内容 | |
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北谷菜切 | 千代金丸、ここかー |
千代金丸 | どうした。俺を探しているのか? |
北谷菜切 | そうそう。相談がなー |
北谷菜切 | ……って、違う! 治金丸じゃないかー |
治金丸 | ……おや、すぐ見破られちゃうとはね |
北谷菜切 | そりゃあ、兄弟なんだから。何やってるのさー? |
治金丸 | うん。だい兄はお疲れのようだから、オレが代わりをしようかと |
北谷菜切 | 確かに千代金丸は顔に出さないけど…… |
治金丸 | だろう? だからオレがやるのさ |
北谷菜切 | でも…… |
治金丸 | オレはだい兄の影。影らしく仕事をするのさ |
内容 | |
---|---|
千代金丸 | 治金丸。北谷菜切から聞いたぞ |
治金丸 | 何の話かな、だい兄 |
千代金丸 | ……俺の影として動いていると |
治金丸 | まいったなあ…… |
千代金丸 | そういうことは、しなくていい |
治金丸 | オレがだい兄の影であるのは、今始まったことじゃない。これがオレのなんくるないさ、だよ |
千代金丸 | なんくるないさとは、返せないよ |
治金丸 | 背負うことがオレの生き方だよ。そして、オレはそれを望んでいる |
千代金丸 | ……治金丸 |
内容 | |
---|---|
日光一文字 | 日光一文字、ここに |
山鳥毛 | 我が翼よ、来たか |
日光一文字 | お頭。して、いかように |
山鳥毛 | 私だけで本丸の全てに目を配るのは骨が折れる |
山鳥毛 | お前はさながら左腕。己の思うように動いてくれればいい |
山鳥毛 | いずれ、翼も揃うだろう |
日光一文字 | 御意 |
内容 | |
---|---|
南泉一文字 | に……、日光の兄貴……! |
日光一文字 | ああ、どら猫。ふむ、その様子だと…… |
南泉一文字 | い、いや、オレは、しっかりと一文字一家としてそれらしく! ごろごろも、うずうずもしてない……にゃ! |
日光一文字 | ふん、なるほど…… |
日光一文字 | ……お前は、今まで通りにしていればいい |
南泉一文字 | ……へ? |
日光一文字 | とにかく自由に暴れていろ |
南泉一文字 | ほ、本当に? 後からシメたりしない……にゃ!? |
日光一文字 | そうか、ここで丸焼きになりたいか |
南泉一文字 | ひっ! ……わ、わかったにゃ |
内容 | |
---|---|
日光一文字 | こんなところで飲んでいるとは |
日本号 | うん? 誰かと思えば、……日光かい |
日光一文字 | いい身分だな |
日本号 | お前は俺の身分をよーく知っていると思ったが? |
日光一文字 | 弟分の顔を拝みに来たらこれだ。小言も言いたくなる |
日本号 | ……はっ、弟分? 俺が? 冗談 |
日光一文字 | そちらがどう思おうが、黒田の刀は皆弟分。俺はそのつもりでいる |
日本号 | おい、もしかして……それ、へし切にも言ったのか!? |
日光一文字 | 無論 |
日本号 | はっ……、……ははは! あー、そりゃ傑作だ! その場に居合わせなかったのが残念だ |
日光一文字 | お前たちがどう思おうが弟分として扱い、そして血を分けた弟の如く守る。それだけの話だ |
内容 | |
---|---|
太閤左文字 | 江雪っち~! 元気~! |
江雪左文字 | 貴方は……、いつも明るいですね |
太閤左文字 | 明るかったらだめ? |
江雪左文字 | だめなことはありません |
太閤左文字 | 儂が明るいとさ、みんな笑ってくれるんだよね。そういうの好きかも |
江雪左文字 | そうですか…… |
太閤左文字 | だってその方がうっきうきでしょ |
江雪左文字 | ……ふふ |
太閤左文字 | ……あ、笑った。江雪っち、今笑ったよね! |
江雪左文字 | どうでしょうか |
内容 | |
---|---|
太閤左文字 | 宗三っちも爪塗ればいいのにさ~ |
宗三左文字 | 爪、……ですか |
太閤左文字 | そう。宗三っちならぴんくとか似合いそう |
宗三左文字 | 爪は、塗ったことがありませんね |
太閤左文字 | 豊太閤も宗三っちの元主も派手好きだったじゃん。だから絶対似合うと思うよ |
宗三左文字 | 豊臣秀吉の派手好きは、魔王の影響だったのでしょうか…… |
太閤左文字 | ……あ、宗三っちの言いたいことわかった |
宗三左文字 | なんでしょう |
太閤左文字 | 猿真似だって言いたいんでしょ |
宗三左文字 | 猿だけに、ですか |
太閤左文字 | だ~か~ら~、猿じゃないってば、もう! |
内容 | |
---|---|
太閤左文字 | 盲亀の浮木、優曇華の花待ちたること久し…… |
小夜左文字 | ……なにそれ |
太閤左文字 | あ、小夜っち。これはね、やつし比べ |
小夜左文字 | やつし比べ…… |
太閤左文字 | そ、自分以外のものになり切る遊び。最近の言い方だと、仮装大会ってところ? |
小夜左文字 | 仮装大会というより、物真似じゃ…… |
太閤左文字 | ……ん? 今、猿真似って言った |
小夜左文字 | 言ってない…… |
太閤左文字 | そうだ、小夜っちも一緒にやろ! |
小夜左文字 | え? |
太閤左文字 | じゃあ、小夜っちは歌仙兼定の猿真似ね |
小夜左文字 | え? |
太閤左文字 | ほら! |
小夜左文字 | …… |
太閤左文字 | 恥ずかしがらないで! |
小夜左文字 | ……文系といえど、僕は之定だからね |
太閤左文字 | …… |
小夜左文字 | …… |
太閤左文字 | ……似てないね |
小夜左文字 | …… |
内容 | |
---|---|
巴形薙刀 | おや、似たようなのがいるな |
大千鳥十文字槍 | なに? |
静形薙刀 | ふん、……槍、か。……まったくいけ好かん |
巴形薙刀 | 槍よ、お前も物語を持たぬようだな |
大千鳥十文字槍 | 俺が、日の本一の兵と誉れ高い真田左衛門佐信繁の愛槍、大千鳥十文字槍と知ってのことか |
巴形薙刀 | ほう、差分の少ない十文字槍であれば逸話の親和性も高くなる……ということか |
大千鳥十文字槍 | ……なにをごちゃごちゃと |
巴形薙刀 | 真田の槍よ。薙刀の名手でもあったお前の元主には敬意を表しよう |
静形薙刀 | 真田の槍……ねえ。その逸話、せいぜい食われないようにするんだな |
大千鳥十文字槍 | ……ふん。語り種にして欲しければ、いつでも相手をするぞ |
内容 | |
---|---|
大千鳥十文字槍 | 上田城…… |
泛塵 | 僕たちの、元主がいたところだ |
大千鳥十文字槍 | 信繁も昌幸もここで死にたかっただろうな |
泛塵 | 昌幸は九度山で、信繁は大坂の役で果てた |
大千鳥十文字槍 | 人の生き死にというものは、思い通りにならないものだ |
泛塵 | それは、僕たちものだってそうだ |
大千鳥十文字槍 | ああ |
泛塵 | 人の世も、命も、そしてものの在り様も……まるで風に舞う塵芥のようだ。……だから |
大千鳥十文字槍 | わかっている |
泛塵 | この想いもいつか塵芥となる。その日までは…… |
内容 | |
---|---|
泛塵 | ………… |
日向正宗 | ………… |
泛塵 | ……なんだ |
泛塵 | ……言いたいことがあるんなら、言えばいい |
日向正宗 | ……どうだろう。僕には今、目の前の戦場しか見えていない |
泛塵 | ……塵は、斬るにも値しないか? |
日向正宗 | ………… |
日向正宗 | ……僕は僕で、君は君だ |
泛塵 | ……くっ、………… |
泛塵 | …………僕を、……助けてはくれないのか |
日向正宗 | 怯えないで |
日向正宗 | 次は、上手くやるって決めたから |
日向正宗 | だから、その望みは叶えてあげられない |
日向正宗 | 君の苦しみをどうにかできるのは、君しかいない。……そして、僕もだ |
泛塵 | ………… |
泛塵 | ……、……ぅ、……うぅ |
内容 | |
---|---|
日光一文字 | ……御前。ここにおられましたか |
一文字則宗 | 御前はやめてくれよ日光の坊主。僕はここじゃ、主のもとに集った一介の刀剣さ |
日光一文字 | しかし、御前が我々一文字の祖であることに変わりはありません |
一文字則宗 | いいかい。一文字内のどうこうからは、僕は隠居したんだよ |
日光一文字 | それはそうですが…… |
一文字則宗 | だいたい僕が偉ぶると、山鳥毛が困るだろ。お前さんはそれで釘をさしに来たんじゃないか? |
日光一文字 | そこまでお気づきでしたか…… |
一文字則宗 | 山鳥毛に伝えといてくれ。僕は見どころのある若いのを鍛えて過ごすから、自由にやってくれってな |
内容 | |
---|---|
一文字則宗 | よう |
南泉一文字 | うええええ御前!! なんでこんなところに!? |
一文字則宗 | ただの則宗として、南泉の坊主と遊びに来ただけさ |
南泉一文字 | えぇー……遊びに? って、そんなのありなのか…… |
