セリフ/【一人じゃダメなんだ】

Last-modified: 2024-02-12 (月) 20:25:04

KHIII

キーブレード墓場での決戦にてソラの発した悲痛な叫び。
つながる心が俺の力だ!」と対となるセリフでもある。
 

テラ=ゼアノートとの戦いでヴェンアクセルドナルドが倒れ、更に現れたデビルズウェーブに次々と仲間が取り込まれ、カイリに手を伸ばすも届かず、キーブレードを取り落として慟哭するソラ。
 

ソラ「カイリもドナルドもグーフィー王様も消えちゃった」

  「どうしようリク──」

  「俺どうすればいいんだよ リク」

  「もう戦えないよ」

  「俺はみんながいたから戦えたんだ」
 

  「一人じゃダメなんだ
 

  「これ以上── 無理だ──」

 
今まで繋がる心を信じてどんな時も強くあった、そんなソラの初めてこぼした「普通の少年」らしい言葉。
「誰かが俺のことを思っていてくれたら たったひとりでも忘れずにいてくれたら」強くあれるソラが、仲間を失い皆との心の繋がりが絶たれたと感じた時、彼はあまりにも無力だった。


このシーンが使用されたトレーラーが公開された際、ファンの間にはかなりの衝撃が走った。
「あの」ソラが涙を流してこの台詞を口にする、しかも同トレーラーでは彼らしからぬ慟哭を上げるシーンまでもが公開され、一体何が起きたというのか、どういう絶望シーンが待っているんだと発売を待つファンを戦々恐々とさせる一因になった。
 
実際のゲーム中のシーンでは、実際に見てもらうとわかるのだが、プレイヤーが驚く間もなく皆がいなくなってこの台詞となったので、少々拍子抜け感の否めない演出になってしまった。

  • ちなみにこの時、上述の台詞から分かるようにこの場にはまだリクがいる。お陰で、いやまだ一人じゃないよね!?というツッコミも入った。
    • まだ自分がいるのにソラにこう言われた時のリクの心境や如何に…。
  • 一部では、トレーラーで見たときの方が絶望感が凄かったとまで言われてしまう始末である。
    • 酷いときには「トレーラー詐欺」とまで言われてしまっていることも……。
      • そもそもトレーラーと実際のゲーム内では、ソラが慟哭を上げる場面とリクが「ソラ 俺は信じてる (以下略)」と言う場面の順番が正反対になっている為、上述のトレーラー詐欺感をより高めてしまった可能性もある。
    • おまけに、その直後のシーンである終わりの世界のソラは、あの絶望感を漂わせていたのと同一人物と思えないくらい、最初からいつも通りの雰囲気で、すぐに「助けに行かないと!」と意気込んでいる。さっきまでの絶望感は何処へ落としてきたのか。
      • 意気込んだのは消えたと思った仲間がまだ完全には消えていない(可能性がある)と聞かされたからだが、のんきな反応はそのことを聞く前、チリシィとの会話の最初からで、普通に自己紹介したり、「俺どうなったの?」と何とも言えない声音で質問したりしている。
      • のんきというよりはよく分からない状況に戸惑っているだけのように見えなくもない。
      • とはいえ、今までシリーズをプレイしてきた人からすると、こちらぐらいの反応がソラらしくて見ていて安心するのは確か。
      • 直前の出来事があまりにも衝撃的で、目覚めた時は何が起きたか忘れていたのかもしれない。

なお、このセリフに対してリクは「ソラ 俺は信じている。おまえはあきらめない」と発破をかけるように返している。
その後たった一人でデビルズウェーブに立ち向かい、闇に飲まれかけたその時でも諦めなかったリクの後ろ姿を見たことで、ソラの心境にも変化があった…、と考えてみるのもおもしろいかもしれない。

 
しかし、ヴェントゥスとリア(アクセル)が戦う間もなく吹き飛ばされ、襲い掛かってくるテラ=ゼアノートを退けるために強力な魔法を放ったドナルドは力尽き、更にまた襲ってきたデビルズウェーブ達に王様を始めとして仲間が皆次々に呑み込まれてしまう、という状況の畳みかけに加え、カイリに至っては必死に伸ばした手が虚しく空を切ってそのまま連れ去られてしまった……となれば、幾らソラでも(まだ隣にリクがいるとはいえ)確かに絶望もしたくなるだろう、というのはわかる。

