【マキシマム】

Last-modified: 2024-01-04 (木) 22:57:45

 魔王軍:ダイの大冒険

【バーン】

【ハドラー】【キルバーン】【ピロロ】―【マキシマム】

【クロコダイン】【ザボエラ】【ヒュンケル】【フレイザード】【ミストバーン】【バラン】

概要

【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】に登場するキャラクターで、【オリハルコン】でできたボディを持つ人型の金属生命体。
容姿はトランプのキングに似ており、恰幅のいい巨体に口髭を生やした壮年の男性のような姿をしている。一人称は「我輩」、年齢は345歳。
魔王軍での立ち位置は【キルバーン】&ピロロや【ハドラー】と同じバーン直属の幹部。
アニメ版でのCVは玄田哲章(CDシアターの【大魔道】【トルネコ】【オレンカ王】やライバルズの【パパス】役)。
 
元は大魔王バーンが所有(後にハドラーへの褒美として一部を譲渡)していたチェスセットの駒の一つであり、彼はそのうちの「王(キング)」にあたる。 
そのためチェスの司令塔として他全ての駒を統括する能力を持っており、彼が現在率いているのはハドラーに与えられた5つの駒(【ハドラー親衛騎団】)を除いた、騎士(ナイト)、城兵(ルック)、僧正(ビショップ)各1体ずつ、兵士(ポーン)7体の計10体。「オリハルコンのボディを持つ」、「能力がチェスの駒に対応している」、「急所を破壊されると爆散する」といった点は親衛騎団と同じようなものだが、その命の成り立ちは大きく異なる。
 
親衛騎団の面々は【禁呪法】で生み出された存在なので、【マトリフ】が「無生物に生命を与える禁呪法ってのは、術者の精神状態がモロに反映される」と言及した通り、彼ら各々に命を吹き込んだ当時のハドラーの性分を反映した別々の自我が与えられており、その上でそれぞれが個性を持っている。
対してマキシマムは【生きている駒】(リビングピース)という種族のモンスターで禁呪法とは全く関係のない(最初から自分の意思を持った)普通の金属生命体であり、その性格も独自のものである。
親衛騎団のベースでありマキシマムの配下である駒は自我がなく、マキシマムの指示を受けた通りのみに行動するだけの無生物、謂わばマキシマムのオプションのような存在になる。
総じて三者は似て非なる存在と言える。
なお、この「マキシマムは最初から生きている存在」ということは漫画本編では語られておらず、単行本のキャラクタープロフィール(№48、新装彩録版だと第21巻収録)で明かされた情報であるためか、バーンが禁呪法で生み出したと誤解している読者も多い。新アニメではミストバーンが言及するオリジナル描写で補完されている。
 
また親衛騎団の面々は固有の奥義や強力な呪文の能力を持っているが、マキシマムの部下は特技や呪文を使うこともなければ動作も単調、能力自体も親衛騎団ほど高くはない様子。
一番の違いは自我がないため自力で判断しての行動ができず、正真正銘マキシマムの操り人形の駒でしかないこと。
したがって、作中ヒュンケルが言及したように、マキシマムが命令しない限りはたとえ彼が窮地に陥ったとしても全く動かず棒立ちのまま。
「駒は勝手に動いたりしない」チェスのゲーム性を反映した設定と言える。
 
名前の由来はおそらく、英語で「最大」「極限」といった言葉を意味する【maximum】からだろう。全ての駒を統括する王らしいネーミングである。

戦闘能力

チェスの司令塔である王の駒の特性が反映されているため、彼自身城兵をしのぐ巨体と豪腕の持ち主ではあるが、化け物じみて戦闘力の高い人物が多い魔王軍幹部たちに比べればさほど高くない。
その代わり、頭には【あくまのめだま】から収集・蓄積された過去の魔王軍の戦闘データが蓄えられており、これにアクセスして戦術を練り自身の駒を操る能力と、相手のHP・MPの状態を数値化する【キングスキャン】、そして内部(体内等)の状態を読み取る【スーパースキャン】という二つのスキャン能力を併用し、相手にあわせて戦闘スタイルを変化させて確実に勝ちに行く戦略家。
 
