原文引用編1

Last-modified: 2021-12-27 (月) 11:32:42

入学編~夏休み編
文庫収録順 Web版の分は、該当する文庫版にまとめました

入学編

【女子が隣に座るだけでアレコレ勘繰るむっつりスケベwwさん】

文庫1巻(Web 第1章) p32
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はオール電波な十氏族が支配する糞アニメ66の85 で初指摘?
 
 クッションの効いていない椅子に深く座りなおして、達也は目を閉じた。
「あの、お隣は空いていますか?」
 その直後。
 声が掛かった。
 目を開けて確認すると、やはり、自分に掛けられた声。
 声で分かるとおりの、女子生徒だ。
「どうぞ」
 まだ空席は少なくないのに、何故わざわざ見知らぬ男子生徒の隣に座りたがるのか、と訝しむ気持ちが無いでもなかったが、ここの椅子は座り心地はともかくサイズだけはゆったりと作ってあるし相手は少女としてもスレンダーな体型だったので、隣に座られても不都合は無い。
 寧ろ、むさ苦しい筋肉の塊に居座られるよりマシだから、達也は愛想よく頷いた。
 ありがとうございます、と頭を下げて腰掛ける少女。
 その横に次々と三人の少女が腰を下ろす。
 なるほど、と達也は納得した。
 どうやら四人一続きで座れる場所を探していたらしい。
 友人、なのだろうが、この学校に四人も同時に合格して、その全員が二科生というのも珍しいのではないだろうか。
 別に、どうでもいいことではあるが。
「あの……」
 彼が視線を正面に戻すと、また、声を掛けられた。
 一体なんだろうか?
 間違いなく知り合いではないし、肘が当たってる訳でも足が当たっている訳でもない。
 自分で言うのも何だが、達也は姿勢が良い方だ。
 クレームを受けるようなことは、何もしていないはずだが――
「私、柴田美月っていいます。よろしくお願いします」
 予想に反した自己紹介。気弱そうな口調と外見。人を見た目で判断するのは危険かもしれないが、自己アピールが得意なタイプとも思えない。
 多分、無理をしているのだろう。誰からか、二科生同士助け合わなければならない、等と余計なことを吹き込まれたのかも知れない。
 

【左遷生、間違いなく格闘技とかやってないでしょ?】

文庫1巻(Web 第1章) p62
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生が糞アニメだと気づいたのは私が見た所71スレだけだ の29 で貼付け
 
その時、達也は何をしていたのかというと、ペースについてこれなくなってまだ到着してい
ない、のではなく、山門をくぐるなり、手荒い出迎えを受けていた。
 出迎え、というのは、要するに稽古のことだが。
 この寺に通い始めた当初は一人ずつの掛稽古だったのが、今では中級以下の門人約二十
人による総がかり――総当たり、ではない――に変わっていた。
 

【食事風景 この文から『摩利は料理が得意です』という事を読み取れという無茶ぶり、アニメスタッフはエスパーではない】

文庫1巻(Web 第1章) p133
 
会話は自然と今食べている料理のことになる。
自動調理だからレトルトになるのは仕方が無いのだが、最近の加工食品は普通の料理に比べてもそれほど遜色が無い。
とは言うものの「平均的な」料理に比べてのことであり、物足りなさは否めない。
「そのお弁当は、渡辺先輩がご自分でお作りになられたのですか?」
「そうだ。……意外か?」
「いえ、少しも」
深雪に問われ、頷きを返した後、少し意地の悪い口調で摩利は問いを返した。
本気で嫌味を言った訳ではなく、出来過ぎに見える下級生を軽くからかっただけだったが、本人を狼狽させる前に、その隣から間髪を入れず否定の言葉を打ち返された。
「……そうか」
達也の目は、摩利の手元――指を見ている。機械任せか、自分で料理しているのか、どのくらい料理が出来るのか、出来ないのか……全て見透かされているような気分になって、摩利は気恥ずかしさを覚えた。
 
円盤特典編 【入学編1 特別編 質問2 摩利は料理上手? 普通の人は包丁を使ってる跡なんて出来ませんよ? 】 参照
 

【というか、管理する教職員なんていませんけどね】

''文庫1巻(Web 第1章) p135
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は引き金を引くだけで終わる糞アニメ81の900 で初出
 
「当校は生徒の自治を重視しており、生徒会は学内で大きな権限を与えられています。
 これは当校だけでなく、公立高校では一般的な傾向です」
 相槌の意味で、頷く。
 管理重視と自治重視は、寄せては返す渚の波のようなもので、大小の違いはあれ、交互に訪れる風潮だ。
 三年前の沖縄防衛戦における完勝とその後の国際的発言力の向上以来、
 それ以前の劣性な外交環境に起因する内政動揺を反映した過度の管理重視風潮への反動から、過度に自治を重視する社会的な傾向がある。
 更にその反動として、管理が厳格な一部の私立高校が父兄の人気を集めていたりもするのだから、世の中は単純には計れない。
「当校の生徒会は伝統的に、生徒会長が大きな権限を持っています。
 大統領型、一極集中型と言ってもいいかもしれません」
 この台詞を聞いて不安に駆られたのは、多分、真由美に対して失礼なことなのだろう。
 達也は心の手綱を引き絞った。
「生徒会長は選挙で選ばれますが、他の役員は生徒会長が選任します。解任も生徒会長の一存に委ねられています。
 各委員会の委員長も一部を除いて会長に任免権があります。
 この仕組上、生徒会長には任期が定められていますが、他の役員には任期の定めがありません。
 生徒会長の任期は十月一日から翌年九月三十日まで。その期間中、生徒会長は役員を自由に任免できます」
 そろそろ話が見えてきたが、口を挟むことはせず、達也は理解のしるしに再度、頷いてみせた。
「これは毎年の恒例なのですが、新入生総代を務めた一年生は生徒会の役員になってもらっています。趣旨としては後継者育成ですね。
 そうして役員になった一年生が全員生徒会長に選ばれる、という訳ではありませんが、ここ五年間はこのパターンが続いてます」
「会長も主席入学だったんですね」
「……あ?、まあ、そうです」
 達也の質問は一種のお愛想だった。答えは最初から分かっていたのだが、真由美は律儀に照れて見せた。
 演技でなく本当に照れているのは、すれていないというべきか……せいぜい同い年くらいに見える。
 鈴音や摩利が大人っぽいので、余計に幼く――というか、可愛く見えるのかもしれないが。
「コホン……深雪さん、私は、貴女が生徒会に入って下さることを希望します」
 

【法律なんざ知ったことか。魔法が使えりゃいいんだよ。人命なんざ知ったことか。俺様達が目立てばいいんだよ】

文庫1巻(Web 第1章) p187
 
部屋の奥、普通なら非常階段の設置されている場所に、風紀委員会本部への直通階段があった。
消防法は無視なのか?
とも思ったが、生徒=見習いとはいえ優秀な魔法師が使用する施設で
消防法を遵守することに余り意味がないのは確かだ。減速魔法を使えば火は消えるし、
煙は収束・移動の複合魔法で排出できる。
実際に、超高層建築の大規模火災は、魔法師にとって最も華々しい活躍の場の一つだ。
エレベーターでなかった分だけ、許容範囲と思うことにした。
 

【これが科学的に系統分類化された魔法?】

文庫1巻(Web 第1章) p230
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は御曹司(ソンシ)が点呼を取って褒められる糞アニメ56の186 で転載
 
伝統的な魔法は、発生させる現象を象徴元素に当て嵌めて術式を分類していた。
代表的な分類は「地」「水」「火」「風」の四大、四大に「空」を加えた五輪、「木」「火」「土」「金」「水」の五行など。
「光」「闇」「虚」「無」「天」「月」「雷」「山」「沢」等が付け加えられることもある。
超能力研究を端緒とする現代魔法は、現象をその見掛けの性質ではなく作用面から分析し分類した。
 即ち、(加速・加重)(移動・振動)
    (収束・発散)(吸収・放出)
以上、四系統八種類である。
無論、分類には必ず例外があって、現代魔法学においても四系統八種に分類できない魔法が認められている。
例えば四系統八種は作用面に着目した分類だから、超心理学にいうESP、知覚器官外認識力、
いわゆる「超感覚」は「知覚系魔法」として四系統魔法とは別分野の魔法とされており、
この分野では超心理学的なアプローチ未だ健在である。
学問研究上、魔法系統は細かく分類されているが、「事象に付随する情報を書き換えてその改竄を事象に反映させる」
ことが魔法の唯一の本質であり、系統魔法もそれ以外の魔法もこの意味で同じものである。
 

【あれが本当の戦場なら「次」なんてないんだぞ だってさ()】

文庫1巻(Web 第1章) p245
 
「……だが、今回はやり過ぎだったな。
 複数のCADを同時に使うなんて、お前ら如きに出来るはずがない。
 両手にCADを装着すれば、サイオン波の干渉で、両方のCADが使えなくなるのがオチだ。
 この程度のことも知らずに格好を付けようとしたんだろう?
 どうせ大した魔法は使えないんだ。恥をかかなくてすむように、こそこそ立ち回るんだな」
「アドバイスのつもりか?
 余裕だな、森崎」
「ハッ! 僕はお前らとは違う。一昨日は不意をつかれたが、次はもう油断しない。
お前らと僕たちの、格の違いを見せてやる」
 言い捨てて立ち去る背中を眺めながら、達也は思う。
 次がある、と信じられることの、何と幸せなことか……
 

【これでも実績で平等だと?】

文庫1巻(Web 第1章) p265
競技人口が確実に3万人以下で、現役高校生は1200人以下の魔法剣術、全体で競技人口が40万人を超え、現役高校生も1万人以上は存在する剣道。
一高の剣道部は全国大会上位まで行っているようだが、これよりも凄い実績を剣術部はどうやって上げているのか、魔法師は余程でない限り海外出国出来ないが国際大会でもあるのか?
 
「女子の方は試合を見たことあるのを、今、思い出した。
 壬生紗耶香。一昨年の中等部剣道大会女子部の全国二位よ。当時は美少女剣士とか剣道小町とか随分騒がれてた」
「……二位だろ?」
「チャンピオンは、その、……ルックスが、ね」
「なるほど」
 マスコミなぞ、そんなものだろう。
「男の方は桐原武明。
 こっちは一昨年の関東剣術大会中等部のチャンピオンよ。
 正真正銘、一位」
「全国大会には出ていないのか?」
「剣術の全国大会は高校からよ。
 競技人口じゃ比べ物にならないからね」
 それはそうだろう、と達也は頷いた。
 剣術は剣技と術式を組み合わせた競技、ならば魔法が使えることが競技者の前提条件となる。
 魔法学の発達により魔法を補助する機器の開発が進んでいるとはいえ、実用レベルで魔法を発動できる中高生は、年齢別人口比で千分の一前後。
 成人後も実用レベルの魔法力を維持している者は更にその十分の一以下。
 

