原文引用編2

Last-modified: 2021-08-10 (火) 07:29:38

横浜騒乱編~四葉継承編
文庫収録順 Web版の分は、該当する文庫版にまとめました

横浜騒乱編

【力が全てだ!危険な魔法兵器(CAD)を税金で国民にばら撒く未来の日本政府】

文庫6巻(web 第3章) p58
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生が糞アニメだと気づいたのは私が見た所71スレだけだ の420
 
 FLTに限らず、魔法産業に携わる企業は実質的に官公需企業であり、魔法産業は軍需産業と言って良い。
 CADを始めとする魔法工学製品を購入するのは実用レベルで魔法を使用する者、魔法師のみだが、その市場は他の工業製品に比較し極めて小さい。
 魔法師の希少性を考えれば、これは当然のことだ。
 現在国内で実際に魔法を職業としている魔法師の数と、魔法を学んでいる大学生・高校生の数の合計は、およそ三万人と言われている。
 つまり全員が毎年CADを買い換えたとしても、CADの国内市場規模は年間三万台分しかない。
 (実際の買換えサイクルはもっと長い一方、一人の魔法師が五、六台のCADを所有していることも珍しくは無いのだが)
 しかも、魔法を振興するという国策上、魔法の補助機器は安く購入できなければならない。
 実際にCADの小売価格は、一般家庭の所得水準で子供に高校の入学祝として買い与えることが出来る程度に抑えられている。
 独力では到底一つの産業として成り立たない規模と構造だ。
 故に、魔法産業に対して、国家は手厚い助成措置を講じている。
 例えばCADの購入価格の場合、その九割を国が補助している。
 店頭で売られている価格は企業が売上単価として計上する価格の十分の一なのだ。
 それ以外にも、委託研究の名目で、国は毎年多額の研究費を企業に支給している。
 業界最大手のマクシミリアンやローゼンですら、それぞれの政府に逆らえない。それが魔法産業の抱えている宿命だった。
 

【感情は無くても欲情はする・シバさんのクールな女性観】

文庫6巻(Web 第3章) p98
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は糞アニメだからニブルヘイムで39サク氷漬けもO.K.の246 が初出?
 
魔法師の地位向上と常駐型重力制御魔法式熱核融合炉の実現を結びつけて論じる者は、少なくともこの二十一世紀末においては、ほとんど見ることが出来ない。
「こんなマイナーな思想の持ち主が、こんなに身近にいるとは思いませんでした」
驚いたというよりも寧ろ感心したように呟く達也に、真由美は何故か、ジトッとした目を向けた。
「……フ~ン、良かったわね。リンちゃんと気が合って」
目付きだけでなく、声音までご機嫌斜めを主張している。
「いえ、別に気が合うとか合わないとかいう問題では無いと思いますが……市原先輩と俺では、方法論が全く違うようですし」
何を拗ねてるんだろう、と思いながら、達也の回答もつられたように言い訳がましさを帯びていた。
「でも基本コンセプトは同じなんでしょ?
 達也くんって、実はリンちゃんみたいなのがタイプなの?」
「はぁ?」
「こーんな美少女と肩寄せ合ってお話してるっていうのに、全然手を出す素振りも無いと思ったら。
 ゴメンねぇ、お姉さん、子供体型で」
一体全体、この人は何を言い出したんだ? というのが達也の偽らざる感想だった。
大体、研究テーマが同じだからといって常にパートナーになる訳ではなく、寧ろライバル関係になる方が多いのだし、真由美は背が低いだけでけっして子供体型ではない。むしろグラマーで
成熟した体型だと彼も思っている。
解かなければならない誤解が多すぎて、一体どこから手をつければいいのか、
達也は迷った。
「…俺に露出性癖は無いんで、監視カメラの前で女性に手を出したりはしませんよ」
達也も相当困惑していたのだろうか。
迷った末に選んだファースト・アンサーはあまり適当なものではなかった。
「えっ……?」
意味深なようでいて実は深く考えていない達也の解答に、
真由美はそわそわと視線をさまよわせ始めた。
「えっと、じゃあ、カメラや人目が無かったら?そうね、例えば、
二人きりでホテルに部屋を取ったら?」
「先輩の据え膳なら、遠慮なくご馳走になります」
中略
達也の答えに身の危険を感じた―はずの真由美は、
なぜか、閲覧室を出て行こうとはしなかった。
 

【外国人はみんなバカ・中国軍編】

文庫6巻(web 第3章) p124
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は尊師AGEの過程にしかすぎない糞アニメ78の222 で初出?
 
「フン……Four Leaves(四葉)か。忌々しい名だ。“あの”四葉とは無関係だったな?」
 「是。詳細に調べましたが、何の繋がりも出て来ませんでした。
  それにこの国において四葉及び八葉を意味する名称は、魔法関連企業の社名に好んで用いられるものです」
 「紛らわしい」
 
 男はその一言を、嫌悪と苛立ちを込めて吐き捨てた。しかしそこから、隠しきれなかった畏怖がわずかに滲み出ている。
 八葉の名称は現代魔法の四系統八種と胎蔵界曼荼羅の中台八葉院、二つの魔法的な意味を兼ねるものとして好まれているものだが、
 四葉の方がもっと世俗的な意味合いで採用されている名称だ。十師族・四葉の名は魔法に関わるものにとって一種の禁忌。
 日本の企業で名称に四葉を意味する語句が含まれていたなら、スパイ組織も犯罪組織も四葉家との関わりを警戒して多少の差はあれ手出しを躊躇う。
 四葉家が何も言わぬのを幸いに、「虎の威を借りる」目的で多くの企業が「四葉」を意味する名称を採用したのだった。

 子供騙しだが、効果は否めない。現に自分達は四葉の影を警戒して余分な時間と労力を費やしている。男はますます苦い表情を浮かべた。
 

【融合炉から核廃棄物ごと排気してピストンで発電!  核融合と放電現象もごっちゃ】

文庫7巻(Web 第3章) p75-
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はThe best psychopassな糞アニメ50の87- で話題に
魔法科高校の劣等生は全員ノーヘッド(無能)な糞アニメ76の359- で初出
 
「……核融合発電の実用化に何が必要となるか。この点については、前世紀より明らかにされています」
 鈴音が巨大なガラス球の隣に立った。
 達也が放出系魔法の起動式を指定した。
 鈴音がCADのアクセスパネルに手を置いた瞬間、ガラス球に封入された重水素ガスがプラズマ化し、ガラスの内側に塗られた塗料に反応して煌びやかな閃光を放つ。
 その派手な演出に、客席が小さく沸いた。
「一つは、燃料となる重水素をプラズマ化し、反応に必要な時間、その状態を保つこと。
 この問題は放出系魔法によって既に解決されています」
 ただこの光景は過去に何度も実演されたものであり、目新しさの点ではアピール力の乏しいものだった。
「核融合発電を阻む主たる問題は、プラズマ化された原子核の|電気的《クーロン》斥力に逆らって融合反応が起こる時間、原子核同士を接触させることにあります」
 閃光を放っていた球体が沈黙し、巨大なスクリーンが舞台中央に降りて来る。
「非魔法技術により核融合を実用化しようとした先人たちは、強い圧力を加えることによって電気的斥力に打ち勝とうと試みてきました」
 スクリーンに今世紀前半まで繰り返された実験の映像とそのシミュレーション動画が分割表示された。
「しかし、超高温による気体圧力の増大も、表面物質の気化を利用した爆縮の圧力も、安定的な核融合反応を実現するには至りませんでした。
 そこには様々な理由があります。
 例えば格納容器の耐久性の問題、例えば燃料の補充の問題。
 核融合の維持自体には成功しても、生み出されたエネルギーが大き過ぎて実用化が出来ないという例もありました。
 しかし全ての問題は、取り出そうとするエネルギーに対して融合可能距離における電気的斥力が大き過ぎるという点に収束します」

