インタビュー等

Last-modified: 2021-08-10 (火) 07:25:19

【佐島 勤 [さとう つとむ] 著者略歴 2011.7.10発売】

『魔法科高校の劣等生』第1巻カバーの作者紹介より
西暦19XX年、日本の片田舎に生まれる。和洋のスペースオペラを糧に少年時代を過ごす。
青年時代、ファンタジーと伝奇小説に転向。卒業後、企業戦士(ただし雑兵) として現実世界に魂を売り渡すも
西暦2011年、遅れてきたジュブナイル作家として空想世界に帰還を果たす(本プロフィールには虚偽と誇張表現が含まれています)

【10巻 来訪者編 <中> あとがき より】

この巻で渋い(?)見せ場を演じてくれた黒羽貢もネジが一本外れた性格になってしまっています。これは実を言いますと、ドラマDVDの影響です。黒羽貢を演じて下さった声優様のナイスなアドリブ「めんそ~れ!」が彼のキャラクターイメージを一新してくれました。
いやぁ、役者さんの演技ってすごいですね。創作における相乗効果というものを実感致しました。

【電撃文庫 エッセイ 大人履歴書第7回 2013.10公開】

<脳内の空想だけは出来ています。by佐島勤>
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は全然劣等生じゃない糞アニメの675 が初出
 
[ Question1 ]―子供のころの夢は何でしたか?
宇宙海賊、というのは冗談ですが、宇宙に行きたいと思っていました。宇宙飛行士を目指す運動神経はありま
せんでしたので、ロケットを作る技術者か、宇宙開発プロジェクトを推進する投資家になりたかったですね。
 
[ Question2 ]―20歳のころは何をしていましたか?
高校でつまずいた私は、とにかく「現実」に焦っていました。何になれるのか、何をすれば人並みの生活ができ
るのか、長生きできるか早死にすべきか、とにかく何をすればいいのか分からなくて右往左往していました。
 
[ Question3 ]-小説を書こうと思ったキッカケは?
WEB小説を読み始めたことでしょうか。コンテンツを消費する対価としてコンテンツを発信するのがフリー
なWEBのマナーであるという頭がありましたので。もっとも、架空の世界を頭の中で組み立てるのは子供の
頃から好きでした。
 
[ Question4 ]―大人になって良かった、と思う瞬間は?
瞬間ではありませんが、好きなことをしていても後ろめたさを覚えなくて済むところですね。自立する迄は
どうしても「養ってもらっている」という意識がありましたから。
 
[ Question5 ]―大人にならなきゃ良かった、と思う瞬間は?  
上司のパワハラにも黙って我慢、客の無理難題にも愛想笑い、エンドレスに追加される仕事にイライラ。
「大人に」というより「サラリーマンに」ならなきゃ良かったと思う瞬間です。
 
[ Question6 ]―大人になった今の夢は何ですか?
もう夢を見る歳でもありませんが……そうですね、宇宙には行ってみたいかな? 今ではもう、
仕事ではなく観光になってしまいますが。後は、そうですね……ベストセラーが書きたいです(笑)
 

【電撃文庫 エッセイ「私の電撃体験」第9回より】

<私の電撃体験のエッセイ・・・ですよね?>
「私の電撃体験」第9回
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は全然劣等生じゃない糞アニメの676 が初出
 
それは、とある蒸し暑い真夏の夜のことでした。そろそろ「若手」を卒業しようかという頃、初の隔地転勤を命じられた私は、夏の日も既に落ちきった刻限、仮の住処(すみか)となるアパートへたどり着きました。靴を脱いだ先は転勤先の同僚(予定)が見つけてくれた築二十年の安アパートです。しかし古いとはいえ鉄筋コンクリ、小さいながらも風呂トイレ付き、壁や天井から音が漏れてくることもなく、電気も水道もガスもきちんと通っていました。とはいえ備え付けのエアコンなど無く、職場で電器屋さんの情報を仕入れて買いに行かなければなりませんでしたけど。
 食事を外ですませていた私は、サッサとお風呂に入って休むことにしました。しかし、サッパリ汗を流したところまでは良かったのですが、何分季節は真夏です。エアコンの無い室内は、体感でサウナの一歩手前。入浴前にすませておくんだったと自分の不手際を呪いつつ、まだ箱詰めされたままの扇風機を出して暑さを凌ぐことにしました。暑気と湿気にイライラしながら扇風機を組み立て、ようやく涼を取れる、と思ったその時のことです。
「あちっ!」
 それは他ならぬ自分の口から漏れた悲鳴でした。指先からじんわりと広がる痺れと痛み。赤く腫れた右手を見て、ようやく認識が現実に追いつきました。そうです。扇風機のプラグをコンセントに差し込んだ時に飛び散った火花で火傷したんですね。
 幸いその火傷は軽微なものでした。しかしこの人生初の感電事故以来、私は妙に帯電体質と言いますか、静電気に悩むようになってしまいました(きっと関係ない)。冬場は玄関や自動車のドアで無言の悲鳴を上げること数知れず、セルフスタンドでは何度も何度も静電気除去シートに手を擦り付けます。
 今日も忘れず、パソコンに電源を入れる前に掌を机の脚に押し付けて……と。さて、この原稿を打ち込むことと致しましょう。
 

【アニメージュ 2014年3月号 vol.429 春の新作特集 春はヨ・カ・ンでいっぱい!! P64より】

ソース画像
 
■左遷生のキャラ説明
司波達也
最初から強い力を持っているのは、なぜか敗れた時に敵に見逃してもらえるとか、都合良く援軍が現れるとか、潜在能力が覚醒するといった展開を避けるためです。
だからといってこれ以上成長しないということではなく、「どんなシチュエーションでも勝てる」という意味での最強キャラではありませんが、弱点を埋めるために努力と工夫をしています。

司波深雪
深雪をブラコンにした、というより達也と深雪を兄弟設定にした理由は、鈍感タイプの主人公にしたくなかったからですね、兄妹だと、告白して恋人同士というわけにはいきませんから。
八方美人でも無く優柔不断でも無く鈍感でも無く恋人未満の関係を続けさせるためには、血縁という関係性が最も手っ取り早かったのです。

光井ほのか
思い込みが激しいけれども、とにかく一途で健気です。
非暴力的な意味で色々悲惨な目に遭いますが、落ち込んでもすぐ立ち直って茨の恋路に立ち向かう彼女は、もしかしたら一番「女の子」しているかもしれません。

北山雫
一見寡黙でクールな少女ですが、実は素直で友達思いでちょっぴり負けず嫌いな女の子です。
良い意味での育ちの良さを感じさせる少女だと思います。
ただ少しツッコミ特性が在るので、軽い気持ちで付き合うと心が折れることになるかもしれません。

柴田美月
非凡な才能を与えられてしまった平凡な、心優しい少女です。
平凡ゆえに、普通に怒ったり怖がったりもすれば、自分の特殊な才能を「特殊な物」「異常な物」と過剰に意識している部分があります。
精神のバランスに危うさを持っているところも魅力だと思います。
 
■左遷生インタビュー
----魔法を題材に取り上げた理由は?
魔法という言葉を使っていますが、この作品はSF風エンターテインメントの一形態である「超能力物」の亜種だと思っています。
それでなぜ「超能力物」をテーマに選んだのかといえば、「子供の頃から好きだった」が理由ですね。
 
----魔法戦で最も意識されているポイントは?
自分で設定した条件から逸脱しないことと、スピード感です。
 
----スピード感とは?
近代兵器との戦いが想定されますし、相手が引き金を引けばすぐ撃てるような敵がいっぱいいる中で、どうやって魔法を使うのかを考えると、やはりスピードは欠かせない。
そういう意味では、時代劇的な剣劇やチャンバラではなく、西部劇的なガンアクションのイメージです。
剣や武術で戦う魔法師もいますが、やはり相手が引き金を引く前に、決着をつけるスピードが必要なんです。
 