【尊師(左遷生)の御高説、差別とは何だろう 編】

文庫2巻(Web 第1章) p90
 
「キャビネット名『ブランシュ』、オープン」
 食べ物を広げたリビングのテーブルにフルキーボードは持ち込めない。
 達也は余り好きではないのだが、音声コマンドを使って、調査結果のファイルをディスプレイ上に次々と表示した。
「反魔法活動を行っている政治結社ですね……?」
「当人たちは市民運動と自称しているけどな。
 どうやらこのテロリストどもが、校内で暗躍しているらしい」
 達也の言葉に、深雪が小首を傾げた。
「魔法科高校で、ですか?」
 深雪の疑問はもっともだ、と達也は思った。
 第一高校に限らず、魔法科学校は魔法を役立てよう――それが自分の為であれ他人の為であれ――と考えている人間が、魔法を学びに来るところだ。
 魔法科高校の生徒が魔法を否定するのは、自家撞着でしかない。
「当たり前に考えればおかしなことなんだけどね……
その『当たり前』が通用しないから、ああいう気狂いどもが蔓延るんだよ」
「……何故そんなことになるのでしょう」
「こういうことは一般論で考えようとすると、迷路に陥ってしまうからね。
 具体的に考えれば良い。
 まず抑えておかなければならない点は、奴等が表向き魔法を否定していない、という事だ」
「そう言えば……そうですね」
「奴等のスローガンは、魔法による社会的差別の撤廃。
 それ自体は、文句のつけようもなく、正しい」
「……はい」
「では、差別とは何だろう?」
「本人の実力や努力が社会的な評価に反映されないこと、でしょうか……?」
「さっき言ったはずだよ、深雪。
 一般論で考えるべきではないと」
 そう言いながら、達也はサイドボードに置いてあったリモコンを手に取り、スクリーンへ向けた。
 十六に分割された画面の一区画が、前面に拡大表示される。
「奴等は魔法師とそうでないサラリーマンの所得水準の差を、魔法師が優遇されている根拠としている。
 奴等の言う差別とは、詰まるところ平均収入の格差だ。
 だがそれは、あくまで平均で、あくまで結果でしかない。
 高所得を得ている魔法師が、どれほどの激務に晒されているのか、その点を全く考慮していない。
 魔法スキルを持ちながら、魔法とは無関係の職しか得られず、平均的なサラリーマンより寧ろ低賃金に甘んじている大勢の予備役魔法師の存在を完全に無視している」
 淡々と語る達也の声に、感情は希薄だった。ただ、少しだけ、遣る瀬無さが滲んでいた。
「どんなに強力だろうと、社会に必要とされない魔法は、金銭も名誉ももたらさない」
 辛そうに、深雪が目を伏せた。
 立ち上がり、回り込み、妹の肩に、達也は優しく、手を置いた。
「魔法師の平均収入が高いのは、社会に必要とされる希少スキルを有している魔法師がいるからだ。
 絶対数の少ない魔法師の中に、相対的に高い割合で高所得者がいるから、平均収入が高く算出されるだけなんだ。
 そして、そういう第一線で活躍している魔法師は、社会に貢献する――いや、この言い方は綺麗過ぎるな。魔法師は、金銭的な、あるいは非金銭的な、いずれにしても何らかの利益を生み出すことによって高い報酬を受けているのであって、ただ魔法師だからという理由で金銭的に優遇されているんじゃない。
 魔法の素質だけで裕福な暮らしが出来るほど、魔法師の世界は甘くない。
 俺たちはそれを、良く知っている。
 そうだろう、深雪?」
「ええ……良く存じております」
 肩に置かれた兄の手に、自分の手を重ねて、深雪は深く頷いた。
「魔法による差別に反対するという主張は、結局のところ、魔法師が金銭的に報われることに反対するという主張になっている。
 魔法師は無私の精神で社会に奉仕しろ、という訳だね」
「……随分自分勝手で虫の良い主張に思われます。
 生活する上で、金銭的な収入が必要なのは、魔法師もそうでない人も同じであるはずです。それなのに、魔法師が魔法で生計を立てることは許さない、魔法を使える者も、魔法以外で生きる糧を稼がなければならない……
 それは結局、自分たちには魔法が使えないのだから、魔法を人の能力として評価したくないと言っているだけなのではないのですか?
 魔法師が魔法を研鑽する努力は報われなくても構わない、魔法師の努力は評価されなくても当然だと言っているのですね……
 ……それとも、そのような人たちは、生来の才能だけでは魔法は使えないということを知らないのでしょうか? 魔法を使うには長期間の修学と訓練が必要だということを知らされていないのでしょうか?」
 達也は深雪の背後から離れ、シニカルな笑みを浮かべながら自分の席に戻った。
「いや、知っているさ。
 知っていて、言わない。
 都合の悪いことは言わず、考えず、平等という耳触りの良い理念で他人を騙し、自分を騙しているんだ。
 深雪が最初に訊いたね。
 魔法科高校の生徒が何故、反魔法活動に荷担するのかと」
「ええ……それは、魔法否定派の本音が分かっていないからではないと……?」
「魔法を使えない人たちが、自分たちがどんなに努力しても身につけられない魔法で、高い地位を得るのは不公平だと考える。
 ならば、魔法を使えはするけれども、その才能に劣った生徒が、豊かな才能を持つ生徒に対して、自分がこんなに努力しているのに追いつけないのはおかしい、自分の方が下に見られるのはおかしい……そう考えても不思議はないと思わないか?
 才能の違いなんて、魔法に限った事じゃない。芸術とかスポーツとかだけでなく、人の営みのあらゆる分野について回るものだ。
 魔法の才能が無くても、他の才能があるかもしれない。
 魔法の才能が無いことに耐えられないのなら、他の生き方を見つけるべきだ。
 魔法を学んでいる者が、魔法による『差別』を否定するのは、魔法から離れられないからに他ならないと俺は思うんだよ。
 魔法から離れたくはない、でも、一人前に見られないことには耐えられない。
 同じように努力をしても、追いつけないという事実に耐えられない。
 何倍もの努力をしても、追いつくことは出来ないかもしれないという可能性に耐えられない。
 だから、魔法による評価を否定する。
 才能ある者も努力という対価を払っているんだという事実は、当然知っている。目の前でそれを見ているのだから。それなのに、その事実から目を背け、生来の才能に全ての責任を押しつけて、それを否定する。
 まあ……そういう弱さは理解できない訳じゃない。俺の中にもそういう気持ちは確かにある」
「そんなことはありません!
 お兄様には誰にも真似の出来ない才能があるのに、ただ他の人たちと|同じ《・・》才能が無いというだけで、それこそ何十倍もの努力を積み上げて来られたではありませんか!」
「それは俺に|別の《・・》才能があったからだよ」
「あっ……」
「不足している現代魔法の才能を、別の才能で埋めた。
 その|術《すべ》があったから、こうして第三者的な論評をしていられる。
 もしそうでなかったら……『平等』という美しい理念にすがりついていたかも知れないな。
 それが嘘だと分かっていても」
「…………」
「魔法の才能に劣った者は、劣っているという事実から目を背けたくて、平等という理念を唱える。
 魔法が使えない者は、それもまた人の持つ才能の一種に過ぎないということから目を背けて、嫉妬を理念という衣にくるむ。
 では全てを分かった上で扇動している奴等の、本当の目的は何か?
 奴等のいう平等とは、魔法を使えても使えなくても同じに扱えということだ。
 魔法による社会的差別の撤廃とは、魔法という技能を評価しないということだ。
 それは結局、魔法の社会的意義を否定するということだ。
 魔法を評価しない社会で、魔法が進歩するはずはない。
 魔法による差別反対を叫び、魔法師とそれ以外の者の平等を叫ぶ奴等の背後には、この国を、魔法が廃れた国にしたい勢力が隠れている」
「それは一体……?」
「良くも悪くも、魔法は力だ。財力も力、技術力も力、軍事力も力。
 魔法は戦艦や戦闘機と同じ種類の力にもなる」
「では、魔法否定派は、この国で魔法を廃れさせることを目的にしており、その結果としてこの国の力を損なうことを目的にしているということですか?」
「多分ね。
 それ故に、テロという非道も辞さない。
 では、この国の力が損なわれて、利益を得るのは誰だ?」
「まさか……では、彼らの背後には」
「そういうことだ。
 そしてそんな奴等を、十師族が放置しておくはずがない。
 特に四葉家が、な
だから、気をつけるんだよ、深雪。
 巻き込まれないように。
 祭り上げられないように」
 何に、とは言わない。
 二人の間では、言う必要がない。
 深雪は、兄の言葉に、蒼褪めた顔で頷いた。
 

【本気で言ってる?物を移動する時のおバカな四工程】

文庫2巻(Web 第1章) p106
 
 現代魔法において工程という言葉には、魔法を発動するプロセスそのものと、目的とする現
象改変を行う為に組み合わせられた複数の魔法の、一つ一つの魔法処理の二通りの意味を持つ。
ここで達也が言っている「五工程の魔法」は、五つの魔法処理を組み合わせて一つの現象改変
を行う術式を意味している。
 例えば卵をキッチンからテーブルへ魔法で移動させる場合、加速、移動、減速(負の加速)、
停止(移動の終了)四工程が必要となる。
 移動魔法は物体の速度と線形の座標を書き換える魔法であり、加速の工程を省略すると対象
物に慣性を無視した加速が掛かる。卵であれば、割れてしまう。
 移動の工程を省いて加速と減速だけで処理しようとすると、卵は放物線軌道で飛んでいくこ
とになり、恐ろしく精密な減速制御が必要になる。工程が増えても加速魔法である程度まで減
速をかけて、移動魔法で速度をゼロにする方が容易なのだ。
 

【一科生が受けられる「授業」の実態をキモウトが暴露。やっぱり税金の無駄遣いでした】

文庫2巻(Web 第1章) p119
(いわゆる エリカス道場 の直前あたりより抜粋。アニメ版では全カット)
 
そんなクラスメイトの態度と裏腹に、深雪は勿体も付けず、ストローから唇を離して即答した。
「多分、美月たちと変わらないと思うわ。
ノロマな機械をあてがわれて、授業以外では役に立ちそうも無いつまらない練習をさせられているところ」
達也を除いた五人が、ギョッとした表情を浮かべた。
淑女を絵に描いたような外見にそぐわない、遠慮の無い毒舌に。
「ご機嫌斜めだな」
「不機嫌にもなります。あれなら一人で練習している方が為になりますもの」
笑いながら、からかい気味に掛けられた兄の言葉に、拗ねた顔と声で、それでも少し甘えていることが第三者にも分かる態度で、深雪は答えた。
「ふ~ん……手取り足取りも良し悪しみたいね」
 
(おまけ。キモウト自ら作品全否定 p283)
「お兄様……学校が、お辛くはありませんか?お兄様の実力があれば、本来、高校に通う必要などございませんのに……。それでも侮りを受けてまで学校に通われているのは、わたしの為に無理を」
 

【メインキャラクター『千葉エリカ』曰く】

文庫2巻(Web 第1章) p122
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は作者のオナニーでオーバーレイする糞アニメ2の37 でテンプレ要望が出ている
なお、教育・指導の在り方でも、これが正しいという妄言を吐く人物がアンチスレ12に現れ、左遷生の降臨ではないかという流れがあった。
詳細は 【作者降臨?ID:ZnVk4XRL0のおかしくもブレブレな擁護~2014.05.05~】 参照
  
「ウ~ン……今まで当たり前のことだと思ってたから、説明が難しいなぁ……
 例えばね、ウチの道場では、入門して最低でも半年は、技を教えないの。 最初に足運びと素振りを教えるだけ。
 それも一回やって見せるだけで、後はひたすら素振りの繰り返しを見ているだけ。
 そして、まともに刀を振れるようになった人 から技を教えていくの」

「……それじゃあ、いつまで経っても上達しないお弟子さんも出てくるんじゃない……?」

「いるね~、そういうの。そして、そういうヤツに限って、自分の努力不足を棚に上げたがるんだな。
 まず、刀を振るって動作に身体が慣れないと、どんな技を教わっても身に付くはずが無いんだけどね」

「あっ……」

「そしてその為には、自分が刀を振るしかない んだよ。やり方は、見て覚える。周りに一杯、お手本が居るんだから。
 教えてくれるのを待っているようじゃ、論外。最初から教えてもらおうって考え方も、甘え過ぎ。
 師範も師範代も、現役の修行者なんだよ? あの人たちにも、自分自身の修行があるの。
 教えられたことを吸収できないヤツが、教えてくれなんて寝言こくなっての」

「……お説はごもっともだと思うけどよ、俺もオメエも、ついさっきまで達也に教わってたんだぜ……?」

「ア痛! それを言われると辛いなぁ」 ──レオの指摘に顔を顰めつつ、あっけらかんとした調子は変わらない。

「それはそれ、背に腹は代えられない、ってことも確かにあるけどさ……
 教わるには、教わる相手に相応しいレベルがないと、お互いに不幸だって思うのよ。
 まっ、一番の不幸は、教える側が、教えられる側のレベルについていけないことなんだけどね」 ──ここでパチリと、意味ありげなウインク。

 達也はニヤリと、人の悪い笑みを返した。
 

【同じ二科生でありながら一抹の共感より先に立つのは、より下を見ては嗤いモノにする愉悦。卑しい優越に耽る負の連鎖。あまりに酷いため文庫版では全カット】

web 第1章
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はテロリスト()御苦労様……な糞アニメ11の672 で初出
 
『私たちは学内差別撤廃同盟「スリー・ハーブズ」です。私たちは生徒会と部活連に対し、対等な立場における交渉を要求します』

「プハッ!」 ──思わず噴き出した達也に教室内から奇異の目が集まったが、
「クックックックックッ……」 ──笑いの発作はその程度で収まってくれなかった。
 
「ねぇ、笑ってていいの?」 ──尚も放送設備を通じたアピールは続いていたが
 耳から入ってくるそれを意識から締め出すことで、達也はようやく笑いを止めることができた。

「そう、だな」 ──だが、まだ少し、口調が怪しい。 「放送室を不正利用していることは間違いない。 委員会からお呼びが掛かるか」

「……何がそんなに可笑しかったんだ?」

「いや、これが笑わずにいられるか。お前はよく平気だな、レオ」
 ──再びこみ上げてくる笑いの衝動をこらえているのが、傍で見ていても分かる。
「スリー・ハーブズ……ククク……平均という発想自体が、区別を認めているんだがな」

「平均?」 「どういうことですか?」

「three halves、つまり1.5…… 要するに、『1』科と『2』科を平均して1.5ってこと。
 差別撤廃とか言っておきながら、一科と二科の区別を存続させることを前提とした命名じゃないか」
 ──一瞬、キョトンとした顔をしていたが、直後、エリカとレオが盛大に噴き出した。

「な、なにそれ?」 「あ、アホだ、こいつら」
 ──苦しそうに身をよじる二人の傍らで、美月も失笑をこらえ切れずにいる。
 

【評価と体面が最優先、達也の冷たい方程式にかかれば剣道美少女先輩だろうと切り捨て御免。web版でごく自然に描写される屑の精髄】

web 第1章
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はSF(凄く不快)な糞アニメ18の243 で初出?
 