一文字則宗 | 別に誰かが認める認めないの話じゃないさ。僕は僕の好きなことをして過ごすんだ。隠居だからね |
南泉一文字 | はぁ……いいけど。でも、なんでオレ? |
一文字則宗 | そりゃあもう、お前さんは一文字でも特に歪だからさ |
南泉一文字 | 歪ぅ? あ……、もしかしてこの呪いのことか……にゃ! まさか解く方法とか!? |
一文字則宗 | いや、そんなものは知らない |
南泉一文字 | ふにゃー!! |
一文字則宗 | 歪こそ、そこに人の意思が介在してることを感じるのさ。綺麗に整ってるばかりじゃつまらない。そこが面白い |
南泉一文字 | 面白がってる場合じゃない……にゃ! 隠居してゆるんじまったか…… |
一文字則宗 | お前さんもそのうちわかる。美とはなにか、愛とはなにか……がな |
内容 | |
---|---|
大和守安定 | ……あんたが、一文字則宗 |
一文字則宗 | 遅かったな、坊主。もっと早く乗り込んでくるもんかと思っていたが |
大和守安定 | ……僕は、加州清光とは違うからね |
一文字則宗 | そうなのかい? 僕からすると大差ないけれどな |
大和守安定 | それに……、わざわざお前と沖田君の話をするのも、違うと思ったから |
一文字則宗 | そうだな。僕はその天才剣士のことを、物語の上でしか知らない |
大和守安定 | それでも、一言だけ言いたかった |
一文字則宗 | ……ほう? 聞かせてみよ |
大和守安定 | 別にあんたを沖田君が使ってたからって、僕らのときより活躍できたとは思わない |
一文字則宗 | ……うはっはっは! その通り! そして、それでいい。お前さんはお前さんの強さを信じて行け |
大和守安定 | ………… |
大和守安定 | ……ありがとう。ちょっと、気が楽になった |
大和守安定 | そして、突然ごめん…… |
一文字則宗 | いや、いいってことさ。お前さんも真面目だねえ |
大和守安定 | それが取り柄なんで。……あ、これからも加州清光が迷惑かけると思うけど、よろしく |
一文字則宗 | 任せておけ。面白おかしく相手しておこう |
内容 | |
---|---|
村雲江 | …… |
五月雨江 | どうしたんですか? 雲さん |
村雲江 | ……みんな俺のことを嫌ってる。……俺は、……役立たずなんだ |
五月雨江 | ……ウーワンワン |
村雲江 | え? |
五月雨江 | ウーワンワン |
村雲江 | ……ウー、ワンワン |
五月雨江 | ウーワンワン! |
村雲江 | ウーワンワン! ……ありがとう、雨さん |
五月雨江 | ワン! |
内容 | |
---|---|
村雲江 | 雨さん、あれはなんだろう? |
五月雨江 | ふむ。どうやら何かのお稽古のようですよ、雲さん |
豊前江 | おう、丁度いいや。お前らも混ざっていかねーか? |
村雲江 | 何をやってるの? |
桑名江 | すていじのれっすんだよ |
五月雨江 | すていじ……れっすん |
松井江 | 歌舞音曲の稽古といったところだ |
五月雨江 | ……何やら新しい季語のにおいがする。……やりましょう |
村雲江 | あ、雨さんがやるのなら……俺も…… |
篭手切江 | ………… |
松井江 | どうした篭手切、鼻血か? |
篭手切江 | ……いえ、それではれっすんを再開しましょう! |
内容 | |
---|---|
日光一文字 | 姫、お待ちしておりました |
姫鶴一文字 | その呼び方ぁ |
日光一文字 | 姫は姫ですので |
姫鶴一文字 | 日光くん、相変わらずだぁ。その様子だとあのひとも相変わらずなんだろうけど |
日光一文字 | そのように言わないであげてください |
姫鶴一文字 | ………… |
姫鶴一文字 | そうすると、一番あのひとが言われたくないことを言っちゃうと思うけど |
日光一文字 | 貴方も、あの方の翼ですから |
姫鶴一文字 | んー、どこだろ。飾りの尾羽辺りとか? |
姫鶴一文字 | そういうの興味ない。また上杉の子たちと居られるのが嬉しくて来ただけ |
内容 | |
---|---|
姫鶴一文字 | ねぇ、けんけん。だっこがい? 肩ぐるまがい? |
謙信景光 | 姫鶴、ここはせんじょうなのだぞ |
姫鶴一文字 | けんけん大将、これは偵察です! 高いほうがよく見えます |
謙信景光 | えっ、ていさつなの? でも、かたぐるまなんていいのかな……? |
姫鶴一文字 | いいに決まってる。なにを遠慮してんの? |
謙信景光 | だって……ぼくは、がまんができるこだから…… |
姫鶴一文字 | 気にしない気にしない。甘やかされるのは、ちいさなこの特権だよぉ |
謙信景光 | うーん。……でも、ぼくはがまんができる、おっきなおとなになりたい |
姫鶴一文字 | ……そっか。けんけんは、おとなになりたいのかぁ |
姫鶴一文字 | でも、おとなはおとなで、なんのために我慢するのかを考えなくちゃいけない |
謙信景光 | ……!? ……むずかしいね |
姫鶴一文字 | ん、難しいの。だからちいさなこはおとなしく肩車されちゃいな |
謙信景光 | うわー! |
内容 | |
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姫鶴一文字 | 太閤くんはお猿さんなの? |
太閤左文字 | はぁ、猿じゃないし! |
姫鶴一文字 | お猿さんかぁいいよ? 太閤君かぁいいし |
太閤左文字 | むきっ! 猿じゃないし、猿って呼ばないで欲しいわけ |
姫鶴一文字 | お猿ぁるさん |
太閤左文字 | ウキキッ! |
姫鶴一文字 | あ、あは。 ……はははは! |
内容 | |
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福島光忠 | よう、光忠 |
燭台切光忠 | 思うに、あなたも光忠なんじゃないかな |
福島光忠 | いいんだよ、俺の中では燭台切が光忠なんだから。長船派の祖、光忠が一振り。燭台切光忠。俺のかわいい兄弟だ |
燭台切光忠 | 刀剣男士としては、僕が先輩なんだけどね |
福島光忠 | お兄ちゃんって呼んでくれても……いいんだぞ? |
燭台切光忠 | はは、本丸に戻ったら手料理をご馳走するよ |
福島光忠 | いいねぇ、食卓に飾れる花を見繕って行こう |
燭台切光忠 | そうか、あなたも…… |
福島光忠 | 俺は摘んで飾る専門。あとは、ここに秘密の花園を作ろうって奴や、他にも~ |
燭台切光忠 | 楽しみは取っておこうか。サプライズは嫌いじゃない |
内容 | |
---|---|
福島光忠 | ……号ちゃん! |
日本号 | お、おう?! |
福島光忠 | ああ、号ちゃん……、また誰かの槍なのか……号ちゃん |
日本号 | おい、どうした。別も何もお前も俺も、今はここの刀剣だろ |
福島光忠 | もう、離さない! |
日本号 | ……お前、酔っぱらってんのか? |
福島光忠 | そんなわけないでしょ……! 正則みたいな失敗、二度とするもんかよぉ~。日の本一の槍を手放すもんかよぉ~! |
日本号 | あー、はいはい。ただいま |
福島光忠 | 号ちゃーん!! |
日本号 | 素面の絡みの方が、よっぽど質が悪いんじゃねえか? |
内容 | |
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七星剣 | おまえは、南部の子か |
小烏丸 | おお、これは! 上古の剣が御出ましたか |
七星剣 | 飛ぶ鳥は万葉の時を越える。姿を違えようと |
小烏丸 | 時の壁を越え、剣をもたらしたのは瑞鳥か、はたまた……。いや、今は止めておこう |
小烏丸 | 我が同胞よ、心より歓迎しよう |
七星剣 | うむ、南都は古きころより多くの刀剣が生まれた真秀ろば |
小烏丸 | そう。大和の地は天然の要害にして、和を尊ぶ、我らがゆりかご |
七星剣 | ああ。あの方の後の足跡が、おまえであり、後の子らなのだな |
小烏丸 | ほほ、これは嬉しや。では、舞おう |
七星剣 | ふふ、それは迦陵頻か |
内容 | |
---|---|
篭手切江 | い……稲葉せんぱい! |
稲葉江 | …… |
篭手切江 | あの…… |
稲葉江 | ………… |
稲葉江 | ……我になんの用だ |
篭手切江 | は、はい。せんぱい、その…… |
篭手切江 | 私たちと一緒に、すていじのれっすんをしましょう! |
稲葉江 | ………… |
稲葉江 | なんだ |
篭手切江 | ……あ、えっと、れっすんとは歌ったり、踊ったりすることです |
稲葉江 | 歌って、踊る。……それは、なんだ |
稲葉江 | なぜ、歌い踊る |
篭手切江 | ……なぜ? |
稲葉江 | なぜ |
篭手切江 | ……それは |
篭手切江 | 夢、です |
稲葉江 | …………。……夢、とは |
篭手切江 | え…… |
稲葉江 | 夢とはなんだと聞いている |
篭手切江 | ………… |
篭手切江 | 私の目指す、その先にある……光。あなたの目指す、天下に同じ |
稲葉江 | ………… |
稲葉江 | ……ふん |
篭手切江 | あ…… |
篭手切江 | ………… |
内容 | |
---|---|
浦島虎徹 | 琵琶湖に到着っと。すっげえー! 海みたいだ |