----私たちがイメージする魔法物とは一線を画しますね。
近代兵器相手では、魔法物によくある呪文を長く唱える事が出来ないので、超能力を魔法として体系化して、何か機械を使って、確実に素早く、魔法を相手にあてるほうがあっているだろうと考えました。
 
----作品の舞台を100年後とした理由は?
テクノロジー面で現代と連続性のある近未来で、政治風俗面で現代と違う社会になっていてもおかしくない時間が経過した世界として100年後を選びました。
 
----第三次世界大戦後という設定にもなっていますね。
第一次、第二次のような短期的に総力戦をする形でなく、世界中のどこかしこで戦争が続いていたという設定です。
被害を受けていない国もあるので、そこでは現代とさほど変わらない暮らしが出来ています。
反面、戦場になったところは、国家が解体して、文明的な生活が成り立たない状態になっていることを想定しました。
 
----文章を書く前に設定は起こされるのですか?
書いていくうちに矛盾が生じるのが嫌なので、まずキャラの設定を作り、シナリオを作って、その後、世界設定、技術設定を決めてから書くことにしています。
見直しが必要な部分はどうしても出てきますが、ちゃんと設定を作っても、それは避けられないので、筆のおもむくままに書くのは厳しいです。
  
----後付の設定がない印象があるのは、そういうことなんですね。
「あれも出来た」「これも出来た」というのは、タブーだと思っています。
最初に設定した能力を逸脱しないように注意しています。
 
----本作は登場キャラの多さも特徴のひとつですね。
必要だったから、としか言いようがありません。
学校を舞台にすれば、設定面で教師を排除することは出来ても同級生と上級生、進級すれば下級生を出さないわけにはいきませんし、学校外でも活動拠点ごとにメインキャラの相手をするサブキャラが必要になります。
 
----書く前にキャラの設定を起こされているということでしたが、最初に何人分くらい作っていたのですか?
第7巻(横浜騒乱編)までに登場するキャラは、あらかじめ作っていました。単純に会話をするだけでも相手に名前があるとないのでは、書きやすさが違います。
いったん名前を付ければ、人物設定が必要になりますので、キャラはどんどん増えていきますね。
 
----物語的には、主人公達也の強さが魅力だと思います。
強い主人公ではありますが、完全無欠な主人公ではないと思っています。それどころか非常にミスマッチの多いキャラクターではないでしょうか。
完全無欠なのではなく、ただ強いだけです。
知的能力は高くても、本当の意味で賢く立ち回ることは出来ません。
トラブルを避けたいと思っているくせに、いざトラブルに直面するとそれを正面突破することしか出来ません。
他人を利用することが出来ず、結果的に利用されてばかりです。
ただ、そこで弱音を吐くのでも、虚勢を張るのでもなく、力尽くで困難を打開する、運命に振り回されず幸運に頼らず自分の力で自分の道を行く主人公の物語を綴りたいと思いました。
 

【アニメ公式HP 2014.3.22公開】

作者インタビュー
 
――アニメ化のお話を聞いた時はどう思いましたか?
佐島 素直に嬉しいと思いました。アニメが放映されることで、より多くの方々にこの作品を知って頂けるという期待はもちろんのこと、 それ以上に自分が書いた『魔法科高校の劣等生』という物語をアニメで見ることができると思うとわくわくしてきます。
 
――アニメ化にあたり、先生自身が希望されたことは?
佐島 アニメには素人の私が口にするのは生意気かとも思いましたが、細かい理屈は横に置いて、見て聞いて楽しむアニメならではの面白さを重視して欲しいとお願いしました。理屈の解説は小説で散々書いていますので(笑)。爽快なアクションや可愛い表情、格好良い仕草、未来への想像をかき立てる風景、そういう「見た目重視」を希望として出させて頂きました。ああ、それと、魔法のエフェクトの差別化をお願いしました。魔法を題材としたアニメ作品は数多くありますので、少しでも目新しさをと思いまして(笑)。
 
――映像という部分で最も期待しているところは?
佐島 バトルアクション、表情の演技、声の演技、音楽、魔法の表現など甲乙付けがたいものばかりですが、あえて一番を選ぶならアクションシーンです。
 
――小野監督の印象は如何でしょうか?
佐島 まず「ここまで映像化しよう」という明確なビジョンをお持ちだったのが流石だと思いました。魔法の種類によってエフェクトパターンを変えよう、というご提案も、そんな細かいところまで神経を行き届かせるのだなと感心しました。
 
――原作でも挿絵を描かれている石田可奈さんのアニメ用のデザインはいかがですか?
佐島 電撃文庫第1巻の挿絵からお世話になっていますので、私のイメージがすでに石田さんのデザインになっています。ですから当然「イメージにピッタリ」なんですが……ヒロインの美人度が少し上がっていますでしょうか。それから某女性キャラのポーズが大変ノリノリで見ていて楽しいです(笑)。
 
――キャスト陣の印象や期待していることは?  
佐島 オーディション結果を基にキャストを決める会議の席で、監督の意見と同じくらい私の意見を優先していただけましたので、皆さん各キャラクターのイメージ通りです。これはキャストの皆さんに対する期待というより、このアニメに対する願望なのですが、『魔法科高校の劣等生』がキャストの皆さんの代表作の一つとしてファンの方々に記憶されれば良いなと思っています。
 
――原作についてもお伺いします。本作を書き始めたきっかけは?
佐島 Web小説を読み始めたのがきっかけです。元々小説を書くのは趣味でしたので、自分もWeb上に発表してみようと思いました。それで「どんなものを書くか」という段になって、自分が子供の頃に熱中したSF風味のジュブナイルを自分なりに再現してみようと考えた次第です。SFで魔法学園物というコンセプトから組み上げていきました。書いていくうちに伝奇風味とヒロイックファンタジー風味まで混ぜ合わさってしまいましたが
 
――構想当初との違いで大きいところは?
佐島 当初の構想はヤングアダルトのノベルズを意識していましたが、今はかなりライトノベル風に書けるようになったと思います。
 
――本作以前に発表した作品はあるのですか?
佐島 発表作はないですが、SF、ヒロイックファンタジー系の作品を描いたことはあります。Webで知り合った人に、基礎データの提供といいますか、設定面で創作に協力したことも以前ありますね。それはあくまでも裏方だったので、小説を書いたのは本作が初めてです。
 
――SFに熱中していたとの話ですが。
佐島 1960~70年代のSF物はよく読んでいました。エドモンド・ハミルトン、アイザック・アシモフ、エドガー・ライス・バローズ。ファンタジー系では、ナンシー・スプリンガーあたり。ミステリー仕立ての作品よりも、スペースオペラ系のアクションエンタテインメントが好きですね。マイケル・ムアコックの作品はたくさん読みました。
 
――本作は「魔法物」に分類されると思いますが、どんな作品のイメージを想像しますか?
佐島 この作品は「超能力物」の亜種だと認識していますので、超能力物としては『レンズマン』シリーズや『ペリー・ローダン』シリーズといった超能力要素を含むスペースオペラがまず思い浮かびます。魔法物としてイメージする作品という意味では『エルリック・サーガ』『リフトウォー・サーガ』『アイルの書』でしょうか。もちろん『ハリー・ポッター』シリーズと『指輪物語』も忘れることができません。日本の作品は小説も漫画もたくさんあって、挙げ始めるときりが無いので(笑)。
 