 苦しそうに身をよじる二人の傍らで、美月も失笑をこらえ切れずにいる。
「おっと、お呼びが掛かったか。
 じゃあ、行ってくる」
「あ、はい、お気をつけて」
 見送りの言葉は、美月のみ。
 残る二人に、その余裕は無かった。

◇◆◇◆◇◆◇

「あ、お兄様」
「深雪、お前も呼び出しか?」
「はい、会長から、放送室前へ行くようにと」
 途中で深雪と合流し、放送室へと向かう。
 しかし、その足取りは、それほど速いものではなかった。
「これは、ブランシュの仕業でしょうか?」
「団体は特定できないが、その手の輩の仕業には違いないだろうね」
 悪い予想が的中した割には、達也の表情には何処と無く安堵感が漂っている。
「いや、あの間抜けな放送をしたヤツが、知り合いじゃなくて良かったな、と」
 視線の問い掛けを感じて、言い訳するように達也は答えた。
「壬生先輩、でしたよね?」
「ああ。
 あんな放送をしたヤツと知り合いだなんて思われるのは恥ずかしすぎるからな」
「確かに、スリー・ハーブズという名称は滑稽ですが、要求自体は結構真面目なようですよ」
「バカをやっているという自覚無しに、真面目にバカをやるヤツの方が救い難い……っと」
 

【これで納得するようではカルトや詐欺に引っかかりますよ。結局、芝さんを生徒会に入れただけでしたね会長】

文庫2巻(Web 第1章) p170
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はラノベの最終兵器()な糞アニメ37の498 で初出
 
パネル・ディスカッション方式の討論は、今回の経緯から必然的に、同盟側の質問と要求に対し、生徒会が反論するという流れを辿った。
 とは言え、同盟側に何か具体的な要求があった訳ではない。
 元々彼らは、達也に唆されて引っ張り出されたようなものだ。
 聴衆に紛れた扇動の中ならば有効なスローガンも、舞台の上では具体性の伴わない観念論に過ぎない。
 討論会は、やがて、真由美の演説会の趣を呈し始めた。
「……生徒たちの間に、差別の意識が存在するのは否定しません。但しそれは、固定化された優越感であり劣等感です。
 特権階級が、自らの持つ特権を侵食されることを恐れる、防衛本能から生まれ、制度化される差別とは性質が違います。
 ブルームとウィード、学校も生徒会も風紀委員も禁止している言葉ですが、残念ながら、多くの生徒がこの言葉を使用しています。
 しかし、一科生が自らをブルームと称し、二科生をウィードと呼んで見下した態度を取る、それだけが問題なのではありません。
 二科生の間にも、自らをウィードと蔑み、諦めと共に受容する。そんな悲しむべき風潮が、確かに存在します」
 幾つか野次が飛んだが、表立った反論は無かった。
 反論は既に、尽きていた。
「この意識の壁こそが問題なのです。
 第一科と第二科の区別は、学校の制度として厳然と存在するものですが、これは全国的な指導教員の不足を反映した、すぐには解決し難い背景によるものです。
 全員に不十分な指導を与えるか、それとも半数の生徒に十分な指導を与えるか。
 当校では、後者の方法が採用されています。
 そこに差別は、確かに存在します。
 そして私たちには、どうすることも出来ません。
 当校で学ぶにあたり、当校の生徒に受け入れるべく強制されているルールですから。
 しかしそれ以外の点では、制度としての差別はありません。
 もしかしたら意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、第一科と第二科のカリキュラムは全く同一です。
 進捗速度に差が生じることはあっても、講義や実習は同じものが採用されています」
 それは、達也にとっても深雪にとっても意外なことだった。
 思わず「へえ……」と呟いた達也に、深雪が無言の賛同を示す。
 それを見た鈴音が、口元を綻ばせた。
「課外活動においても、部活連と生徒会で、可能な限り施設の利用は平等になるように割り振っています。
 所属人数の多いクラブが所属人数の少ないクラブに対して優遇されていることは否定しません。
 ですが、一人当たりの機会の均等も、クラブ間の機会の均等と同様に無視できないものだと、考えた上でのことです。
 決して、魔法競技系の課外活動を、制度として優先しているのではありません。
 先程『同盟』の方から、魔法競技系クラブに予算が手厚く配分されているというご指摘がありました。
 結果としてはご指摘の通りですが、この予算配分は活動実績を加味した結果である事は、先程グラフでご覧頂いた通りです。
 指導教員以外の問題については、第一科と第二科の区分以外の要因で全て説明可能なものです。
 それが合理的な根拠に基づくものである事は、ご納得いただけたと思います。
 他に原因があり、それが分かっているにも拘らず、第一科と第二科の区分の所為にする、一科生と二科生をお互いに隔てる意識の壁こそが問題なのです」
 再び、野次が飛んだ。
 だがそれは、賛否双方を含むものだった。
「……私は当校の生徒会長として、現状に決して、満足していません。
 時に校内で対立を煽りさえするこの意識の壁を、何とか解消したいと考えてきました。
 ですがそれは、新たな差別を作り出すことによる解決であってはならないのです。仮に二科生が差別されているからといって、一科生を逆差別しても解決には成りません。一時的な措置としても、許容されることではありません。
 一科生も二科生も一人一人、当校の生徒であり、当校の生徒である期間はその生徒にとって唯一無二の三年間なのですから。
 制度上の差別を無くすこと、逆差別をしないこと、私たちに許されるのは、この二つだけだと思っています。
 ……ちょうど良い機会ですから、皆さんに私の希望を聞いてもらいたいと思います。
 実を言えば、生徒会には一科生と二科生を差別する制度が、一つ残っています。
 それは、生徒会長以外の役員の指名に関する制限です。
 現在の制度では、生徒会長以外の役員は第一科所属生徒から指名しなければならないことになっています。
 この規則は、生徒会長改選時に開催される生徒総会においてのみ、改定可能です。
 私はこの規定を、退任時の総会で撤廃することで、生徒会長としての最後の仕事にするつもりです。
 私の任期はまだ半分が過ぎたばかりですので、少々気の早い公約になってしまいますが、人の心を力づくで変えることは出来ないし、してはならない以上、それ以外のことで、出来る限りの改善策に取り組んでいくつもりです」
 一斉に拍手が起こった。
 そこには少なからず、アイドルに対する声援に似た浮ついた雰囲気が漂っていたが、一科生だけでなく二科生の多くも真由美を支持したことが明らかだった。
 

【ガーディアンが警護対象を敵のアジトへ連れて行くんですか?】

文庫2巻(Web 第1章) p235
 
「……達也くん、まさか、彼らと一戦交えるつもりなの?」
「その表現は妥当ではありませんね。
 一戦交えるのではなく、叩き潰すんですよ」
 おそるおそる訊ねた真由美に、達也はあっさりと、過激度を上乗せして頷いた。
「危険だ!
 学生の分を超えている!」

~中略~

「なる程、警察の介入は好ましくない。
 だからといって、このまま放置することも出来ない。
 同じような事件を起こさない為にはな。
 だがな、司波」
 炯炯たる克人の眼光が、達也の|眼《まなこ》を貫いた。
「相手はテロリストだ。
 下手をすれば命に関わる。
 俺も七草も渡辺も、当校の生徒に、命を懸けろとは言えん」
「当然だと思います」
 しかし達也は、その眼光をものともせず、淀みなく答えた。
「最初から、委員会や部活連の力を借りるつもりは、ありません」
「……一人で行くつもりか」
「本来ならば、そうしたいところなのですが」
「お供します」
 すかさず飛び込んで来た妹の声に、達也は苦笑を浮かべた。

~中略~

「司波、お前が指示を出せ」
 克人の言葉に、達也は頷いた。
「レオ、お前はここで退路の確保。
 エリカはレオのアシストと、逃げ出そうとするヤツの始末」
「……捕まえなくていいの?」
「余計なリスクを負う必要は無い。安全確実に、始末しろ。
 会頭は桐原先輩と左手を迂回して裏口へ回って下さい。
 俺と深雪は、このまま踏み込みます
 

【怖さもナンバー1・著者の圧倒的筆力が描き出す『司波美雪』の怒り】

文庫2巻(Web 第1章) p256
 
彼女の兄に害を為そうとした者は、一人だけ。その愚か者は、既に凍り付いている。
だが、彼女にとってはそれだけで十分であり、それだけでは不十分だった。
十分な理由、不十分な結果。
たった一人の華奢な少女を前に、二桁の男たちが、一歩も動けなくなっていた。
凍りついた足は、踏み出すことも、後退ることも出来なくなっていた。
精神的にも??物理的にも。
床は一面、白い霜で覆われていた。
少女の立つ小さな円内、そこだけが、屋外と同じ季節だった。
白い霧が、渦を巻き流れる。
霧は、冷気で出来ていた。少女が右手を上げた。
その姿は、死者に裁きをもたらす、氷の女王の現界か。
「お前たちは、運が悪い」
いつもとは異なる口調。
だが、命じ、裁く、権威と共にあるその言葉遣いに、些かの違和感もなかった。
「お兄様に手出しをしよう等とさえ、しなければ、せめて安らかに眠れたものを」
冷気が、徐々に、這い上がってくる。
男たちの顔が、恐慌と、絶望に染まる。
「わたしはお兄様ほど、慈悲深くは無い」
冷気は既に、首の下までを、覆い固めていた。
祈るが良い。
 「せめて、手足が腐り落ちずに済むように
振動減速系広域魔法「ニブルヘイム」。声なき断末魔の絶叫が、霧の中に満ちた。
 

【そもそも未来の日本はヤクザ部族が支配する人治国家】

文庫2巻(Web 第1章) p266
 
現代魔法の才能が先天的素質に左右されることが分かってしまえば、当然の帰結として、血縁による強化が企図される。
無論、この国でも実行された。その結果、この国の魔法界に君臨する新たな一団が形成された。
それが、十師族。
十師族は、決して政治の表舞台には立たない。表の権力者にはならない。
むしろ、兵士として、警官として、行政官として、その魔法の力を使い最前線でこの国を支えている。
その代わり――表の権力を放棄した代わりに、政治の裏側で不可侵に等しい権勢を手にした。
十師族の権勢は、司法当局を凌駕する。
達也たちの行為は、良くて過剰防衛、悪くすれば傷害・および殺人未遂・プラス魔法の無免許仕様だが、司直の手が彼らに伸びることはなかった。
 

【冷凍にされても死なない劣等星人。水分膨張による細胞破壊なんて起きませんよってマジですか?】

文庫2巻(Web 第1章) p269
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は手出しすると痛い思いをする糞アニメ35の131 で初出
 
深雪はあれから一週間ほど落ち込んでいた。
表面上は相変わらず完璧な美少女だったが、ふとした弾みに両手で顔を覆っている姿が見られた。

―自宅内、限定で。
さすがに「ニブルヘイム」は、やり過ぎだったと思っているらしい。
 幸い、ブランシュのメンバーたちは偶然コールドスリープ状態になっていたため魔法の性質上、
内部まで均一に一瞬で凍結が起こるから細胞膜破壊は生じない)、肉体に回復不能の欠損になった
ものはいなかったようだが。
 そんな時は、達也がいくらでも深雪を甘えさせたので、帰って落ち込みモードから脱却するのが
おくれるような、笑えないようで笑うしかない状況も生じていた。
 

九校戦編

【これが魔法科高校の学科試験だ!】

文庫3巻(Web 第2章) p23
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生が糞アニメだと気づいたのは私が見た所71スレだけだ の128
 
第一高校の、というより魔法科高校の定期試験は魔法理論の記述式テストと魔法の実技テストにより行われる。
語学や数学、科学、社会学等の一般教科は、普段の提出課題によって評価される。
魔法師を育成する為の高等教育機関なのだから、魔法以外で生徒を競わせるのは余計なことだ、と考えられているのだ。
(達也たちは魔法師と魔工師を区別しているが、それは彼らの進路がこの二つで明確に区分されるからであって、
社会の一般的な分類では、魔工師は魔法師の一種であり、魔法を使えない魔法工学技術者のことを魔工師とは呼ばない)
記述式テストが行われる魔法理論は、必修である基礎魔法学と魔法工学、
選択科目の魔法幾何学・魔法言語学・魔法薬学・魔法構造学の内から二科目、魔法史学・魔法系統学の内から一科目、合計五科目。
 

【教師は適切なアドバイスをしたと思いますけどね? 翌年度、芝さんの為の魔工科が出来る御都合…】

文庫3巻(Web 第2章) p28
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は糞アニメだということはオフレコで頼む28の39 で既に貼られている
 
「それで達也さん、先生の誤解は解けたんですか?」
「ああ、まあ、一応ね」
「一応?」
 美月の示した短い疑問の声に、達也は気が進まない風な表情と口調で説明を付け加えた。
「手抜きじゃないと理解はしてもらえたよ。
 その代わり、転校を勧められたが」
「転校!?」
「そんな、何故です!?」
 血相を変えて叫んだのは美月とほのかだが、他の三人も似たような顔をしていた。
「第四高校は九校の中でも特に魔法工学に力を入れているから、俺には向いているんじゃないか、ってね。
 もちろん断ったが」
 ホッと胸を撫で下ろした二人と、憤慨を顕にする二人。
 前者が美月とほのか、後者がレオとエリカ。
 尚、残る一人は内面の窺い知れぬポーカーフェイスを維持していた。
「……実技が苦手だから、実技が出来なくても良い学校に行けってのは、学校として自己否定じゃねえのか?
 成績が悪くてついて行けない、ってんならまだしも、達也は実技でも合格点はクリアしてるじゃねえか」
「目障りなんでしょ。
 下手すりゃ、センセイたちより達也くんの方が魔法について良く知ってるから」
「少し落ち着けよ、二人とも」
 放っておくと何処までも燃え上がってしまいそうな勢いだったので、達也は消火活動に着手した。
「レオの言う通り、例え赤点ギリギリであっても落第しなきゃ強制もされないんだから実害は無いって。
 もしかしたら、本当に善意だったのかも知れないしな。
 まっ、だとしたら、随分と無神経な善意ではあるが。独善というヤツだ」
 達也がサラリとした口調で綴った辛辣な評価に、義憤に燃えていたはずの二人がたじろぐ。狙い通りの冷却効果ならば中々に深謀と言えるだろうが、残念ながら今回は結果的に、という色合いが濃かった。
「でも、そもそもの前提が間違ってる時点で教師としてダメだと思う」
 

