5位力

Last-modified: 2023-12-30 (土) 11:59:56

2000年代前後の広島東洋カープのペナントレース順位が高確率で5位に収束していたことを「語彙力」に掛けて揶揄した言葉。


広島東洋カープの5位力

広島球団は創設経緯から慢性的に資金力に乏しく、2000年代においてもドラフトの逆指名・自由獲得枠およびFAで有力選手をほとんど獲得できず、逆にFAで自球団の主力選出の流出が相次いだ。これを受けて戦力が低下してしまった広島は1998年から2012年の間に15年連続Bクラスを記録。本期間中の5位は11回/15回(73%)であった。
この時期の広島の戦力では何度最下位になってもおかしくなかったが、1998年から2001年までの阪神タイガース、そして2002年から2012年までの横浜ベイスターズという鉄壁の万年最下位チームの存在があったために5位を脱出しても翌年は必ず5位に戻るという状態に陥っていた。

後述するリーグ黎明期にも5位力を発揮したことがあるため、2023年時点で広島はリーグで5位になった回数が最も多い球団となっている*1

そんな広島だが、2013年に初のCS進出を決めると、その後2016年から2018年に緒方孝市監督のもとセ・リーグ3連覇という快挙を成し遂げる。しかし2019年にCS進出を逃してからは再び不調に陥り、2020年・2022年にまたしても5位入りするなど時々「5位力」の再来が危惧されることもある。しかし、近年のシーズンでは4位入りすることもあり、現在は以前ほど強力な「5位力」を発揮しているとは言い難い。

また、この1998年から2012年にかけての広島を代表例とする「最下位にだけはあまりならないが、最下位回避によってかえってチーム改革が進まず安定して低空飛行を続ける」という状況は広島型暗黒と呼ばれ、後述する2013年以降の中日が近似的な該当例として挙げられる。
対照的に、たまに順位が跳ね上がることがあるものの基本的に最下位を爆走するタイプの暗黒は2002年から2015年までの横浜になぞらえ横浜型暗黒と呼ばれる。

 
監督試合勝利敗北引分勝率順位最下位備考
1997三村敏之13566690.4893中日20世紀最後のAクラス。5位は阪神。
199813560750.4445阪神
1999達川晃豊*2
(達川光男)
13557780.4225阪神
200013665701.4815阪神
2001山本浩二14068657.5114阪神勝利数で順位を決定するというこの年限りの特別ルールのため、
幻のAクラス入り*3となった。5位は中日。
200214064724.4715横浜
200314067712.4865横浜
200413860771.4385横浜ゲーム差無しの勝率9毛2糸(0.0092)差で5位入り*4
200514658844.4086広島21世紀唯一の最下位。5位は巨人。
なお、交流戦を除いて計算した場合は広島が5位。
2006マーティ・
ブラウン
14662795.4405横浜
200714460822.4235ヤクルトこの年の横浜は4位。
200814469705.4964横浜5位はヤクルト。
200914465754.4645横浜
2010野村謙二郎14458842.4085横浜
201114460768.4415横浜
2012144617112.4624DeNA5位は阪神。
201314469723.4893ヤクルト16年ぶりのAクラス*5。5位はDeNA。


中日ドラゴンズの5位力

広島と入れ替わるように、2013年以降は前年まで4回のリーグ制覇を含め11年連続Aクラス入りしていた中日が不調に陥る。
2015年以降の7年間で5度の5位になるなど5位力を受け継ぎ、2023年現在もその傾向が続いている。ただし鉄壁の最下位チームが存在したかつての広島と違い、期間中に最下位になったチームは固定されていない。主にヤクルトの極端に激しい順位変動*6が原因と言えるが、他に最下位を経験した阪神*7DeNA*8もすべて翌年にはAクラスになるなど安定していない。なお、この時期の中日は「秋頃までAクラス入りの可能性を残すも、終盤の最重要局面でしっかりと撃墜される」というパターンが多かった。
2020年には久々のAクラス入り(3位)となったものの、新型コロナの影響で交流戦とCS*9がないシーズンであり、日本シリーズはセ・リーグ1位チーム(巨人)の無条件進出というルールになっていたために他球団の攻勢がどうしても例年より苛烈にはなりにくかったことも考えられ、やや評価が難しい。
2021年以降はまたしてもBクラス入りが連続しており、2022年~2023年には球団史上初の2年連続最下位を記録するなど、現在では2010年代以上に暗黒の兆しを見せている状態である。

