Hatred and Discipline 7

Last-modified: 2012-06-21 (木) 12:12:04
 

Page 12345678?9?10?11?12?

 

Bellikは窓からその様子を見ていた。

 

一度はVallaを別嬪だな、と思いかけたが、目の前の現実を見て引き戻された。
今、彼が見ているのは悪夢の使者。
デーモン・ハンターの行くところには死が付いて廻る、と言うではないか。

 

住人達はとっくに家の中に避難している。
だが、子供たちは…子供たちはまだ外に居る。
そして、Vallaに襲い掛かろうとしている。
鍛冶屋の言葉がBellikの脳裏を過ぎった。

 

―息子にやられた

 

子供が殺人鬼になるなんて、一体何が起こってるんだ?
そして、あの女性…デーモン・ハンターは、間違いなく子供たちを殺す気だろう。

 

Vallaの足元から煙幕が発ち上がり、あっという間に彼女の姿が見えなくなる。
その直後、Bellikの視界の上から、小さな姿が煙の中に飛び込んでいった。
薄れ始めた煙幕の中からハチェットがシュッと放たれ、飛び込んだ子供のすぐ傍を掠める。

 

Bellikは辺りを見回し、薄れた煙から数メートルの所で立ち上がる人影を認めた。
彼女だ。
煙幕は目くらましか。
彼女の手がしなやかに動いた。
視界に飛び込んできた、赤ら顔の男の子(Traverの息子に違いない、とBellikは思った)が、何かに刺されたかのように首に手をやる。

 

Bellikはギクっとした。

 

―子供たちを殺すのか!

 

鍛冶屋の息子、Kyndalが突進していく。目を見開き、口から泡を飛ばしながら。
彼はハンマーを大きく振り回した。
Vallaが懐に入り、その手を掴む。その勢いを利用して身体を投げ飛ばし、そのまま別の子に正面衝突させる。
その子が誰かはBellikは知らない。体に不釣合いな、大きな剣を鞘から抜こうとしていたようだ。

 

その子が仰向けにバタンと倒れた。
Vallaはハンマーを奪い取り、振り上げる。Kyndalの顎に命中し、歯が何本か宙を飛んだ。
Kyndalはそのまま顔面から倒れ込み、気絶した。それをVallaが横っ飛びで避ける。
少し離れて、Traverの息子も倒れた。首に手を当てたまま。

 

襲い掛かってきた子に向かって、彼女の手が再び振られた。
剣を持っていた子に似た、やっぱり知らない子だ。Holbrookから来たんだろうか?

 

Bellikは拳を握り締めた。
外では、2人の子供がVallaに突進していく。
血塗れのダガーを振り回しながら、Sahmantha Halstaffが跳ねていく。ボール遊びをしているかのようだ。
そしてBri Tunis。こっちは大きな石を頭の上に抱えている。

 

Bellikは随分と前、Caldeumで、遠くEntsteigからやってきたサーカスを見たことがある。
彼らは実に軽々と、跳んで跳ねて、宙返りをやっていた。
カッチカチのプレート・メイルを物ともせず、Vallaが跳躍し、前転してSahmanthaの背後に回り込むのを見ていると、あの時のサーカスが思い出される。
Vallaが動いたと思ったら、Sahmanthaが細縄で縛り上げられていた。
余りにも一瞬のことで、殆ど見えなかったが。

 

少し離れた所で、飛び掛っていった子が、Traverの息子と同じように崩れ落ちた。

 

―もう止めてくれ!

 

デーモン・ハンターが振り向き、Samhmanthaに続いてBriに狙いを定める。
Bellikはドアに駆け寄り、開け放った。
彼女の動きは余りにも速かった。
風に煽られる旗の様に腕がしなった時、SamhmanthaとBriは縛り上げられていた。

 

Samhmanthaの弟、Ralynが忍び寄る。
Vallaの足に噛み付こうというのだろう。
彼女はRalynを抱え上げ、ダガーを抜き…

 

「止めろ!」
Bellikは叫んだ。

 

…近くの柱に、Ralynの服の背中側をダガーで縫い止めた。
Ralynは足と手をばたばたさせているが、Vallaには届かない。
彼女はこちらに向き直り、Bellikに歩み寄った。

 

「子供たちは―」
Bellikは大きく息を着いた。

 

「無事よ。強力な麻酔を投げ矢に塗ったから。今の所は無害だけど、貴方に手伝って貰いたいことがある」

 

Bellikの拳が緩み、安心で肩が下がる。

 

「驚いた?」
Vallaが尋ねた。

 

「いや、あんたがたは…」
Bellikは目を逸らす。

 

「言ってみて」
とValla。

 

Bellikは思い切って続ける。
「…悪魔の方がまだマシと聞く。地獄の炎に燃え上がる眼。デーモン・ハンターの行く処、常に死が着いて廻る、とな」

 

Vallaが近寄り、Bellikは後ずさった。

 

「悪魔が貴方を、心の本当の奥底を覗き込んだなら、覗き返して御覧なさい、治療師さん。その方法を知っていればね。
そしたら、貴方には見えるのは復讐だけ。狩りだけ。そして、憑り着かれた貴方の眼は燃え上がる」

 

Bellikの唇が震えた。
「しかし、あんたの眼は…燃え上がっておらん」

 

Vallaの表情が和らいだ。
「そうよ、私は復讐のためだけに生きてるんじゃないの」
向こうに振り向き、続けた。
「今は、子供たちを閉じ込めておく場所が必要ね。別々にしておかないと」

 

Bellikは少し考え込んだ。
「さて、ここには牢屋なんぞ無いからな…いや、家畜を入れておく小屋ならあるな。あれなら使えるだろう」

 
 
  • Vallaさん美人なことが判明。そして訳も難しくなってきた。戦闘シーンはごっちゃになるから厄介だ。 -- ページ作者? 2012-06-03 (日) 21:28:08
  • ぶっちゃけまともに訳せてる自信ないので、誤訳あったら構わず訂正しちゃっていいのよ。 -- ページ作者? 2012-06-03 (日) 21:30:20
  • 期待してます。が、ショートストーリーとか言うけど、全然ショートじゃないよね。 -- 2012-06-08 (金) 11:14:33
  • 超期待してます。ページ作者さん応援してます。 -- 2012-06-21 (木) 12:12:03