~中略~

 それは言うなれば、透明の素材で作られた巨大なピストンエンジン。
 透明な巨大円筒に、鏡面加工されたピストンが下から差し込まれ、そのピストンはクランクとはずみ車につながっている。
 円筒の上部には二つのバルブ。
 そこから伸びた透明の管が、水を湛えた水槽の中を突っ切っている。
「……円筒内に充填した重水素ガスを放出系魔法によってプラズマ化し、重力制御魔法とクーロン力制御魔法を同時に発動します。
 クーロン力制御魔法によって斥力の低下した重水素のプラズマは重力制御魔法によって円筒中央に集められ、核融合反応が発生します。
 この装置で核融合反応に必要な時間は0.1秒。
 皆さんご存知の通り、核融合反応が自律的に継続することはありません。
 外部から反応を生じさせる作用を加えなければ、すぐに反応は停止してしまいます。
 当校の重力制御核融合機関は、この性質を積極的に利用します。
 核融合反応停止後、重水素ガスを振動系魔法で容器が耐えられる温度まで冷却します。この時に回収した熱量は、重力制御とクーロン力制御のエネルギーに充当されます。
 重力制御魔法によって発生した重力場に引き寄せられたピストンは慣性で上昇を続け、適温に冷却された重水素ガスを熱交換用の水槽へ送り込みます……」
 鈴音の解説が続く中、五十里が実験機のアクセスパネルに手を置いた。
 プラズマ化、クーロン力制御、重力制御、冷却、エネルギー回収、プラズマ化、クーロン力制御、重力制御……という、何十回とループする魔法を、五十里は安定的に発動する。
「……現時点では、この実験機を動かし続ける為に高ランクの魔法師が必要ですが、エネルギー回収効率の向上と設置型魔法による代替で、いずれは点火に魔法師を必要とするだけの、常駐型重力制御魔法式核融合炉が実現できると確信します」
 鈴音がこう締め括ると同時に、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
 

【杜撰!お役所仕事と海保も無さそうな無能体制の似本、そして文民警官が文民統制を批判。 取り敢えず、東京湾の地図見ましょうか?左遷生】

文庫7巻(Web 第3章) p83
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はSF(説明不要)なほどSF(凄く不快)な糞アニメ25の800 が初出 
 
「状況は!?」
通信を受けて三分後。
既に現場へ向け急行中の車の中で、車載のフリーハンド通信機に向かい、怒鳴りつけるような口調で千葉警部は追加情報を求めた。
『管制ビルに突っ込んだ自爆車両は炎上中。追加の特攻はありません』
警部より幾分落ち着いた口調の報告がスピーカーから返って来る。
しかし単発だからといって、安心出来る内容ではなかった。ターゲットになっているのは出入港管制ビル。
強固な構造材が爆発の熱と衝撃を撥ね返しビル自体に被害は無かったが、公務員であっても非戦闘員の職員を、テロが実行された中で働かせ続けることは出来ない。
管制ビルの職員が退避中の時間、港湾警備隊への管制引継ぎが完了するまでの間、入港する船舶の監視に深刻な穴が生まれることになる。
(文民に拘り過ぎだ!)
防衛軍や警察等の、制服組の勢力拡大オーバープレゼンスを嫌った政治家の抵抗で港湾管理、空港管理には一般の公務員が当てられているが、島国の港管理はそのまま国境警備なのだ。
防衛軍に任せるのが嫌なら、せめて武装警察を当てるべきだと千葉警部を含め、千葉家は前々から主張していた。
今回、懸念的中とならなければ良いが、と警部は考えていたが、意識の醒めた部分で、それが儚い願望でしかないと理解していた。
『停泊中の貨物船よりロケット弾が発射されました! 歩兵用ランチャーを使用した模様です!』
危うく操作を誤りかけたハンドルを慌てて切り返し、千葉はマイクに怒鳴った。
「船籍は!?」
『登録はオーストラリア船籍の貨物船! ですがこれは、形状から見て、機動部隊の揚陸艦と思われます!』
 登録は偽装という訳だ。入管も沿岸防衛も何をやっているんだ! と喚き散らしたい気持ちをグッと抑え、千葉警部は通信先を切り換えた。
「……親父か? 寿和だ。現在横浜山下埠頭にて国籍不明の偽装戦闘艦が侵攻中。国防軍に出動要請を頼む。
それから、雷丸イカヅチマルと大蛇丸オロチマルを至急届けさせてくれ。……大蛇丸をどうするって? エリカに使わせるに決まってるじゃないか!」
 

【ハイパワーライフルって言いますが、WW2時代の対物ライフルレベルです】

文庫7巻(Web 第3章) p87
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は二科生差別を取り繕う糞アニメ69の371 で初出
 
 今度は複数の銃声が聞こえた。
(フルオートじゃない……対魔法師用のハイパワーライフルか!)
 実戦魔法師の魔法には、銃器を無効化するものがある。
 例えば十文字家の多重障壁魔法は、その典型・最高峰の一つに挙げられる。
 二十一世紀末になっても歩兵の主武装メイン・ウェポンは銃器。故に銃弾を防ぐ魔法は地上戦において大きなアドバンテージをもたらすことになる。
 だが攻撃と防御は常にいたちごっこを演じて発展していくものであり、強力な防御手段に対してより強力な攻撃手段が開発されるものだ。
 魔法もまた例外ではなく、魔法もまた万能ではない。
 魔法の干渉力より運動体の慣性力が強ければ、魔法は失敗して減速も軌道変更も座標固定も全く効果を生じなくなる。
 物理的な楯ならば貫かれても威力を弱めることが出来るが、魔法は事象改変に失敗すれば最初から何もしなかったのと結果は同じ。
 魔法師の防御魔法を無効化する高い慣性力を生み出す高速銃弾。
 それが対魔法師用ハイパワーライフルの設計思想だ。
 だが実戦レベルにある魔法師の干渉力を無効化する弾速を得る為には、通常の銃器製造技術より二段階も三段階も上の高度技術が必要となる。
 

【何度も言うよ君の魔法は放射線を発してる♪ ところで左遷生、ショットブラストってご存知?】

文庫7巻(Web 第3章) p125
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は十文字家でもウィキ工作を隠蔽できない糞アニメ61の448 で初出
 
 この場に第三者が大勢いる、ということを、達也は一瞬たりとも忘れてはいなかった。
 しかし、秘密を守りながら事態に対処するには、時間が不足していた。
 気づいたのは偶然に近い。
 八雲に鍛えられた直感が彼にそれを教えたのかもしれない。八雲は達也に繰り返し、「精霊の眼」だけに頼り過ぎるな、と諭していた。その教えが今、活きたというところだろうか。
 強烈な危機感に曝されて「視野」を壁の向こうへ拡張した達也は、突っ込んで来る大運動量の物体の情報を読み取った。
 克人がいれば、状況も違っただろう。
 兵士が飛び込んで来たのなら、真由美や摩利に任せても良かっただろう。
 しかし装甲板で鎧った大型トラックの突入に対処できるのは、この場で達也の魔法だけだった。
 高さ四メートル、幅三メートル、総重量三十トン。
 道路規格の向上により一層の大型化が許され装甲板の重量を更に加えた大型トラックを丸ごと照準に収めて、達也は分解魔法「|雲散霧消《ミスト・ディスパージョン》」を発動した。

 一瞬で、塵となって消えるトラック。

 消えてしまった運転席から放り出され、地面を転がって壁面に激突するドライバー。

 慣性に従い会議場の壁面を叩いた金属と樹脂の粉だけが、大型輸送機械の存在していた名残だ。
 壁の内側には、何のダメージも無い。
 

【この感知能力なら運動会で黒目じじいのトリック気付けたんじゃ?また後付ですか…】

文庫7巻(Web 第3章) p128 
道路規格の向上により一層の大型化が許され装甲板の重量を更に加えた大型トラック消失に
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は十文字家でもウィキ工作を隠蔽できない糞アニメ61の429 で初出
 
 克人がミサイルの雨に遭遇したのは、その場所に強大な魔法の気配を感知したからだった。
 魔法師は事象改変の反作用で魔法の行使を知覚する。
 その魔法には、反作用がほとんどなかった。
 しかし、それにも関らず、「世界」が大きな改変を受けたと克人には分かっていた。
 五感によらず「意味」を読み取るのは、達也の専売特許ではない。
 空間の性質を改変する魔法を使う克人は、空間の変動に鋭敏な認識力を持つ。
 万有引力の分布=質量の分布は、空間の最も基本的な性質の一つ。
 克人は質量分布の変動を知覚することによって、物体の移動や変化を把握することが出来る。
 克人はその感覚で、大きな質量を持つ物体、船やビルほどではないにしても、人間に比べて巨大と言って差し支えの無い質量が、一瞬で拡散したのを捉えた。
 これ程大規模でこれ程スムーズな事象改変は、克人にもチョッと覚えが無い。
 脅威に感じるよりも寧ろ好奇心に駆られて、克人は質量が拡散した場所へと跳んだ。
 その巨体からは想像し辛いかもしれないが、彼は高速移動の魔法も得意としている。桐原を置き去りにして空中を滑るように跳躍し、コーナーを運動ベクトルの改変でクリアしながら控え室に面した外壁へと到着した。
 

