えつつ辺りを見渡す。
彼女の視線の先には彼女の親友である乃木園子とさらにまるで姉のように似た女性がいる。
こちらも親友の未来の姿と言うのが驚きだ。
というかあまり雰囲気も変わってい無く見えるのも驚きだ。
「まあ、だいぶ賑わってきたわね」
「いつの間に縄抜けを!?」
当たり前のように縄抜けをした東郷が須美の隣に寄り添う。
「ねえ、須美ちゃん」
東郷は須美に問いかける。
「今は楽しい?」
優しい顔だ。この顔はずるい。
だって自分の未来だって知っていてもまるでガラス細工みたいに綺麗な顔だもの。
自分と分かっていてもあまりにも美しくてドキドキしてしまう。
「楽しむことは悪い事じゃない。真面目に進むのは良い事だけど偶には辺りを見渡してね」
東郷は須美に息がかかる距離で微笑み語る。
「経験者は語るよ」
そして、ウィンクを須美にして東郷は須美の前から立ち去る。
あまりにも嵐のような展開に須美はポカンと口を空けてしまう。
「……って、良い事みたいに言ってないで真面目に私の話を聞きなさいー!」
そんな須美の怒号にも何のその。東郷はまだスク水の銀を膝の上に座らせて頭の匂いを嗅いでいる。
変態だ。あの人は変態だ。
「だから私の大事な親友に何するのよ!!」
須美は東郷の元へ全速力で駆けていく。須美が自分の足でその賑やかな輪に入っているとは気づかずに。
「(自分から輪に入るのに二の足踏むとは昔の私もシャイだったのね)」
東郷はそれをスンスンと銀の頭に顔を載せて見ていた。