【やっぱり差別してるじゃないですか!ニッチな魔法系競技の実態】

文庫3巻 Web 第2章 p30
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は殺笑性Aランク相当の糞アニメ79の697 で初出
 
「そう言や、もうすぐ九校戦の時期じゃね?」
 雫の台詞に連想が働いたのであろうレオの言葉に、達也が頷きを返した。
「深雪がぼやいていたよ。
 作業車とか工具とかユニフォームとか、準備する物が多いって」
「深雪さん、ご自身も出場されるんでしょう? 大変ですよね」
「深雪なら新人戦なんて楽勝っぽいけどね。 寧ろ準備の方が大変そう」
「油断はできない。今年は三高に一条の御曹司が入ったらしいから」
「へぇ……」
「一条って、十師族の一条か?」
「そりゃ、強敵かも。それにしても雫、随分詳しいのね?」
 エリカの問いかけに、雫が少し、照れた様に見えた。
 ――相変わらず表情の変化が乏しくて、がさつな(?)達也やレオの目には分かり難かったが。
「雫はモノリス・コードのフリークなのよ。だから九校戦も毎回見に行ってるのよね?」
「……うん、まあ」
「なるほど。確かに、モノリス・コードの試合は全日本選手権と魔法科大学の国際親善試合以外では、九校戦以外にやってないからな」
 九校戦は魔法大学付属高校間の、謂わば身内の交流試合だが、外部にも公開されている。
 九校戦は、魔法競技を目にすることができる数少ない舞台だからだ。
 魔法科高校各校の定員は、第一から第三高校が各二百名、第四から第九高校の六校が各百名、合計千二百名。
 それに対して国内の十五歳男女の内、実用レベルの魔法力を持つ者の合計人数は、毎年千二百から千五百名程度だ。
 つまり、魔法の才能を持つ少年少女で魔法師・魔工師になろうとする者は、ほぼ百パーセント九校の何処かに入学する。
 高校の魔法競技は、剣術や拳法といった一部の競技を除き、九校の独占状態にある。
 魔法競技に対する関心を高め、理解を深め、ひいては魔法そのものに対する社会の認識を深めるために、九校戦は数少ないアピールの場となっているのであった。
 

【実力が拮抗した試合は面白くない?圧倒的勝利しか許容しない精神の歪さ】

文庫3巻(Web 第2章) p58
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はお兄様がSF(尊師浮遊)に快感を覚える糞アニメ46の372 が初出
 
「達也!」
 縦横無尽に走り回るレオが、シュートの勢いで中盤の達也にパスを送る。
 胸や腹でトラップしようものならノックダウンを喰らいそうなパスを、達也は真上に蹴り上げることでその勢いを殺し、天井から跳ね返ってきたところを踏みつけて抑える。
 機械の様な精密なボール捌きでパスを受けた達也は、側面の壁に向けてボールを蹴りだした。
 跳ね返った所にいたのは、幹比古。
 ワントラップで、シュート。
 ゴールを告げる電子ブザーが鳴り渡り、見物の女子生徒から歓声が上がる。

~中略~

 試合は達也たち三人の活躍で圧勝。
 見学席に戻った達也は、レオと共に、少し離れた位置に腰を下ろした幹比古の近くへ移動した。

~中略~

 前の――つまり、達也たちの――試合に比べれば、今度の試合は接戦になった。
 先程から交互に点が入っている。
 どちらも技術的に拮抗している、高校生らしい、平凡な試合だった
 

【全国大会、部活で練習してる人間より、普段は練習していないが競技が上手い人間を選ぶ?あれ、部費は実績で予算配分って一体…】

文庫3巻(Web 第2章) p78
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はお兄様がSF(尊師浮遊)に快感を覚える糞アニメ46の260 が初出
たった九校しか競技人口のいない魔法クラブが実績()残してるから
非魔法クラブより高く評価され、相応に部費出てる設定とはいったい…
 
魔法大学付属高校にとって、夏の九校対抗戦は秋の論文コンペティションに並ぶ一大イベントだ。
 イベントとしての華やかさでは論文コンペを大きく引き離すナンバーワンイベントと言える。
 九校戦はスポーツタイプの魔法競技による対抗戦(魔法競技にはスポーツタイプ以外に立体パズルやボードゲーム、迷路や宝探しのタイムを競うゲームタイプがある)。第一高校にも各競技のクラブが存在するが、学校同士の対抗戦という色彩が強い九校戦の出場選手はクラブの枠組みを超えて全校から有望な選手が選び出される。
 こうした性質上、九校戦の準備は部活連ではなく生徒会が主体となって行われる。
「……だからといって、各クラブの|選手《レギュラー》を無視するわけにもいかないし、選手を決めるだけで一苦労なのよね……」
 

【age過ぎて遂に浮遊した芝さん】

文庫3巻(Web 第2章) p130
 
「ありがとうございます……?」
 兄が褒めてくれることについては、百パーセント確信していた。故に、お辞儀したまま紡ぎ出す台詞も、一種類しか用意しておらず、また、一種類で事足りた。
 だが、達也の台詞の最後のフレーズが理解できず、予定の返礼は、予定外の疑問形になってしまった。
 膝と腰を伸ばし、椅子に座ったままの達也を|見上げる《・・・・》。
 いつもの目線で「ジャストタイミング」の意味を問おうとして、深雪は強い違和感を感じた。
 正体はすぐに分かった。
 腰を下ろしているにもかかわらず、達也の目がいつもの、立って並んでいる時の高さにある。
 慌てて下を見て、深雪は息を呑むことになった。
 そこにはあるべきものが――椅子が無かった。
 達也は、右脚を上に脚を組み右膝の上に右肘をつき、身を乗り出すような体勢で……何も無い空中に座っていた。
「深雪にも、このデバイスのテストをして欲しかったんだ」
 達也はそのままの姿勢でスーッと滑るように深雪へ近づいた。手が届く距離まで接近して止まり、身体を起こして脚を解き、椅子から立ち上がる時の動作で足を伸ばす。
 そうすることで、彼の身体は自然に床の上へ復帰した。
「……飛行術式……常駐型重力制御魔法が完成したんですね!」
 呆然としたのは僅かな間。
 深雪は抱きつくような勢いで兄の手を取って、歓声を上げた。
「おめでとうございます、お兄様!」
 それは、達也がずっと研究していた魔法だった。
 系統魔法、四系統八種の最初に挙げられる「加速・加重」系統。
 それは単純なサイコキネシスから発展した、現代魔法では最も基本的とされる系統魔法だ。
 だが、加速・加重系統により理論的に実現可能な飛行術式、常駐型重力制御魔法は、その可能性が現代魔法学確立の初期から提唱されているにもかかわらず、公式に発表されている限りにおいて、今日まで実現していない。
 飛行術式は、理論的には可能でも実行は不可能に近いというのが現代魔法学のコンセンサスだった。
 しかし今、深雪の目の前で、現代魔法学の定説がまた一つ、覆された。
「お兄様はまたしても、不可能を可能にされました!
 わたしはこの歴史的快挙の証人になれたことを、この快挙を成し遂げたお兄様の妹であることを、誇りに思います!」
 今にも抱きつかんばかりに彼の右手を握り締める妹の両手を、達也は優しく左手で包み込んだ。
「ありがとう、深雪。
 空を飛ぶこと自体が目的ではなかったし、古式魔法では既に実現している飛行術式だが、これでまた一歩、目標に近づくことが出来たよ」
「古式魔法の飛行術式など、事実上BS魔法師にしか使えない、属人的な異能ではありませんか。
 お兄様の飛行術式は、理論的に必要な魔法力を充たしていれば、誰にでも使えるのでしょう?」
 

【宇宙飛行士バカにすんなよ!】

文庫3巻(Web 第2章) p135
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は、レイシストが賞賛されるクソアニメ59の261 で初出
 
 その途端、重力の束縛が消えた。
 五感から自重という情報が消えて、自分の身体が無くなってしまったような錯覚が、軽いパニックをもたらす。
 しかし、それ以上の快感が深雪の心を満たした。
 空を飛ぶとは、これほどの解放感をもたらすものなのか。
 これと同じ快感を得てきたであろう宇宙飛行士に嫉妬しそうだった。
 同時に、狭い船内やゴテゴテとした宇宙服を着なければこの快感を味わうことの出来ない彼らに、憐れみを覚えた。
 こんな地下室ではなく、大空を自由に飛んでみたい、と深雪は思った。
 

【御曹司…?】

文庫3巻(Web 第2章) p139
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は御曹司(ソンシ)が点呼を取って褒められる糞アニメ56の282 で初出
 
「あっ、御曹司!」
 全員がそうして忙しく働いているにも拘らず、観測室に入った達也はすぐに声を掛けられた。
 珍しいことに――多分、この場所以外ではないことだが――注目を集め敬意を以って迎えられているのは、深雪ではなく、達也。
 御曹司という呼び方は当初、彼がオーナーの息子のコネでここに出入りしていることを揶揄するものだったが、今では次期リーダーに対する尊称として使用されている。
 達也としては、恥ずかしいから止めて欲しい呼称だったが、彼らが今では好意からそう呼んでいることも理解できるので、彼の方から妥協しているのだった。
 

【シバさん感情ないんですよね?】

文庫3巻(Web 第2章) p156
FLT社内にて「御曹司」「飛行魔法」シーンの後、序列4位()執事の青木を顔真っ赤にして論破した後の
尊師独白
実際のところ尊師(左遷生)感情も欲求も有りまくり。感情薄い()なんて全く描写できてないから酷いなんてもんじゃない。中の人だって、「達也のことが分かりません!」  だったのも頷ける
  
「達也、止めなさい」
 絶句し、硬直した青木を庇い、達也を制止したのは、それまで無言を続けていた彼の父親、司波龍郎だった。
「お母さんを悪く言うものではない」
 しかし、その言葉は全く的を外れた頓珍漢なもの。
 ただ、本家のご機嫌を損なわない為の、保身の台詞。
 この会社は四葉家が正体を隠して出資し設立したものであり、亡き妻の持ち株を相続して最大株主になったとはいえ、
 実質的な支配権は未だ四葉家に握られているのだから、卑屈になる気持ちも分からないではないのだが……
達也は思わず、失笑を漏らしそうになった。
「達也、お前がお母さんを恨む気持ちも解らないではないが……」
 そして、彼のそんな表情すら、この父親には見えていない。
 ここは早く別れた方が、お互いの精神衛生の為だ、と達也は心の底から思った。
 だがその前に、一言だけ付け加えておく必要を感じた。
「親父、それは勘違いだ。俺は母さんを恨んでなどいない」
「そ、そうか」
 付け加えるのは一言だけ。
 口にしなかった台詞は、敢えて聞かせる必要のないものだ。
 彼の心に「恨む」という機能は残っていない。
 強い怒り、強い悲しみ、強い嫉妬、怨恨、憎悪、過剰な食欲、過剰な性欲、過剰な睡眠欲、
そして……恋愛感情。
 彼は、怒りに我を忘れることがない。
 悲嘆に暮れることがない。
 嫉妬に胸を焦がすことがない。
 恨みを持たず、憎しみを持たない。
 異性に心を奪われることがない。
 食欲はあれど、暴食の欲求は生じない。
 性欲はあれど、淫楽の欲求は生じない。
 睡眠欲はあれど、惰眠の欲求は生じない
情も欲も、その最も強い部分は、世界中で彼の母親だけが使えた特殊な魔法によって、
彼の心から抹消されてしまっている。
 彼は母親を恨んでなどいない。
 怒ってもいない。
 彼は本気で怒ることが|出来ない《・・・・》し、本気で恨むことが|出来ない《・・・・》のだから。
 彼に残された唯一の強い感情は、四葉一族の中で彼に課せられた義務に伴い、意図的に残された一つの
情念だけだった。
 無論それは、この父親に対する肉親の情などではなく。
 達也は、すすり泣く深雪の肩を抱いたまま、別れも告げずその場を後にした。
 

【名家の私用は公的行事よりも優先、偉い人に待たされたらひたすら我慢だ】

文庫3巻(Web 第2章) p192
 
真由美が遅刻したのは、寝坊したとか時間を間違えたとかそういう無責任な理由によるものではなかった。
 急遽、家の事情で遅れるという電話があったのは、今から三時間前。
 その時の電話口で真由美は、現地で合流するので出発しておいて欲しいと言っていたのだが、三年生全員の意見が彼女を待つということで一致したので、真由美も大急ぎで合流したという次第だった。
 彼女は七草家の跡取り、という訳ではない。
 彼女の上には二人の兄がいる。
 十師族直系といっても、まだ高校生の、三番目の妹にまで家の仕事が回ってくるものではない。少なくとも、頻繁に起こることではないだろう。
 それが、学校の公式行事に絡んだ、当日の朝になって、急に呼びつけられるというのは余程の用だったに違いないのだ。
 真由美にとっては、他の生徒が先に出発していてくれた方が、おそらくは急かされることもなく、都合が良かったことだろう。
 だが彼らが――と言っても達也は内心反対だったのだが――待っていると言い出したが為に、真由美は無理をして駆けつけたのである。
 一時間や二時間程度の遅刻を責める気持ちには、達也はなれなかった
 