――魔法物のアニメというあたりではいかがでしょうか?
佐島 『スレイヤーズ』シリーズや『魔術士オーフェン』は観ました。全編ではないですが『カードキャプターさくら』も。
 
――先生の考えでは、達也は完全無欠ではなく、ミスマッチの多いキャラクターだそうですね。
佐島 そもそも達也に求められている技能はボディガードなのですが、防御的な能力をまったく持っていない。本来はシールドを張ったり、盾になって活動したりする能力を持っていないと、ボディガードは務まらないんですよね。攻撃一辺倒で、周囲から求められている力とマッチしていない。そのため過激な反撃に見えてしまうんです
 
――設定を作った当初の達也の性格に、今と違いはありますか?
佐島 構想当初と現在の設定に大きな違いはありません。少し性格がマイルドになったくらいでしょうか。当初想定していた読者層を、新書のノベルズの読者を考えていたので、性格はもっと辛辣でした。高校生なんだけど、かなり皮肉屋で、投げやりと言いますか、思い切りのいいキャラだったんです。少しずつ対応をマイルドにしていくだけでも、最終的な出来上がりが違うので、電撃文庫で出す時には、そういう調整が必要になりました。
 
――達也だけでなく、全体的に男子キャラは勇敢な姿勢を持っていますね。
佐島 昔の流行歌に「最近の男の子は涙を見せたがる」という意味のフレーズがありましたが、この作品では涙を見せない、弱さに甘えずあがき続ける、自己憐憫におぼれない男性像を心掛けています。
 
――達也の周囲には、女子キャラが多く、ある種美少女アニメ的な要素が取り入れられている感じを受けました。
佐島 美少女ゲームやアニメ的な世界観に通じる部分はよく分かりませんが、「この子ならこの場面でこう考えてこう動くだろう」という、そのキャラクターらしさを一番に考えています。これは女性キャラに限ったことではないのですが、男性キャラより女性キャラの方がより神経を使っているかもしれません。
 
――ヒロインの深雪のブラコン設定は、意識的なものですか?
佐島 そうですね。ただブラコン、シスコンを描くという意識よりも、主人公とヒロインが中々結びつきにくい状態にしたかった。付き合って、簡単にSEXにはいかないようなモラルは設定していますが、同居して、互いに相思相愛だけど、最終的にゴールインしないようにするために血縁関係になっているのです。
 

【作者インタビュー アニメディア2014年4月号】

<イバラの道を進むのは、最強無敵主人公に成す術なく無惨に倒されるだけの敵キャラでは?>
◆「達也=『魔法科高校』なんです」
 
Q. 主人公誕生秘話は?
 
A.“魔法”“高校”“劣等生”というキーワードと、
  “非凡なヒーロー”“波乱の日常”というコンセプトから生み出したキャラクターが達也です。
  そして、その出来上がったキャラクターに沿ってストーリーを作り上げていった。
  つまり、達也がいて、初めて物語が動き始めるんです。
 
  周りが何と言おうと自分を貫く男。カッコイイですが、彼が進むのはイバラの道でしょうね。

【作者インタビュー ニュータイプ2014年4月号】

― この作品は電撃文庫として刊行される前にネットで発表されていましたね。 
もともとは完全に趣味の創作物だったんです。昔からネット小説を読んでいたのですが、古くからネットにあるエチケットの「コンテンツを消費する者はみずからも発信するべき」という考え方にそって、自分も小説をアップロードしようと考えたのが動機でした。そこで、子供のころ熱中したSF風味のジュブナイルを自分なりに再現してみようと考えて構想を練っていきました。
 
― 先生は子供のころからけっこうな読書少年だったのでしょうか?
そうですね。
SFが中心で、そこからハイファンタジー、日本の伝奇小説、スペースオペラ、ジュブナイル小説と読み進めていきました。
ジャンルを広げる順番が普通とは逆ですね(笑)
 
― この作品の着想はどのように生まれていきましたか?
当初は商品として出版することを考えていなかったので、はやりというものは計算せずに、自分が夢中になって読んでいたヒーローたちの物語を頭に描きながら書いていました。主人公は自分とはかけ離れた存在で重ねることなどできない。でも、別次元の存在だからこそ、読者がその活躍に日常の憂さを忘れることができるような、そんな物語を書いてみたいなと。
 
― 本作が出版される経緯は原作第1巻のあとがきに記されていますが、電撃文庫で出すにあたって作品に変化はありましたか?
最初は高い年齢層を考えていましたが、読者層が青少年なので表現についてはややマイルドになりましたね。ターゲットによる書き方の違いは当然だと思いますし、さじ加減もできます。たとえばヒロインたちの出番をもっと増やすとか、深雪をもっとかわいくとか(笑)
 
―― キャラクターについてのお話を聞かせてください。最初につくった人物は主人公の司波達也でしたか?
そうですね。まず達也というキャラをつくりたかったので、この物語を生み出したのは達也だといっても過言ではありません。
 
― 劣等生扱いされているけれども、実は誰にもまねできない力をもっていて、そこが評価されていないという設定がおもしろいと思いました。
そこが一番のキーになっています。
開拓時代だと、そういう人はフロンティアをめざしていましたが、現代においては、大抵の評価されない人は沈黙するほかない。でも、達也はそこで黙らなかった人間なんです。力があるのに認められない。だからといって自棄にならず、傍らには大切な妹がいて。であれば、みずからができることを世の中に認めさせていくしかない。それが達也のキャラクター性から生まれた物語なんです。
 
― 彼のヒーロー性についてどのように分析されますか?
覚悟を決めているところではないでしょうか。
認められないことへの恨み言や泣き言をもらさず、才能や家庭環境について無いものねだりすることもなく、世間の顔色をうかがうこともなく、ただ自分にとって優先すべきことを貫く。エゴイスティックな生き方ですが、剣豪や求道者に通じる魅力だと思います。
 
― 深雪のキャラクターについてはいかがでしょうか?
深雪は達也の対になるキャラクターとしてつくり出した人物です。ストーリーから一切逸脱することなく、与えられた役割に従っていくヒロインなんですね。それでいうと、達也と逆の存在。ストーリーをつくったのが達也だったら、ストーリーから生まれたのが深雪ですね。
 
― この2人の関係性で物語を動かしていく。
ええ。
深雪と達也はお互いを大切に思っているけれども、すぐにハッピーエンドにならないように兄妹という関係にしました。深雪は達也のほうが本当はすごいとわかっているので、いわば達也の代弁者として周囲にものを言う人間、という配役になっています。
 
― アニメ化にあたって製作スタッフとどんなお話をされましたか?
あくまで監督のものだと考えているので、「あまり原作にこだわりすぎないでください」ということをお話して、むしろアニメとしてのおもしろさで小説とは違った作品をつくってくださいということをお願いしました。設定や、キャラクターが何を考えているとか、セリフ回しを短くするときの助言をする以外はできるだけ口出ししないようにしています。
 
― 先生は本作のアニメに対してどんなことを期待していますか?
細かい理屈は小説で書き尽くしている部分がありますので、一瞬で勝負が決まるような緊張感や、文章だけではとても表現できないようなカラフルさとか華やかさ、スピーディーなアクション、こだわりの魔法表現、男性キャラの雄々しい姿、女性キャラの可憐な表現など、見どころは山盛りです。きっと期待に背かないと確信しています!
 

【これが、大先輩への『お言葉を返すようですが』です】

 
SFマガジン2014年6月号
そのうちにテキスト化しましょう(一部抜粋、下記)

【学園という閉ざされた一つの社会すらまともに構成できない作者の妄言。魔法のある新世界の魔法無関係な新技術ラインナップ】

■世界設定について

――ライトノベルの学園は、学園という閉ざされた一つの社会・異世界を形成している作品が多いなかで、《魔法科高校の劣等生》では、学校の外の社会も綿密に設定していますよね。書く前に設定はどれくらい詰めるんでしょうか?