【味方の戦意も下げる不必要に残虐な魔法、爆裂(正確には赤血球)】

文庫7巻(Web 第3章) p162
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は二科性が特例で伝統行事に参加できる糞アニメ75の318 で初出
スレタイになるほど盛り上がったのは、魔法科高校の劣等生はマテバと再成が象徴的な事後対処なかでき糞アニメ158の611 辺りである。
 
 大型特殊車輌専用の駐車場で不正規兵を相手取る三高の生徒は、その過半数が戦闘不能に陥っていた。
 ――吐き気を抑え切れずに。
「一条、少しは手加減しろ!」
「先輩こそ、下がっていてください」
 その元凶たる将輝は、幾ら非難を浴びてもまるで聞く耳を持たなかった。
 赤味を帯びた拳銃形態の特化型CADが国籍不明のゲリラに向けられ、紅の花が咲いて、散った。
 うっ、と口元を押さえる声が、またしても将輝の耳に届いた。
 彼が一人の敵を屠るたびに、敵も味方もどんどん戦意を低下させて行く。
(この程度でびびるなら、最初から戦場に立とうなんて考えるなよ)
 どんな目で見られても、どんな言葉を掛けられても、将輝は心の中でそう嘯いて涼しい顔で無視している。
 彼の主張は正しい。文句のつけようがない正論だ。
 だが――人体が破裂して鮮血(正確には赤血球)を撒き散らす光景に、平然としていられる兵士が一体どれだけいるものだろうか。
 一条家の秘術、「爆裂」。
 対象物内部の液体を瞬時に気化する魔法。
 それを人体に行使した場合、血漿が気化し、その圧力で筋肉と皮膚が弾け飛び、血液内の固形成分である赤血球が真紅と深紅の花を咲かせることになる。
 彼の同級生と上級生は、一握りの例外を除いて、初めて「クリムゾン」の真の意味を知った。
 

【瞬間的に重力を遮断すると横転するほど浮いてしまう?随分軽い装甲車ですね】

文庫7巻(Web 第3章) p179
なお、各所で検証された一般的な装甲車で1.7cm程度浮くかもしれない…らしい
原作スレ 【魔法科高校の劣等生】佐島勤スレ50の25-54
あたりでも改稿させなかったM木は無能と罪をなすり付けている。
このスレあたり、ほぼアンチスレと変わらない状態となっているが、原作スレですよ、これ。
 
銃剣付のライフル――の外見をしたCADの引き金を引き、魔法の発動を確認して再び遮蔽物の陰へ飛び込む。
真っ直ぐに土埃が上がり、路面に直線が刻まれた、様に見えた。
その直線に触れた装甲車の車輪が、浮き上がる。
地面を揺るがす轟音の連鎖が、発動した魔法の結果を柳に告げた。
僚車を巻き込んで横転している装甲車の列。
よく見れば、東側を進んでいた車輌が西側の車輌にのしかかるようにして転倒しているのが分かる。
加重系魔法「千畳返し」。
地球の重力を南北の線上で瞬間的に遮断することにより、対象物は地球の遠心力によって東側が持ち上げられ西へ転がることになる。

~中略~

柳の「千畳返し」は地球の重力を遮断する魔法。
対象物の付随情報に干渉するものではない。
敵が車体に掛けた防御魔法に関わりなく、重力遮断の魔法は発動した。
 

【剣は人斬り用に作られた?祭器からだと思いますがね?剣と刀の区別は・・・】

2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はアクティブシバーマインな糞地雷アニメ85の694 で初出
文庫7巻(Web 第3章には無い) p187 杉田、ポニテ、エリカスの会話を抜粋
 
桐「壬生……お前はやっぱり後ろに下がってくれないか」
壬「桐原君、あたしだって剣士よ。あたしにも真剣勝負に望む心構えくらいある」
桐「止せよ! 壬生、お前が軽々しく真剣勝負なんて口にしないでくれ!」
壬「……桐原君?」
エ「桐原先輩……なに怒ってるの?」
桐「俺は……壬生の剣を血でよごしたくないんだよ」
壬「でも……剣って元々」
桐「分かってるよ、そんなことは!」
桐「剣は人と戦うための道具。槍や弓矢と違って、最初から人を斬るために作り出された武器だ。
 だから剣を使うものがいつか人の血に塗れることを覚悟するのは間違っちゃいねえよ」
桐「でもよ、『剣道が』真剣を使う技術である必要は無いんじゃねえか?
 人斬りの技術からスポーツが生まれても良いんじゃねえか?」
桐「俺は……中学の頃、壬生の剣を見てすっげえ良いな、って思ったんだよ。
 剣を振る技術がこれ程洗練された、これ程綺麗なものになるのかってな。
 人を斬る禍々しさの無い、ただ己を高める為の技術としての剣術……いや、剣道か。俺には真似のできない、綺麗な剣。
 俺はあん時、コイツの剣はこのまま綺麗であって欲しい、綺麗なままで高みに上って欲しいって思ったんだ。
 だから……ああ、クソッ、上手く言えねえな!」
エ「分かるよ、先輩。
 新入部員勧誘演舞でさーやの剣は『正しい』方向に進歩していたけど、桐原先輩はそう思わなかったんだね。
 剣のあり方としては正しいけど、『剣道としては』間違っている。
 ――あたしは先輩以上に人を斬る剣しか知らないから、そんな風には思えなかったけど」
壬「エリちゃん……」
エ「でも先輩、決めるのはさーやだよ。確かに実戦は一緒に稽古するのとは訳が違う。
 桐原先輩がさーやの手を、剣を、血で汚したくないと願うのもきっと間違ってない。
 だけど、さーやが好きな人だけに危ない思いをさせたくない、好きな人と一緒に戦いたいって思うのも、同じくらい間違いじゃないんだよ」
 紗耶香も桐原も顔を赤くしている
 

【コンクリートが液状化?液体化?蒸発して凝固?全てがおかしい】

文庫7巻(Web 第3章) p202
 
千代田家の魔法、「地雷原」のバリエーションの一つ、「振動地雷」。
その効果は今、この場で展開されている通り。
地面を液状化し、敵の足を止める魔法。
 唸りを上げて泥水を掻き出す無限軌道は、すぐに砂を噛んで停止した。
いつの間にか水分が抜け、液状化した路面は直立戦車の足をくわえ込んだまま凝固していた。
花音が地面の液状化に続いて、水分子を振動させ蒸発させたのだ。
 振動地雷の魔法はこの捕獲までが一連のプロセス。
旧世紀の物とは多少組成が変わっているとはいえ、舗装材の基本素材はコンクリート、とは言うものの、
水和反応が再現された訳ではないので単に水を含んでいた砂が固まったのと同じ状態だ。
 

【中国軍は戦車も弱い。高周波ブレードで一刀両断!】

文庫7巻(Web 第3章) p204
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は二科性が特例で伝統行事に参加できる糞アニメ75の318 で初出
 
地を蹴って接近する桐原に向かって、直立戦車の上半身がクルリと回転した。
 刀の間合いまで、後一歩。
 機銃の銃口が桐原に向けられた、が、銃撃が放たれることはなかった。
 桐原の背後から飛来した小太刀が、機銃に突き刺さり直立戦車の肩からもぎ取ったのである。
 桐原の斜め後方に立つ紗耶香が、もう一本、小太刀を投げた。
 榴弾砲が同じようにもぎ取られる。
 投剣術。
 学校では剣道を修めていた紗耶香だが、彼女の父親は剣術で実戦に臨んだ魔法師だ。
 家では剣術の技も手解きを受けていた。
 その中で彼女が最も得意とする技がこの投剣術。
 手裏剣やスローイングダガーではなく、小太刀、脇差しを投げ付ける技。
 打ち合いでは、女性故にどうしても腕力に劣る。例えば桐原の得意とする高周波ブレードも、刀を振るのは腕力だ。
 魔法で太刀行きを制御するのは、彼女の魔法技術では難しい。
 だが投剣術なら、投げる動作に合わせて魔法を発動すれば腕力は関係ない。
 そう考えて修練を積み、工夫を重ねてものにした魔法だ。
 投げた直後の隙が大きすぎる為、素早い相手には使えないが、今回のように大きく動きが鈍い的なら最大限の効果を発揮する。
 火器が無力化されたのを見て、桐原は最後の一歩を踏み込んだ。
 頭上から振り下ろされる巨大なチェーンソー。
 しかし、その軌道は見切っている。
 身体を自然にスライドさせながら、桐原の刀は直立戦車の左脚を両断する。
 高周波ブレード。
 彼の最も得意とする魔法は、地雷や対戦車ライフルを想定した装甲板を易々と斬り裂いた。
 のしかかるように倒れ込んでくる車体。
 桐原は後退しながら杭打ち機を根本から切り落とし、側面に回って操縦席に刀身を突き込んだ。
 手に伝わる、肉を貫く感触。
 桐原は僅かに顔を歪めて刃を引き、大きく跳び退って転倒した直立戦車から距離を取った。
 彼の見せた表情は、笑(嗤)い顔では、決してなかった。
 