【なかでき はここから生まれた】

文庫3巻(Web 第2章) p209
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は糞アニメだということはオフレコで頼む28の239 から徐々に
真由美を待ち続けたバス点呼のシーン直後、移動中のバスでの会話 
 
「……まったく、誰が遅れて来るのか分かってるんだから、わざわざ外で待つ必要なんて無い
はずなのに……。何故お兄様がそんなお辛い思いを……」
 遂にブツブツ声に出して愚痴り始めた深雪は、ハッキリ言って怖さ倍増だった。
 ほのかは、逃げ出したかった。
 せめて雫に、席を替わって欲しかった。
 だがこの状況で席を替わったりしたら、深雪に何をされるだろうか?
 ――いや、深雪はその程度のことで友人に何かをするような少女ではないのだが、彼女が身
に纏わせている不穏な空気は、そんな妄想すら抱かせるレベルのものだったのだ。(ちなみに
雫の隣に座っている一年生女子生徒は小さくなって窓の外へ視線を固定していた)
「……しかも機材で狭くなった作業車で移動だなんて……せめて移動の間くらい、ゆっくりと
お休みになっていただきたかったのに……」
 怯えているほのかを見て、雫はため息をついた。
 深雪の独り言に、「わたしの隣で」が抜けてるよ、と彼女は思ったのだが(つまり雫の脳内
では、深雪の独り言は「わたしの隣でゆっくりとお休みに」と変換されていた)、口にしたの
は別の台詞だった。
「でも深雪、そこがお兄さんの立派なところだと思うよ」
 話し掛けるついでに、乗り出すようにしてほのかと席を替わる。
 背後で拝んでいるほのかの姿は、背中を向けている雫はもちろん、深雪の目にも留まらなか
った。
 独り言を聞かれていたとは思っていなかった深雪は、とっさに反応できない。
 雫はそこへ、すかさず、普段の口数の少なさが嘘のように畳み掛けた。
「バスの中で待っていても文句を言うような人は、多分ここにはいない。でもお兄さんは『選
手の乗車を確認する』という仕事を誠実に果たしたんだよ。確かに出欠確認なんてどうでもい
い雑用だけど、そんなつまらない仕事でも、手を抜かず、思いがけないトラブルにも拘わらず
当たり前のようにやり遂げるなんて、できることじゃない。深雪のお兄さんって、本当に
素敵な人だね」
 こういう歯の浮くような台詞を赤面もせずに言えるのは雫のキャラクターよねぇ、と思っ
たのはほのかだ。
 深雪は雫の、大真面目な表情から繰り出された大袈裟な賛辞に、虚を衝かれたのか目を見開
いて絶句している。
「……そうね、本当にお兄様って、変なところでお人好しなんだから」
 辛うじて照れ隠しで応じた深雪から、底冷えのする威圧感は消え去っていた。
 ほのかは雫の背中に隠れて、ガッツポーズを取っていた。
 
※アニメ版の雫の台詞
「バスの中で待っていても誰も文句言わないのに
 “選手の乗車を確認する”という仕事を誠実に果たしたんだよ」
「つまらない仕事でも手を抜かずに当たり前のようにやり遂げるなんてなかなか出来ないよ」
 

【車をぶつける為の魔法三段活用 パンク、スピン、斜め上にジャンプ! なんて高度な魔法なんだ(棒)】

文庫3巻(Web 第2章) p233
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はウィード生えすぎてシバが出来ちゃう糞アニメ26の245 が文章は初出?
 
「最小の出力で瞬間的に行使されている。魔法式の残留サイオンも検出されない高度な技術だ。専門の訓練を積んだ秘密工作員なんだろうな。
 使い捨てにするには惜しい腕だ」
「使い捨て……ですか?」
 その単語の不吉な響きに、深雪の声が、本人の意図する以上に小さくなった。
「魔法が使われたのは三回。
 最初はタイヤをパンクさせる魔法
 二回目が車体をスピンさせる魔法
 そして三回目が車体に斜め上方の力を加えて、ガード壁をジャンプ台代わりに跳び上がらせる魔法
 何れも、車内から放たれている。おそらく、魔法が使用された事を隠す為だろう。
 現に、お前も含めてあれだけ大勢の優秀な魔法師がいたのに、誰も気が付かなかった。
 俺にも分からなかった。
 全く、見事なものだ。
 特に最後の術式は、スピンする車内で振り回されながら、衝突の瞬間を正確に捉えた訳だからな。
 並大抵の錬度じゃない」
「では、魔法を使ったのは……」
「犯人の魔法師は運転手。
 つまり、自爆攻撃だよ」
 足を止めて、俯く深雪。
 その肩が微かに震えていた。
「卑劣な……!」
 それは、哀しみ故ではなく、怒りの発露。
 妹が、犯罪者に対する誤った同情に溺れるのではなく、それを命じた者の遣り口に憤りを示したのを見て、達也は満足げに頷いた。
 

【「もう一度、あえて言おう。お前は阿呆だ」と言ってる芝さんの話が阿呆にしか思えない】

文庫3巻(Web 第2章) p298
 
「ブラインドポジションから、複数の標的に対して正確な遠隔攻撃。
 捕獲を目的とした攻撃で、相手に致命傷を与えることなく、一撃で無力化している。
 ベストの戦果だな」
 達也の口調は冷徹と言い換えてもいいくらい冷静で、お世辞や慰めを掛けているのでは無いと聞いているだけで分かった。
 幹比古が信じられないのは達也ではなく、自分自身だった。
「……でも僕の魔法は、本来ならば間に合っていなかった。達也の援護が無かったら、僕は撃たれていた」
「アホか」
「……えっ?」
「援護が無かったら、というのは仮定に過ぎない。
 お前の魔法によって賊の捕獲に成功した、これが唯一の事実だ」
「…………」
 達也の、容赦の無い罵声と容赦の無い指摘に、幹比古はすっかり面食らっていた。
「現実に俺の援護があって、現実にお前の魔法は間に合った。
 本来ならば?
 幹比古、お前は一体、何を本来の姿と思っているんだ?」
「それは……」
「相手が何人いても、どんな手練《てだれ》が相手でも、誰の援護も必要とせず、勝利することが出来る。
 まさかそんなものを基準にしているんじゃないだろうな?」
 心臓がひっくり返ったような衝撃を幹比古は感じていた。
 達也の口にした「基準」が余りに馬鹿げたものであることは、彼にも理解できる。
 だが自分は心の奥底で、達也の指摘と似たようなことを、確かに考えていなかっただろうか?
「やれやれ……もう一度、敢えて言おう。
 幹比古、お前は阿呆だ」
 

【これで物理法則を欺ける?熱力学を舐めた劣等生魔法】

文庫3巻(Web 第2章) p315
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は引き金一つで簡単に出来る糞アニメ84の348 で初出
 
「魔法はエネルギー保存法則に縛られず、現象を改変する技術だ。
だが改変される側の対象物まで、エネルギー保存法則から自由になっている訳じゃない。
例えば、状態維持の式を組み込まずに物体を加速した場合、加速された物体は冷却される。
運動維持の式を組み込まずに運動中の物体を加熱すれば、その物体の運動速度は低下する。
通常の魔法式には、改変を意図しない要素について現状を維持する式が必ず組み込まれているから意識する機会は少ないがな。
物理法則ってヤツは結構強固なもので、魔法という|理不尽な《・・・・》力の干渉を受けても、何とか辻褄を合わせようとする復元力が働くんだよ。
だから、逆に言えば、物理法則にとってはエネルギー保存法則を破らないように組まれた魔法の方が|自然な《・・・》現象で、魔法の面から見れば、少ない干渉力で実行可能な魔法となるんだ。
もう分かるだろ?
ドライアイスを作ってそれを加速するという魔法は、ドライアイス形成過程で奪い取った分子運動エネルギーを、固体運動エネルギーに変換するというスキームで物理法則を欺いている。
エントロピーを逆転させる、自然には絶対にあり得ない現象なんだが、ドライアイスを加速させることで、ただ単にドライアイスを作るより、熱力学的には辻褄が合ってるんだ」
 

【どう考えてもサイオン量は必要でしょう。なぜ評価項目から外れているのか?さすおにの為?】

文庫3巻(Web 第2章) p364
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はクリプリをCパートに追い込みメンツを潰す陰湿糞アニメ94の756 で初出
 
「お疲れ様でした」

~中略~

「お疲れ様でしたって、まだ試合は終わってないわよ。
 気を抜いちゃダメ」
 達也はチームの一員ではあるが、選手ではない。
 彼の出番は試合が始まる前と試合が終わってからで、試合中は傍観者に過ぎないのだから「気を抜くな」というのはおかしな台詞なのだが、達也はその点に気づきながら敢えて指摘はしなかった。
「いえ、もう終わりでしょう」
「えっ?」
 その代わり、現状においてもっと有意義な指摘を選んだ。
「相手選手に試合を続ける余力はありません。
 このまま次のセットに入っても、途中で力尽きることは明白です。
 向こうのスタッフにも分かっているはずだ。
 この試合は、向こうが棄権して終わりです」
 真由美がコートの方を振り返ってみると、果たして相手チームの作戦スタッフが審判団と何事か話をしている。
 相手選手は、ベンチに座り込んで腕にメディカルチェッカーを巻いていた。
「魔法の連続発動によるサイオンの枯渇です。
 ペース配分を誤ったのでしょう。
 会長の試合相手を務めるには、少々役者不足でしたね」
「……見ているだけで、そこまで分かるものなの……?」
「キチンと|視て《・・》いれば、分かるものですよ」
 

【芝さんが救助するまで水路内に放置ですか・・・国防の要って命安いんですね(棒】

文庫3巻(Web 第2章) p415
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はクリプリをCパートに追い込みメンツを潰す陰湿糞アニメ94の713 で初出
 
「仕方が無いわ。
 摩利、貴女の判断は間違っていなかったの。
 あそこで貴女が加速を止めなければ、間一髪で衝突は回避できたでしょう。
 決勝にも進めたと思う。
 でも……七高の選手は大怪我をして、多分、魔法師生命を絶たれていたと思うわ。
 それほど危険な突っ込み方だった。
 これは達也くんも同意見ね」
「……おい、そこで何故、アイツの名前が出て来るんだ?」
「貴女を此処に運んで来て、治療に付き添っていたのは彼だから」
「なに?」
「もちろん、達也くん一人に任せた訳じゃないけど。
 ……ビックリした?」
 にんまりと笑った真由美から、苦虫を噛み潰した表情で摩利は顔を背けた。
 自分がホッとしていることを自覚できるだけに、真由美の笑顔が忌々しかった。
「女の子の着替えを男の子に見せるはず無いじゃない。
 治療中はちゃんと廊下で待っていたそうよ。
 でも、後でお礼は言っておいた方がいいわね。
 救護班と同じくらい真っ先に駆けつけて、水路から引き上げるのを手伝ってくれたし、骨折してるって一目で見抜いて応急措置を指示したのも達也くんだから」

【目潰しを決めろ!卑怯者が優遇される体育大会】

文庫4巻(Web 第2章) p72
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は、レイシストが賞賛されるクソアニメ59の734 で初出?
 