新アニメでは戦闘データを読み出す際に「キーングアクセス」なる台詞を発している。なおヒュンケルの過去データを探った際には、サムネイル付き動画ファイルが横一列に並んでいるのをスライドさせて検索するという現代的な描写になっていた。また下部に表示されたシークバーは、自身の顔アイコンになっている。
ちなみに原作ではラーハルトのデータを読み出す際に「検索(アクセス)」と述べるのみだった。
 
しかし、自慢の頭脳に蓄積されているデータに基づき戦略を立てる事はできるが、その戦略を実行できる能力が自身にあるかどうかは別。
実際【ラーハルト】の動きを知っていながら全く対応できなかった時は、彼から「速いと知っているだけで勝てるなら世話はない」と指摘されていた。
とはいえ追い詰められた状況下でも過去のデータを洗い直して作戦を変える冷静さは持っており、【ボラホーン】との戦いのときの記録から【ヒュンケル】が仲間を見捨てられない性格であることを突き止め、さらに彼がヒムのことを仲間であると思っているということも見抜き、即座に人質作戦をとって形勢逆転に成功するなど、まったくの無能というわけではない。
 
問題なのは、自尊心の高さと考えの甘さからこいつが自分の力量ではどうしても勝てない相手に対して「勝てないという分析結果」をどうしても出せない事なのだ……。

性格

「バーン様に本当の信頼を寄せられている【バーンパレス】最大最強の守護神」と自称し、

「…吾輩の辞書に敗北という文字はない…!!!」
「一度 出撃した我が軍団が 敵を全滅しなかった事は 全くない!!
 戦えば勝つ!!それが 我が軍のポリシーなのだッ!!!」

……と絶対勝利を常としているような発言をしているが、実際の戦術は「バーンパレスに侵入してきた敵のうち戦いで消耗しきっていたり弱っている者を狙って狩る」という、味方の手柄を横取りするような姑息なもの。
要するに、敵に安全にトドメを刺せる時だけを狙って出陣するこいつは、「戦えば勝つ」のではなく「勝つとわかった時だけ戦っている」だけ。
 
ただ自軍の被害を最小に止めつつ敵に可能な限りの大打撃を与えるのは戦術の基本。
弱った相手を逃さずさっさと始末しておけば確実に敵の戦力はダウンするし、士気を落とすこともできるしで非常に合理的。
というわけで、手段を選ばず味方(というか自分)の損害を抑えて勝ちに行く非情作戦として捉えれば一理はある。
マキシマムの任務はバーンパレスの防衛であり、連戦で消耗して弱ったところを見定め、回復の隙を与えず追撃する作戦は実行しやすく最も効率がいい。
実際のチェスでも弱い駒を囮に強い駒をハメて取るとか、駒を敢えて取らせ敵を誘導して盤を操作するなど、生身の兵士でやれば非情極まりない作戦は多数存在するためそれに由来するのかもしれない。
 
……ただし、「先に他の相手との戦いを切り抜けて(≒マキシマムと同軍の者が敗北・戦死している可能性あり)消耗しているところを叩く」という戦い方が「防衛」と呼べるかというと非常に怪しいところ。
それもダメージを必要最低限に抑えるつもりなら筋が通るのだが、【ミストバーン】への助勢を遅らせて焦らそうとしたり、敵を目前に呑気に講釈を垂れたりと、その活動内容は守護者たりえるものではない。
その理由は彼の目的が『敵の撃破』や『自軍の防衛』ではなく『自尊心を満たす勝利』に向いているため。
「城」や「主君」は結果的に守れていても、被害を最小に抑えたり「同軍の仲間」を守る気はさらさらないのである。
当然その上でトドメだけかっさらって恩を着せるつもりであろうことは想像に難くない。
その実態は冷徹な策士ではなくただの手柄泥棒であり、もはやポリシーを語るのもおこがましい、正真正銘の卑劣漢。
こんなアリサマでは彼の自称する御大層な能書きすら聞いてあきれるだろう。
 