【のんきで無能無策な似本軍 航行能力奪う事すらしないぞ!】

文庫7巻(Web 第3章) p207
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はウィード生えすぎてシバが出来ちゃう糞アニメ27の366 が初出
 
「では、中華連合の偽装戦闘艦を撃沈しますか?」
『港内で撃沈するのは拙い。港湾機能に対する影響が大き過ぎる』
 無論その程度のことは彼にも分かっている。
 撃沈というのはあくまで冗談に過ぎなかったのだが、思ったより真面目な回答が返ってきて、少し申し訳ない気分になる達也だった。
「では乗り込んで制圧しますか?」
 真田を押しのけてフレーム・インした風間に、柳がそう訊ねた。何だかこの少人数で敵艦に攻撃を掛けることが既定事項になっている気がする、と達也は思った。
 今更ながら彼は、この知人たち――今は上官たち――が、冗談の通じない、と言うか普通なら冗談で済む無茶を日常的に押し通している人種だということを思い出していた。
『それは後回しだ。駅前の広場で民間人が避難民脱出用のヘリを手配している。
 現在地の監視を鶴見の部隊に引き継いだ後、駅へ向かい、脱出を援護せよ』
「了解しました」
 柳の隣で同じように敬礼しながら、勇気のある民間人がいたものだ、と達也は感心した。
 自分が脱出するついでとはいえ、逃げ遅れた市民を一緒に連れて行こうというスタンスは賞賛に値する、と考えたのだが、
『尚、ヘリを呼んだ民間人の氏名は七草真由美、及び、北山雫だ。
 両人から要請があった場合は、助力を惜しまぬよう全員に徹底してくれ』
 聞き覚えがタップリある名前が耳から入ってきて、達也は思わず咳き込みそうになった。
 

【一人が頑張ればなんとかなる・未来日本の優雅な戦場】

文庫7巻(Web 第3章) p239
 
魔法協会の組織した義勇軍はジリジリと後退を余儀なくされていた。敵の上陸部隊は、明らかにこちらが主力だった。

~中略~

協会の魔法師も速度、即ち手数に勝る現代魔法で対抗していたが、数の力には抗えなくなっていた。
「クッ、撤退だ!」
「後退して防衛ラインを立て直す!」
戦意は失っていない、ように聞こえる。だが威勢とは裏腹に、言っていることは守りに入った者のそれだ。
「後退するな!」
その時、義勇兵たちの怯懦を一喝する声が轟いた。
火をまき散らしていた鳥形の化成体が地面に叩きつけられ、押し潰されて消える。それはまるで、巨大なハンマーを打ち下ろされたかの如き光景だった。
「奮い立て、魔法を手にする者たちよ。卑劣な侵略者から祖国を守るのだ!」
火を吐く犬が、炎の翼を持つ鳥が、その他、様々な幻獣を象った古式魔法の使い魔が次々と叩き潰された。
義勇軍の先頭に、大柄な人影が歩み出る。
古の鎧武者のようなその姿は、ごついプロテクターとヘルメットを身に着けた克人だった。
克人は右手を挙げて、下ろした。それほど勢いがあったわけではない。
だが、右手が振り下ろされると同時に、敵の直立戦車が一台潰れた。その意味するところは、誰の目にも明らかだった。
もう一度、同じ事が繰り返され、魔法に対する防御を固めていたはずの機甲兵器は、紙の玩具同然に叩き潰された。
声が上がった。それは、劣勢に立たされていた義勇兵たちの、鬨の声だった。
 
克人は心の中で、気恥ずかしさを感じる心に蓋をし、鍵を掛けた。
絶対的な正義を信じるほど、彼も幼くはない。方便と割り切ってしまえるほど、彼も大人ではない。
だが彼は自分の役割を弁えていた。

~中略~

直立戦車の機銃が克人に向けられ、無限軌道が唸りを上げる。
単体ではなく、三機で隊列を組んで仕掛けて来たのは、この敵が装備頼りの無能な兵士でないことを物語っている。
しかし結果的に、その三機は一発の銃弾を放つこともなく、一メートルも進むことが出来なかった。
右の掌を突き出す。克人が取った対応は、ただそれだけだった。それだけで、直立戦車はスクラップになった。
多重障壁魔法「ファランクス」。
この魔法は、敵の攻撃を防ぎ止めるだけのものではない。その真価は寧ろ、敵を押し潰す、この攻撃にこそある。

~中略~

ファランクスはその名の通り、攻防一体の魔法なのである。
炎と雷が克人に襲い掛かった。
プロセスを現象として具現化しなければ即効性のある事象改変を行えない古式魔法の攻撃は、克人に取って対処し易い相手だ。
空中に築かれた耐熱、耐電の防壁が克人とその周囲にいる義勇兵を守る。前に立つ護衛の兵士ごと、敵の魔法師を吹き飛ばす。
たった一人の参戦によって、戦況は逆転した。
 

【強い!強すぎる。まるで本当のシヴァ神だ。震え上がる中国軍】

文庫7巻(Web 第3章) p266
 
侵攻軍の兵士は、自分たちの目にしているものが信じられなかった。
 確かに致命傷を与えたはずなのに、その事実が無かったことになる。
 彼らは、白昼夢に迷い込んだのではないか、と感じていた。
 しかもこれは、とびきりの悪夢だ。
 現実感を侵食されながらも、目の前の光景から、因果関係を悟る。
 あの左手の銀色の銃が、漆黒の兵士を蘇らせている――何をどうしているのかは分からないが、それだけは直感的に理解して、銀色の銃を持つ兵士に砲口を向ける。
 だが、砲撃が届くことは無い。
 銃弾も榴弾も、空中で霧散する。
 その右手を向けられた物は全て、塵となって消える。