新人戦女子バトル・ボード、スタートの直後。
 観客はほぼ反射的に、揃って、水路から目を背けた。
 まるでフラッシュでも焚いた様に、水面が眩く発光したのだ。
 選手が一人、落水した。
 他の選手がバランスを崩し、加速を中断する中、一人ダッシュを決めた選手が先頭へ躍り出た。
 これある事を予期していたが如く――と言うか張本人なのだが――濃い色のゴーグルを着けた選手、つまりほのかだ。
「よし!」
 してやったり、と声を上げた達也の横顔を、あずさは呆気に取られて見上げていた。
「……これがお兄様の作戦ですか?」
 サングラスを外しながら問い掛ける深雪の声も、流石に呆れ声だった。(ちなみにサングラスは、スタート前に達也から三人に配られていた物だ。深雪たちは訳が分からぬまま、達也の指示に従って掛けているだけだった)
「……確かに、ルールには違反していないけど……」
 雫の声も、幾分非難混じり。
 これはフェアプレーの精神に反していると言われても仕方が無い、と感じているのだろう。
 しかし、著しくアンフェアなプレーがあった場合に示されるイエローフラッグ、競技中断の旗は振られていない。ルール違反選手の失格を示すレッドフラッグは言うまでも無い。
 大会委員は、ほのかの魔法を、達也の作戦を合法的と認めた、ということだ。
「……水面に光学系魔法を仕掛けるなんて、思ってもみませんでした」
 どこまでも素直な性格なのか、あずさが感嘆と共に呟いた。
「水面に干渉と言われると、波を起こしたりとか渦を作ったりとか、水面の挙動にばかり意識が向きがちですが、ルールで許可されているのはあくまでも『魔法で水面に干渉して他の選手を妨害すること』ですからね。
 水面を沸騰させるとか全面的に凍結させるとかは流石に危険過ぎますけど、目眩まし程度のことは今まで使われなかった方が不思議だと、俺は思っていますが」
 何の心構えも無く目潰しを喰らわされて、すぐに視力を回復できるものでもない。
 緩やかにではあっても蛇行しているコースは、視界を塞がれた状態で全力疾走できるものでもなく、ほのかと他の選手の間には既に決定的とも言えるだけの差がついていた。
 

【目潰し後のこんな作戦が正攻法だと・・・。ところでサングラス使った事はありますか(小声】

文庫4巻(Web 第2章) p137
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は一番人気でノーベットオワコンな糞アニメ90の627 で初出
 
「司波君の作戦は単純なものですよ。
 光波振動系で、水路に明暗を作る。
 ただでさえ濃い色のゴーグルで視界が暗くなっているのです。
 明るい面と暗い面の境目で水路が終わっていると錯覚して、相手選手は暗い面に入らないようにする……つまり、相手選手にコースを狭く使わせているのです」
 男子ピラーズ・ブレイクの観戦に行った克人の代わりに本部へ詰めている服部と、彼について来た桐原は、食い入る様な表情で鈴音の解説に耳を傾けていた。
「本当はもっと広いはずだと頭で分かっていても、目から入ってくる情報に逆らうことは困難です。
 そしてどんな選手でも、狭いコースでは広いコースよりスピードが出せません。
 相手選手に、その実力を発揮させない。
 戦術の基本ですね」
「……しかし、光井さん自身は影響を受けないのですか?」
「その為の練習を積んでいますから」
 服部の質問に対する回答は、実にシンプルなものだった。
「……普通なら、術者本人は影響を受けない、って安心しちまうものだと思いますがね?」
「安心できなかったんでしょうね。
 コースの幅は決まっているんだから、目に頼らず身体で覚えろ、と司波君は言っていました」
 鈴音の回答に、桐原は唸り声を上げた。
「……奇策に見えて、実は正攻法という訳かい……性格が悪いだけじゃねえんだな」
 桐原の漏らした感想に、鈴音は声を上げて笑った。
 

【自分(芝)は公平で悪くねえ とサブキャラに言わせる自己称賛っぷり】

文庫4巻(Web 第2章) p154
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は2クール放送して他作品が出る芽を潰す糞アニメ89の729 で初出
 
「雫には悪いことをしたな」
「えっ?」
 何の事だが分からない、という表情で、雫は達也の顔を見返した。
「勝敗はともかく、本来ならもっと拮抗した試合になったはずなんだが……俺の判断が甘かった。
 たった二週間で『フォノン・メーザー』をものにするのは、流石に無理があったと思う」
「あっ、そのこと……ううん、達也さんは全然悪くないよ。
 そもそもアレがなかったら、反撃の手段すらなかったんだし」
 達也が何について謝っているのかを理解して、雫は勢い良く|頭《かぶり》を振った。
「マスターできなかったのは私の所為。
 私の方こそゴメンナサイ。アレを使いこなせていれば、もっと良い試合が出来たのに……
深雪にも、歯応えが無い相手で申し訳無かったって思ってる」
「そんなことないわ。
 本当にビックリしたのよ、あの時は……
いきなりあんな高等魔法が、複数CADの同時操作なんていうオマケ付きで出て来るんだもの」
 雫に向かって笑顔で首を(横に)振って見せた深雪は、そのあと冗談っぽく、達也を睨みつけた。
「お兄様、あれは本気で、わたしを負かすおつもりでしたね?」
 何とも答え難い質問で、達也もすぐには回答できなかった。
「…………俺は二人のどちらにも、最善を尽くしただけだよ」
 結局、そういう建前論しか捻り出せなかったが。
 建前と言っても決して嘘はついていない、とは分かっている。
 分かってはいるが、深雪にとってそれは、本音の部分で満足できる答えではなかった。
「もう……この人は妹が可愛くないのかしら」
「手を抜いたりしたらそれこそ本気で怒るだろうに」
 友人に対して兄のことを愚痴るという、世間的には当たり前でも深雪の場合極めて珍しい姿は、反論した達也ばかりでなく、ほのかと雫の笑いも誘った。
 

【差別止めるってんならワッペンくらい全学生に配れよ。そしてwwさん、どんな体の構造してるんですか?】

文庫4巻(Web 第2章) p241
 
技術スタッフは裏方ではあるが、競技場内で活動する正規のメンバーとして、パーティーに出席しなければならない。
パーティーとかレセプションとかの類いを苦手としている達也は、内心、真由美の意見に賛成だった。
パーティーのドレスコードは各学校の制服。
着る物にあれこれ悩まなくていいのはありがたいのだが、借り物のブレザーはどうも身体にしっくり来なくて、パーティーに対するネガティブな気分を増幅していた。
「やはり、新調された方が良かったのでは……?」
小さく身体を揺すっていたのに気付いたのだろう。
深雪が眉を曇らせて達也の顔を見上げていた。
「いや、大丈夫だ。すまないな、気を遣わせて」

~中略~

「サイズは合ってたようだな」
「少し窮屈ですけどね」
「それは仕方がない。肥満体型は想定してても、筋肉の発達で幅が足りないというのは貸衣裳の想定外だ。
それ以上大きなサイズにすると胴回りが余ってみっともないからな」
「そうですね。仕方がありません」
「新調すれば良かったんじゃないか?」
「二回しか着ないブレザーを新調するのは、もったいなさ過ぎますよ。
ワッペンなら取り外して着るという選択肢もあったでしょうけど、刺繍ですからね、これは……」
そう言いながら、達也は少し忌々しげに自分の左胸を見下ろした。
そこには八枚花弁のエンブレムが縫い付けられている。
他校の生徒との親睦会に、校章が無いと分かり難い、と言われて無理矢理着せられたものだ。
 

【エリカスも酷いが任務放り出して女の所へ来たお前が説教するな!3Mさんよぉ】

文庫4巻(Web 第2章) p257
 
「兄上は来週まで、タイへ剣術指南の為のご出張のはずです!
 何故ここにいらっしゃるのですか!」
 エリカはすっかり、頭に血が上っているようだ。
 いつも他人や世の中を何処か斜に構えて傍観しているような風情のある彼女には、本当に珍しいことだった。
「エリカ……少し落ち着いて」
「これが落ち着いておられましょうか!
 |和兄上《かずあにうえ》ならばいざ知らず、次兄上がお務めを放り投げるなど、昔であれば考えられませんでした!」
「いや、だから落ち着いて……僕は仕事を放り投げてきたわけではなくてね……」
 青年――千葉修次は、その武名に似合わず気が弱いというか、気性が優しい青年のようで、公衆の面前で収まる気配のない妹の昂奮を前に、窘めるでなく、言い訳しか出来ずにいた。
「ほぅ……そうですか。
 では、タイ王室魔法師団の剣術指南協力の件は、|私《わたくし》の思い違いだと仰るのですね?」
「いや、それはエリカの言う通りなんだけど……無断で帰国したわけではなくて、ちゃんと許可はもらったというか……」
「そうですか。日本とタイの外交にも関わる大事なお務めを中断しなければならなかったのですから、さぞや重要なご用事なのでしょう。
 その大切な大切な緊急のご用事で帰国された兄上が、何故高校生の競技会の会場になどいらっしゃるのです?」

~中略~

「いや、外交ってそんな、大袈裟な……士官学校の候補生同士の親善交流で、大学生の部活の一環みたいなものなんだけど……」
「兄上っ!」
「はいっ」
「学生レベルの親善であろうと部活であろうと、正式に拝命した任務ではありませんか!
 疎かにしていい理由などございませんっ!」
「はいっ、仰るとおりです!」
 世界で十本の指に入る猛者、の意外な姿に、達也は驚きを禁じ得なかった。

~中略~

「兄上、まさかとは思いますが、この女に会う為に、お務めを投げ出したのではないでしょうね?」
「いや、だから投げ出したのでは……」
「そのようなことはお訊きしていませんっ」
 兄の言い訳をピシャリと遮ると、今まで(おそらく、意識的に)無視していた摩利を一度、ジロリと見て、エリカは修次に視線を戻した。
「全く、嘆かわしい……
 千葉の麒麟児ともあろう兄上が、こんな女の為にお務めを疎かにされるなんて……」

~中略~

「技を磨く為には常に新たな技術を取り入れ続ける必要がある。
 僕がそう考えて、そうしたのだ。
 摩利は関係ない。
 今回のことも、摩利が怪我をしたと聞いて、僕がいてもたってもいられなくなっただけだ。
 摩利は来なくても良いと言ってくれたんだぞ。
 それでなくとも先刻からの礼を失する言動の数々、千葉の娘として恥を知るのはお前の方だ」
 

【かませクリプリ最大の見せ場!指パッチンでKOされる】

文庫4巻(Web 第2章) p313
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は糞アニメだからニブルヘイムで39サク氷漬けもO.K.の404 が初出
 
吉祥寺へ将輝の注意が逸れた一瞬で、達也は彼我の距離を五メートルまで詰めていた。
 達也の体術を以ってすれば、一投足の間合い。
 一投足を必要とする、間合い。
 将輝の顔に、紛れも無い動揺が走った。
 恐慌に似た、動揺。
 それは、あるいは、実戦を経験した兵士が持つ、脅威に対する直感か。
 ランクCの限度を超えた十六連発の圧縮空気弾が、達也へ向けて殺到した。
 
 対抗魔法・術式解体は、サイオンの圧縮弾で強引に魔法式を消去する技術。
 強引であるが故に、極めて効率の悪い術式。
 余り知られていないことだが、魔法式にも強度がある。
 干渉力の強い魔法式とは、その構造を維持しようとする力が強いサイオン情報体でもあるのだ。
 将輝ほどの術者が作り出す魔法式を、技術的に分解するのではなく力ずくで消去する為には、達也にとっても大量の、並みの魔法師では一日掛けても搾り出せない程のサイオンを圧縮する必要がある。
 それが一瞬で、十六連発。
 術式解体では間に合わない、と瞬時に判断しながら尚、達也は『分解』を選択しない。
 情報構造体を『分解』する『術式解散』を隠したまま、『術式解体』で迎撃する。
 その結果、それはある意味、必然か。
 迎撃は十四発までしか間に合わず、達也は最後の二発の直撃を受けた。
 
 自分の足元に沈む達也の姿を見て、将輝は「しまった」と臍を噛んだ。
 自分が衝動的な危機感に駆られて、ルールを逸脱した出力で魔法を放ってしまったということを、彼は魔法発動直後に自覚していた。
 一瞬のことだ。
 もしかしたら、審判は気付かなかったかもしれない。
 レッドフラッグは挙がっていない、が、自分が失格に該当する反則を犯してしまったと、彼自身が知っていた。
 その自覚が、彼の時間を奪う。
 それは、取り返しのつかない、一瞬の空白となった。
 
〔肋骨骨折 肝臓血管損傷 出血多量を予測〕
〔戦闘力低下 許容レベルを突破〕
〔自己修復術式:オートスタート〕
〔魔法式:ロード〕
〔コア・エイドス・データ:バックアップよりリード〕
〔修復:開始……完了〕
 それは彼の意識より速く走り、彼が意識するより早く完了した。
 無意識領域の処理速度は、意識領域の処理速度を大きく凌駕する。
 自分が倒された、と彼が意識した時には既に、肉体の修復は完了していた。
 手の届く距離に、立ち尽くした足元。
 何故将輝がそのような隙だらけの状態で硬直しているのか、達也は知らない。
 今は、知る必要が無い。
 そんな余計なことを考える前に、彼の身体は跳ね上がっていた。
 右足を踏み込み、不意を衝かれ強張った顔面目掛けて、右腕を突き出す。
 反射的に傾けた首の横を、傾けた以上の距離で、達也の右手が奔り抜ける。
 最初から当たらない軌道で放たれた右手の突きが将輝の耳元を通り過ぎた瞬間、
 音響手榴弾に匹敵する破裂音が、達也の右手から放たれた。
 その轟音に、スタンドが静まり返った。
 戦闘中の吉祥寺ですら、振り返り、動きを止めた。
 達也の右手は、親指と人差し指の指先を付け、親指と中指を交差させた形で突き出されている。
 選手と審判と観客と応援団と、この場に集う全員が見つめる中で、将輝が地面に崩れ落ち、達也はガックリと膝をついた。
 

【魔法で戦う危険な競技大会。高度な危機管理が求められる中、審判は目視するだけ。】

文庫4巻(Web 第2章) p314
 
自分の足元に沈む達也の姿を見て、将輝は「しまった」と臍を噛んだ。
 自分が衝動的な危機感に駆られて、ルールを逸脱した出力で魔法を放ってしまったということを、彼は魔法発動直後に自覚していた。
 一瞬のことだ。
 もしかしたら、審判は気付かなかったかもしれない。
 レッドフラッグは挙がっていない、が、自分が失格に該当する反則を犯してしまったと、彼自身が知っていた。
 その自覚が、彼の時間を奪う。
 それは、取り返しのつかない、一瞬の空白となった。
 

