クリス・レイサム(元巨人、2003~04年)が引き起こした珍プレーのこと。
イチローがMLB初年度に披露した補殺送球の代名詞「レーザービーム*1」が由来と思われる。
概要
2003年5月21日の巨人対ヤクルト戦(福岡ドーム)で発生。
1-0と巨人リードで迎えた6回表、一死1, 2塁の場面でヤクルトの鈴木健は平凡なレフトフライを放つ。左翼手のレイサムは難なく捕球するも、アウトカウントを勘違いしたのかインプレー中にも関わらずスタンドにボールを投げ入れてしまう。ボールデッドとなり二塁走者の宮本慎也が生還し同点に。試合は2-1で巨人が勝利するも、本失点を除き完封ペースの投球を見せた先発の高橋尚成にとって痛恨のプレーであった。
本年のレイサムは目立った成績を残せず*2翌年に退団したため、本プレーが彼の代名詞となる。
野球chでは蔑称として「冷寒」(レイ/サム、それぞれの当て字)が拡散することとなった。
「ビーム」と名が付いているものの、実際は近くの観客席にポイッと投げ込んでいるため言うほどビームではない。
動画
(補足)公認野球規則における本プレーの扱い
(2022年度 公認野球規則 5.06 (b)(4)(G)①を参照)
故意かどうかに関わらず、送球がスタンドまたはベンチに入った場合は走者に2個の安全進塁権が与えられる。野手にはエラーが記録される。
進塁の基準となる塁は、送球が野手の手を離れた時点の走者の位置で決まる。例えば一塁ランナーが二塁を回っていた時点で本プレーが起これば、二塁から2つ進塁して本塁へ進み得点が入る。(例外として内野手が打球処理を行った直後の最初のプレーで発生した場合のみ、投球前の塁が基準。)
原因
- MLBでは攻守交代の際にファンサービスとしてスタンドへボールを投げ入れる習慣があり、MLB出身のレイサムもその感覚が残っていたこと。(後述の類似例のように、近年はNPBでも浸透している様子が伺える。)
- アウトカウントを間違えたこと。
これらが重なり、当該プレーが発生したと考えられる。
類似例
ラロッカビーム
2004年8月15日の阪神対広島戦(大阪ドーム)で発生。
2回裏、一死1塁の場面で阪神の鳥谷敬が放った一塁ゴロをグレッグ・ラロッカが横っ飛びで捕球し、一塁を踏んで2アウト。
しかしチェンジと勘違いして一塁側内野席にボールを投げ入れてしまったため、二塁を回っていたジョージ・アリアスはさらに2つ進塁*3。阪神が先制した。
※動画タイトルの試合日は誤記。
マートンビーム
2011年5月26日の阪神対ロッテ戦(甲子園)で発生。
8回表、一死2塁の場面でロッテの清田育宏が放った飛球を右翼手のマット・マートンが捕球。しかしアウトカウントを勘違いして一塁側内野席にボールを投げ入れてしまう。走者の今江敏晃が本塁を踏み、ロッテがリードを広げた。
当日はレイサムの誕生日であった。
西川ビームと雄平ビーム
2015年7月20日、同じ日に類似のプレーが2件発生。同時多発はプロ野球史上でも前例がないようである。
- 1.西川ビーム
日本ハム対楽天戦(札幌ドーム)で発生。
6回表、一死1塁の場面で楽天のギャビー・サンチェスが放ったレフトライナーを西川遥輝が捕球し2アウト。しかしチェンジと勘違いした西川はボールをレフトスタンドへ投げ入れ、一塁走者のウィリー・モー・ペーニャは三塁へ進塁した。
次打者の松井稼頭央は右飛に倒れ無失点に抑えたたため事なきを得たが、その際に捕球した岡大海もスタンドにボールを投げ入れるという皮肉めいたプレー*4を見せている。
- 2.雄平ビーム
ヤクルト対DeNA戦(横浜)で発生。
7回裏、DeNA先頭打者のアーロム・バルディリスがライト前のライン際に飛球を放つ。二塁手の山田哲人が懸命に追いフェアグラウンド内でボールに触れたものの、走ってきた勢いを止められずファウルゾーンに飛び出したのち落球。ボールインプレイは継続中だが、同じく打球を追っていた右翼手の雄平がファウルと勘違いし、エキサイティングシートの観客に渡してしまったためボールデッドとなる。打者走者のバルディリスはこの時点で一塁に到達済みのため三塁へ進み、ピンチを広げてしまった。