―― Divine Left ――

 その左手を差し伸べられた兵士は死の縁から蘇り、

―― Demon Right ――

 その右手が指し示すものは人も機械も消え失せる。

 三年前、香港出身の兵士が上層部の緘口令を逃れる為に使った英語のフレーズが、侵攻軍兵士の間に細波さざなみとなって広がり、

―― Mahesvara(摩醯首羅)! ――

 大波と化して、彼らの戦意を呑み込み押し流した。
 

【やる気があれば戦は勝てる・補給は二の次三の次】

文庫7巻(Web 第3章) p267
 
敵の攻勢が不自然なタイミングで止まった。
克人の感覚的な予測では、敵が敗走に転じるのはもう少し先のことだった。
だが予想より早いからといって、これを見逃す克人ではなかった。
「敵は怯んだぞ!」
彼は魔法協会が主体となって編成したこの義勇軍の中で、最も若い階層に属している。
それにも関わらず克人は自然と、この場の指揮権を掌握していた。
彼の外見から彼の実年齢を見抜いた慧眼の主も、いなかった訳ではない。
しかし彼の持つ、指導者としての資質に異を唱えた者は誰一人いなかった。
無論、その魔法力がこの場の誰よりも優れた、圧倒的なものであるという要素も大きく影響しているだろう。
彼の参戦がなければ、ジリジリと押し込まれて敗走していたのは自分たちの方だ、と理解していない者はほとんどいなかった。
だが、力だけでは無かった。
力は寧ろ、副次的な要因だった。
この場で杖を手に取った(魔法師が戦闘に参加することを、「銃を手に取る」という慣用的な表現に倣い「杖を手に取る」と表現する)者たちが克人を大将と認めたのは、彼の叱咤が彼らの怯懦を吹き飛ばしたからだった。
なるほど、戦いくさに勝つには補給も重要だ。兵の錬度を上げることも大切だ。効率的に兵力を運用する作戦も、それをサポートする輸送・通信手段も欠かせないかもしれない。
だが全てが出尽くした後、最後の最後でものを言うのは士気だ。
兵士の闘争心は、時に全ての不利を覆して勝利をもたらす。
少なくとも地上戦においては未だ、士気は勝利の無視し得ぬファクターであり続けている。
そして、兵士の闘争心を引き出すことが出来る、というのは稀少な才能、将の器なのである。
「一気に押し戻せ!」
克人の下知に従い、魔法が一斉に放たれた。
相克による無効化が起こらぬよう、加重系魔法に統一された魔法の一斉砲撃。
この攻撃は、既に逃げ腰になっていた侵攻軍にとって、決定打となった。
機甲兵器に搭乗していなかった歩兵と魔法兵の大半が薙ぎ倒された。
既に残り少なくなっていた直立戦車の半数が転倒した。
攻撃を凌いだ装甲車と直立戦車、そして少数の歩兵・魔法兵からなる残存兵力は敗走を開始した。
転倒した直立戦車を上からのファランクスで続けざまに叩き潰して、克人は手を大きく前へ振り下ろした。
「進め!」
態勢を立て直す余裕を与えない追撃命令。
義勇兵の士気は、最高潮に達した。
 

【元寇そのままです。やっぱりWW3は大虐殺してたんだ…。劣等星にはケルトも存在しない?】

文庫7巻(Web 第3章) p319
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はアンチスレが原作スレまでも凌駕する糞アニメ49の452 で初出
 
十月三十一日。
 今日はハロウィン、だが、キリスト教徒でない達也に、特別な感慨はなかった。
 彼は今、対馬要塞に来ていた。
 今から三十五年前、第三次世界大戦、またの名を二十年世界群発戦争の後期、この島は中華連合高麗自治区軍の攻撃を受け、住民の七割が殺された。
 相手国を無用に刺激しない為、という理由で、国境の島にも関わらず最低限の守備隊しか置かなかった、その結果だった。
 高麗軍にも言い分はあった。
 また、当時はそういう時代だった。
 だが島民の七割が犠牲になり、脱出した二割の住民も重傷軽傷、どこかしら傷を負い、残り一割の住民が捕虜として拉致され、島が占領されたという事実は変わらない。
 対馬を奪還した後、日本政府はこの島を要塞化した。
 大規模な軍港と堅固な防壁、最新鋭の対空対艦兵装を備えた最前線の基地。
 それが、対馬要塞だ。
 

【文民統制?知らねぇな。やりたくなったら戦争だ!】

文庫7巻(Web 第3章) p320
 
「来たか」
 入室と共に敬礼した達也にぞんざいな答礼を返し、風間は彼に座るよう指示した。達也は作戦室の隅の椅子に腰を下ろした。
 達也が最後、ではなかった。僅かに遅れて、柳と山中が顔を見せる。
 見覚えのない士官は、この要塞のスタッフだろう、と達也は思った。
「予想通り、」
 全員が揃った、と見るや、何の前置きもなく風間が喋り出した。
 達也たちは慣れていたが、要塞のスタッフは戸惑いを隠せぬ様子だった。
「敵海軍が出撃準備に入っている。この映像を見てくれ」
 壁一面を使った大型ディスプレイに、衛星から撮ったと思しき写真が表示された。
 そこには十隻近くの大型艦船とその倍に上る駆逐艦・水雷艇の艦隊が出港準備に取り掛かっている様子が写っている。
「今から五分前の写真だ。このまま推移すれば、敵は遅くとも二時間後に出港するだろう。
 動員規模から見て一時的な攻撃ではなく、北部九州、山陰、北陸のいずれかの地域を占領する意図があると思われる」
「本格的に戦争を始めるつもりでしょうか」
 風間の言葉に、若い少尉から質問が飛んだ。年齢的に見て、最近この要塞に配属されたのだろう。
「彼らは三年前からずっと戦争中のつもりなのだろうな」
 皮肉に答えたのは風間ではなく柳。質問をした少尉は、羞恥に顔を赤らめて引き下がった。
「申し訳ない。どうも我が隊の者は礼儀に疎いようだ」
 一旦相手の面子を立て、
「だが結論は、柳大尉が述べたとおりだ。我が国と中華連合の間では、講和条約どころか休戦協定も結ばれていない」
 風間が再度釘を刺す。会議室の雰囲気が一気に引き締まった。
「既に動員を完了している敵艦隊に対し、残念ながら我が海軍は昨日より動員を開始したところだ。
 現状では敵の海上兵力に、陸と空の兵力で対抗するしかない」
 空気が重量を増した。
「苦戦は免れないだろう」
 発言を求める者は、誰もいなかった。
「そこで、この現状を打開する為、我が独立魔装大隊は戦略魔法兵器を投入する。
 本件は既に統合幕僚会議の認可を受けている作戦である」
 要塞のスタッフが期待と疑念の混ざった視線を風間へ向けた。
 

【軍民問わず大虐殺。これがマテリアルバーストだ! 大本営発表「民間人はいませんでした」】

文庫7巻(Web 第3章) p325
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は誰でも思いつくことが実現できてない糞アニメ52の839 で初出
 
 鎮海軍港の奥に停泊する旗艦の上に、突如、太陽が生まれた。
 それ以外に表現のしようがない熱量であり、それを後世に伝えることが出来た者は誰一人いなかった。
 計測不能の高熱は、船体の金属を蒸発させて重金属の蒸気を散撒ばらまいた。
 急激に膨張した空気は、音速を超えた。
 熱線と衝撃波と金属蒸気の噴流に、艦隊も港湾施設も消滅した。
 近くのものは、人も物も、蒸発した。
 少し離れた人や物は、爆発し、焼失した。
 海面は高熱に炙られ、水蒸気爆発を起こした。
 竜巻と津波が生じて、対岸の巨済島要塞を呑み込んだ。
 巨済島が堤防の役目を果たさなかったならば、対馬や北部九州沿岸も津波の被害を免れなかっただろう。
 破壊は鎮海軍港に止まらなかった。
 衝撃波は周りの軍事施設に及んだ。
 不幸中の幸いだったのは、鎮海軍港周辺に民間人の居住する都市が存在しなかったことだろうか。
 灼熱の暴虐が収まった時、そこには何も残っていなかった。
 

追憶編

【寒冷化で北上する?劣等星の理解不能な世界大戦の発端と大殺戮】

文庫8巻(Web 第4章) p19
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はSF(司波さんと不快)な仲間達な糞アニメ33の813 が初出
 
――西暦二〇三〇年前後より始まった地球の急激な寒冷化により、世界の食糧事情は大幅に悪化した。
 二〇二〇年代より進められていた農業生産の太陽光工場化により先進国が被った影響は限定的なものに抑えられたが、
急激な経済成長により人口爆発を加速させていた新興工業国が受けた打撃は深甚なものだった。
 最も深刻な事態に直面したのは、寒冷化と砂漠化が同時に進行した華北地域だった。
 華北の住民たちは民族的な伝統に従いこの難局を乗り切ろうとした。
 ある歴史学者が「平和的浸透」と呼んだ越境殖民――つまりは不法入植である。
 だが、不法入国を受けたロシアは、それを許容しなかった。
 例え無人の荒野であろうと、軒を貸して母屋を取られる結果となる不法入植を徹底的に排除した。
 実力を以って、流血を厭わず。
 中国は人道の名の下にロシアを非難し、ロシアは国際法の名の下に中国を非難した。
 両国の対立は、両国にとどまらなかった。
 人道の名の下に国境を越え、国際法の名の下にこれを排斥する。
 世界中に、火種がばら撒かれた。
 その背景にあるのは、寒冷化による食糧不足。
 それを補う為の、エネルギー資源争奪戦。
 火種が大火となるには、ほんの些細なきっかけがあれば十分だった。
 西暦二〇四五年、第三次世界大戦――二十年世界群発戦争の勃発。
 二〇四五年から二〇六五年にかけて、世界中で大規模な国境紛争が続いた戦乱の時代。
 傍観者でいられた国が唯の一つも無い、真の意味での世界大戦。
 大戦終了時に世界の人口は二〇四五年時点の三分の一、三十億人まで減少した。
 ロシアはウクライナ、ベラルーシを再吸収して新ソ連に、中国はビルマ北部、ベトナム北部、ラオス、モンゴル、朝鮮半島を征服して中華連合に
 インドとイランは中央アジア諸国を飲み込んでインド・ペルシア連邦を形成し、USAはカナダ、メキシコを吸収してUSNAに、それぞれ拡大。
 対照的にEU諸国は統合に失敗し、EU自体が東西に分裂、アフリカでは諸国の半分が国家ごと消滅
 南アメリカはブラジルを除き地方政府レベルの小国分立状態に陥っている。
 