 
監督試合勝利敗北引分勝率順位最下位備考
2014谷繫元信14367734.4794ヤクルト5位はDeNA。
201514362774.4465DeNA14年ぶりの5位。
2016谷繫元信→森繁和14358823.4146中日19年ぶりの最下位。5位はヤクルト。
2017森繁和14359795.4285ヤクルト
201814363782.4475阪神10.0ゲーム差をひっくり返して5位入り。
2019与田剛14368732.4825ヤクルト
202012060555.5223ヤクルト8年ぶりのAクラス。5位は広島新型コロナのためCS中止
2021143557117.4375DeNA最終戦で勝利して5位入り。
2022立浪和義14366752.4686中日6年ぶりの最下位。5位は広島で、中日とは僅か0.5ゲーム差*10
202314356825.4066中日最終戦で順位が入れ替わって球団史上初となる2年連続の最下位*11
5位を掴んだのはヤクルトで、中日とはゲーム差なしの勝率1厘差


元祖5位力・広島カープ

広島の「5位力」が謳われるようになったのは近年だが、実は「広島カープ」と名乗っていた*12頃も1956年~62年の7年間で6度の5位、さらに1965年も5位となり、10年間で7度の5位を経験している。
この7回の5位の内最下位になったのは大洋(現DeNA)と国鉄・サンケイ(現ヤクルト)と、ある意味後の時代を予言しているとも言えなくもない結果であった*13

勝利敗北引分勝率順位最下位備考
195558702.4534大洋5位・国鉄とは1ゲーム差。
195645823.3545大洋史上初の5位。前年までは3年連続4位だった。
195754751.4155大洋大洋とは0.5ゲーム差で5位。
195854688.4435大洋
195959647.4805大洋
196062617.5044国鉄球団史上初の勝率5割超え。
196158675.4645大洋4位・阪神とは1ゲーム差。
196256744.4315国鉄
196358802.4206広島11年ぶりの最下位、5位は大洋。
196464733.4674中日5位は国鉄。
196559774.4345サンケイ
196654736.4384サンケイ5位は大洋。


関連項目


*1 なお同年時点でセ・リーグは順位最多球団が1~6位で全部違うというネタのような状態になっており、1位は巨人、2位は中日、3位は阪神、4位はヤクルト、5位は広島、6位はDeNAが最も多く記録している。
*2 1998~2000年の登録名。
*3 広島は勝率3位だが、勝率4位の横浜に勝ち数で劣る(広島68勝、横浜69勝)。
*4 広島が横浜より先に全日程を終え、横浜の残り試合の結果次第では広島の最下位もありえたが、最終戦で横浜が敗れた。
*5 CS出場も初。
*6 2013年、14年、17年、19年、20年と5度の最下位を経験しながらも2015年、21年、22年と3度のリーグ優勝を果たしている。一方3位は2012年、4位は2010年が直近。
*7 2018年に最下位。ただし、2013年以降のBクラス入りは2016年と2018年のみ。
*8 2015年、2021年に最下位。
*9 セ・リーグのみ中止、パ・リーグはファイナルステージのみ。
*10 交流戦を除くとペナント3位の阪神が最下位、中日が5位
*11 10月4日のヤクルト対阪神(神宮球場)で阪神が勝利すれば中日が5位、ヤクルトが最下位だった。しかし阪神1点リードで迎えた9回裏、守護神・岩崎優が炎上して逆転サヨナラ負けを喫してしまい、不運にも中日が最下位となった。
*12 1968年に「広島東洋カープ」に改名。
*13 ただしこの頃は戦前から続く名門である巨人・阪神・中日がAクラス常連であり、残りの1950年の新規加入組である国鉄→サンケイ・広島・大洋がBクラスの順位を争うことが多く、特に巨人とは歴然とした戦力差があった。