蜂須賀虎徹 | ああ、この琵琶湖はうみとも呼ばれるね |
浦島虎徹 | そう聞くと泳ぎたくなっちゃうな |
蜂須賀虎徹 | 浦島、遊びに来たんじゃないんだ。こちら側まで敵が浸透していないか偵察しなくては |
浦島虎徹 | ちぇー |
浦島虎徹 | ……でも、なんか感じるんだ。呼ばれてるみたいな……? ここにも、竜宮城があるのかもしれない! |
蜂須賀虎徹 | ……ああ、そうか |
蜂須賀虎徹 | 呼ばれたのだろう。近くに長曽根村……、刀工長曽祢虎徹の故郷と言われる土地があるからね |
浦島虎徹 | そっか、行ってみたいな。……あ、遊びじゃないってわかってるけど! |
蜂須賀虎徹 | そうだね…… |
内容 | |
---|---|
蜂須賀虎徹 | …… |
小竜景光 | ……山の向こうは筑摩江だねえ |
小竜景光 | 俺は井伊家にも厄介になったことがあってね。この辺りのことも、少しは知っているよ |
蜂須賀虎徹 | そうか。この先には、刀工、虎徹に縁深い地があってね……つい |
小竜景光 | おや、それって彦根城下の長曽根村かい? 琵琶湖のほとりの |
蜂須賀虎徹 | ああ。この時代ではまだ、湖のそばではないけれど |
小竜景光 | おっと、それは失礼 |
蜂須賀虎徹 | いや、この関ヶ原で石田三成が破れた結果、湖のそばに移ることになるんだ。知らないのも無理はないよ |
小竜景光 | なるほどねえ。俺が井伊家に来たのは江戸の世の終わりの頃だった |
蜂須賀虎徹 | 井伊家が彦根で続いたことも、後の虎徹評価の一因になっているのかもしれない |
小竜景光 | それじゃあ、ここは絶対に負けられない戦いというわけかな? |
蜂須賀虎徹 | 負けても良い戦いなんてないさ。俺は、虎徹の真作の名を背負っているのだから |
内容 | |
---|---|
笹貫 | はは、……こうも簡単に背後を取られるとは思わなかった |
治金丸 | ………… |
笹貫 | それで、オレを斬りに? |
治金丸 | いいや。オレは影だ。影が勝手に決めることはない |
笹貫 | そっか。ひとまず安心した。この身体というものでやってみたいこともあるからさ、そう簡単には手放したくなくて |
治金丸 | ああ、それは主のものだ。オレたちはこれを使い、力を合わせてやらねばならないことがある |
笹貫 | お、歴史を守るって~あれだな? |
治金丸 | そうだ。どんなに苦しい歴史であろうとも。お前がどこの刀であろうとも |
笹貫 | ……背負うねぇ |
治金丸 | お前に言われることじゃない |
笹貫 | あー……わるかった。いや、どうにも凝り固まったのが身近に居て……つい |
治金丸 | お前が主のもとで同じ目的のために力を尽くす限り、影はただ影のまま |
笹貫 | …………。……背負うことで得た形とも言えるのか。この身体、一筋縄ではいかないってことだな |
内容 | |
---|---|
小烏丸 | ほう、おまえは…… |
抜丸 | ええ、ええ。源氏に落ち延び、この世から消えた伊勢平氏相伝の太刀、抜丸にございますれば |
小烏丸 | 然り。しかし、その姿は……まさに禿のようではないか |
抜丸 | それを申されるならば、あなたは随分と…… |
小烏丸 | これこれ、あまり見つめると目がつぶれるぞ |
抜丸 | されど、そのかたち……。後の世で日本刀が生まれ出づる時代の剣と崇められたそのかたち。それが、あなたの軸か…… |
小烏丸 | 少々やり口が粗野ではあるが……さればこそ、こうしておまえと向き合い、ここに在れるとも言える。他の子らのように父として見守もろうぞ |
抜丸 | いやですよ |
小烏丸 | ほほ……、……ほ? |
抜丸 | だから、いやです。禿とて神からこの世に与えられし剣。禿とならず別の姿もあったのではないかと思いましたもので |
抜丸 | それ故、父でも兄でもなく……、我はあなたを小烏丸と呼びましょう |
小烏丸 | ……はは、ははは! さよう、姿など在り様ひとつでいか様にも変わりゆくもの。まさに、諸行無常よな |
抜丸 | ふふ。それに、父上はひとりでけっこうです |
小烏丸 | ふむ……、まあそれもよい。では、じっちゃんではどうだ? |
内容 | |
---|---|
抜丸 | おい、そこの! そこのもの! 止まれ、止まれい! |
石切丸 | おや。私のことかな? |
抜丸 | …………、……むう。あなたからはなにやら匂いのようなものがする |
石切丸 | 匂い、なんだろう。今日は護摩木を炊き上げたわけでもないしねえ |
抜丸 | うーん、……懐かしい。いや、挑みたくなるような…… |
石切丸 | 挑む……。それは困った |
抜丸 | ……なんでしょう。んーと、んーと…… |
石切丸 | ええと、嫌われてしまったかな? |
内容 | |
---|---|
人間無骨 | うム、『此度の戦闘において、此レは……』、と |
歌仙兼定 | ……それは、何を書いているんだい? 歌を詠むには少々似つかわしくない場だけれど |
人間無骨 | ム、歌仙兼定。此レは戦況を記していル。文字で残しておくと便利だ |
歌仙兼定 | おや、まめな質だね |
人間無骨 | 文字を書くことは好ましい。此レも相棒の影響だロウか |
歌仙兼定 | ああ、そういうことなら大いに共感できる。流石は之定の同士 |
人間無骨 | が、やってみルと思った以上に難しく。相棒のような力強い筆筋にはほど遠く |
歌仙兼定 | ……それは、僕ら之定は悪筆だとかなんとか、評判がつきまとっていたからではないだろうか |
人間無骨 | ム、どおりで困った |
歌仙兼定 | まあね。でも、どんなことでも多かれ少なかれ最初は苦労をするものさ |
人間無骨 | そうか。では、歌仙もこのような苦労を? |
歌仙兼定 | ははは。その程度の瑣事でいちいち音を上げていては、文系の名がすたるというもの。……ははは、ははははは |
人間無骨 | うム、『……と言うと、朗笑を残し之定の同士は去った』、と |
内容 | |
---|---|
和泉守兼定 | よう、先輩! |
人間無骨 | ム、せんぱい? 此レは……、和泉守兼定 |
和泉守兼定 | ああ、あんたの茎にもしっかりと刻まれてる和泉守兼定よ |
和泉守兼定 | 之定は先約があるからよ。先輩って呼ばせてもらわあ。文句は、ねえよな? |
人間無骨 | 無論。して、其レをなんと呼ぼうか |
和泉守兼定 | かーっ! 本刃に言わせんな。好きに呼びゃあいい |
人間無骨 | ム、ならば、後輩、と |
和泉守兼定 | ……ぉ、おう。いいぜ、先輩 |
人間無骨 | うム、後輩。ぶっ倒してルか |
和泉守兼定 | おうよ、ぶっ倒してる! 和泉守兼定は、かっこ良くて強い! ずーっと流行りの刀だぜ |
内容 | |
---|---|
人間無骨 | うム、かの武蔵坊弁慶の相棒と共に戦えルとは実に光栄 |
岩融 | ほう? よもや弁慶の縁者とも思えんが…… |
人間無骨 | 此レは鬼武蔵の相棒、人間無骨。此レの相棒は森武蔵守長可と名乗り、鬼のように強かったことから鬼武蔵と呼ばレル |
岩融 | がはははは! なるほど、それは面白い |
人間無骨 | 瀬田の橋で関所破りをしたことも孕んでいルのだロウが |
岩融 | ふふん、橋弁慶に勧進帳だな? ならば、なおのこと結構。武蔵坊弁慶が後の世でも名を馳せる一端がお前の元主にあるならば、縁者も同然 |
岩融 | ……うむ、実に嬉しいぞ! 今、武蔵坊の薙刀と鬼武蔵の槍がここに揃ったのだからな |
人間無骨 | うム、此レらが揃えば向かうところ敵無しということだロウ |
内容 | |
---|---|
人間無骨 | 不動行光、此処には此レらしか居ない |
不動行光 | ……ひっく。なんだよ、話かけんな |
人間無骨 | では、此レは独り言 |
不動行光 | …… |
人間無骨 | あの年の初夏、母御は兼山で五人の息子の帰りを待っていた |
人間無骨 | 信長公に同行し京に出向いていた蘭丸、坊丸、力丸からは、夏には休みをもらえるだろうと母御に手紙が届いていた |
人間無骨 | 信長公の算段では天下布武をもうすぐ成し遂げられるところまで来ていたから |
人間無骨 | 久しぶりに五人揃って兼山に、母御の元で過ごせる夏が来るはずだった |
不動行光 | ……なんだよそれ、伏線立ちまくりじゃんか |
人間無骨 | 今か今かと待ちわびる母御の元へ、本能寺が焼け落ちたとの知らせが届く。三人の息子から手紙を受け取った十日ほど後のことだった |
人間無骨 | 同じく本能寺の知らせを受け信濃から命からがら戻った相棒は、母御とともに咽び泣きこの世の理を嘆いた |
人間無骨 | 母御と、相棒はこう思っただロウ。……せめてもう一度、会いたかったと |
不動行光 | ……あーもう、はっきりと言えばいいだろ! どうせ俺は愛された分を主に返せやしなかったし、この世の理も……断ち切れない…… |
人間無骨 | 此レは、相棒の荒々しい戦いと共に語らレル槍。だが今ひと時は、相棒の心を届けル十字の穂先となロウ |
人間無骨 | お前に、会いたかった |
不動行光 | …………、………… |
不動行光 | ……俺は、ダメ刀……。……だけど、これを受け取らなかったらきっと、もっとダメに……なっちまうよな、蘭丸 |