  • むしろこれらが短い間に起きた出来事だからこそソラは絶望したのかもしれない。圧倒的な敵の強さを見せつけられた上、自分が何かする暇もなく仲間をいっぺんに失うという出来事を一度に食らったわけだしショックは相当なものだろう。
  • この後ソラはデビルズウェーブが向かってきてもキーブレードを出さない(立ち上がりもしない)。心が折れていて出せない可能性がある。
  • 更に言うなら、今作ではソラが「死」とそれによる別れに直面するシーンがこれまでの作品に比べて明らかに強く描写されている。
    • キングダム・オブ・コロナフリンと、ザ・カリビアンウィルである。どちらも後々生き返ることは出来ているものの、その場に直面し、残された者達の嘆きを目の当たりにした際のソラの表情や行動を見れば、その出来事によって彼の受けた衝撃は何となく推し量れる。
    • アレンデールアナの時も、遠目にだが彼女が凍りついてしまっているのを彼はしっかり目撃している。
    • サンフランソウキョウヒロによる初代ベイマックスのチップ破壊も「死」のような扱いを受け、ソラはこの直前にヒロに向かって食い下がっている。一応この後に初代ベイマックスは復活するが、チップが違う以上同じ存在と言えるかどうかは…。
      • シグバールが自己犠牲の話をする直前のオリンポスでの一件もそうかもしれない。こちらは当人が不死身なので問題はなかったが、ソラ達が不安になるシーンはある。
      • ちなみに、この直前にリクが「3人の姿は消えていない 心はまだ離れていない」と発言しているように、BbSのマスター・エラクゥス(実際にはその時点ではまだ死んでいなかったが)やKHIIIのマスター・ゼアノートもそうだが、KHシリーズ本筋では人の死は、心が肉体から離れ、心と体がどちらも消滅した状態という(ある意味ゲーム的な)設定になっている様子。
        また、UχやDRでも死亡の際は肉体が消滅し、ハートがどこかへと飛んでいく描写が描かれており、言葉の上でも死ではなく「消滅」と言い表されている。
        明らかにディズニー作品で描かれる現実的な死とは異なる描写であるが、KH世界の一般的な死はどうなっているのだろうか?(KHIIでバルボッサが死亡した時はKH的な演出はない)
      • 単にキーブレードやハートレスなどというKH的な要素が原因で死亡すると、普通ではない死に方をするということだろうか。ソラ達の死生観が歪みそうである。
      • ゲーム的な演出はプレイヤー側が相手を倒した時の罪悪感を軽減するにはよいが、敵が非道を行ったという感覚も減少してしまうので、プレイヤーの作中の死に対する感覚が軽くなってしまいやすいが……。
  • 推測に過ぎないが、それらの出来事を経験してきたソラが、そういった「仲間を失う恐怖」を今まで以上に強く意識してしまっていたとしたら……このシーンでの彼の慟哭にも、ある程度の納得は行くだろう。
    • 幾ら光の勇者と呼ばれていても、再三強調されてきたとおり彼自身はあくまでも15歳の「普通の少年」である、という証左か。
      • アンチフォームレイジフォームを思うと、ソラの心には闇や負の感情がちゃんとあるし、むしろ普通の人より強いとも言える(なにせキャラクターズレポートによると、ソラの中に隠れている負の面が表出したのがロクサスである。心の闇はシャドウレベルだが)。KHIの「光に近づくほど影が大きくなる」という言葉の通り、普段の前向きさが強い分、一旦気持ちが負へ傾くと絶望も大きいのかもしれない。実際めざめの園ではこの台詞の後ソラの影からダークサイドが出現する。
      • また、これまでの作品でもソラは時折「いつ帰れるんだろう」などと弱音を覗かせるようなシーンがあったこと(大抵すぐに誤魔化していたが)を考えると、ここでとうとう耐え切れなくなって決壊してしまった、と見ることも出来るだろう。
      • とはいえ、他のキーブレード使いが絶望したり心を闇に落としたり、負の感情を露わにしている(特に同シーンのアクアの戦意喪失は「普通の少年」という建前すらないためツッコミの対象になっている)のに、彼らが体験した絶望と同等かそれ以上に衝撃的な体験をしたソラの絶望を「普通の少年だから絶望した」とするのも理不尽である。ソラ単体で「普通の少年だから」ではなく、ソラ以外のキーブレード使いを含め、これまでの作品で描かれてきたように「強い心の持ち主であっても、普通の人間のように負の感情に捕らわれたり、絶望することはある」といった方が正しい。
        ある意味主人公ゆえの強調演出が、他のキャラクターよりも「弱さ」を見せた際、それが強く印象付けられたと言えるかもしれない。
    • 実際のところ、KHIでもソラは「仲間を失う」という経験をしている。しかも、仲間を死で失うのではなく、キーブレードを失った上で置き去りにされるという、「心の繋がり」という意味では今回よりもダメージが大きいように思える。実際この時もソラは呆然として何も出来ずにいる。
