Hatred and Discipline 5

Last-modified: 2012-05-30 (水) 04:06:17
 

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真夜中の少し前に、Havenwoodの外れに着いた。
別に計算してこんな時刻に着いた訳ではないが、Vallaにとっては都合が良かった。

 

自分が歓迎されるはずも無い。私の様な人間、つまりデーモン・ハンターは。
まっ昼間であっても、デーモン・ハンターはさながら不吉の使者、死神のように見えるのだから。

 

気温はまだ暖かい。
彼女は、月明かりに照らされた、刈り取られたトウモロコシ畑を横切った。
続いて、小麦の束が兵隊の様に整然と並んだ畑も。
丁度、収穫の時期なんだろう。

 

流れる水の音が聞こえてきた。

 

川か。

 

馬に乗っていても、自分が緊張してきたのが感じ取れる。

 

他人を不必要に脅かさないように、フードを外し、スカーフを降ろしていたのだが、
彼女を見るなり宿の亭主の顔が青ざめた。口早にまくしたてる。
事件なんて起こってない、いつも通りだ。変なことなんて何も無いんだ。

 

夜が明けたら治療師に渡してくれと、Vallaは亭主に書置きを渡した。
―厄介事が起きたら、私のところまで来てくれ。

 

Vallaは部屋に入ると、こまごまと確認しながら、いつものチェックをこなす。
丈夫な食器棚だ、バリケードとして使えるだろう。隣室と繋がっているドアは無いな。
部屋を見渡せるよう、ベッドは壁から遠くに。机と椅子が1組。窓の高さは、地面から4m程か。

 

確認を済ませ、ようやくプレート・アーマーと多数の武器を外した。
クロスボウ2丁、ダガー、投げ矢、投げ縄、クロスボウの矢束(柄にルーンが刻まれた、真紅の矢は注意深く扱った)。
武器はベッドから直ぐに手が届くところに置いておき、荷を解き始める。
その間ずっと、妙にイラつく感覚を振り解くことが出来なかった。
―何かを忘れている。重要な、命に関わるようなことを。
ぽっかりと心の中に穴があるような、本質的な知識が抜け落ちたような気がする。

 

荷物の整理を終えると、彼女は床に座って目を閉じ、心を落ち着かせた。
心臓の鼓動に精神を集中する。

 

それでも思い出せない。雑念ばかり頭の中に浮かぶ。

 

私は間違っているのか? 私は意味も無く師匠に逆らってしまったのか?

 

悩んでいても仕方が無い、と彼女は決心した。忘れていることは、そのうち思い出せるだろう。

 

Vallaは机に向かい、妹のHalissaに宛てた短い手紙を書いた。
これまでの旅のこと、元気でやっていること、妹を愛していること、近い内に会いに行くこと。

 

この内容が本当になれば良いんだけど。
悪魔を片付けたら、少し暇を貰うか。

 

彼女は手紙を折って封筒に入れ、カバンにしまった。

 

ロウソクを吹き消し、横になる。

 

大きく溜息をつき、毎夜のことだが、故郷の村が襲われた時の悪夢を見ずに眠りたいと願った。
一度だけでいいから、良い夢を見て眠りたい。

 

殺戮の悪夢でない夢がどういうものかなど、とうの昔に忘れているが。

 

Keghan Grayが家によろよろと入ってきた。
外の花壇で立小便をしてきたようだ。
Serettaに見られたら不快に思われるだろうが、分別のある彼女は、口に出すことはない。
結婚した直後には分からなかったが、何年もする間に彼女は学んだのである。
酷い「授業」のこともあったが。

 

彼はドアの横のランプが切れているのに気付いた。
夜が明けたら、Serettaにきつく言っておかねぇとな。
暗い中、暗い家に入ったら躓いてしまうじゃないか。
3回目で、ランプの芯に火が灯った。

 

台所の前を通り、ぼんやりとRexxはどこに居るのだろうと考えた。
Keghanが酔っ払って夜遅くなる時は、大抵、喉をごろごろ鳴らしながら、尻尾を振ってドアまで迎えに来るのだが。
勿論、RexxはJoshuaの部屋で寝るのが大好きだ。
どうせそこに居るのだろう、ベッドの足元で丸くなって。

 

台所のテーブルの上には何も無かった。
Keghanは怒りがこみ上げ、思わず歯軋りをして拳を握り固めた。
Serettaには夕食を用意しておけと言ったのに。
アイツがそんなに阿呆なはずは無いのだが。
もしや、Joshuaが俺の分まで平らげちまったんだろうか。
そうだったら、きついお仕置きが必要だ。それだけのことを仕出かしたんだからな。

 