内容 | |
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八丁念仏 | 絶景、絶景っ! 最前にズラリと並ぶ鉄砲! |
大般若長光 | 初めて鉄砲が組織的に使われた戦いかあ。この頃の火縄銃の命中率が高かったら、刀の時代はもっと早く終わっていたかもしれないなあ |
八丁念仏 | 当たらないからこその鉄砲三千挺。戦は刀と槍で戦うもん……だしっ? 恐ろしいことを言うなあ、大般若長光 |
大般若長光 | ははっ。知ったかぶりが過ぎたかな? 俺こそ足利将軍家……信長公に、家康公。それに、今頃長篠城に籠っている信昌公の……って、宝物だった期間のほうが長いんだけれどね |
八丁念仏 | ここで刀の時代が終わっても、出番はなくならないって? |
大般若長光 | 違う使われ方になったとしても、残るべきものは残ると信じたいね |
八丁念仏 | は~、さすがは銭六百貫様。言うことが違うっ |
大般若長光 | おや、棘がある |
八丁念仏 | あ~、硝煙と爆ぜる火薬の熱に浮かされたかな? ここでそんなことを言っていたら、残るべきものではない方になってしまうかもっ |
大般若長光 | それは謙遜かい? 冗談にしては……少々趣味が悪い |
八丁念仏 | ……けっこうな本気っ? 刀剣男士も残るべきものと、そうでないものがあるのかもしれない |
大般若長光 | ようし! それじゃあ俺は、信長公があっという間に完勝してしまうと困るから、これから武田軍を応援しに行こうかな |
八丁念仏 | ……へ、元の主が最前で命張ってるのに? |
大般若長光 | なあに、あの方はこんなところでは終わらないし、苦労して大成してくれないと面白くないだろう? |
大般若長光 | それに、べきべきでない、らしいらしからぬ、なんてことを言っていたら……、本当に美しいものとの出会いを逃すからね |
八丁念仏 | …………変な刀 |
大般若長光 | それが銭六百貫と共に語られる、大般若長光さ |
八丁念仏 | ふ~ん……、そっか! |
八丁念仏 | よしっ、俺も武田軍を応援してこよっ |
大般若長光 | ははっ。立ち直りが早くてよろしい |
大般若長光 | ……そうでないもの、ねえ |
内容 | |
---|---|
泛塵 | 八丁念仏は、雑賀の出と聞いた |
八丁念仏 | まあそうだけど。そっちも紀州ゆかりっ? |
泛塵 | 時代としては少し後だが、山のほうに縁がある。雑賀衆の話は有名だ |
八丁念仏 | そりゃあ、知ってくれてるのは嬉しいけど。……眼差しがやたら眩しいような |
泛塵 | その……あの……、……のか? |
八丁念仏 | これは、もしや…… |
泛塵 | ……うっ、馬の上で鉄砲は撃てるのかっ!? 雑賀の鈴木孫市は、どんな場所からでも鉄砲を撃てたのだろう!? |
八丁念仏 | わ、びっくりした! え~っと……、君が多分思い描いているのは伝説化したキラキラ雑賀で、俺の確かな主は~…… |
泛塵 | ……くっ、塵が出過ぎた真似を、その…………すまない…… |
八丁念仏 | あ~~~~…………、撃てるっ! |
泛塵 | そうか、やはり馬の上で鉄砲は撃てるのか! |
八丁念仏 | あ~、うん |
泛塵 | 本当か! 本当に真田左衛門佐信繁も撃っただろうか! |
八丁念仏 | ……うん。きっと、そうだっ |
内容 | |
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一期一振 | 時間遡行軍は東軍勢に紛れているようだが |
同田貫正国 | やっぱ意味わかんねーな。東軍はほっといても勝つんだから、なんの歴史も変わらねーだろ |
一期一振 | それでも、彼らにとっては意味があることなんでしょう |
同田貫正国 | あー、やめだやめ。ごちゃごちゃわかんねーこと考えて、よそ事してっと折れっからな |
一期一振 | 同田貫正国は明解ですなあ |
同田貫正国 | ああ? なに他人事みてーに言ってんだよ |
一期一振 | ……はて? |
同田貫正国 | まあいい、行こうぜ。知ることも大事だが、俺たちはここに戦いに来たんだ |
一期一振 | なるほど明解。助かりますな |
内容 | |
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同田貫正国 | おい、おーい! 聞こえてっかー |
一期一振 | ……あ、はい! 今、参ります |
同田貫正国 | あー、あの山の上が…… |
同田貫正国 | おい、そこに居ろよ |
一期一振 | 同田貫殿? ……仕方ない、待ちますか |
一期一振 | …… |
一期一振 | …… |
同田貫正国 | ほらよ、柿だ |
一期一振 | あ、ありがとうございます |
同田貫正国 | 青ひょうたん顔で突っ立てて倒れられたら、たまらん |
一期一振 | ……私は、そんな顔をしていたんですね |
同田貫正国 | 俺はなんも見てねーし、事情も知らねーし、興味もねーから。さっさと食えよ |
一期一振 | いっそ清々しいほどの嘘ですな、はは…… |
一期一振 | うっ、渋! |
同田貫正国 | あ? わりぃ、渋柿だったか。っはは |
一期一振 | ………………やりましたな |
同田貫正国 | ちげーちげー、わざとじゃねえよ。油断した。……はははっ、ほら水 |
同田貫正国 | あー、処刑場は娯楽だなんだで人も多いが、出店も出てる。後で口直しに寄ろうぜ。詫びだ、奢る |
一期一振 | いえ、結構。この渋柿は持って帰って干し柿にしましょう。お山の上に供えにでも行きましょうか |
一期一振 | もう大丈夫です。ありがとう、たぬきさん |
同田貫正国 | はあ!? なんっで、その呼び方ぁ! |
内容 | |
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日向正宗 | 石田の兄上、見て |
石田正宗 | 土壇場だな。これから試し斬りをするのか |
日向正宗 | 少し見て行ってもいいかな? 御様御用が出るようだし、どこかの大名が正宗を持ち込んだみたいだ |
石田正宗 | 本当に? 私たち正宗は、本来ならこのような場には縁がない |
日向正宗 | 最初から偽物とわかっていて試し切りするのかも |
石田正宗 | それはずいぶんと勇気のある人がいたものだね。斬れても、斬れなくても |
日向正宗 | おおっと、前座は虎徹だ。でも、あの刀、すいぶん立派な姿をしているけど……あれは |
石田正宗 | ああ、良く似た偽物だな。なまくらの気配が漂ってくる |
日向正宗 | この試し斬りは大荒れだ。きっと正宗までいかない |
石田正宗 | それが狙いなのかもしれない。正宗は試さない、そこにあると知られることが重要だから |
石田正宗 | 行こう、日向。見る価値もない |
日向正宗 | そうだね |
内容 | |
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石田正宗 | …… |
石田正宗 | ……ああ、呼びに来てくれたんだね。この戦に縁を持たない私は、急に駆けだしたりはしないから、その手を降ろしてくれるとうれしい |
蜂須賀虎徹 | ……俺は何も |
石田正宗 | では、気迫だけか。すごいね、さすがは本物の虎徹だ。君は良く斬れるんだろうね |
蜂須賀虎徹 | …… |
石田正宗 | 待たせてすまなかった。さあ、行こうか |
内容 | |
---|---|
蜂須賀虎徹 | ……ここは |
石田正宗 | そうだね、三成様はこの先で死ぬ |
石田正宗 | まあ、私はここに居合わせてはいない。けど、そう――私はひと時も苦しませることなく、首を落とすことはできるのだろうか。そんなことを考えていた |
蜂須賀虎徹 | ……なぜ |
石田正宗 | なぜ? これだから裁断銘付きの刀は。柔らかいところをぶっすり刺してくる |
蜂須賀虎徹 | そうではない。俺にも覚えのあること、……だからだ |
石田正宗 | ……あまり口にはしたくないけど、刀は斬れてこそ。使われずとも |
蜂須賀虎徹 | 使われずとも……か |
蜂須賀虎徹 | 確かに、俺には刀工長曽祢虎徹の生前に刻まれた裁断銘がある。しかし、斬れることによって番付を昇りつめた虎徹は、その多くが在銘であるにも拘わらず、巷には贋作が溢れ、虎徹は偽物しかないと言われるようになった |
蜂須賀虎徹 | するとどうだ、粗悪な贋作、見紛う贋作、贋作は無尽蔵に増えていく。そして、皮肉なことに使われるほどに虎徹の評価が上がる。一方で、真作はその中に埋もれていってしまう…… |
蜂須賀虎徹 | 本物の虎徹とは。虎徹を虎徹たらしめるものとは…… |
石田正宗 | …… |
石田正宗 | ……うん。……それが、人だ |
蜂須賀虎徹 | ……虎徹には、刀を作り、その刀を振るって、研究し、有象無象の中から実証してくれた人たちもいた |
蜂須賀虎徹 | 全ては人から始まる。この問いも…… |
蜂須賀虎徹 | だから……、俺は虎徹の名に相応しい自分であれているだろうかと、常に問うている |
石田正宗 | ……ああ、そうか。私たちは、案外似た者同士なのかもしれない |