      • 正直なところ、それでも立ち直ったソラを見ているからこそ、今回のソラの絶望に「弱さ」を感じる。その時はボロボロになっても諦めないビーストの姿と、カイリに会うためという目的によって立ち上がったが、今回も「デビルズウェーブから皆を取り戻す!」と立ち上がってもよさそうなものである。
      • とはいえ、結果的に「裏切り」ではあるものの、まだこの時点で絆が浅かったというのはあるし、彼らは彼らの事情があり、ソラに謝ってもいる。そして結局はソラのピンチの際には助けに戻っている。また、即座にビーストやカイリとの心の繋がりというフォローが入ったため立ち直ったと考えることもできる。対してこっちは仲間を取り戻す方法すら分からない状況で、目の前が真っ暗になったとしても仕方がない。
      • 正直この台詞のみを取り出せば唐突だが、テラ=ゼアノートによる宣戦布告に対しソラは「お前たちに負けることはない」と言い切る。その直後になすすべもなくテラ=ゼアノートは仲間を次々と蹴散らし、ドナルドも倒れる。一人残されて呆然とするしかなく、「何だよこれ…」と呟くソラの前に、追い打ちをかけるように巨大なデビルズウェーブが出現。それをただ見上げるだけのソラに気づいたリクが駆け寄り励まし、そしてソラは一旦は立ち直ったのである。しかしアクア、リクとともに立ち向かおうとするソラの目の前でまたもやソラにはなすすべもなくデビルズウェーブがみんなを連れ去った、という流れである。ソラは急に絶望したのではなく、徐々に希望をへし折られていったのだ。
      • 実際に二人で皆をデビルズウェーブから取り戻すのは不可能そうであるが、不可能だと考えて絶望したのならば、それは皆を失うことへの恐怖よりも、デビルズウェーブへの恐怖が大きいということになってしまう。
      • そうとも限らないのでは?デビルズウェーブを倒すのは不可能→みんなを取り戻すことは不可能&みんながいなければ戦えないので実質世界も詰み(チェックメイト)(「彼の地で光は敗北する」という状況もこの流れで一旦達成されてしまう)&デビルズウェーブでこの体たらくでは取り戻せたとしても本命の真XIII機関との戦いでまた失う・負ける可能性もある→絶望、の可能性もある。実際その後カイリを失うわけだし…。
      • ゲーム内で直接描写された要素ではないが、ソラはどちらかというと溜め込む気質かつ依存気質なのではないだろうか。前述のようにKHIにおいてソラはリクやカイリを探し出す目的がありながらもホームシックのような発言をすることがあった。その後そういった発言が見られなくなっていったのはソラの意思で抑圧していた、あるいは依存の方向が変わった(ドナルドやグーフィーなど仲間たち)ゆえのことであろう。「つながる心が俺の力だ!」「一人じゃダメなんだ」といったセリフも、ソラがそれだけ仲間たちに依存してきているということの表れではないだろうか。また、これは語弊のある表現かもしれないが、ソラはリクのように開き直った墜ち方(そしてそこからの立ち直り)を経験していないこともここにきて心が折れた原因と考えられる。一度ハートレス化したとはいえ、闇に傾倒してしまったゆえのハートレス化ではなくカイリを助けるために致し方なく自ら強制的にハートレスと化したという経緯がある。心の闇の大きさはシャドウ程度でありながらアンチフォームやレイジフォームのような凶暴性を持ち合わせているのは、それまで蓄積してきたストレスの大きさの表れだとするならば筋が通る。上記のような幾多の困難を乗り越え、ヴェントゥスやロクサスといった他者の痛みを抱えつつ過ごしてきた日々は、少しずつ着実にストレスとしてのしかかってきており、仲間たちやカイリの消滅を目の当たりにしてついにそのストレスはあふれ出してしまったのだと考えると、このセリフは決して軽いものではない。現実における表面上明るい人間の鬱に気づけない例を鑑みるとわかりやすい。KHIから多大なストレスの環境にさらされていたにもかかわらず元来の明るさや人のよさを保てていたのは、そこらの15歳とは思えない精神力である。
      • KHIIラストでもソラはリクに同調する流れではあるものの諦めの発言をしている。
      • シグバールにも指摘されていたが、ソラはあの明るさに見合わず自己犠牲的である。カイリを助けるためなら自分がハートレスになってもいい、世界を元に戻すためなら自分が故郷に戻れなくなってもいい、ナミネを守るためなら自分の記憶が失われてもいい、そうやってソラはいつも他者のために自分を犠牲にしてきた。逆に言えば、他者が犠牲になり自分だけ(リクはいるのだが)が残るというこの状況が1番こたえるし、この後彼らを助けるためなら自分の消滅をも厭わないところにそれが如実に出ている。
         
