蠍と山羊の推しだよ~

Last-modified: 2017-10-28 (土) 15:07:46

「うがー!なんでタマじゃないんだ!?」
おかしいぞ!いつもは、それこそ元の世界ではずっと二人で連携してきたのに!
気づいたらずっとあんずのやつ、雪花とばかり組んでいる!この間だってそうだ!
なにが「じゃ、背中は任せたから」だ!あんずも嬉しそうに「はい、任せてください!」とか笑顔で答えやがって!
ぐぬぬ……
「なぁ!これは由々しき事態なんじゃないか!?」
「……急にどうしたのよ。ってかうるさいわよ聞こえてるから!」
なのでおかしい!と勇者部の部室で珍しくぼけっとしていた夏凜に声をかけてみたんだけど、軽くいなされてしまった。
「それで?話が見えないんだけど、タマじゃないって何よ?」
「だーかーらー、あんずがタマと組まずに雪花とばかり組むのは何でなんだ!」
「あー、そういうことね……」
どうやら把握してくれたらしい。そうだろう、重大事件だろう。

「まぁ、いいんじゃない?」
「んな!」
よくない!よくないぞ!あんずはタマの……ごにょごにょ……なのに!
「?だってその連携でちゃんと戦えているんでしょ?それに、前も私助けてもらったことあるし」
むむむ……悔しいが言い返せない。
あんずと雪花のコンビネーションは確かに私から見ても上手くて、まだ会ってからそんなに経ってないのにお互いの死角をわかっているようだった。
でも、それならタマの方があんずを知っているし、連携だって上手いんだ!
「むー……タマの方があんずを知っているのにー……」
「……アンタ、精神年齢下がってない?」
「下がってない!」
「そうかしら……」


「……とか言ってるよ?どうする?」
球子が騒いでいる部室の外には、何事かと聞き耳を立てている人物がいた。
「はぁ……嫉妬してるタマっち先輩かわいい……」
そう、まさに渦中の人物である伊予島杏と秋原雪花である。
「……あんた、いい性格してるよ……」
雪花がため息混じりに呟く。杏は雪花の言葉など耳に入らないのか、部室のドアの隙間から中を見るのに必死だ。
「ま、でも実際なんで私ら組んでんだろうね?接点なんて日常でほとんどないのに」
雪花はそこが不思議だった。
特別仲がいいわけではなく(仲が悪いわけではない)、それこそ杏には球子というバディがいるにもかかわらず、先の戦いでも二人は組んだのだ。
最初は敵に気づいた杏が雪花を助けた形だったが、いつの間にかそれが当たり前になっていた。

「……ふ、タマタマ、なのかもね」
「え?今何か言いました?」
「いや、別に。そんなに見てるとばれちゃうぞーってさ」
「あ!あんず!丁度いいところに来たな!なんで私と組まないんだ!?」
「ほら、見つかった」
「た、タマっち先輩、それは違うんです、雪花さんが私と組もうって言い出して……」
「なんだと!どういうことだ雪花!説明しないとタマは認めないぞ!」
「って私に矛先むけんの!?勘弁してよ、ツッコミは私のポジションじゃないのにー!」
「はぁ、何やってんだか……」

なんだかんだで、勇者部は今日も平和だった。