蜂須賀虎徹 | え? |
石田正宗 | 正宗を見たら偽物と思え |
石田正宗 | 正宗にも……かつて、私たちに価値を見出し、高め、それを守ろうとしてくれた人たちがいた |
石田正宗 | 人はすぐに争い合って死んでしまうけど……。人は物を作り、物を眺め、愛で、物を語る。物を壊し、そしてまた物を作る |
石田正宗 | 忘れてしまうこともあるし、間違うこともあるけど |
蜂須賀虎徹 | ああ、その心を受け取りたい |
石田正宗 | うん。……そろそろ行こう、三成様が来る |
内容 | |
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薬研藤四郎 | 実休さんは、道草かい? |
実休光忠 | ……ああ、君は……薬研くん。そうだね、道草を摘んでいるんだ |
薬研藤四郎 | まめだな。俺にその逸話はついてこなかったみたいだからさ |
薬研藤四郎 | 信長さんの薬草園。あとは、甲賀の三雲か……。けど、俺も薬研の名を冠しているからなのか興味があってね。できたら、手伝わせて欲しい |
実休光忠 | 君はなんだか、勘違いしているようだけれど |
薬研藤四郎 | そうかい? 俺はあんたを待っていたのかもしれない、とすら思ってるぜ? |
実休光忠 | 手入で直る身体に、必要だろうか |
薬研藤四郎 | 必要かどうかって話なら、これからはより必要なんじゃないかって……思ってるな。合理性より |
薬研藤四郎 | 特に、俺たちみたいなものには |
実休光忠 | 好きでやってるんだよ。なんだか落ち着くんだ |
薬研藤四郎 | 好きでやってるなら、なおいいさ |
実休光忠 | 君って……、僕や福島たちとは違うはずだよ。なのに、なんで…… |
薬研藤四郎 | まあ、ちゃっかりなところは信長さんの影響かもしれないが…… |
薬研藤四郎 | どんなものでも要は使いよう。同じものが毒にも薬にもなる、だろ? |
実休光忠 | そうか……、君の中にいるんだね |
薬研藤四郎 | 俺には、あんたの中に感じるがな |
実休光忠 | 多分、僕は亡霊なんだ |
薬研藤四郎 | そんなあんただから、話したんだよ |
内容 | |
---|---|
宗三左文字 | ……実休? ……貴方が来たということは、いよいよ主は覇道を行くのでしょうね |
実休光忠 | どうかな。三好、織田、豊臣、徳川、みな天下人にはなったけれど。僕は本能寺と大阪城で焼け、終いには再刃もされずこの有様だ。いまさら天恵を与えられるだろうか |
宗三左文字 | 貴方はその傷で三好実休を、そして……魔王を最期まで守ったのでしょう? |
実休光忠 | だと良いのだけれど。僕の記憶は、ぼんやりしているから |
宗三左文字 | そうですか……。貴方とは随分と長く縁がありましたよ。それも、織田の前から |
実休光忠 | ああ、宗三……三好政長の名はどことなく |
宗三左文字 | そう……、政長は三好実休の父を殺し、そしてその兄に殺された |
宗三左文字 | 仇も、因縁も、巡れば縁……、ですか |
実休光忠 | そう言ってもらえて嬉しいよ、なんだか |
宗三左文字 | はぁ……。それこそ、いまさら貴方と張り合っても仕方が無いようです |
宗三左文字 | ひとりの人に選ばれるか、ひとつの天に選ばれるか。その違いなど、ここではつまらぬ昔話……なのかもしれません |
実休光忠 | ごめんね。お詫びと言ってはなんだけれど、君をお茶に誘ってもいいかな |
宗三左文字 | ……はあ |
実休光忠 | どうかな? 冠する三好の名がそうさせている気がするのだけれど |
宗三左文字 | そんなことを聞かれても困りますね…… |
宗三左文字 | ただ……、良い茶菓子ぐらいは用意しますよ |
実休光忠 | ああ、特級の薬草茶で持て成すよ |
内容 | |
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京極正宗 | あら、懐かしいお顔。幽霊にでも憑りつかれたような |
にっかり青江 | ああ、君も。毒々しくて何よりだ |
京極正宗 | 赤い衣装は好き。汚れが目立ちませんから |
にっかり青江 | 小さな刃で何をそんなに斬ってきたのやら |
京極正宗 | 思い込み、決めつけ、見栄、虚構、わたくしに纏わりつく悪魔 |
にっかり青江 | へえ、恐ろしいねえ |
京極正宗 | 嘘。思ってもいないくせに |
京極正宗 | だって青江、わたくしたちの元の主はしたたかな方々だったでしょう? |
にっかり青江 | 泥の中で咲く薔薇のような人たち、だったかな |
京極正宗 | わたくしは、深窓の薔薇のままの方が良かった? |
にっかり青江 | その衣裳、よく似合っているよ。今でも君は、京極を冠する薔薇のままさ |
内容 | |
---|---|
京極正宗 | ふふ、石田のお兄さまは難しい顔もお似合いね |
石田正宗 | 京極…… |
石田正宗 | 表に出てこない事がお前の在り方だった。私たちは、お前を引きずり出してしまった |
京極正宗 | 何のことかしら? |
石田正宗 | 無銘の私が言えたことではないが……、顕現にあたって何らかの負荷を背負わされていないかと |
京極正宗 | 想像力のたくましいこと。でも、よく見てお兄さま。どこにわたくしを縛る鎖があるというのです? |
京極正宗 | それに、だからこそ、正宗の実力を示すためにわたくしは必要なはず |
京極正宗 | なんてこと言ったら、日向には後ろから刺されそうだけれど |
石田正宗 | 兄弟相手でも容赦がないね |
京極正宗 | それはお互いさま。でもそうね、以前のあるじさまの事は置いておきましょう。ここにはわたくしたちを余光で照らす者はいない。危なくなっても身一つで逃げ出すことは許されない |
京極正宗 | それに、寂しいなら、素直にそう言えばいいだけ。神は縋る者にこそ祝福を与えるのです |
石田正宗 | あまり虐めないでやっておくれ |
京極正宗 | 意地悪なお兄さま。日向に甘くしたいのもわかるけれど |
京極正宗 | でも、わたくしたちは強くあらねば。でないと、正宗は虚構に飲み込まれてしまうかもしれない |
石田正宗 | ……ああ |
京極正宗 | だとしても、わたくしたちは進みます。人により作られた物から、人が蘇ることもある。我らを創られた方のように |
石田正宗 | 私たちはここに在る。もう、誰にも否定はさせない |
内容 | |
---|---|
人間無骨 | うム。孫六、此レも顕現したか |
孫六兼元 | あんた、之定の槍か |
人間無骨 | 之定と兼元は義兄弟。身内には挨拶が必要だロウ |
孫六兼元 | ご丁寧にどうも。それにしては、頭数が足りないようだが? |
人間無骨 | 之定の同士は後程、おそらく。少し時間がかかル。誰に対してもそうだから気にしないでほしい |
孫六兼元 | なんだ。てっきり血闘にでも出ているのかと |
人間無骨 | ……ム。では、此レも果たし状を書いてくルか? 紙と筆なら此処に |
孫六兼元 | それは遠慮しておこう。万が一折ってしまったら、主人に申し訳が立たないからな |
人間無骨 | ……自惚レを。しかし、確かに関鍛冶の同士を折ルのは此レも忍びない |
孫六兼元 | はは、あんたが俺の相手をしてくれるのか? |
孫六兼元 | ただまあ、関鍛冶の刀は良く斬れるとはいうものの乱世の日常使い。たくさん打って、たくさん折れた。今更一本折れたとて……なんて思わないこともないが、同士討ちほど無意味なものはない |
人間無骨 | 孫六、刀として『折れず、曲がらず、よく斬れる』は最上級の評価と、此レは思う。其レは、折レていった同士たちの礎でもあル |
孫六兼元 | そうだな。関鍛冶の伝統は乱世の日常使いから、平和な時代の日常使いへと舞台を移し、技を残した |
孫六兼元 | そちらさんも強くてかっこいい最先端の後輩がいるしな。戦場に出てこずとも、俺たちの後継は立派にやっている。総じてみれば恵まれているんだろう |
人間無骨 | ……うム |
内容 | |
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水心子正秀 | ……む |
孫六兼元 | ん? |
水心子正秀 | ………… |
孫六兼元 | なんだ? |
水心子正秀 | あっ……! んん、失礼した。孫六兼元だったな、大永の頃の、その……、折れず、曲がらず、良く斬れる…… |
孫六兼元 | ああ、関鍛冶の孫六兼元だ。あんたは、江戸三作の水心子正秀だな。幕末のころによく見かけた刀だ |
水心子正秀 | えっ! ……あ、あの孫六兼元が水心子正秀をご存知だったとは、……光栄だ |
孫六兼元 | あんたが打たれた頃は、派手な刀のほうが評価が高かっただろう。俺に興味があるのか? |
水心子正秀 | それはもう!! ……あっ、ああ、もちろん。新々刀の祖として、古い刀は勉学の対象だからな |
孫六兼元 | そうか。まあ、興味を持ってもらえるのはうれしいが |
水心子正秀 | ………… |
孫六兼元 | 見たいのか? |
水心子正秀 | いい……のか? |
孫六兼元 | ああ、減るものじゃなし |
水心子正秀 | ああ、ああ、感謝する! |
孫六兼元 | はいよ |
水心子正秀 | 失敬 |