【放射能以外の大量破壊兵器はOK!互いに戦争してても核だけは防ぐぜ(キリッ】

文庫8巻(Web 第4章) p20
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はSF(司波さんと不快)な仲間達な糞アニメ33の846 が初出
  
 世界にこのような激変をもたらした二十年戦争が熱核戦争にならなかったのは、ひとえに魔法師の世界的な団結によるものだった。
 西暦二〇四六年、「国際魔法協会」の設立。
その目的は、放射能により地球環境を回復不能なまでに汚染する兵器の使用を実力で阻止すること。
 核兵器の使用を阻止するという目的に限り、魔法師はその属する国家の軛を離れ、紛争に実力で介入することが許される。
 最前線で殺し合いを演じていた魔法師も、核兵器使用の兆候が観測された時点で闘争を中止し、自国・他国を問わず核の使用阻止に協力する。
 熱核兵器の使用阻止が、世界中の魔法師にとって最優先される義務と定められた。
この協定、「国際魔法協会憲章」の対象となるのは放射能により環境を汚染する兵器であり、厳密に言えば純粋な核融合爆弾はその対象にならないが
大戦時の技術水準では核融合爆弾を起爆させる為に小型の核分裂爆弾が必須だった為、熱核兵器の全面阻止という結果につながった。
こうして、二十年に及ぶ戦乱の時代、熱核兵器が使用されることは一度も無かった。
 国際魔法協会はこの功績を認められ、国際的な平和機関として大戦後の世界でも名誉ある地位を占めている――
 

【外国人の血を引く者はみんなバカ・日本軍米国系黒人兵士編】

文庫8巻(Web 第4章) p35
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は最終兵器()からwwが生える糞アニメ38の98 が初出
 
そこには軍服をだらしなく着崩した、黒い肌の大男がいた。
 ――レフト・ブラッド(取り残された血統)。
 二十年戦争の激化により、沖縄に駐留していたアメリカ軍(当時はまだUSA)がハワイへ引き上げた際、取り残された子供たち。
 その大半は親に捨てられたのではなく父親が戦死した為だけど、彼らの多くは米軍基地を引き継いだ国防軍の施設に引き取られて育ち、そのまま軍人になった、そうだ。
 彼らは勇猛な兵士として国境防衛の一端を立派に担い、その子供たちも軍人になった者が多い。
 しかし当の子供たち、つまり第二世代は素行が良くない者も多いから気をつけるべし、というのが沖縄観光に関するプライベート・サイトに共通して掲載されている注意書きだ。
 大男の後ろには、同じように軍服を着崩した同じくらいの体格の青年が二人、ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべている。
 反射的な怒りは、生理的な恐怖に席を譲っていた。
 いざとなったら魔法を使う、という当然の対処法すら思いつかないほど心が竦んでいた。
 ――視界が、兄の背中に塞がれるまでは。
 少年の、華奢な背中。
 それでもわたしより、広い背中。
 わたしはいつの間にか、兄の背後に庇われていた。
「あぁ? ガキに用は無いぜ?」
 こちらを見下しきった嘲笑で、大男が兄の顔を覗き込む。
 兄は、何も答えない。
「ビビッて声も出せねえのか?」
「ハッ、チキン野郎が。カッコつけてんじゃねえよ!」
 後ろの二人が兄に対して嗤い、凄む。
 怒りが心の中に蘇った。
 さっきよりずっと、明瞭な形で。
 わたしは、CADを持って来るべきだった、と悔やんだ。
 補助具無しでは、加減が上手くできない。こんな相手でも、大怪我をさせてしまうのは、色々な意味で拙い。
 CADが手許にあれば、こんなヤツらに好き勝手を言わせたりしないのに!
 

【もう一つのフリーセックス  これは完全に誤用ですね】

文庫8巻(Web 第4章) p72
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は見るのがTUREEEEE糞アニメ58の591 で原作スレから初転載
 
 チラッと覗き見て、もう一度慌てて顔を伏せる羽目になった。
 そこでは高校生くらいの――大学生じゃないと思う――男の人が、女の人の身体にオイルを塗っていた。
 かなり、際どい所まで。って言うか、あれって、完全に触っていない?
 つ、つつしみというものを知らないのかしら?
 公衆の面前であんな恥知らずな真似をするのは止めて欲しいわ。
 でも、男の人って、ああいうことが好きなのかしら?
 耳年増と笑われるかもしれないけど――というか、桜井さん辺りには間違いなく笑われると思うけど、男の人は女の子の身体に触りたがるものだとものの本で(「本」と言っても紙媒体じゃないけど)読んだことがある。学校の友達の又聞きで「進んだ」同級生がデートのたびにボーイフレンドから身体を求められて困っている、という話も聞いたことがある。その時は女の子を何だと思っているの、と憤慨したけれど。フリーセックスなんて悪しき風習は半世紀も昔に終わっているのよ! そもそも相手はまだ十二歳よ!
 ……いけない、いけない。落ち着かなきゃ。真夏の沖縄のビーチに雪を降らせるわけにはいかないわ。
 

【軍の開発品をプレゼントしちゃう国防軍兵士。機密保持もへったくれもない!】

文庫8巻(Web 第4章) p130
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は人類社会の公益と秩序に奉仕しない糞アニメ191の84 が初出?
 
「特化型のCADを使っていますが、なかなかフィーリングに合う物が無くて……僕はCADを使った魔法の使い分けが苦手ですから」
「ほう、そうですか。
 あれだけサイオンの操作に慣れていれば、CADも難なく扱えそうだが」
 話題は兄が使った無系統魔法から、兄のCADへと移っていた。
「司波君、よかったら僕が開発したCADを試してみませんか」
「真田中尉はCADをお作りになっているんですか?」
「僕の仕事はCADを含めた魔法装備全般の開発です。
 ストレージをカートリッジ化した特化型CADの試作品があるんですよ」
 兄が目を輝かせている、気がする。
 普通の人と比べれば随分と控え目な表現だけど、この人がこれ程ハッキリ好奇心を示すのは珍しいのではないだろうか。
 少なくともわたしは、余り記憶にない。
「試してみたいです」
 これ程ハッキリ自分の願望を述べるところも、初めて見たのではないだろうか。

~中略~

案内された先は、基地の中とは思えない、清潔で整頓された研究室。
 軍の基地なんて汚れて散らかっているか、物が無くて殺風景な物だとばかり思っていたわたしはきっと、意外感を隠し切れていなかったのだろう。風間大尉と真田中尉が微笑ましげにわたしのことを見たのは、きっとそんな理由だと思う。
 兄は感心したように、あるいは感動したように、部屋の中を見回している。

~中略~

 兄は大型拳銃形態のCADを手にとって、真田中尉から説明を受けている。
 兄の姿を見ていると、さっきの疑念が再び頭をもたげ、膨れ上がり、重くのし掛かってくる。
 振り払っても振り払っても、どうしても意識の中から消し去ることが出来ない。

~中略~

その人、つまり兄は、自分の部屋に持ち込んだワークステーションにCADをつないで熱心にキーボードを叩いている最中、と思われる。
 CADは一昨日、真田という中尉さんに貰った二丁拳銃。

~中略~

……先行投資、という思惑が分からない訳じゃないけれど。生憎と、この投資は全損になるのが確定している。だって、あの人はわたしの「守護者」だもの、軍人になんてならない。
 くれるという物をお断りする理由も無いけど、所詮は試作品。将来を見越した見学者へのお土産以上の意味は無いはずだった。
 ところがあの人は、このお土産が|甚《いた》く気に入ったらしい。
 一昨日、昨日、今日と、暇さえあればCADのシステムを弄っている。
 

【どこまで無能だ似本軍ぇ・・・】

文庫8巻(Web 第4章) p146
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は糞アニメ界のクリムゾン・プリンス40の371 で初出
 
ちょうど朝食を終えた時、全ての情報機器が、緊急警報を告げた。
警報の発令元は国防軍。つまり、外国の攻撃ということ。
わたしは食い入るようにテレビの画面を見詰めた。
西方海域より侵攻。宣戦布告は無し。
潜水ミサイル艦を主兵力とする潜水艦隊による奇襲。
現在は半浮上状態で慶良間諸島を攻撃中。