【外国人はみんなバカ・中国マフィア編】

文庫4巻(Web 第2章) p337
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は手出しすると痛い思いをする糞アニメ35の782 で初出
 
しかしその一方で、この同じ夜、一睡も出来ないほど追い詰められていた者たちもいた。
「第一高校の優勝は最早確定的だ…」
「馬鹿な!諦めると言うのか?それは座して死を待つということだぞ!」
「このまま一高が優勝した場合、我々の負け分は一億ドルを超える。ステイツドルで、だ」
「これだけの損失、楽には死ねんぞ?ただでさえ今回の企画は負けた場合の金額が大きすぎて
本部が渋っていたのを、我々が無理に通したものだからな。良くて生殺しの『ジェネレーター』
適性が無ければ『ブースター』として死んだ後まで組織に搾り取られることになる」
テーブルを囲んだ男たちは、おぞましいものを見る目で、部屋の四隅にボンヤリと立ち尽くす
四人の男を順番に窺がい見た。
「この企画がなければ今期のノルマを達成できなかったとはいえ……少し強引過ぎたか」
「そんなことを言っている場合ではなかろう!……こうなっては最早、手段を選んでいる場合ではない」
「そうとも!最初から本命に負けてもらう予定で色々と手間を掛けたのだ。多少手荒な真似
になっても今更躊躇う理由はない。客に疑いを持たれたところで、証拠を残さなければ何とでも
言い訳は立つ。この際、徹底的にやるべきだ」
「協力者に使いを出そう。明日のミラージ・バットでは、一高選手の全員に途中で棄権してもらう。
―強制的にな」
「運が良ければ死ぬことはあるまい。さもなくば、運が悪かったというだけだ」
狂気を孕んだ含み笑いが、同意の印に投げ交わされた。
 

【どれだけ社会の評価が糞だって…あっ社会的評価に固執したのは(察し】

文庫4巻(Web 第2章) p362
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は一番人気でノーベットオワコンな糞アニメ90の356 で初出
 
 達也が二科生であり「劣等生」であるというのは、紛れも無い事実だ。
 彼の実技成績は、ギリギリで赤点を取っていないというレベルのもの。
 入学直後の実技試験で赤点を取る生徒は毎年五人以下だから、彼の成績は「良くない」ではなく「悪い」と評価されても仕方の無いものだ。
 だが現実は――テストという作られた状況下における「実力」ではなく、魔法師が現実に直面する諸状況への対応能力で見たならば、その評価は、まるで逆。
 開発においても、分析においても、調整作業においても、
 そして、戦闘においても。
 彼の力量は「超」が付く位、一流だ。
 魔法という能力だけを切り取って評価するのではなく、魔法が活用されているシーンで評価するならば、彼はトップクラスの「優等生」だと言える。
 ならば――
(わたしたちの「成績」って……「一科生」って、なに? 「一科生」と「二科生」の区別に意味なんてあるの?)
 

【あまりにくだらない教育上差別誕生の理由】

文庫4巻(Web版第2章) p367
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は、レイシストが賞賛されるクソアニメ59の161,235 で初出?
 
「やっぱり、制服がいけないのかしら……
 最初は単に、生徒数を増やす際に、刺繍が間に合わなかったってだけなのにねぇ……」
「えっ、そうなんですか!?」
「あれっ? 知らなかった?」
 初めて聞いた裏話に、さっきとはまた別の衝撃を受けて、あずさは絶句したまま、「そっかぁ、余り知られてないんだね……」と呟く真由美に、ただカクカクと首を縦に振った。
「昔は一高も一学年百人だったのは知ってる?
 外国に伍していく為には魔法師の数を増やさなければならない、ってことで、まず一高の定員が増やされたんだけど、当時の政府は焦ってたんでしょうね。
 新年度から増員すれば良かったものを、年度途中から追加募集を掛けちゃったの。
 でも年度途中から、いきなり教師の数を増やすことは出来ない。
 当時の魔法教育者の人材不足は、今以上に深刻だったから。
 それで苦肉の策として考え出されたのが、途中編入の一年生は進級まで集中的に理論を教えて、実技は二年になってから、という二科生制度。
 ところが、いざ二科生を入学させるという段になって、学校が制服の発注をミスっちゃったのよ。
 その所為で二科生として編入した一年生はエンブレムが無い制服で我慢しなきゃならなかったんだけど、それが思わぬ勘違いを招いちゃってね……
 二科生制度はあくまでも進級までの暫定措置で、二科生は定員増加によって追加募集された生徒に過ぎなかったんだけど、それが補欠と見做されるようになってしまった。
 そして、無理な増員計画に見合う教師が結局は確保できずに、誤解に過ぎなかった『補欠扱い』が追認されてしまったのが、今の二科生制度。
 制服も、この泥縄な追認を取り繕うように、最初から計画通りだったかの如くずっと放置されてる、っていうのが真相よ。
 考えてみれば、制服を二種類作るのも無駄なのよね……どうせ縫製まで一貫自動加工なんだから、一度に作っちゃえばサイズ違いでも同じデザインの方がコストも安いし」
 開いた口が塞がらない。
 それが、あずさの正直な感想だった。
 校内に度々陰湿で深刻な対立を招いて来た「ブルーム」と「ウィード」の由来が、そんなにくだらないものだったとは。
 

【ロボコンの優秀校プログラム配布なら普通、大会存続にかかわる問題ですよ?】

文庫4巻(Web 第2章) p394
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は社会的評価への妄執に囚われた糞アニメ60の352 で初出
 
 始まりの合図と共に、六人の少女が一斉に空へ飛び立った。
 跳び上がった、のではない。
 六人全員が、足場へ降りてこなかった。
「飛行魔法!? 他校も!?」
「流石は九校戦。僅か六、七時間で飛行魔法の起動式をものにして来ましたか」
 あずさが裏返った声で叫び、達也が感嘆を口にした。
 とは言うものの、実際には、達也はそれ程驚いていなかった。
 おそらく、大会委員会から各校へ術式がリークされたのだろう。
 不正疑惑の抗議に対する回答、というような形で。
 CADを預けっ放しにしていたから、その可能性は考慮に入れてあった。
「各校ともトーラス・シルバーが公開した術式をそのまま使っているようですね」
「……無茶だわ。あれはぶっつけ本番で使いこなせる術式じゃないのに。
 選手の安全より勝ちを優先するなんて……」
 鈴音が空を見上げ眉を顰めて言うと、真由美が苦々しげに呟いた。
「大丈夫でしょう。
 あの術式をそのまま使っているなら、万一の場合でも『安全装置』が機能するはずです」
 達也の声には「お手並み拝見」と言いたげな余裕があった。
 

【幾重にもセーフティロックが掛けられて当然(掛けるとは言っていない)】

文庫4巻(Web 第2章) p411
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は全員ノーヘッド(無能)な糞アニメ76の30 で初出
 
「(前略) ……そして訂正ですが、将来、ではありません。達也は現在において既に、我が軍の貴重な戦力です。
 こう申しましては身贔屓に聞こえるかもしれませんが、達也と一条将暉では戦力としての格が違います。
 一条将暉は拠点防衛において、単騎で機甲連隊に匹敵する戦力となりましょう。
 しかし達也は、単身で戦略誘導ミサイルに匹敵する戦力です。
 彼の魔法は幾重にもセーフティロックが掛けられていて当然の代物だ。
 その管理責任を彼一人に背負わせることの方が余程、酷というものでしょう」 
 

【横浜中華街はスパイの巣窟だ!これ主人公の意見です】

文庫4巻(Web版第2章) p412
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は、レイシストが賞賛されるクソアニメ59の984 で初出
 
東に横浜港、北に(度重なる日中直接軍事衝突にも関わらず)二十一世紀末の現在においても尚、繁盛を続けている横浜中華街を臨む高台に、二人を乗せた電動車は止まった。
「……敵国の工作員がウジャウジャいるって分かってるのに閉鎖も検問も行わないなんて、政治家は一体何を考えているのかしら」
 中華街を見下ろしながら忌々しげに呟く藤林の隣で、達也は肩をすくめた。
「あの街は本国の圧政から逃れた華僑の、本国に対する主要抵抗拠点の一つ、というのが建前ですから」
「そんなの嘘に決まってるじゃない」
「建前ですから」
「限度というものがあります。
 こっちが勝ったといっても講和条約が締結されていない以上、我が国と大亜連合は三年前から休戦状態にあるだけで、法的には交戦関係が継続中なのに。
 工作活動の拠点になってる、って誰もが分かっていながら、誰もメスを入れようとしないだなんて」
「もしかしたら、その『誰か』は結構な数に上るかもしれませんよ」
 今にも舌打ちしそうな勢いの藤林に、達也は飄々とした口調で答えた。
 そのつまらなさそうな回答に、藤林は目を丸くして達也を凝視した。
「……何か知ってるの?」
「いえ、単なる願望ですよ」
 

夏休み編+1(アニメでは全カットだが、円盤特典に「夏休み山バージョン」がある)

【戦時下にこんな別荘遊びに行ってたらそりゃ批判もされるだろう。知識人批判したいだけとしか思えないが、色々見事なブーメラン】

文庫5巻 (Web 番外編)
p17
最近、小笠原の無人島に別荘を持つのが資産家の間で流行っており、口汚いことが知性の表現と勘違いしている無知な評論家から僻みを込めて「自然破壊の成金趣味」と誹られている。
別荘を建てられるような無人島は無人化した元有人島ばかりであり、人が住まなくなったことによって土地が荒れているのが実態だ。
そこにゼロエミッションを実現している(エネルギー源に太陽光を利用しているからエネルギー面を含めれば完全なゼロエミッションではないが)
高級別荘を建てることは、自然破壊どころか国土の有効利用であって、恥じる必要は全く無いのだが。
ただプライベートビーチ付きの別荘を持てるのは資産家と呼べる富裕層の中でもほんの一握りであり、北山家の実力が垣間見える話だった。

p26
別荘がある聟島列島まで約九百キロ。
実際最高時速百ノットのフレミングシップでおよそ六時間の船旅である。

p28
途中嵐にあうこともなく、波はそこそこ荒かったがスタビライザーと揺動吸収システムのお陰で揺れに苦しめられることも無く、船は無事、別荘のある媒島へ着いた。
この島の珊瑚礁は野生化した山羊が原因で前世紀後半に死滅の憂き目を見ている。
その後、人工的な珊瑚礁回復も図られたが、結局上手く行かず、赤土を浚渫した後の海岸は別荘を建てた民間資本により埠頭と砂浜に作り変えられた。
所謂「知識人」に「自然破壊」と誹られる所以である。
しかし、ここが有人島だった当時は珊瑚礁破壊は起こっていないし、野生化した山羊を駆逐したのも人の手だ。
人間がいるから自然破壊が起こるのか、人間がいなくなったから自然破壊が起こったのか。
ついついそんな、皮肉な思考に沈んで行きそうになったが、現実に今、遊ぶ為にここへ来て埠頭と砂浜を使っている自分が偉そうに批評できることではないな、と達也は思い直した。
 

【ドヤ顔するために傷をわざと残してるんだろ?水着回で女性より描写多いとか、どれだけ自己主張したいんだよ】

文庫5巻(Web 番外編) p32
 
――パーカーの下には、鍛え上げられた鋼の肉体が隠れていた。
筋肉の太さ自体は驚くほどではない。
成人の身体ほどのボリュームは無い。
だが、少年らしさを残しながらも、腹筋も胸筋もみっしりと重く硬く引き締まり、ルネサンス彫刻のような筋が刻まれている。
ただ彫刻と違って、幾つもの傷跡が皮膚に印されていた。
その傷跡を見て、エリカの顔色が変わる。
今までのふざけ半分から一転して、引き締まった顔つきでパーカーを一気に脱がせた。
両腕を掴まれたままでは、袖で引っ掛かって全部は脱げない。
半袖のパーカーは今までとは逆に、肩と上腕を剥き出しにし、前腕を隠した状態で止まった。
肩も腕も、可動性を損なわないように、太くなり過ぎない範囲で鍛え上げられている。
そしてやはり、数々の傷跡が残っている。
一番多いのが切り傷。
同じくらい多くの刺し傷。
所々に細かな火傷の痕。
不思議なことに骨折の痕は見当たらなかったが、それを差し引いても、尋常な育ち方で出来上がる肉体ではない。
普通に鍛錬しただけでは、こうはならない。
単に血の滲む様な鍛錬を積んだ、というだけでは、こういう風にはならない。
実際に斬られ、刺され、焼かれて、血を流しながら拷問のような、あるいは拷問そのものの鍛錬を積んで、はじめて、こういう身体になる。
長兄の身体と次兄の身体の違いを記憶の淵から呼び出して、エリカはそう思った。
「達也くん……貴方、一体……」
「やれやれ。そういう顔をされるから、脱ぎたくなかったんだがなぁ」
頭を掻きたいところだったが、未だ両腕を拘束されたままの達也は、口調だけで困惑を表現した。