水心子正秀 | ……うん、折れる刀と折れない刀の違いはと問われれば、永禄から天正の激しい戦国において曲がったと伝わる事なく、上作でなくとも業物だとして諸侯の指料にもなり、そして何より斬れる刀! これぞ武士たる者が求める好むべき姿と言われている。うんうん、分かる、分かるぞ |
水心子正秀 | 茎をよく焼かなければ目釘穴から折れると言うけれど、目釘穴から折れるような刀はそもそも切っ先から折れるのだと。刀が折れる原因とは焼きなのかとも……。すごい、これが……かつて刀工水心子正秀が傑作と讃えた孫六兼元! |
水心子正秀 | 刀剣を知らないド素人がド素人に語るから真贋もわからなくなってしまうし……、押形に似ていれば真作だなんて木を見て森を見ないような話がまかり通ってしまう。見た目だけを追い求めるのは不仁の極、刀への冒涜! やはり水心子正秀は間違っていなかったんだ |
孫六兼元 | 視線が熱いねえ……、火傷しそうだ。ここにはもっと珍しい伝説持ちの刀もあるだろうに |
水心子正秀 | とても勉強になる! 兼元も、之定も、虎徹も、国広も! |
孫六兼元 | はは、そうかい。これぞ無我夢中ってやつだな |
孫六兼元 | ……後を継ぐ者がここにもか |
水心子正秀 | さて。では、ちょっと失礼 |
孫六兼元 | はいはい、ん??? んな、大胆な! あひゃひゃひゃひゃ |
内容 | |
---|---|
一文字則宗 | お前さんはだんだらは着ないのか? |
孫六兼元 | どっちを着ろって? 赤穂の義士か、新選組か |
一文字則宗 | おや、僕はてっきり……喜んで浅葱色を着るものだと思ったが? |
孫六兼元 | 俺の使い手は有名どころが多くてね。いろんなところに枝葉があるもんだから、いろいろ盛られてんのよ。あんただって遠からずだろ? |
一文字則宗 | 僕たちのような存在は*5、至るところに根があるからなあ。だからこそ、多少の事では揺らがないとも言えるが |
孫六兼元 | はは。選べる自由と選べない愛惜、感佩があるだけだ。申し訳ないが、これから新選組が池田屋に突入する見せ場でね |
一文字則宗 | ほう、それは…… |
孫六兼元 | 合間を縫って読書中。後に継がれる物、紡がれる物語については知らないことのほうが多い |
一文字則宗 | うははは! こいつは傑作だ! なんだったら、僕も聞かせてやろうか? 伝説級、天才肌の少年剣士の話だ |
孫六兼元 | 結構、結構。俺とあんたでその話をしてなんになる。……他に適任がいるだろうからなあ |
一文字則宗 | ほう、それは枝葉への慮りかい? |
孫六兼元 | そんな大層なもんじゃない。知ることで、己の持っているものを知る。そんなところだ |
一文字則宗 | どっかの誰かさんの言葉を借りるなら、持てる者こそ与えなくては、……な |
内容 | |
---|---|
孫六兼元 | 戦場で見るとよりいい刀だな、あんた |
肥前忠広 | ……あ? |
孫六兼元 | 天誅の天才、岡田以蔵といえば、人斬りの中では格別だ。その刀が大業物、肥前忠広 |
肥前忠広 | 最上大業物で人斬りの先輩様が、何の用だよ |
孫六兼元 | 用? 用かあ……、あるにはあるが、知っての通り、私闘(ケンカ)は上から厳しく取り締まられている |
肥前忠広 | ……ちっ |
孫六兼元 | ふむ。敵を倒せとほっぽり出されたはいいが、あんなものをいくら斬ったところで満たされることはない。……俺も、あんたも、そうだろう? |
肥前忠広 | ごちゃごちゃうるせえ |
孫六兼元 | いいねえ、いいねえ。自分に求められていることを理解している目だ。憐憫で泣いてしまうな |
肥前忠広 | ……なんだって? |
孫六兼元 | 飼い慣らされた犬の刀を折ったところで、全く面白くもない |
肥前忠広 | ……はあ? |
孫六兼元 | 殺気が足らないんだよ、殺気がさあ、なあ。範疇から外れればいいのか、なあ。ああ、それなら孫六兼元にはこんな話がある。慶応三年、冬の京都だ。土佐脱藩、坂本龍馬の…… |
肥前忠広 | ……! |
肥前忠広 | 首輪してんのはどっちだ、ええ!? |
孫六兼元 | ははっ! いいじゃないか、そうだ、その目だ |
肥前忠広 | てめえ、わざとか……! |
孫六兼元 | ……無心、決まっただろう? |
肥前忠広 | ……狂犬が |
孫六兼元 | どうとでも。ここで紡がれる物語は、それなりに楽しみたいからな |
孫六兼元 | だから、さっさと敵を倒して、俺に付き合え |
肥前忠広 | ……ああ? なんの義理で |
孫六兼元 | 巡り会ってしまった義理、かな。ははっ |
肥前忠広 | おい! …………、……ちっ |
内容 | |
---|---|
姫鶴一文字 | ごっちん、あんまし暇とか言わない方がいいよ |
後家兼光 | うん? どうした? |
姫鶴一文字 | 上杉ではそれでいいけど、ごっちんは長船ぶらざーずでしょ。しゃきっとしな |
後家兼光 | どーした、おつう。そーゆうなにらしくーとかべきとか、一番だるいって口だろ? |
姫鶴一文字 | ……は? だから、一言多いんだわ |
後家兼光 | 直江の癖、みたいなものだよね。仕方ない |
姫鶴一文字 | ……うざ、反面教師にしな。っても、刀が人を教師にするってうけるけど |
後家兼光 | そーかな。現に刀剣男士はこうやって人の形を模している訳だから、人に倣い、習ってるってことになるんじゃない? |
姫鶴一文字 | それこそ、人身御供代わりの、刀身御供ってこと |
後家兼光 | 笑えねー |
姫鶴一文字 | 笑うとこじゃないし |
後家兼光 | …… |
姫鶴一文字 | …… |
後家兼光 | ……ふ |
姫鶴一文字 | ……はは |
後家兼光 | 慣れた? |
姫鶴一文字 | そーゆーこと、聞く? |
後家兼光 | ごめん |
姫鶴一文字 | ……ん |
内容 | |
---|---|
山姥切長義 | 備前の刀が来たと思えば、なるほど、兼光の刀か |
後家兼光 | キミは……、長義の。さすが、華やかで……うん、強き良き刀だ |
山姥切長義 | 長船の主流派であるあなたに、そのように面と向かって言われてしまうとね |
後家兼光 | 急にごめんね。備前長船の中で同じく相州伝の流行りを取り込んだ刀に声を掛けられたから、ついはしゃいでしまった。おつうにも、一言多いってよく言われるけど |
山姥切長義 | いや、こちらの言い方も悪かったね |
後家兼光 | そんなことないよ。兼光が相伝備前の始まりのように扱われることも、刀工の系譜も、それに正宗十哲の括りだって、後世の人による憶測や分類の結果でしかない、とも言える |
後家兼光 | ただ、ボクが今感じたことは、それそのまま本当だなって |
山姥切長義 | 刀工として後に出てきた長義も、相州伝に美を見出した先達にそのように言われたら喜ぶだろう |
後家兼光 | よかった。ボクは後家兼光。どうぞよろしく |
山姥切長義 | 山姥切長義だ。そうか、上杉……いや、直江兼続の刀か。それはまた難儀だな |
後家兼光 | ……え? |
山姥切長義 | すまない、俺も一言多かったようだ |
内容 | |
---|---|
後家兼光 | その昔。この国の人は、虎の絵をたくさん描いた。見たこともないのに |
五虎退 | でも、猫はいましたよ |
後家兼光 | なぜ、猫と虎が似ているとわかるのか。見たことがないのに |
五虎退 | ええっと…… |
後家兼光 | かの謙信公の幼名は虎千代……、虎とはいかなる動物か…… |
五虎退 | あ、あの、ごっちんさん??? |
後家兼光 | 純粋に気になることに……意識を飛ばしてたんだけど……へ、へ、へくしょん |
五虎退 | わ、わわ! |
後家兼光 | 虎くんに近寄ると、さっきから鼻がむずむずしてっへ、へっくしょん、へくしょーん……ずび、なんだこれは |
五虎退 | ごごごごめんなさい!!! |
内容 | |
---|---|
火車切 | …… |
大倶利伽羅 | …… |
火車切 | …… |
大倶利伽羅 | ……なんだ |
火車切 | ……え、気付いてた? |
大倶利伽羅 | ……ふん |
火車切 | えっと…… |
火車切 | それ、触っていい? 連れてる、腕の…… |
大倶利伽羅 | 戦いの最中だ、無駄口を叩いている場合か? |
火車切 | 暗闇に色んなものを見るけど……そいつ、一番かっこいいから…… |
大倶利伽羅 | …… |
大倶利伽羅 | ……なら、自力でこいつを引き出してみろ |
火車切 | え!? |
大倶利伽羅 | 話はそれからだ |
火車切 | う、うん! |
内容 | |
---|---|
謙信景光 | ま、まって、みんな……! わ、……わわっ |
謙信景光 | うあっ! |
謙信景光 | ……う、うぅ |
謙信景光 | ……い、……いたく……ない、ぞ |
火車切 | すねこすり? |
謙信景光 | ひっ!? ……か、火車切? |
火車切 | ん |
謙信景光 | ……だいじょうぶ、だぞ。ぼくは、がまんが……できるから |
火車切 | へえ |
謙信景光 | 火車切も、だいじょうぶ。ぼくらは謙信公のかたな、つよいこなんだ |
火車切 | ……そっか |
謙信景光 | おなかがすいてるとき、さみしくなるって。これたべて、みんなにおいつくぞ |