~中略~

「敵を水際で食い止めているというのは、嘘ですね?」
「そうだ。名護市北西の海岸に、敵の潜水揚陸部隊が既に上陸を果たしている」
 ……じゃあ、あの時の潜水艦は、その下調べだったということ?
「慶良間諸島近海も、敵に制海権を握られている。
 那覇から名護に掛けて、敵と内通したゲリラの活動で所々において、兵員移動が妨害を受けた」
 ……っ! 想像以上に酷い状態だわ。
「だが案ずるには及ばない。ゲリラについては、元々それ程の数ではなかった。
 既に八割方制圧を完了している。軍内部の叛逆者も、間もなく片付くだろう」

~中略~

「指令部より伝達!」
 風間の許へ通信兵が駆け寄った。ヘルメットを脱いだその顔は、強張っていた。
「敵艦隊別働隊と思われる艦影が粟国島北方より接近中!
 高速巡洋艦二隻、駆逐艦四隻! 至急海岸付近より退避せよとのことです!」
 

【国防の要?ノブレスオブリージュ?知らんな!としか思えない、迫害されてる魔法師様()と一般人の貴重なシーン。芝さん達、魔法師のトップ十師族ですよね?】

文庫8巻(Web 第4章) p158
 
「状況は分かる?」
「いえ、ここからでは……この部屋の壁には、魔法を阻害する効果があるようです」
「そうね……どうやら、古式の結界術式が施されているようだわ。
 この部屋だけじゃなくて、この建物全体が魔法的な探査を阻害する術式に覆われているみたいね」
「部屋の中で魔法を使う分には問題ないようですが」
 兄の言葉に、桜井さんが同意を示した。
 わたしには、分からなかったのに……
「おい、き、君たちは魔法師なのか」
 不意に、少し離れて座っていた男の人が兄と桜井さんに声を掛けてきた。
 仕立ての良い服を着た、見るからに社会的地位のありそうな壮年の男性だ。
 一塊になって座っているのは家族だろうか。
「そうですが?」
 いきなり話し掛けられた訝しさの混じった声で、桜井さんが答える。するとその男の人は尊大な態度で、多分、大部分虚勢だと思うけど、こう続けた。
「だったら、何が起こっているのか見て来給え」
 ……何それ?
 まるきり使用人扱いの物言いじゃない。
 感じワル……!
「……私たちは基地関係者ではありませんが」
 桜井さんもムッとした口調で言い返した。
 必要とあればいくらでも猫を被れるはずだけど、縁もゆかりも、ついでに利害関係もない相手に、そんな義理は無い、と思ったのだろう。
 しかし、桜井さんの当然の主張は、この男性には通じなかった。
「それがどうしたというのだ。君たちは魔法師なのだろう」
「ですから私たちは」
 この男の人は、桜井さんの言葉を聞こうともしていなかった。
「ならば人間に奉仕するのは当然の義務ではないか」
 ……っ!?
 まさか、まだ、こんなことを平気で口にする人がいるなんて……
それも、魔法師に面と向かって……!
「本気で仰っているんですか?」
 桜井さんの声も殺気立っている。目つきはもっときついものになっているはずだ。
 流石にその男性も怯んだようだけど、彼の暴言は止まらなかった。
「そ、そもそも魔法師は、人間に奉仕するために作られた“もの”だろう。だったら軍属かどうかなんて、関係ないはずだ」
 怒りとショックが強すぎて、言葉にならなかった。
 この男性が言ったことは、口にしてはならないことだった。
 だけど間違いなく事実の一端であり、魔法師でない人々が今でも少なからず思っていることだった。
「なるほど、我々は作られた存在かもしれませんが、」
 わたしの代わりに反論してくれたのは、それまで桜井さんに男性の相手を任せていた兄だった。
 怒りも動揺も感じられない、シニカルで、嘲りを隠さぬ口調で。
「貴方に奉仕する義務などありませんね」
「なっ――!」
「魔法師は人類社会の公益と秩序に奉仕する存在なのであって、見も知らぬ一個人から奉仕を求められる謂われはありません」
 人類社会の公益と秩序に奉仕する、というのは『国際魔法協会憲章』の一節で、魔法師以外にも良く知られているフレーズだ。当然、この男性も知っていたのだろう。
「こっ、子供の癖に生意気な!」
 だからこその、この反応。
 その男性は、赤い顔でブルブル震えながら兄を怒鳴りつけた。
 わたしが見上げた兄の瞳は、侮蔑と憐れみに染まっていた。
「まったく……いい大人が、子供の前で恥ずかしくないんですか?」
 同じ「子供」という言葉を使っていても、意味するところは全く違う。
 名前も知らない男の人は、ハッとなって家族の方へと振り返った。
 彼の家族が彼のことを見上げていた。
 彼の子供たちは、子供らしい潔癖性を以て、軽蔑の眼差しで彼を見ていた。
 動揺する男性の背中へ、兄が追い打ちを掛ける。
「それと、この国では、魔法師の出自の八割以上が血統交配と潜在能力開発型です。
 部分的な処置を含めたとしても、生物学的に『作られた』魔法師は全体の二割にもなりません」
「達也」
 この場を収拾したのは、お母様だった。もっとも、お母様にはそのような意図など、おそらく無かったと思うけど。
 お母様に呼ばれて、兄はワナワナと震える男の人の背中から視線を外した。
「何でしょうか」
「外の様子を見て来て」
 いつものように、お母様は冷淡とも聞こえる端的な指示を出した。
 しかし兄は珍しく、それに難色を示した。
「……しかし状況が分からぬ以上、この場に危害が及ぶ可能性を無視できません。
 今の自分の技能では、離れた場所から深雪を護ることは」
「深雪?」
 兄の反論を、お母様は冷たい声で遮った。
 冷たい眼差しのまま、目をスッと細める。
「達也、身分を弁えなさい?」
 口調だけは優しく、ゾクッと背筋が震えるような声音に、わたしは心の中で異を唱えることも出来ない。
「――失礼しました」
 兄は一言謝罪して、それ以上、反論しなかった。
「……達也君、この場は私が引き受けます」
 ギスギスした空気を取りなすように、桜井さんが横から口を挿んだ。
 お母様は興味を失ったお顔で、あの人から目線を外した。
「分かりました。
 様子を見て来ます」
 兄はお母様の横顔に一礼して、部屋を出て行った。
 怯えた目を向けている、あの男性の家族には、兄もお母様も、一瞥もくれなかった。
 

【被差別者はとにかく我慢、抗議は処刑・恐るべき未来世紀日本】

文庫8巻(web 第4章) p168
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は視聴者をニブルヘイムが襲う糞アニメ36の432,971 が初出
 
「狂ったか、ディック! 日本は俺達の祖国じゃないか!」
「日本が俺達をどう扱った! こうして軍に志願して、日本のために働いても、結局俺たちは『レフト・ブラッド』じゃないか! 俺たちは、いつまで経っても余所者扱いだ!」
「違う! ディック、それはお前の思い込みだ! 俺達の片親は紛れもなく余所者だったんだ。何代も前からここで暮らしている連中にすれば、少しくらい余所者扱いされて当たり前だ! それでも軍は! 部隊は! 上官も同僚も皆、俺たちを戦友として遇してくれる! 仲間として受け容れてくれている!」
「ジョー、それはお前が魔法師だからだ! お前には魔法師としての利用価値があるから、軍の連中はお前に良い顔を見せる!」
「ディック、お前がそんなことを言うのかっ? レフト・ブラッドだから余所者扱いされる、と憤るお前が、俺が魔法師だから、俺はお前たちと別の存在だと言うのか? 俺は仲間ではないと言うのか、ディック!」

~中略~

銃撃の音が途切れた。
そして、キャスト・ジャミングのサイオン波が弱まった。
チャンスだわ……!
この不安定さから見て、アンティナイトを使用しているのは魔法演算領域を持たない非魔法師。
少しくらいサイオンの保有量が多いからって、それを制御することも出来ない一般人の使うキャスト・ジャミングで、このわたしを、四葉の次期当主候補を、何時までも止められると思ったら大間違いよ!
CADは使わない。起動する時間が勿体ない。
ならば、使用する魔法はあれしかない。
わたしがお母様から受け継いだ精神干渉魔法。
お母様の魔法、精神構造干渉とは違うけれど、お母様と同じ、相手の精神に作用する魔法。
それは、相手の精神を凍りつかせる魔法。
無関係の人を巻き込まないように、アンティナイトをはめた、アイツ(ディック)だけを狙って――