        ……結局、この台詞に纏わる一連のシーンも、今作に於いて墓場以降のシナリオが駆け足気味になったことで「演出不足」「描写不足」と言われている他のシーンの様にその煽りを喰らってしまったのかもしれない。

ソラとは逆に、このシーンでのリクはあのソラの心が折れた状況でも諦めなかったという対比により、ソラよりも強い心を持っているように見える。
リクは初めから強い心を持つキャラクターとして描かれているソラと異なり、精神面の変化が作中でも重点的に描かれたキャラクターであり、KHIIIに至るまでに、己自身の心の闇との戦いを経て成長し、守りたいもの(大切な人)を守れる強さを手に入れている。

  • KHIII序盤、闇の世界にいても不安も恐怖も感じないというリクに対し、王様は、リクの状態を「自分の不安や孤独を感じる隙がないほどに誰かを助けたい気持ちが先行している」からと推測し、それを「大切な人を守る強さを手に入れた」と評している。

つまり、リクはこれまでの旅で手に入れた「大切な人(例えばソラ)を守れる強さ」のおかげであんな悲劇的状況でもまだ戦えるのである。
これを踏まえてこのシーンを見ると、ソラが弱く描写されているというよりはむしろ、過去作で弱さが描写されていたリクの成長が際立っているシーンだといってもいいのではないだろうか。

  • 諦めかけるソラと諦めないリクという構図はKHIIのラストバトル後のソラとリクとの対称となっている。
  • ただ、リクはソラをどんな深い闇に飲まれても負けないと考えており、このソラの姿を見ても、どんなことがあっても諦めないと信じている。ある意味、この時のリクは己の信じる「心の強いソラ」を支えにすることで強くあれているとも言えるかもしれない。
    • KHIのホロウバスティオンの一件でも、リクは今回と同じように地面に手をつくソラの姿を見ている。それでも自分のところまでたどり着き、自分からキーブレードを取り返した姿を覚えているからこそ、「ソラは諦めない」と信じられるのだろう。
  • また、ソラの心の強さが「心の繋がり」から来るものならば、リクの強さは3Dラストの三人の質問や上記にもある王様の言葉などからも分かるように「大切なものの存在」から来るものであり、このシーンでリクが「強さ」を発揮できているのは、逆に言うとその「大切なもの=ソラ」がまだここに残っているからこそとも言える。
    • 特にソラは、BbSのムービーやキャラクター事典の記述からもわかるようにリクがそもそも「大切なものを守るための力」を願った対象であり、かつ3Dの質問の「君にとって一番大切なものって 何?」に対する答えが「大切な親友だ」であるように、リクの強さを最も支えている「一番大切なもの」であることが窺える。
      • KHIはそれが悪い方向に働いた例である。
      • Daysではナミネを助けるために記憶を失ったソラを助けるために戦い、KHIIではXIII機関を倒すために戦うソラを陰ながら助けるリクという、人を助けるソラを守るリク、という構図になっている。
      • ソラは強い力を持っており、仲間も多く、あえて守ろうと考えるような対象ではなさそうに見えるが、本人が誰かを守るためならいくらでも無茶をする性格だからこそ、リクが何よりも守ろうとする対象であり続けていることがKHIIIの会話で窺える。
      • そんなリク相手だからこそあのシーンでソラも弱さを見せることが出来たのかもしれない。もしこの時ソラが1人、あるいは残ったのがリクではなく他の仲間だとしたら、ソラはここまでの状態になっていただろうか?