謙信景光 | 謙信公はたくさんのおこめをそだてて、たくさんのひとをやしなっていた。謙信公からおこめをもらったひとはうれしそうだった |
謙信景光 | だから、はい、はんぶん。あ、うめぼしだ |
火車切 | ん…… |
謙信景光 | あのね、ほんまるのおこめもおいしいんだ |
火車切 | ふーん、そうなんだ…… |
其の145 『すていじ あくと6』 | |||
---|---|---|---|
時代 | 指定なし | 地域 | 指定なし |
発生条件 | 稲葉江と富田江を両方所持し、回想其の115『すていじ あくと5』発生後、篭手切江と豊前江と桑名江と松井江と五月雨江と村雲江を一緒に組んで出陣し、帰還後に発生 |
内容 | |
---|---|
稲葉江 | ……何やら騒がしいが |
豊前江 | お、稲さんもれっすんやってくか? |
桑名江 | れっすんは、歌って踊る稽古のことだよ |
五月雨江 | 存外、楽しいものですよ。新しい季語とも出会えます |
松井江 | 血の巡りも良くなる |
村雲江 | それに、みんなと歌って踊ってる時は……お腹の痛みもましになる気がするんだ |
富田江 | ははっ、なかなか楽しそうだよ? |
稲葉江 | ……楽しい? 歌い踊ることが |
豊前江 | そうだな、踊ってっと気持っちぃーぜ? |
松井江 | 血のたぎりは感じるね |
桑名江 | 出来るかなぁって思っていたことも、少しずつ出来るようになっていくんだ |
五月雨江 | 忍びの技も、俳句の出来もより冴えるようになりました |
村雲江 | 俺は……。うん、そう……楽しい、なのかも |
稲葉江 | ………… |
稲葉江 | かつての主は、美しい踊りを目にし……己の秋を知ったのだ |
富田江 | そうなんだね。でも、お前はここに居て、今まさに天にその手を伸ばさんとしている |
稲葉江 | 歌って踊る…… |
富田江 | おや、心が動く音がする |
篭手切江 | はい。心が動き、心を動かす。歌い踊ることはこの瞬間が、ここにあることを示す。今を照らす、その一瞬 |
富田江 | 眩しいね…… |
稲葉江 | 我が踊るのも宿命か |
稲葉江 | ……では、我もやろう |
富田江 | だそうだよ |
篭手切江 | ……!! |
篭手切江 | …………っ |
村雲江 | 篭手くん……お腹痛いの? 厠行く? |
篭手切江 | ……いえ、大丈夫です。……さあ、張り切ってれっすんしましょう! |
内容 | |
---|---|
富田江 | おもしろい作戦だ |
篭手切江 | そうでしょうか? ただ真正面から敵を倒すだけの正攻法です。面白味には欠けるかと |
富田江 | ああ、君の戦略のことだよ。皆、素直に乗せられているじゃないか |
篭手切江 | …… |
篭手切江 | 富田せんぱいには敵いませんね。お見通しですか |
富田江 | 富田で構わない。稲葉もせんぱいなんて見上げられるより、同等に扱われたほうが気が楽なんじゃないかな |
篭手切江 | いえ、せんぱいはせんぱいです。私は若輩者ですから |
富田江 | では皆、その若輩者の手の内で踊らされているわけだ |
篭手切江 | 踊らせているつもりは! ……あ、踊っていただいてますね、はは。皆さん、とてもお優しいので |
富田江 | それだけで、とも思えないけどね |
篭手切江 | 富田せんぱい。江とは如何なる刀だとお思いですか |
富田江 | 天下人豊臣秀吉に見出された天下三作の一角、郷義弘の作刀。御家の至宝、贈答として多くの大名に重んじられた。それこそ江の一振で国が買える程の価値で。私は前田家、君は細川家と稲葉家だったかな |
篭手切江 | はい。その反面、私たちはこのようにも言われています |
篭手切江 | 江とお化けは見たことがない |
富田江 | 刀剣の見極めにおいて銘ほど重要なものはないけれど、江の多くは無銘。その価値は権威からの評価によってのみ成り立っている |
富田江 | 逆に言えば、権威に江と認められた刀だけが郷義弘の刀ということだね |
篭手切江 | 私たちは他者の目を通して初めて自己を得ることができる |
富田江 | だからこそ、歌と踊り、かな |
篭手切江 | ……安直、でしょうか |
富田江 | いいや。江の特徴を捉え、よく活かしている |
富田江 | ただそれは、劇薬かもしれない |
篭手切江 | ………… |
篭手切江 | それでも、私は……。江を、もっと確かで強い存在に…… |
富田江 | 夢とは光。光とは天下に同じ、と言ったそうだね |
篭手切江 | 出過ぎた真似をしました。お恥ずかしい限りです |
富田江 | 光にも、天下にも、影が付き纏うよ |
富田江 | なのに君はその手を伸ばした。……だが、ここは戦場だ。その考え方は間違いではないだろう |
篭手切江 | ……すみません。無理に言わせてしまいましたね |
富田江 | それは過小評価さ。君は星を掴んでしまったのだから |
内容 | |
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稲葉江 | ……天下は夢、か |
富田江 | そんなに良いものかな、天下は |
稲葉江 | 良い悪いの話ではない |
富田江 | 良い悪いではない……。稲葉、お前が夢と言うから |
富田江 | 私は夢というものをなにやら良いものと捉えていたらしい |
稲葉江 | ……貴様はなんのために戦っている? |
富田江 | なんのためって、刀剣だからね。それと、 |
富田江 | 応えることは、嫌いじゃないんだ |
稲葉江 | ……そうか |
富田江 | それに、お前と居ると少しだけ楽しいってことが分かる気がする |
内容 | |
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豊前江 | 風が気持っちいい~ |
富田江 | ああ、いい風が吹いている |
豊前江 | 戦場での富さんの走りは流石だな。馬が堂々としてる |
富田江 | 光栄だよ。豊前の走りは正に疾風のごとくと言ったところだ |
豊前江 | ……なあ、富さん。疾さの先には何があるか、知ってっか? |
富田江 | それを知ってどうするんだい? |
豊前江 | みんなやりてーことやりゃいいって思ってる |
豊前江 | ただ、おれはこの疾さの先に何があるから走るとか、そうゆうのはねーから。ふわふわしてるのかもしんねー。それこそお化けみたいにさ |
富田江 | 目指す何かを夢と言うなら、それがあるから良い悪いではないみたいだよ |
富田江 | 気が付いたら走り出していた。そんな君だから、行けるところがある。共に在れば、辿り着けるかもしれない景色がある。そう思わせてくれる |
豊前江 | 役に立てるなら嬉しいな。俺は富さんや篭手切みたいに戦略の事はよくわかんねえけど…… |
豊前江 | おばけには影がねえってさ。だから、どんな強い光の中でも、どんなに深い闇の中でも、足を取られずに済むかもしれねえ |
富田江 | ……そうか |
内容 | |
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大慶直胤 | 殿様! 殿様ー! |
鳴狐の狐 | この声は……? |
大慶直胤 | はあはあ……、追いついたー! |
鳴狐の狐 | 大慶直胤、鳴狐を殿様と呼んだのはあなたですか |
大慶直胤 | うん、秋元様のところの鳴狐様でしょう? 郷里の宝剣様だよ!? 凄すぎるー! |
鳴狐の狐 | 郷里というと、舘林藩でしょうか? |
大慶直胤 | んっとね、山形! |
鳴狐の狐 | 山形藩でしたか |
大慶直胤 | そう、刀工大慶直胤は山形城下の鍛冶町の鍛冶屋の息子で、水心子正秀は赤湯で野鍛冶をしてたから |
鳴狐の狐 | 秋元永朝様が藩主の頃でしょうか。水心子正秀はそのお抱え鍛冶だったと |
大慶直胤 | うん、江戸でね。大慶直胤はその水心子先生を頼って江戸に出て、弟子になった。その時お世話になっていたのが、日本橋浜町の秋元様のお屋敷。秋元様の援助があったから、水心子正秀と大慶直胤は刀の研究に勤しむことができたんだ。それってとっても感謝ー! |
鳴狐 | 永朝は、自分でも刀を打つぐらい刀好きだった |
大慶直胤 | およ! 宝剣様が話してくれた! よもや、そっちの狐が本体かーとも思っちゃったよー |
鳴狐 | これは、尾曳狐 |
大慶直胤 | ええっ! 館林城の縄張りをしたって伝説の!? ほんと!? |
鳴狐 | …… |
鳴狐の狐 | …… |
大慶直胤 | ………… |
鳴狐 | 嘘 |
鳴狐の狐 | ぷはー! 鳴狐、そのような嘘は困ります! 私があの有名なお狐様などと、恐れ多い! |
大慶直胤 | 嘘なのー!? もー、変な宝剣様ー! |
内容 | |
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大慶直胤 | むぎゅー……、踏み出した途端、洞に落ちるなんて……。でも、助かったー |
地蔵行平 | そなたは、もっと周りを見ながら歩いた方がよい |
大慶直胤 | 周りを見ながら歩いていたから、穴に落ちたんだけど |
地蔵行平 | ……はあ、そなた、古今に似ているな |