当然そのスタンスはいろんなヤツらに呆れられており、まずヒムはそんな彼の事を盗賊やハイエナと同じと例え、ヒュンケルは「…おまえはクズだ!!生かしておく値打ちもないっ…!!!」と罵倒。
味方のはずのミストバーンからも「掃除屋」と普段から軽蔑される始末であった。
「用がなければ100年だんまり」と言われるミストバーンの特に必要とも思えない軽蔑の言葉を知っているとなると、ミストとしては軽蔑を通り越して腹に据えかねていたのかもしれない。
 
ミストバーンは敵味方の区別無く力ある者や努力する者を尊敬し、姑息で他人頼りな人物を(自分自身まで含めて)嫌う性格だが、卑劣千万でも自ら仕事をする一流の暗殺者、キルバーンとは親友関係にある。
例え掃除屋としての仕事であっても、きちんとこなしていれば、マキシマムにも一定の評価をしていたと思われる。
軽蔑の原因が、実力の有無よりもこうした仕事より自身の虚栄心を優先する低俗な性格にあることは、想像に難くない。
 
「バーン様に本当の信頼を寄せられている」等と豪語したマキシマムだが、余命幾ばくもないハドラーに彼の手駒を5つも、それも最強の駒たるクイーンまで渡してしまっていることから見てもバーンがマキシマムを重用していないのは明らか。
バーンは暇潰しじみた余興で【大魔王六軍団】という世界規模の組織を結成し、活動の場を与えるためだけに地上侵攻させるような途方もない次元の器の持ち主であり、いても害にはならないからとりあえず使っていたに過ぎないのだろう。
実際、新アニメ版ではバーンに出撃を打診した際に「好きにしろ」と投げやりに返されており、明らかに眼中にない事が伺える。
 
ところで、本人やミストバーンの口振りからすると今までにも仕事の実績はあったようだが、魔宮の門が「数百年開いたことがない」という話と彼自身の年齢を考えると、彼がバーンパレスへの侵入者を片付ける機会がそれほどあったとは考えづらい。魔界にある別邸 (【ロン・ベルク】をもてなした「第7宮廷」など) も「バーンパレス」扱いしているのだろうか?

末路

【ミナカトール】攻防戦の最中、座して戦いの行方を見守るバーンの背後へ現れて自らの出陣を進言。死闘で消耗しきったヒュンケルとヒムの前に現れ、ヒュンケルにトドメを刺さんと配下の駒をけしかける。
 
しかし、兵士集中攻撃を当てるがヒュンケルは倒せず、逆に先のヒムとの戦いで繰り出した応用版【無刀陣】で1体撃破され、続いて騎士も瞬殺。
HP1になったのを見澄まして僧正が奇襲を当て、勝利を確信するも、何故かHPは減らずこれも砕かれてしまう。
その後も僧正の刃を利用されて城兵・兵士1体と撃破され、残り兵士5体まで追い詰められる。
 
手駒を減らされたことで守勢に入るも、自分の背後を取られ、そのまま懐まで入られて顔を殴られ、髭を吹っ飛ばされるなど完全に圧倒されるハメに。
しかしヒュンケルの過去のデータを洗い直し、理に叶っていなくとも仲間を見捨てる事が出来ないという弱点を探り出す。
そこに付け込んだマキシマムは重傷を負って動けない状態のヒムを残った兵士に担がせてバーンパレスから落とそうと目論み、それを阻止すべく飛び出したヒュンケルを踏み潰して動きを封じ、共々倒そうとした。
 
こうして彼らを絶体絶命の窮地にまで追い詰めたが、ダイを助けるためやって来たラーハルトに頭部へ【鎧の魔槍】を投げつけられる。
過去のデータからかなり素早いという分析を出すもその動きに全く対応出来ず、残った兵士も【ハーケンディストール】の一撃で全滅してしまった。
 
駒を全て取られたことで詰みを悟るも、「きょ、今日のところはお前たちの勝ちということにしておいてやるわ……」と、震えながらも敗けを認めず体面を繕って逃亡を図るマキシマム。だがラーハルトから「その場を一歩でも動いたら…おまえは終わりだ…!」と死亡宣告を受け、狼狽えつつも余裕を保とうとしたところへヒムから『自らの頭に突き刺された鎧の魔槍を引き抜かれる際に、全身をものすごい速さで斬り刻まれていた』事を指摘される。
それでも深読みのつもりか「心理的トラップというやつだろう!?」とまったく信じず、「ショアッ!」とどこかで聞いたような掛け声を発しながら逃亡を強行した結果、飛び上がった途端に宣告通り全身に刻まれた傷口が一斉に開き、間抜け面のまま大爆発。
新アニメ版では爆散の直前に「あれ?」という断末魔を残すなど、より間抜けになった。
 