佐島 世界設定は詰めないと、そもそも話が進まないと思うんですよ。なんとなく誰もが知っているような世界を舞台に使えば、その設定については詰める必要もないですし、作品のなかで説明する必要もない。
しかし、そうした共通の世界の枠組みを借りずに物語を作ろうとすると、それがどういう世界であるかについては、一から説明しないと読者にはわからない。あれくらいは最低限の細かさではないかと思います。

――さきほどおっしゃった、「架空の技術にもとづく架空のシステム」というのが、《魔法科高校の劣等生》では「魔法」になるわけですね。

佐島 そうですね。「魔法が技術として確立された近未来」の物語ですから、まずその世界が描かれないことには一歩も前に進めません。
例えば五十年後、百年後のエネルギーは何がメインになっているのかから考えました。
それに、ホームオートメーションも今より飛躍的に発展しているだろうと考えて、HARという統合的なホームオートメーションシステムを設定しました。
交通システムも、満員電車でいわゆる「痛勤・痛学」が続いてるようでは夢がないので、高密度自動運行の実用化によるキャビネットというシステムを考えました。
情報通信システムはあくまで五感を使ってアクセスするものとし、脳と直接コンタクトする技術は補助的な役目に限定しました。

 歴史の面では、地球が温暖化するのではなく、寒冷化した世界を設定しています。それも長期に及ぶ寒冷化ではなく五十年程度の短い、ただし急激な寒冷化です。

 食料生産は工業化が現実の世界より急速に進歩したことにしています。
そのお蔭で、技術先進国においては寒冷化の影響を低く抑えることに成功していますが、食料生産の工業化が遅れた国々は寒冷化により大きな痛手を受け、それが世界規模の紛争が勃発する原因になっています。

――当然、魔法科高校だってそういう状況とは無縁ではない。

佐島 そうですね。この小説の描く時代は、世界群発戦争の爪痕が地球上のいたるところに残っています。国家間はなお緊張状態にあり、世界のどこを探しても平和な国はありません。
このような世界で魔法という軍事的に強力で希少な技能を有する人間は、兵士としての役割を半ば必然的に社会から求められます。

 魔法という技能が遺伝に依存するものと分かれば、より強力な血統の開発を国家が求めるのも仕方の無い国際情勢です。
世界群発戦争前の寒冷化がもたらした国家間の緊張の高まりが十支族の原型を生み出し、群発戦争の中で形成され、群発戦争後の緊張が緩和することのない世界で強化されていきました。

 この小説の背後にあるのは、こういう世界です。
 

【電撃文庫エッセイ「電撃的 春夏秋冬」第4回 2014.7】

『佐島勤と7月のボランティア』 佐島 勤
 

【プロフィール】web小説投稿サイトに連載していた『魔法科高校の劣等生』で注目され、その後、同作で電撃文庫より書籍化しデビュー。新作『ドウルマスターズ1』は今月発売!
 
 カレンダーのページが7月に変わった。
 七夕を目前に控えたこの時期、佐島少年には毎年参加している恒例行事があった。実施されるのは七月の第一日曜日で場所は屋外。まだ梅雨の時期だ。雨が降れば中止になるのだが、何故か毎年、その日は運良く雨が止む。今年も外は五月晴れ。せめて曇れば良いのにと思いながら、佐島少年は麦わら帽子をかぶった。服は長袖、手には軍手、首には手拭い。足には長靴。そもそもまだ男の色気がどうこうという年齢ではないが、そこを差し引いても色気が無い。
 それも仕方がないだろう。集合場所に参じた面々は少年と青年と成人男性。つまり、全て男。張り切っている面子もいるにはいたが、それはあくまで少数派。仕方ないから早く終わらせようとする空気が主流であることに、佐島少年はほっとした。張り切るだけならともかく、獲物に拘られると長引くのだ。
 青年会のリーダーが先頭に立ち、鬱蒼とした茂みの中に足を踏み入れる。こうして暗がりに入ると、いささか異様な雰囲気になる。第三者の目から見たならば、大小様々の刃物を手にした若者(少年を含む)が獲物を探す目つきで群れを成しているのだから。
 やがてリーダーの青年が足を止め「これにしよう」と声を掛けた。数人が集まり、一人が代表して刃物を構える。
 ギーコ、ギーコ。ギーコ、ギーコ。
 残りの若者たちは、次の獲物を探して茂みの中を進んでいく。
 彼らのターゲット、それは七夕の笹飾りに使う竹だった。
 
 ……という訳で、少年時代に恒例だった七夕の準備を少々脚色して見ました。雨が降った年のことは大人になる前に引っ越してしまったので分かりません。
 

【電撃オンライン 2014.9.10公開】 

http://dengekionline.com/elem/000/000/920/920654/
現在開催中の“進化宣言! 電撃文庫FIGHTINGフェア”。電撃オンラインでは、電撃文庫作家陣のインタビューを4回にわたってお届け。第3回は、佐島勤先生のインタビューをお届けしていく。
 
 今回お届けするのは、アニメも現在放映中の『魔法科高校の劣等生』や、超能力とロボットを組み合わせたSFロボットアクション『ドウルマスターズ』を手がける佐島勤先生のインタビュー。佐島先生ならではの作品作りに対するこだわりや、デビューのきっかけなどを伺った!
 
■メディアワークス文庫賞を狙って作品を投稿
―電撃大賞に応募したきっかけを教えてください。
佐島先生:電撃大賞に応募したのは、Webで発表するだけではなく、本職の方に評価していただこうという力試しのような意味合いが、もっとも強い動機でした。それで、Webで書いていたものとは別に、新しい作品を書いて応募したんです。電撃大賞を選んだ理由は、いろんなジャンルの作品が受け入れられている土壌が電撃大賞にあり、それが自分にあっているのではと思ったことがひとつです。
 
 それと、電撃大賞にはメディアワークス文庫賞がありますよね。ライトノベルは中高生がターゲットと言われていますが、私の小説は内容を考えると、対象年齢がライトノベルレーベルの読者層より上になるのではないかと思いました。正直なことを言うと、メディアワークス文庫賞を狙って投稿したんです(笑)。でも、それは考えすぎ……と言うよりも考え違いで、今はこうして電撃文庫として作品を世に出しています。
 
―新シリーズ『ドウルマスターズ』は、この時の応募原稿がベースになっているとのことですが、どのくらい改稿されたのでしょうか。
佐島先生:ほとんど原形を留めていない、と言っていいレベルで改稿しています。タイトルが変わっているのは言うまでもなく、“ドウル”の名称も“タイタニック・ドウル”ではなく“ジャイガンティック・ドウル”でしたし、略称も“ギガドール”でした。マユリの性別は男でしたし、ヒロインの名前も“玲音”ではありませんでした。
 
 ストーリーも最初から組み直しました。応募原稿は“朧月”が脱走部隊を一蹴するシーンから始まっていましたし、蒼生と朱理と龍一の戦闘は簡単に触れられているだけでした。メインイベントはもっと直接的に、人工天体アイランドの港が襲われる展開でした。変わっていないのはポリスとか太陽系連盟とか、ドウルの構造とかサイクロニクスの設定とか、そういった本当に骨組みになる部分の設定だけですね。
 
―新シリーズを始めたきっかけを教えてください。
佐島先生:『魔法科高校の劣等生』の刊行スケジュールに空きが出たので、新シリーズを始めたいと編集さんにお願いしたことがきっかけです。『魔法科高校の劣等生』のアニメも放映中ですし、新しいシリーズを始めるにはこのタイミングがチャンスだと考えたことも理由です。私はデビュー作をアニメ化までしていただける幸運に恵まれましたが、持ち札が単一のシリーズのみである現状に不安もありました。
 