>ちなみに女性陣の水着描写は、全員分合わせてもwwさん以下

――それにしても、眩しい。
何が眩しいかというと、波打ち際で戯れる少女たちの水着姿が、である。
まず目を惹くのが、派手な原色チェックのワンピースを着たエリカ。
余計な飾りが無いシンプルなデザインは、彼女のスレンダーなプロポーションを更に引き立たせている。
その隣で手を振る深雪は、大きな花のデザインがプリントされたワンピース。
日に日に女性らしさを増して行くプロポーションを派手な絵柄が視覚的に暈ぼかし、生々しさの希薄な、妖精的な魅力を強調している。
意外だったのが美月。
細かな水玉模様のセパレート。
ビキニというほど露出は無いが、胸元の深いカットに豊かな胸が強調されて、いつもの大人しいイメージからは想像出来ない艶かしさだ。
ただ、肩幅、腰幅が狭い所為か、ウエストの曲線が足りないのはご愛嬌と言うべきか。
同じくセパレートながら、ワンショルダーにパレオを巻いたアシンメトリーなスタイルで大人っぽく決めているのがほのか。
単なる大きさではなく凹凸でいうなら、この中で一番プロポーションが良いかもしれない。
雫は逆に、フリルを多用した少女らしいワンピースだ。
こんな時でも表情に乏しい大人びた顔立ちの雫が着ると、何やら倒錯的な、妖しい魅力があった。
 

【これが新ソ連の佐渡侵攻です。まあ、劣等似本は終わってますね】

文庫5巻 p197
 
三年前、大亜連合の沖縄侵攻に歩調を合わせて、新ソ連が佐渡に攻め入った。
新ソ連は今でも侵攻への関与を否定しているが、あの部隊が同国のものだったのは疑いない。
侵攻部隊の規模は小さなものだった。
しかしそれでも、佐渡一島を蹂躙するには十分な戦力だった。
当時佐渡に住んでいた吉祥寺は、この戦いで父母を失い戦災孤児となった。
吉祥寺の両親も魔法研究者だった。
佐渡には当時、坑道跡を利用した想子(サイオン)の性質を解明するための実験施設があり、吉祥寺の両親は共に、この施設に勤めていた。
新ソ連の侵攻部隊の目的はこの施設だったとも言われている。
研究施設は侵攻部隊の奇襲を真っ先に受け、研究員の半数以上が侵攻部隊と守備隊の戦闘に巻き込まれて命を落とした。
たった一日の悲劇。
正体不明の軍隊による奇襲攻撃の報を受け、吉祥寺は両親と連絡を取ることもできず、中学校職員の誘導に従い学校近くのシェルターに避難した。
シェルターの中で両親の無事を祈りながらも、現実的な、悲観的な予想ができる程度には、当時の吉祥寺は既に大人だった。
自分に与えられた魔法という力を忘れて無力感に震えることしかできなかった程度には、当時の吉祥寺はまだ子供だった。
シェルターの中でうずくまって恐怖に耐えていた吉祥寺を救い出したのは、一条家の率いる義勇兵団だった――
 

【実は一般人も乱れてる】

文庫5巻 p233
  
こんな庶民的な店に彼女(女優)をつれて来たのは、
彼女を見せびらかして庶民が羨む顔を見たいからだ。
アクセサリーは見せ付けなければ意味がない。俗な趣味だという自覚は
あるが、芸能プロなんて元から俗な商売だ、と青年は思っている。
戦乱の時代、エンターテインメント厳冬の時代の先人の苦労を
知らない彼にとって、プロダクションの社長の椅子は刹那的な
虚栄心を満足させる手段に過ぎなかった。

~中略~

彼女は言うなれば、一級の職人の手で磨かれカットされた大粒のダイヤモンド
だと青年は考えている。中略
金に糸目をつけさえしなければ買い取ることのできる売り物でしかない。

~中略~

目の前の女が時価数千万円の大粒ダイヤとするなら、
あちらの少女(妹です)は価格がつけられない「偉大なアフリカの星」(おそらく高いダイヤの名匠)
それくらいの違いがあると感じた。
幸い、一緒にいるのは少しばかり態度がでかいだけのただの子供、
すぐにでも自分のコレクションに加えたいと青年は熱望した。
だが、今日は事務所の女優が同伴している。その他大勢ならともかく、それなりに
稼いでいる商品の期限を損ねるのはまずい、と計算するほどの理性は残っていた。
だから目の前の女があの少女を、新作映画にスカウトしたら、と言い出したのは
青年にとって渡りに船だった。青年は少しだけ考えるふりをして、
あくまで女優のわがままにお付き合いという風を装って席を立った。
 

【魔法科高校生徒会衝撃の貞操観念】

文庫5巻(Web版 間章) p258
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生が糞アニメだと気づいたのは私が見た所71スレだけだ の189
 
「私たちも今月で引退かぁ……」
夏休みの話題で盛り上がっていた生徒会室の空気が微妙に変わったのは、
真由美のこの発言がきっかけだった。
その時まで、相変わらず男女比率が著しく偏っている生徒会室のランチタイムは、
新学期初日ということもあって「一夏の体験談」で盛り上がっていた。
あえて古風な言い方をすれば「結婚まで純潔を守り続ける」のが一般的なこの御時世では
「一夏の体験談」も「性が解放された時代」に比べて随分大人しいものだ。
もっとも、女性が婚前交渉をしなくなった理由はそれが「男に媚びていなくて格好良い」と
見做されるようになったからで、結果は同じでも意識の方はフリーセックス時代以前と随分違う。
最後まで体験したからといって女性に社会的ペナルティが科せられるわけではないので
「そういうこと」をしている女の子が皆無ではない。
しかし大多数の少女は、最後まで行く直前でブレーキを踏む悪女的チキン・ランを自慢話のネタにしたがる。
ましてこの生徒会室に集まった少女たちが自分を安売りするはずもない。
また、いざとなれば正当防衛の手段はいくらでもある女の子たちだ。
事故も犯罪も起こるはずがない。
とは言うものの、「パーカーを無理やり脱がされて」とか「ベッドへ強引に押し倒されて」
とか「首筋にかかる息が」とかいうセリフを目の前で連発されると、
健全な青少年(引用者注・おそらく達也のこと)としては居心地が悪くなるのである。
まして「もう少しムードが欲しかったのですが」とか「白けたので眠ってもらいました」
とかいうオチを当たり前のように告げられると、同じ男としていたたまれなくなくなってしまう。
 

【一方的に剣術部が譲歩してるだけじゃ?】

文庫5巻 Web版 間章 p270
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は殺笑性Aランク相当の糞アニメ79の645 で初出
 
校舎との位置関係で、最初に訪れたのは第一格闘技用体育館。
 単なる偶然だが、今日は剣術部の練習日だった。
「……司波兄。お前って見る度に連れてる女が違うのな」
「人聞きの悪いことを言わんで下さい」
 本気か冗談か判別がつきにくい口調で――何割かは間違いなく本気が混じっていたように達也は感じた――話し掛けて来たのは桐原だった。
「そうよ、桐原君。
 そんなこと言ったら、千代田さんに失礼じゃない。
 千代田さんは五十里君一筋なんだから」
「……まあ、それでも良いですけど……」
 花音を身悶えさせ、達也に深い溜息をつかせた発言の主は紗耶香だった。
 剣道部の紗耶香が剣術部の練習に参加している理由は、部活時間を利用したデートの為、ではない。
 春の事件以来、魔法系競技のクラブと非魔法競技系のクラブの間で、もっと相互の交流を持つべきだという気運が高まった。
 特に元々同じ競技で、ルール上、魔法を許容しているか許容していないかの違いで分かれていたクラブは、自分たちの殻に閉じ籠もらずお互いの長所を積極的に取り入れていこう、という風潮が生まれた。
 その先鞭をつけたのが剣道部と剣術部であり、紗耶香と桐原はそもそものきっかけ、そもそもの当事者として、イの一番で相互交流に参加しているのだった。
 ――だからと言って、練習中に二人が仲良くしていない、ということではないのだが。
 

【評価低い教師から習わなくてもOKな会長は101位さんに一科生の座を譲ってもよかったんじゃ?】

文庫5巻 (Web版 間章) p270
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は殺笑性Aランク相当の糞アニメ79の645 で初出
 
「あのね、達也くん……私、三年生なんだけど」
「はぁ……存じております」
 分かりきったことを然も重要事の様に言われて、達也は戸惑いを禁じ得ない。
「高校三年生といえば大学受験でしょう? 何で受験勉強って発想が出て来ないかなぁ……
私って、そんなにお気楽そうに見える?」
 真由美の説明は達也をますます困惑させることとなった。
「……七草先輩は、推薦が決まっているのではありませんか?」
 成績優秀、生徒会長を務め、魔法競技アスリートとしても有名で、獲得した優勝トロフィーは数知れず。
 これで推薦がつかなかったら、誰を推薦するというのだろうか。
 しかし、真由美の回答は達也の予想の斜め上を行った。
「あれっ? 達也くんは知らないんだ?
 私、推薦は辞退したの。
 生徒会役員経験者は推薦を辞退するのが当校の不文律なのよ」
「……初耳です」
「魔法大学の推薦枠は魔法科高校毎に十人、って決まっているからね~
 ウチは他校より受験する人が多いから、枠は有効に使おう、ってことになってるのよ」
「……つまり、ボーダーラインの生徒を優先的に推薦する、と?」
「それはチョッと言い過ぎだけど……まあ、そんなものかな」
「それは……」
 ある意味、合理的かもしれないが、やはり何かが間違っているのではないだろうか。
 

【教えてもらったからってエロいツボを早速使う芝さん。お前がセクハラで訴えられてしまえ!】

文庫5巻(Web版 間章) p273
 
「だから言ったじゃない。千代田さんだったら例外だって。
 渡辺先輩は千代田さんを特に可愛がってるんだから」
 彼が何も言わなくても、盛り上がりに欠けることはなかったが。
「へぇ? あの人、見掛けだけじゃなく中身もタカラヅカな人だったのか。
 まっ、確かに委員長と千代田だったら、絵になるよな」
 少女歌劇は近代以降に発生した舞台芸能の中で最も伝統があるものと言える。だから「中身が宝塚」という評価は別段不名誉なものではないと達也は感じたのだが、花音の感性は異なる結論を出したようだ。
「ホ~、あたしだけならともかく、摩利さんまで百合扱いするなんて……
桐原君、いい度胸じゃない」
「チョッと待て!」
 花音の背後から不動明王も斯くや、とオーラの炎が燃え上がった。(正確には活性化したサイオン粒子の噴出)
「俺は『百合』だなんて言ってねえぞ!」
 単純なパワーなら二年生ナンバーワンの呼び声も高い花音の怒気に、桐原は大慌てで手と首を振った。
「問答無用」
 ヤケに力強い花音の宣告に、達也は深く溜息をついて、
 右手を素早く、軽く、突き出した。
「ひゃんっ!」
 調子外れな悲鳴と共に、サイオンの乱舞が収まった。
「な、何するのよっ!」
 床にへたり込んだまま、赤い顔で達也を|詰《なじ》る花音の両目は、苦痛ではない原因で潤んでいた。
「……予想以上の効き目でしたね」
 八雲譲りの点穴術。
 背中にある「快感のツボ」――今朝教わったばかりだった――を突いた己の人差し指を、繁々と見ながら嘯くように答えて花音を益々赤面させた後、達也は表情を改めた。
「千代田先輩、風紀委員が自ら騒動を起こしてどうするんですか」
「うっ……だって……」
「だって、ではありません。いいですか、セクハラを受けた場合は後で懲罰委員会に訴追すればいいんです。
 風紀委員の証言は原則として単独で証拠採用されるんですから」
「おいっ!?」
 いきなりの風雲急を告げる展開に、慌てて桐原が口を挿もうとするが、達也も花音も目を向けさえしなかった。
「い・い・で・す・か? こんな瞬間湯沸し機みたいな真似は、今後慎んで下さい」
「……分かったわよ」
 

【生徒会長選で重傷者2桁?DQN高校どころじゃありませんよ。そ・れ・と!発展途上国バカにすんな!】

文庫5巻(Web版 間章) p293
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はテロリスト()御苦労様……な糞アニメ11の389 で本スレから転載
 
「次期会長候補の絞り込みも生徒会の役目なのよ。
 そうじゃないと、候補者が乱立して収拾がつかなくなるから」
「……候補者が大勢立つのは選挙のあり方として健全だと思いますが」
「例えそれが、魔法の撃ち合いに発展しても?
 相手は生徒会長になろうという猛者ぞろいよ?」
 確かにそんなことになったら、新入生勧誘週間以上の大騒動だろう。
「……幾ら何でもそれは……それこそ、生徒会長になろうという人たちですよ?」
 しかし生徒会長になろうというのだから、ああいう騒ぎを起こさせないようにする側のはずだ。
「甘いわね、達也くん」
 だが達也の常識論は、真由美によってバッサリ切り捨てられた。
「当校の生徒会長には大きな権限がありますし、卒業後も高く評価されますから。
 現に四年前、『民主的で自由な選挙』を標榜した当時の生徒会は、重傷者が二桁に達した時点で『自由な選挙』の看板を下ろし、生徒会長が副会長を次期会長に強く推薦することでようやく事態を収拾した、という記録が残っています」
「……何処の発展途上国にあるんですか、この学校は」
「魔法という大きな力を持って完全な自制心を発揮できる程、高校生は大人じゃない、ってことよ。
 だから、ね? 達也くんから見ればまだまだ子供なのかもしれないけど、深雪さんだってきっと大丈夫よ。
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