彼の死に様を目の当たりにしたラーハルトは「似合いの末路だ」とあっさり一蹴、ヒムは「正真正銘のバカだぜ」と呆れ果て、自分が“確率8分の1”の幸運でハドラーの部下に生まれ変われたことに心底感謝し、そしてマキシマムの死を察知したミストバーンには「自分がバーン様に買われていると思いこんではいたが、しょせんヤツは大魔宮の掃除屋!!ネズミ狩りと手負い獣の始末の区別もつかずに飛び出す奴が悪い……!!」と負けて当然と言わんばかりで、その最期を敵味方すべてに酷評される始末。バーンに至っては感想どころか彼について触れることすらなかった。
 
仮に生還できたとして、駒をすべて失うという完敗を喫した彼はどの面下げて自分だけおめおめとバーンの所に戻る気だったのだろう。
自称「最大最強の守護神」、その末路はあまりにも無様なものであった。

余談

マキシマムは戦闘能力的にはほとんど雑魚扱いされているが、チェスにおける王は実はかなり強く、単純な動きから強さを評価すれば王は僧正や騎士より上であると言われている。
1マスずつとはいえ「全ての方向に自在に動ける能力」を持っており、これは王と女王以外のどの駒も持っていないのだ。
「隣接する敵を粉砕する能力」はオリハルコンの豪腕として語られており、HPを減らさず戦っていたヒュンケルも状況的に回避不能となった時には死を覚悟していた。
加えて【キャスリング】という女王にはない緊急回避能力の恩恵を受けられるアドバンテージもある。
ただし、ゲームのチェスが「王が取られる=即時負け」であるように「マキシマムの死=軍団の全滅」(マキシマムの指示によってのみ動くため)であり、彼が前衛に出るのはリスクが高く、前述の通り他の駒は彼の指示無しには動かないのでミスを犯した時や予想外の事態に独断でフォローを効かせることが一切出来ない。
実際のチェスでも、王はキャスリングなどで他の駒の陰に隠れ、敵からの攻撃は味方にフォローさせるか自分で避け回るのが普通であり、自ら前線に出るのは敵味方とも駒がほとんどなくなってからである。
相手が満身創痍でヒムを庇ったヒュンケルのみであったからこそ豪腕が一瞬は脅威となったが、豪腕の根源となる鈍重で巨大な彼の体躯は守るべき存在を目標として敵に晒しているのに他ならず、立場と比べてあまりにもミスマッチなものであった。

本家ドラクエでは【ジャハガロス】が彼に酷似している。
 
新アニメ版のシリーズ構成である千葉克彦は、インタビュー記事において「実はエピソードを抜く案もあった」と語っており、その例としてマキシマムを挙げている。
しかしスタッフの中にマキシマムが好きでカットしないで欲しいという声があり、危うく出番のカットは免れた。……その代わり原作通り物理的にカットされたのだが。
なお、こういったスタッフの声もあり、主要なエピソードはそのままに原作約350話をアニメ100話の枠に収める方針にしたという。

魂の絆

王マキシマム

原作ストーリー、【竜の軌跡】の22章で【ボス級モンスター】として登場。言語切り替え時の英語表記はKing Maximum。弱点は光と突。
戦闘開始からすぐに「ショアッ!」と飛び上がって他の駒を1体呼び出し、自身は後ろに下がってキングスキャンとスーパースキャンで相手の防御力を下げる。
駒がいる時は防御力が上がっており、駒を倒した直後一瞬のみ防御が元に戻るのでその隙を狙おう。
Lv.2以上に強化した強力な奥義(特に【光属性】ドルオーラ(ダイ))複数がある場合、超級や究極級ならば呼び出される前に押し切って倒すことも可能だった。