―2シリーズを並行して書くことは大変そうに思えるのですが、いかがでしょうか?
佐島先生:頭の切り替えなどは苦になりませんが、純粋に作業量が増える点で大変ですね(笑)。
 
―新シリーズを始めるにあたって、『ドウルマスターズ』以外の候補もあったと伺いましたが、その作品はどんなものだったのでしょう?
佐島先生:ええ。ただ、その作品はボーイ・ミーツ・ガール、いえ、ヤングマン・ミーツ・ボーイとでも言いますか……。正直に申しまして、『ドウルマスターズ』よりもそちらのほうがライトノベルらしい企画だったと思います。しかし、編集さんから「ありきたりで佐島勤らしくない」と評価をいただきまして……。それに、売れるかどうかを別にすれば私も『ドウルマスターズ』のほうが書きたい作品でしたので、『ドウルマスターズ』を出させていただくことになりました。
 
―『魔法科高校の劣等生』と『ドウルマスターズ』のどちらも未来を舞台にした作品ですが、これは佐島先生のこだわりだったりするのでしょうか?
佐島先生:こだわりではないかもしれませんが、過去を舞台にした物語を書く時は、時代考証をしっかりしなければなりませんよね? 未来の世界を書くには、つじつまをしっかり合わせる作業は大変ですけど、それは自分の頭の中で行えることですので。サラリーマンと作家の二足わらじを履いている間は、調べものに多くの時間を割り当てることが難しいことが理由です。専業作家になるようなことがありましたら、歴史的な事実を元に、しっかりと調べた作品を書くことはあるかもしれません。
 
―あとがきでも触れられていましたが、ロボットものを執筆されてみて、いかがですか?
佐島先生:楽しく書かせていただいております。ロボットものと言っても書き手にとってそれほど特殊なことはなく、基本的にはアクション小説と違いはないと思います。特に『ドウルマスターズ』では射撃の要素を減らしていまして、白兵戦が主軸になっているんです。ですから剣豪小説や伝奇小説に近いものがあるのではないかと。
 
 むしろ宇宙空間で動き回る際の制約事項をどこまで設定にとりいれて、どこから無視するか、その取捨選択が特殊といえば特殊だったと思います。宇宙空間なので空気がありませんから、翼で動くことはできませんし、一歩進もうにもブースターを噴かせなきゃいけません。読者に受け容れられているかどうかは、12月刊行の第2巻の売れ行きを見ないと判断できないですね。
 
―アニメなどでは、止まる際に逆噴射する描写などが描かれることは少ないように感じますが、『ドウルマスターズ』ではそういうところも描写されていますよね。
佐島先生:そういう部分も意識するのが、私のこだわりでしょうね。
 
―『ドウルマスターズ』は、シリーズとしてはどのくらいの長さの物語を想定しているのでしょう?
佐島先生:どのくらいになるのかは、売れ行き次第だと思いますが、コンパクトにまとめるつもりです。
 
―まだ『ドウルマスターズ』を読まれていない方に向けて、本作の魅力や読みどころをお願いします。
佐島先生:戦闘ロボットものですから、まずは地上と宇宙を股に掛けて矛を交える大型ロボット同士の戦闘を想像しながら読んでいただければ。想像力を助ける描写も入れていますし、身長が5階建てビルと同程度の全身甲冑兵が槍や長刀でぶつかり合う映像を思い浮かべながら読んでいただければと楽しさ倍増だと思います。
 
 ドウルマスターズには4人のメインキャラクターがいて、それぞれ別々の理由でタイタニック・ドウルに乗っています。自分のプライドのために他のすべてを切り捨てる者、今の自分を受け容れて責任を貫き通す者、過去に囚われ敵を倒すべき相手としか認識できない者、何よりも力を渇望する者。彼ら、彼女たちの中には自分がなぜドウルに乗っているのか分かっている者もいればそうでない者もいます。迷いながらも立ち止まることが許されない境遇が作り出す迷走と愛憎劇、そういうシリアスな部分もお楽しみいただけると思います。この作品はロマンスもシリアス寄りになっていきます。
 
 後、お約束の部分ですが、この作品は女の子同士のそういうシーンが結構多いです。もちろん、全年齢の範囲ですが。
 
■キャラクターたちが思い切り動ける物語を描きたい
―続いて『魔法科高校の劣等生』について伺っていきます。すでにWeb媒体で発表していた本作を、電撃文庫で出版することになった経緯を教えてください。
佐島先生:当時投稿していたサイトを通じて、今の編集さん――三木さんに声をかけていただいたのが始まりですね。そのころはアマチュアとして続けていくことに、精神的にも肉体的にも限界を感じておりました。でも出版という形で少しでもそれが収入として得られるのであれば、この作品を完結させることができるのではないかと思い、お願いしました。このあたりの詳しい経緯は『魔法科高校の劣等生』第1巻のあとがきに書いたとおりです。
 
 あとがきに書いていない裏話的なエピソードを付け加えますと、実は他社からもうひとつ、お誘いがありました。ただ別会社さんのご連絡は、アスキー・メディアワークスより1日遅いものでした。やはり先に誘っていただいたほうを優先すべきと考えて、今の編集さんにお目に掛かることにしたのですが、もし『魔法科高校の劣等生』が芳しくない結果で打ち切りになっていたら『ドウルマスターズ』でないほうの企画書をそちらに売り込んでいたかと思います。相手をしてもらえるかどうかは分かりませんが。
 
―応募作を読んでいたから声をかけた、ということなのですね。
佐島先生:そのようですね。作品を投稿した名前と、Webで公開していた名前は別のものですので、本当ならその2つがつながるはずはないんですが、よく編集さんはお気付きになられたなと(笑)。
 
―『魔法科高校の劣等生』で佐島先生が描きたいものとは?
佐島先生:かっこいいキャラクターたちの、胸がすくような活躍を描きたかったんです。『魔法科高校の劣等生』を書き始めた当時は、どちらかと言えば優しい主人公が登場し、少しワガママだけど優しいヒロインがいて、彼らが悩みながら物語が進行していく……。そんなタイプの作品が、ライトノベルに限らず多かったように思います。たまたまそのころ、小学校の低学年の子に読ませる本を探していたのですが、私が子どものころに読んでいたような冒険活劇的なものが本屋にはなかったんです。作品のよし悪しではなく、行儀のよい絵本しかなくて、そういうところに不満を感じました。
 
 多少ハチャメチャでもスカッとするような、言い方はよくないかもしれませんが、それこそ人を殺しても平然としているキャラがいてもいいような……。そういうキャラクターたちが思い切り動ける物語を描きたかったんです。
 
 それから“劣等生”をテーマにした理由は、組織の評価と本人の価値は別物で、学生は学生だけの存在ではなく学生以外の顔も持っていることを書きたかったからです。主人公たちを高校生にしたのは、高校生ではまだ“高校生としての自分”を自分そのものと錯覚してしまう傾向があると思ったからです。「でも本当はそれだけではありませんよ」と言いたかったわけです。
 
 作中の世界情勢については、一歩間違えればやってくるかもしれない時代を考えて書きました。生活技術はせめて交通渋滞などというムダはなくなってほしいという願望が反映されています。魔法については昔から“魔法や超能力が実際にあるとしたら、どうやって作用しているのか?”という思考遊戯を文章化したものです。そういう自分の中にあるいろいろな部品を組み合わせて作ったのが『魔法科高校の劣等生』です。それは『ドウルマスターズ』も同じですね。
 