大慶直胤 | ええっ! それはまた、光栄なー |
地蔵行平 | 褒めてはいない |
大慶直胤 | 褒められて伸びる鋼なのにー |
地蔵行平 | ……刀剣も時代が下れば随分と俗世に塗れる |
大慶直胤 | それを言うなら、鬼と蛇の時代の刀は偏屈だー。刀もろくに見せてくれないし |
地蔵行平 | ああ言えば、こう言う。そんなに吾の刀が見たければ、後で見せてやろう |
大慶直胤 | いいのー!? 後鳥羽院の御番鍛冶、豊後国行平の刀! やった! |
地蔵行平 | だから、今はちゃんと前を向いて歩きなさい。古今といい、歌仙といい、この手のものはなぜすぐよそ見をするのか…… |
大慶直胤 | …… |
地蔵行平 | どうした? まだなにか |
大慶直胤 | ……ううん、地蔵菩薩の優しさがさ、なんだか沁みちゃってー…… |
地蔵行平 | ……まったく。人の時代の刀というものは |
内容 | |
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大慶直胤 | おおー、甲鉄艦! |
笹貫 | そんなにはしゃぐもんかな |
大慶直胤 | あれは叡智の塊ー! 蒸気船で、鉄甲板で、カノン砲まで付いてるんだから |
笹貫 | あれの前では、人間も刀も一溜りもない |
大慶直胤 | んーと、薩摩の刀が言う? |
笹貫 | はは、確かに |
笹貫 | 薩摩は九州の南端にあって幕府の目が届きにくいわ、密貿易で外国の技術を取り入れて倒幕の機会を伺っていたわで、あの力をいち早く引き込みはしたよ |
大慶直胤 | でもまー、幕府側が外国の技術を持ってなくて薩摩に遅れを取っていたわけでもないし、それぞれに戦う力があった。それで、この戦争は北の大地に至ってるから |
大慶直胤 | 火砲を前にしても、薩摩の兵は勇ましく、鬼のような存在だったな |
笹貫 | 褒めてくれるねぇ |
笹貫 | だけれど、いくら勇ましく鬼のような薩摩隼人であろうと火砲の前ではただの人間。その勇ましさを発揮することなく、機械的に排除されて死ぬ |
大慶直胤 | 刀工大慶直胤は、反射炉に希望を掛けたんだよね。この研究が国の為になるって |
大慶直胤 | 鋼は機械化の末にあんなにも強い武器になったんだ。大砲にも、軍艦にもなれた |
大慶直胤 | でも、どれだけ機械化されようと鋼の行きつく形として、刀だけは人の手からしか生み出せない。……そう、揺らぎが必要なんだ |
大慶直胤 | そして、俺たちは刀としてここに呼ばれた |
笹貫 | 機械化とは、往々にして人間性の排除を言う…… |
笹貫 | この時代があの鋼を選んだ。だが、その先の時代でこうしてまた刀という鋼が選ばれた |
大慶直胤 | え……、……ええっ!? なにそれ、讃美ー! |
大慶直胤 | じゃあさ、その違いをしっかりと目に焼き付けないと。ちょっと近くまで行ってくるー! |
笹貫 | 刀は武器として逆行し、人間性を受容するための鋼となる…… |
内容 | |
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大慶直胤 | 朝尊って、自制心、強い方? |
南海太郎朝尊 | おや、どうしてかな? |
大慶直胤 | さっきから俺、刀工大慶直胤の血が騒いで仕方ない。この時代の戦場には、彼らが喉から手が出るほど欲しかった鋼がごろごろ転がってるんだから |
南海太郎朝尊 | 刀工の血が騒ぐとは、面白い例えだね |
大慶直胤 | だって、見てみなよー! この刀剣は実に良き鋼を使ってる。この色、鍛え、十中八九、相州伝! こっちは備前伝! 俺たちが打たれた時代ではこういった良き刀はあんまり見る機会なかった |
南海太郎朝尊 | ああ、ここで失われることがもったいないほどだ |
南海太郎朝尊 | だがこれは、歴史上ではすでに死を迎えている。この後に語られることはなく、人知れず朽ち果てていくだけの。在るが無い。君が今、踏みつけている石ころと変わりないものだよ |
大慶直胤 | なら、どのようにしてもいいよねー? |
南海太郎朝尊 | ここは特命調査の地ではないからね。慎重に行かなくては |
大慶直胤 | やっぱり、朝尊はわかってるんだ。俺たちにとって大切なもの |
南海太郎朝尊 | 刀剣男士は刀剣そのものから離れることでしか、強くなれないのかもしれない。と答えておこうか |
大慶直胤 | そっかー |
大慶直胤 | ……なら、細かいことはいいや。同じ師を仰ぐ友伴、仲良くやってこー! |
南海太郎朝尊 | 実際に弟子だった刀工、大慶直胤の血が騒がないかい? |
大慶直胤 | 騒がしたほうがいいなら騒がすけど。いつかの誰かが吹かした業は、既に俺たちの血肉になっている。ここにある石と、同じこーと? |
大慶直胤 | 水心子先生は……、ちょっとわからないけどさー。刀剣男士水心子正秀は、そんな細かい事を気にするような奴じゃないから |
南海太郎朝尊 | それはそれで、心配なのだけれどね |
大慶直胤 | 確かにー! |
内容 | |
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大慶直胤 | 正秀はさー、いつまでその感じで行くの? |
水心子正秀 | こ、こら直胤、うかつなこと言うな! 誰が聞いてるかわからないだろ!? |
大慶直胤 | でも、それが正秀なんだから |
水心子正秀 | ……私は新々刀の祖として、それらしくある必要があるんだ |
大慶直胤 | 誰もそこまで気にしてないと思うんだけどなー |
水心子正秀 | 私が気にする。私は強く、気高い刀剣男士でありたいんだ |
大慶直胤 | それはよく知ってるけど…… |
大慶直胤 | しんどいときは言ってよね。新々刀である前に、友でありたいなって思ってるからさ |
水心子正秀 | ………… |
内容 | |
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大慶直胤 | 清麿くんはさー、正秀はあれでいいって思ってる? |
源清麿 | 何を突然言い出すかと思えば。僕は水心子を応援している |
大慶直胤 | あー、そーいうのでその気になっちゃうからさー |
源清麿 | 理想に向かって努力しているのを邪魔したいのかい? |
大慶直胤 | そういった正秀の資質は好ましくはあるけど、潰れたら元も子もないって話だよー |
源清麿 | まずは水心子の意志を優先したい。……簡単に口を出せることじゃないよ |
大慶直胤 | 正秀の友としての話、してるんだけどー!? |
源清麿 | 僕も水心子の親友として言っているつもりだ |
大慶直胤 | むぎゅー! 清麿くんわからんちんだー! |
源清麿 | こうなるから困るんだ…… |
内容 | |
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大慶直胤 | せっかく江戸に来たんだし、ちょっと寄り道してこ! |
源清麿 | あっ! ああ……。行っちゃった |
源清麿 | 寄り道するって言っても…… |
源清麿 | ……? |
源清麿 | ……これは、刀を打つ槌の音 |
源清麿 | ここに居たのか…… |
大慶直胤 | やっぱりこの時代の鋼は弱いよね |
大慶直胤 | でも、この時の江戸は活気があっていいよー |
源清麿 | 大慶は江戸の町が好きなんだね |
大慶直胤 | うん? 江戸三作なんて大層な括りで呼ばれるからかなー |
大慶直胤 | 刀工大慶直胤はいろいろなところに行って、刀を打って、気ままな放浪旅をしていたけど、一番地に足が着いている感触があるのが江戸なのかも |
源清麿 | そうか |
大慶直胤 | 清麿くんは? 山浦環の故郷は信濃でしょ |
源清麿 | 考えたことなかった。四谷正宗とも呼ばれるし、江戸……、なのかもね |
源清麿 | でも、驚いたよ。君から山浦環……、刀工源清麿のかつての名前が出てくるなんて |
大慶直胤 | それこそ、江戸三作だしー? |
大慶直胤 | それに、俺たちが打たれたのは海の外から来る脅威と戦わんと皆が躍起になって斬れる刀を求めていた時代だよ。折れず、曲がらず、よく斬れる。その上で刃が欠けず、こぼれず、手に合うもの。四方詰めの源清麿は時代に求められた刀だった |
源清麿 | どうかな |
大慶直胤 | 源清麿の刀の実と熱、あれが才だよ。時代を魅了する |
大慶直胤 | 大慶直胤も水心子正秀も随分貧乏をして刀工になったし、源清麿のように若くして注目もされなかったしねー |
源清麿 | よほど君の方が知っているね |
大慶直胤 | それって、刀工のこと? 刀のこと? それとも…… |
源清麿 | 僕は君に嫉妬している |
源清麿 | ……君たちはとてもよく似ているよ |
大慶直胤 | そっか。……うん、この間はごめんね |
源清麿 | ……え? |
大慶直胤 | 所詮、与えられたものかもしれないけど、俺たちの行動次第で少しは融通が利くみたい……だよね? |
大慶直胤 | 集めて、丹念に織り込めば、強くて斬れる鋼になる |
大慶直胤 | そうでしょ、清麿 |
源清麿 | …… |
源清麿 | だから、君が来るのが嫌だったんだけど |
大慶直胤 | むぎゅぎゅぎゅー |
源清麿 | ははっ、嘘。嘘だよ、大慶 |