とは言え、差し当たりは自分で肉を料理する必要がありそうだ。
町から此処まで帰るうちに腹がペコペコになってしまった。
Keghanはテーブルからナイフを取り、ランプを手に食料庫に出向いた。

 

長く、真っ暗な貯蔵庫に入った。
右側の壁に並んでいる豚の肉の塊を、ランプの明かりが照らす。
彼は太い豚の足の前で足を止め、満足そうな笑みを浮かべた。

 

ランプを床に置き、肉を切り出そうとしたその時。
黒い、ワインのような液体が床に溜まっているのに気が付いた。
ランプを近づけてみた。

 

血。

 

少し酔いが醒めた。
…なんで血があるんだ? ここの豚肉は血抜きして洗ってあるはずだが。

 

足元にある血溜りは、後ろから流れてくるようだ。
立ち上がり、ランプを持って振り向く。
近くで血が滴り、彼は思わず飛びのいた。

 

Rexxが反対側の壁で揺れていた。
顎の下、柔らかい肉の所でフックに掛けられて。
毛は血に塗れ、尻尾からは今だ血が滴っている。
殆どの内臓は抉り出されて隅に積まれていた。

 

生暖かい風がドアの外から吹き込んできた。
ランプの光はドアまでは届かない。
Keghanはランプを足元に置き、暗闇に目を慣らそうとした。
声が聞こえてきた。

 

「父さん?」

 

「Joshuaか! こっちへ来い、外で何をしてたんだ?」

 

ランプの周辺以外は、未だに暗くて何も見えない。

 

「中に入れ! 誰かが犬を殺したんだ! 速くこっちに来い!」

 

ようやく目が慣れてきて、ドアの所に突っ立っている息子の姿が見えるようになった。
長い鎌を両手に持っている。月と雲の彫り込みがあるやつだ。

 

「でも、まだ殺さなきゃいけないんだよ、父さん」

 

Keghanは口をあんぐりと開けた。

 

「おい、何を言っているんだ? 頭でも打ったのか…?」

 

Joshuaが進み出た。
ランプの光で、彼の作業着が血に染まっているのが見えた…床に溜まったのと同じ、ワイン色。

 

「お前が? 犬を殺したのか? 気は確かか―」

 

無言のまま、Joshuaが鎌で斬り付けてきた。
Keghanは左腕で防ごうとしたが、その瞬間に、JoshuaはKeghanの胸に狙いを変えて振り下ろす。
刃が突き刺さり、血が跳ねた。

 

Keghanの喉からゴボゴボと音が鳴り、口から漏れる。
コイツは俺を刺した! 豚のように刺した! 
何をやったか分かっているのか? 何があろうと、コイツには酷いお仕置きが必要だ。

 

Joshuaは鎌を引き抜いた。
その一瞬の隙を、Keghanは逃さない。
素早くキッチンナイフをJoshuaの喉に突き刺した。

 

彼の息子はばったりと倒れた。
鎌の刃が抜けても、腹部にひどい痛みが走る。多量の血の塊を吐いた。
…そして、逃げ出した。
俺は息子を殺しちまった! 
彼の頭には、逃げることしか無かった。出来るだけ遠くへ。
一直線にトウモロコシ畑へ向かった。
トウモロコシを踏み潰すのも、躓くのも、眩暈で倒れそうになるのも構わずに走った。

 

腹部の痛みが我慢出来なくなるまで、彼はひたすら走り続けた。
畑のカカシの処まで辿り着いた。
足が回復したら、とにかく逃げねぇと。
町に着いたら、医者のBellikの所に行けたら…

 

カカシのズボンに手を掛け、自分の身体を引っ張り上げる。
すると、頬のあたりに血が流れてきた。
おい、俺が握っているのは何だ? 藁じゃねぇぞ?

 

服にも血が垂れている。
オレの血か?

 

意識が朦朧としてきた。
Keghanは激しく咳き込み、何とか身体を引っ張り上げ、カカシの頭と対面した…

 

彼が見たものは、カカシの頭ではなく、恐怖に引きつった妻の頭であった。

 
 
  • 前にも増してアヤシイ訳が沢山。誰か↓の訳教えてぇ。 -- ページ作者? 2012-05-25 (金) 03:16:28
  • 前半の、The sawyer's daughter felt a hollow tug in the pit of her stomach as she rode on -- ページ作者? 2012-05-25 (金) 03:17:11
  • 真ん中辺りの、Valla snuffed the candle and lay on her side, facing the door, her mind working to retrieve what she felt was lost. -- ページ作者? 2012-05-25 (金) 03:17:51
  • と言うか、需要あるのかねコレ、まあ自己満足で続けるけどさ(*´ω`*) -- ページ作者? 2012-05-25 (金) 03:19:10
  • 地味に楽しみにしてます! -- 2012-05-28 (月) 00:59:58