―現在発表されているエピソードから、先生がお気に入りのエピソードや、お気に入りのキャラクターを教えてください。
佐島先生:自分がおもしろいと思って書いているものですから、基本的にすべてお気に入りのエピソードなのですが、その中でも特にお気に入りのシーンが多いのは第4巻でしょうか。新人戦モノリス・コードの一高対三高の試合風景と、試合終了後に深雪が涙を流すシーン。高層ビルから達也が魔法で狙撃するシーン。そして、ラストの達也と深雪のダンスシーンが特にお気に入りです。
 
 それから第7巻の達也覚醒シーン、第8巻で達也が深雪に“再成”を使うシーン。ここは達也と深雪が初めて、本当の意味でお互いに触れ合うシーンですね。ここは自分でも印象深いシーンでした。他にも第11巻のラストで達也と深雪が協力して魔法を放つ、ある意味で”合体攻撃”のシーンが特に見どころだと思います。
 
 お気に入りのキャラクターは、七草真由美と渡辺摩利の先輩コンビと、独立魔装大隊の藤林響子です。彼女たちは見ていてあきないと思うんですよ。それと藤林響子は、頭の回転が早くて、いろいろとわかってくれそうなところがあるじゃないですか。それに距離感を測らなくても、あっちが取ってくれそうな大人の女性ですよね。
 
―サブキャラクターたちのエピソードを自由に書けるとしたら、誰にスポットを当ててみたいですか?
佐島先生:自由に書けるとしたら……と言っても私自身の生産性の問題がありますが、それも含めて度外視していいのでしたら、達也の再従兄弟である、黒羽姉弟の第四高校版『魔法科高校の双生児』を書いてみたいですね。達也たちの活躍とはまったく違う形になると思うので、そういうったところも対比的な形でやってみたいですね。
 
 少し現実的な話をするのであれば、レオとエリカに焦点を当てたサイドストーリーや幹比古の過去エピソードです。
 

▲第13巻では、表紙を飾った黒羽亜夜子と黒羽文弥の姉弟。この2人のエピソードを読んでみたい人も多いのでは?
▲こちらはエリカとレオが表紙を飾る第3巻。幹比古の過去話も、同時にさまざまなキャラクターの過去を知ることができそうで、興味が尽きないところ。
―『魔法科高校の劣等生』はいわゆる“ご都合主義”があまりありませんが、この要素を排除した理由について教えてください。
佐島先生:ただ分量を抑えているだけで、『魔法科高校の劣等生』にも都合のいい展開はあります。抑えている理由は“そういう話にしたくなかったから”です。運の要素を否定するつもりはありません。おそらく我々が実際に暮らす現実世界も運・不運で溢れていて、都合のいい巡り合わせの重なりが成功者と失敗者を分けるということも確実にあると思います。
 
 ただ、物語が成り立っている世界の構造を無視した都合のいい展開ですとか、既出の設定では説明のつかない都合のいい新設定は、1回や2回ならともかく3回も4回も使うべきではないと思っています。それは小説の舞台を壊してしまうリスクの高い手法ですので。それまで築き上げてきた世界観を壊すことで読者を新たな興奮に引き込む作品もありますが、自分にそういうテクニックを使いこなすのは難しいと思っています。
 
 そのような偶然の積み重ねなどを必要としないキャラクターとして、主人公に強い力を与えていますので、本作にはそもそもご都合主義がいらないとも言えますね。主人公が強くて、敵がそれをどう対処しようと、ずる賢く立ちまわる。それを主人公が力の差で押し切る流れにしようとしているので、そういう点でもご都合主義は抑えられているのではないかと思います。
 
―アニメは現在佳境を迎えてますが、ご自身の作品がアニメ化されると聞いた時の感想は?
佐島先生:うれしい、と同時に「本当にやるんだ」という意外感を覚えていました。九校戦編の後半や横浜騒乱編はともかく、入学編はアニメに向いているとは言い難いと思っていましたし、だからと言って入学編を飛ばしていきなり九校戦編からアニメ化しても、小説未読者には何がどうなっているのかよく分からないでしょう。その点は難しそうだと思っていましたが、アニメ化を決断していただいて、本当にうれしく思いました。
 
―アニメをご覧になっていかがでしたか?
佐島先生:ひいき目はあるかもしれませんが、2度3度と観て楽しめる作品になったなと思います。あまり細々と説明するのはアニメではないと思いますし、私からもアニメならではの表現を追求してほしいとお願いしました。小説は小説、アニメはアニメとしてのよさは、十分にあると思います。
 
―小説とアニメの違いというのは?
佐島先生:アニメは動いている。それが最大の違いですね。アニメには音があり、キャラクターが動いて、セリフがあって……と見ている人にダイレクトに伝わっていきます。アニメの優れたところはそこだと思います。それと文章を書くことと映像を作ることの違いを改めて実感しました。小説ならば“見えない”で片付けられる部分も、アニメだとそうはいきません。そういう部分が何カ所もあって、いろいろと考えさせられました。この経験は新シリーズに随分役立っていると思います。
 
 ただ、アニメでは“動き”があるわけですから、あまり立ち止まって説明してはいられないですよね。その点、小説はじっくりと書くことができますから、小説の優位性はそこにあるんじゃないかと。
 
―アニメの放送開始後、執筆されるうえで影響された部分などはありますか?
佐島先生:脳内でしゃべるキャラクターたちの声が声優さんの声になりました(笑)。小説を書く時は、映像を頭の中で思い浮かべながら書いていくタイプなので、この影響は大きいと思っています。
 
―『魔法科高校の劣等生』『ドウルマスターズ』と佐島先生の作品といえば重厚な設定もポイントですが、設定は執筆前にすべて考えられているのでしょうか。それとも、執筆しつつ書き足していくのでしょうか?
佐島先生:執筆前にすべて考えておくのが理想ですが、現実的にはそうもいきません。事前に可能な限り設定を固めていても、書いている最中に修正したほうがクオリティが上がると感じることが結構あります。そういう時は、既に発表済みのものと矛盾しない範囲で設定の追加や修正を行っています。ただ、執筆開始時に“できないこと”と決めていることについては、それを変えないようにしています。
 
―例えば『魔法科高校の劣等生』でできないこととは?
佐島先生:まず瞬間移動ができないことと、変身ができないことです。それと永続的な魔法ですね。それと、主人公の使える魔法に制限があること。強い魔法は使えないなどがあります。
 
―本日9月10日に発売された『魔法科高校の劣等生』14巻の“古都内乱編”ですが、こちらについても少しお話を聞かせてください。
佐島先生:物語が始まった時点では、ブランシュや無頭竜、外国の工作員やパラサイトを影で手引きしていた黒幕の代理人・周公瑾が横浜から逃亡して京都、奈良を地盤とする古式魔法師集団“伝統派”に匿われている状況です。
 
 周公瑾の処分に協力するよう亡き母の実家から依頼された達也は、スティープルチェース編で敵対関係にあった九島家に協力を求めます。九島家を訪れた達也と深雪は、2人の行く末に重い影を落とす禁忌の魔法師・九島光宣に出会います。光宣の協力を得て達也は“伝統派”の拠点探索に乗り出しますが、相手も達也たちの動きを察知して攻撃を仕掛けてくる……という展開です。
 
■エンターテインメント作家として、楽しい小説を
―小説を書かれている以外に、普段はどのようなことをされているのでしょうか?
佐島先生:作家業を始める前は、バッティングセンターやドライビングレンジに行ってひたすらかっ飛ばすことでストレスを発散していました。そうでなければ図書館で興味の赴くままに調べ物をして過ごしていました。
 
 しかし今では、昼に仕事をして夜に執筆して……と、余暇の時間がほぼゼロになってしまいましたので、部屋の中で筋トレをするくらいです。
 
―よく読まれる小説、好きな作家などについて教えてください。
佐島先生:翻訳物のSFとファンタジーが好きです。もちろんライトノベルもよく読んでいました。作家になる少し前までは和製SFや伝奇物、現代アクション物もよく読んでいました。菊地秀行先生や夢枕獏先生、田中芳樹先生、今野敏先生の作品が特に好きですね。海外の作品ですと、スペースオペラでもっとも影響を受けたのは『ペリー・ローダン』シリーズ、ファンタジーで影響を受けた作家は、『エルリック・サーガ』シリーズを書かれたマイケル・ムアコックだと思います。
 
 翻訳もののスペースオペラと翻訳もののファンタジーの影響が根っ子の部分にあって、その上に伝奇小説の影響が積み重ねられていると思います。また、これは言っておかなければならないでしょうが、『魔法科高校の劣等生』の魔法の大元のアイデアは菊地秀行先生の『エイリアン黙示録』に出て来る”アカシックレコードの書換による歴史の改変”という壮大な“奇跡”です。
 
―小説を書き始めたのはいつごろなのでしょうか?
佐島先生:最初に書いた小説が『魔法科高校の劣等生』です。それまでは単なる読者でした。
 
―『魔法科高校の劣等生』を書いたきっかけはなんですか?
佐島先生:小説の投稿サイトで作品をよく読んでいて「じゃあ自分もここに小説を載せてみようか」と思ったのがきっかけでした。
 
―Web小説の魅力はなんですか?
佐島先生:単純な話で、本を買うお金がどんどんなくなっていったんです(笑)。それで、他になにか読み物はないかと思い、Web小説を読み始めました。Web小説と本になっている小説の違いって、完成度だけだと思うんですよ。本になっている小説のほうが完成度は高いですし、読み物としてもしっかりしています。でも、Web小説にもおもしろいものがあります。『ソードアート・オンライン』も、もとはWebで書かれていた小説ですし、さまざまな作品があるのが、Web小説の魅力ですよね。
 
―佐島先生は、毎日執筆するタイプでしょうか? それともある程度まとめて執筆するタイプでしょうか?
佐島先生:アイデアが固まってから執筆します。書き始めるまで毎日アイデアを練りますから、そういう意味では毎日執筆していると言えますし、実際に小説の形で書くという意味ではある程度まとめて執筆します。
 
―Webと紙媒体では、小説を執筆するうえで注意していることなどはありますか?
佐島先生:Webと紙媒体というより、アマチュア作家から商業作家になって、言葉選びに苦しむようになりました。それから、より詳細なカレンダーを作るようにもなりましたね。
 
―言葉選びですか。
佐島先生:はい。Webで書いていたころは、こんな感じだろうと感覚に任せて書いていた部分があったんですが、ひとつひとつの言葉の意味を調べるなど、正確な日本語を心掛けるようになりました。
 
―カレンダーとは、どういうものでしょうか?
佐島先生:話がどういう順番でつながっていくか、このタイミングで他の場所ではどんなことが起こっているのか。そういう作中での出来事についてのカレンダーですね。これらをカレンダーでまとめてから、実際に書き始めるようにしています。
 
―『ドウルマスターズ』も先日刊行がスタートしたばかりですが、今後はどのようなスケジュールで『魔法科高校の劣等生』と『ドウルマスターズ』を刊行していくかは決まっていますか?
佐島先生:はっきりとは決まっていませんが、両方のシリーズを交互に刊行していく形になると思います。『魔法科高校の劣等生』の短編が入る時は、『魔法科高校の劣等生』が連続するでしょう。今の見込みからすると、両シリーズが同時に終わるか、『ドウルマスターズ』が少し早く完結するくらいだと思います。
 
―もし好きなジャンルで新しい作品を書いていいと言われたら、どんな作品に挑戦してみたいですか?
佐島先生:今回ボツになった企画に再チャレンジしたいです。それと、昔から暖めている『かぐや姫・現代版』のアイデアを形にしたいですね。ただ、これは『魔法科高校の劣等生』よりも長い話になると思いますので、実現できるかどうか(笑)。
 
―現在、“進化宣言! 電撃文庫FIGHTINGフェア”が開催されていますが、進化したいこと、戦っていきたいことなどはありますか?
佐島先生:先ほど、言葉を選ぶのに時間をかけるようになったと話しましたが、しゃべるよりも早く、思っていることをスムーズに書けるようになりたいですね。表現を選ぶのに考えが止まってしまうのがもったいないので、その部分が進化できれば、生産性がもっとあがるのではないかと思います。
 
―最後に、読者にむけてメッセージをお願いします。
佐島先生:私は今後もずっとエンターテインメント作家として、楽しい小説を目指していくつもりです。ですが、その“楽しさ”は変則的で時に大暴投となるかもしれません。それでも、いろいろな意味でおもしろさをお届けしたいと思いますので、今後もよろしくお付き合い願います。

【12巻 ダブルセブン編 あとがき より】

今回登場した新入生たちのキャラクター作りは、実はほとんど苦労しませんでした。彼らはこの物語を書き始めた当初から大まかな造詣すませておりましたので。
もちろん、中規模な修正は何ヶ所もあります。最も大きく変わったのは、ケントが元は女装男子 だったというところでしょうか。
あまりにアレなのでダブルセブン編のシナリオを構築する段階でボツにしましたが。

【『思考実験の結果』『何度も読み返すとじわじわくる』ってw】

初出?魔法科高校の劣等生は佐島謎理論オナニーに声優も呆れる糞アニメ138の263
メーカー横断アニメガイド(配布物、配布時期不明 情報下さい)
http://i.imgur.com/CV4vQib.jpg
原作・佐島勤スペシャルインタビュー 誤字脱字等は原文ママ
繰り返し視聴することで、じわじわと面白さが増してくる作品だと思います
 
----ここまで「入学編」「九校戦編」と物語が描かれてきましたが。ご感想をお聞かせください。
 やはりアニメになると小説とはずいぶん印象が変わってくるな、という印象です。コミック化の際にも感じましたが、今回のアニメ化ではより一層強くそれを感じました。
 これは原作者として望んだことでもあります。小説には小説の、漫画には漫画の、アニメにはアニメの表現特性と得意分野があると思いますので、原作の再現に拘らず得意とする分野を生かした面白いものを、とアニメスタッフの皆様に申し上げました。
 スタッフの皆様は原作の忠実な再現に拘ってくださって、その点は原作者として嬉しい限りなのですが、原作と全く同じでは新鮮味に欠けます。自分が書いたものですから当たり前ですが。ですからそこはわがままを言って、原作を再現しながらアニメならではの面白さを、とお願いしました。
 しかし頑張って下さった甲斐あって、二度、三度と見ても面白い作品に仕上げた頂いたと思います。皆様にも一度だけでなく何度も繰り返しお楽しみ頂きたいですね。
 
----ここまでの物語であらためてここは見て欲しいというポイントをお聞かせください。
 原作者ではなく一視聴者としての立場からお答えしますが、一度だけではなく繰り返し見ていただきたいですね。全部が無理であれば、お気に入りのシーンだけでも。繰り返し視聴することで、じわじわと面白さが増してくる作品だと思いますので。
 
----いよいよ「横浜騒乱編」がスタートしました。物語もさらに大きく動き始めますが、この「横浜騒乱編」に込めた思い、注目してポイントを教えて下さい。
 アニメに込めた思いを語るべきは、アニメを作っている監督とスタッフの皆様だと思いますので、原作の方で答えさせていただきますが、「魔法科高校の劣等生」小説ですので楽しんて頂きたいというのが第一です。架空国家間の争いも思考実験の楽しさを味わって頂く為の舞台装置です。
 注目ポイントは、ここまで小出しにされてきた主人公の隠された力が明らかにされるエピソードであり、妹の深雪や千葉エリカ、七草真由美、渡辺摩利、中条あずさ、十文字克人、一条将輝といった物語を彩るキャラクターたちが魔法師としての本領を見せる、「魔法科高校の劣等生」導入部のクライマックスだという点です。敵キャラとして暗躍する謎の美形青年が初めて姿を見せるエピソードでもあります。
 味付けとしては甘さよりも苦さや辛さの方が多めですが、舌にピリリと来る刺激的な旨味をお楽しみ頂ければと思います。
 
----いよいよクライマックスに突入しますが、最後に楽しみに観ているファンにメッセージをお願いします。
 いよいよ主人公をはじめとする若き魔法師たちがその本領を発揮して、巨大な困難に立ち向かいます。若者たちだけでなく、彼らをサポートする大人たちも負けじと頑張ってくれます。クライマックスでその力を一気に爆発させる魔法師たちの活躍を、是非お楽しみ下さい。

【タイトルの語感に自信あり!あとがきでもやっぱり「」連発な「魔人執行官 インスタント・ウィッチ」あとがき】

 佐島勤です。初めまして。あるいは、またお目に掛かれて光栄です。
 新シリーズ『魔人執行官』、如何でしたでしょうか。
 そう、新シリーズです。
 特に筆が速くもないない私が、果たして三シリーズを同時進行させられるのか。
 別シリーズの続きを待ってくださっている皆様も、どうか寛大なお心でこのささやかな冒険にお付き合いくださいませ。
 
 シリーズタイトル『魔人執行官』は『デモーニック・マーシャル』と読みます。いえ、読ませています。正確な発音に近づけるなら「デマーニック」か「デモニック」とルビを振るべきなのでしょうけど、語感を優先して「デモーニック」にしました。学生の方はアメリカ式発音の「デマーニック」で覚えておかれる方が無難かと思われます。私が申しあげることでもありませんが。
  
 マーシャルは「martial」ではなく「marshal」の方です。『執行官』のルビですから、これも蛇足かもしれませんね。「マーシャル」といえば私などは西部劇の保安官のイメージが強かったのですが、このシリーズでは少し意味が違います。もちろん、現代日本の『執行官法』に基づいく執行官とは全く別物です。
 最初の原稿では『執行官』ではなく『賞金稼ぎ』でした。ただ『魔人賞金稼ぎ』では、ルビ表記こそ『デモーニック・バウンティハンター』と様になりますが、日本語表記の字面が……。それで、『賞金稼ぎ』の代わりにひねり出した名称が「マーシャル」、『執行官』です。
 生死を問わず(デッド・オア・アライブ)で賞金を稼ぐというあり方はまさに賞金稼ぎ(バウンティハンター)なのですが、この作品のマーシャルは「司法当局の特認を受けて超法規的に死刑を執行する」という性質が強いのでマーシャル/執行官で良いかなと。平たく言えばこじつけですね。
 もう少しタイトルの話をしますと、『魔人執行官』に決まるまでは担当編集様まで巻き込んで悩みました。だってですねぇ……何だか、伝奇小説の大御所先生の作品に出てきそうなタイトルじゃないですか。一応、同じタイトルの作品がないかどうか、ネットで検索してみましたが。他にも「執行官」というと某アニメの猟犬呼ばわりされている刑事さんたちを連想してしまいますので……。
 実のところ、一時はタイトルを『ソリッド・ドメイン』にする方向で進んでいました。内容との齟齬もありませんし。ただ自分の中で「何かが違う……」という違和感がどうしても拭い去れず、結局、思い切って『魔人執行官』で行くことにしました。もしこの本を見て「何処かで見たようなタイトルだな……」と感じられたら、多分この様な理由に因るものと思われます。
 
 このシリーズのイラストはキヌガサ雄一様にお願いしておりますが、今回初めてイラストレーター様の決定に関与させていただきました。と申しましても、担当編集様に候補を挙げていただいて、その中で希望する方を指定する形式です。それでも破格なことだと思いますが。
 イラストをどなたにお願いするかは作家ではなく編集に決定権があるのですが、作家の側からも「この様なイメージで」「こんなタイプのイラストで」という要望は出します。と言うか、訊かれます。それが今回は、私のリクエストが細かすぎたようで、候補者最終絞り込みの大役が私の許に舞い込んできたという次第です。
 いやぁ、何でも言ってみるものですね。
 キヌガサ様のイラストは特にヒロインのイメージにピッタリマッチしているのではないかと感じて希望させていただいたのですが、予想どおりでした。そして、こう申しましては失礼ですが、主人公は予想以上にイメージどおりです。
 キヌガサ様にはヒロインの衣装でも助けていただいております。原稿を書きながら「ダサいな~、ピンと来ないな~」と悩んでいた変身後のコスチュームを素敵に改造してくださいました。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。
 
 内容についても少しだけ。今回のお話も相変わらず「未来世界の異能力もの」です。ただこのシリーズはSF風味ではなく伝奇アクション風味を目指しています。というより、特撮系、あるいは魔法少女系でしょうか。
 最後の主人公の決め技なんて、もろに特撮戦隊ものの影響が……。
 ですから、細かい理屈は少なめに抑えてあります。
 ええ、抑えましたとも。
 ……異論は甘受します。
 そんな訳で(?)、他のシリーズ以上に奇妙な理論――に似た何か――が飛び交っていくと思いますが、これはそんな作品だと生温かい目で見てやってください。
 
 最後に、この無謀な冒険を後押ししてくださった担当編集者様、他スタッフの皆様方に心よりの感謝を。
 そしてこの新たな物語が、読者の皆様方に心躍る一時をご提供できる虚構世界とならんことを。その為に一層精進してまいる所存です。
 次巻でも、またお目に掛かれますことを願っております。
 
(「魔人執行官 インスタント・ウィッチ」p382~p385より引用)

【20巻発売前の左遷のツイート集めてみた。どんだけ経費で旅行行きたいのか】

皆様こんばんは。テキスト担当の佐島です。このツイートは、夏コミとは関係ありません (^^; 既に予定が公開されていますが、魔法科高校の劣等生第20巻、9月10日発売です。
サブタイトルは『南海騒擾編』。「なんかいそうじょうへん」と読みます。騒擾とは事件などを起こして社会の秩序を乱すこと(大辞林)ですね。
このサブタイトルからも想像できると思いますが、この巻のメインはバトルです。もちろん恋愛要素もいつもどおり入っていますが、それだけではありません (^^;
内容についても「少し寄り道したエピソード」と予告致しましたが、余り寄り道になっていません。結果的には「追加した本編エピソード」みたいな性質のものになっています
元々この第20巻は、達也たちの学年と真由美たちの学年に挟まれて余り活躍の機会が無かったあずさたちの学年を活躍させるという趣旨のものでした。
確かに服部とかあずさとか桐原とかが活躍はしているんですが……主人公はやはり強かった(笑)。いえ、腕力的な意味ではなく、物語的にです。
そういう訳で、「いつもの」魔法科をご期待ください。なお舞台については沖縄にするか北海道にするか迷ったのですが……ゲストの人選の関係で、沖縄になりました。
北海道が舞台のエピソードも書きたいですねぇ。……それを言うなら、アメリカとかイギリスとかブラジルとかも。取材費……(チラッ)。まあ、そんな時間が何処にあるのかという話ですが (--;
それでは、今回はこれにて。9月10日発売(予定)の『南海騒擾編』をよろしくお願い致します。テキスト担当の佐島でした。
(2016年8月16日に投稿)