わたしは、精神凍結魔法「コキュートス」を発動した。

キャスト・ジャミングが止む。
相手が「静止」したのが分かる。
人間を「止めて」しまったのは、これが三人目。
殺した訳ではないけれど、融けることのない凍結は、再び動き出すことのない静止は、死と同じ。
わたしは罪悪感に耐える為、奥歯をギュッと噛み締めた。
その所為で、貴重な時間が無為に流れた。
 

【気に食わない奴は皆殺しのwwさん。それを褒め称える未来の日本軍人。英霊号泣必至】

文庫8巻(Web 第4章) p180
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は糞アニメ界のクリムゾン・プリンス40の377 で初出
 
「では最後に、アーマースーツと歩兵装備一式を貸してください。貸す、といっても、消耗品はお返しできませんが」
「……何故だ?」
 この要求には、わたしもそう思った。何故なのですか、お兄様。
 わたしはお兄様の真意を知ろうとして、その双眸を覗き込んで、息を呑んだ。
 お兄様の瞳の中で、激怒と言うのも生温い、蒼白の業火が荒れ狂っていた。
「彼らは、深雪を手に掛けました。その報いを受けさせなければなりません」
 その声を聞いた全員が血の気を失う中で、一人、変わらぬ顔色を保っていた風間大尉は、流石に剛胆と言うべきなのだろう。
「一人で行くつもりか?」
「自分が為そうとしていることは、軍事行動ではありません。個人的な報復です」
「それでも別に構わないのだがな。感情と無縁の戦闘など、人間ならばありえない。復讐心を以て戦うとしても、それが制御されていれば問題はない」
 お兄様と風間大尉の視線が交差した。いえ、二人は睨み合っていた。
「非戦闘員や投降者の虐殺など認める訳には行かないが、そんなつもりはないのだろう?」
「投降の暇いとまなど、与えるつもりはありません」
ならば良し。固もとより今回の我々の任務は侵攻軍の撃退、若しくは殲滅。敵に降伏を勧告する必要もない。
 司波達也君。君を、我々の戦列に加えよう」
「軍の指揮に従うつもりはありません。自分が護るべきものと、あなた方が護るべきものは、違うのですから。
 ですが、侵攻軍という敵が同じで、殲滅という目的が同じであるなら、肩を並べて戦いましょう」
「よろしい。真田、アーマースーツと白兵戦装備をお貸ししろ! 空挺隊は十分後に出撃する!」
「桜井さん、母と妹を頼みます」
 お兄様は立ちつくす桜井さんにそう告げ、彼女の返事を待たず、真田中尉の後に続いた。
 その時、わたしの方を見て微かに微笑んだのは、決して、わたしの錯覚ではなかった。
 

【16巻で全否定されるんですけどね、芝さんの欠陥品設定()は…】

文庫8巻(Web 第4章) p194
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は十文字家でもウィキ工作を隠蔽できない糞アニメ61(実質62)の879 で初出
 
「達也は、魔法師としては、欠陥品として生まれました。
 あの子をそういう風にしか産んであげられなかったことには責任を感じないでもないけど
達也が魔法師としてどうにもならない欠陥を抱えているという事実は事実。
 達也は生まれつき、二種類の“魔法”しか使えません。
 情報体を分解すること、情報体を再構成すること。
 この二つの概念の範疇でなら、様々な技術を編み出したり使い分けたりすることが出来るみたいですけど、
 達也に出来るのは何処まで行ってもこの二つだけで、魔法師の本領たる情報体を改変することは出来ないのですよ。
 魔法とは、情報体を改変し、事象を改変する技術。
 それがどんな些細な変化であっても、何かを別のものに変えるのが魔法。でも達也にはそれが出来ない。
 あの子に出来るのは、情報体をバラバラに分解することと、情報体を元の形に作り直すことだけ。それは、本来の意味の魔法ではないわ。
 情報体を別のものに変化させるという、本当の意味での魔法を使う才能を持たずに生まれたあの子は、魔法師として紛れもなく欠陥品です。
 まあ、その再構成の力で私たちは助かったのだけど、あの力は厳密に言えば“魔法”ではありません」

「でも、わたしたち四葉は十師族に名を連ねる魔法師で、魔法師でなければ四葉の人間ではいられない。
 魔法が使えないあの子は、四葉の人間としては生きられない。
 だから私たちは、私と真夜は、七年前、あの子にとある手術を施すことにしました。」

「人造魔法師計画。魔法師ではない人間の意識領域に、人工の魔法演算領域を植え付けて魔法師の能力を与えるプロジェクト。
 その精神改造手術を達也に行った結果、あの子の感情に欠落が生じてしまったのです。
 いえ、感情と言うより衝動と言った方が適切かしら。
 強い怒り、深い悲しみ、激しい嫉妬、怨恨、憎悪、過剰な食欲、行き過ぎた性欲、盲目の恋愛感情。
 そういう『我を忘れる』ような衝動を、一つだけの例外を除いて失ってしまった代わりに、達也は魔法を操る力を得ました。
 ただ残念ながら、人工魔法演算領域の性能は先天的な魔法演算領域の性能に著しく劣っていて、結局ガーディアンとしてしか使い物になりませんでしたが」
まさか、と思った。
 そんなはずはない、と思った。
「その『手術』を……お母様が為さったのですか?」
 そう思いながら、問い返さずにはいられなかった。
「私以外には出来ないでしょう?」
 否定して欲しい、というわたしの願いは、叶わなかった。分かっていたことだ。
 魔法演算領域は、大脳にそのような器官があるわけでは決してなく、つまるところ精神の機能の一つ。
 人工の魔法演算領域を付加するということは、精神の構造を改変するということ。
 それは、お母様だけの魔法、『精神構造干渉』を使わなければ不可能なこと……
「……何故、そんなことを」
「理由は既に説明しました。それより、貴女が知りたがっていたことに答えましょう」
 ――ああ、そうなのですか……
わたしにも、解ってしまった。気づいてしまった。
 その実験で感情の一部を失ってしまったのが、お兄様だけではないということに。
 それが魔法の副作用か、それとも罪悪感やもっと別の精神作用によって引き起こされたものなのかは分からないけれど、
 わたしは初めて、「魔法」に恐怖を覚えた。
 人の心をこんな風に、残酷に変えてしまう「魔法」に。
「達也が失わなかった一つだけの例外……それが、答えです。
 あの子の中に残った唯一つの衝動は、兄妹愛。妹を、つまり貴女を愛し、護ろうとする感情。
 それだけがあの子に残された、本物の感情なのですよ」
 両手で口を押さえたのは、無意識の動作だった。
 あるいは、条件反射だったのかもしれない。
 そんな必要、本当は無かったのだけど。
 悲鳴なんて出て来ないくらい、衝撃を受けていたから。
 

【やっぱり放射能が検知されなきゃお咎めなし!他の大量破壊兵器は使い放題な世界】

文庫8巻(Web 第4章) p207
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は誰でも思いつくことが実現できてない糞アニメ52の897 で初出
 
「本日おいで頂きましたのは、先日の横浜事変に端を発する一連の軍事行動について、お知らせしたいことがありましたからですの」
「本官にですか?」
 軍の戦闘行為について、軍人の風間に対し部外者の真夜が、質問ではなく伝達することがあると言う。
 風間が訊き返したのも当然だろう。
「ええ、それと達也さんと深雪さんにも」
 そう言って、真夜が意味ありげな笑みを浮かべた。
 にも、と言っているが、本当に聞かせたい相手は達也たちなのだな、と穿って見なくても分かる表情だった。
「国際魔法協会は、一週間前、鎮海軍港を消滅させた爆発が憲章に抵触する『放射能汚染兵器』によるものではないとの見解を纏めました」
 放射能汚染兵器とは「放射能により地球環境を汚染する兵器」の略称で、放射能汚染を引き起こす兵器の使用を阻止することを目的に掲げる国際魔法協会、
 及び同協会に加入している各国の魔法協会で主に使用される用語だ。
 兵器、と表現されているが、そこには放射能汚染を引き起こす魔法の術式も含まれている。
 魔法協会以外では余り馴染みのない言葉だが、古式とはいえ魔法師である風間には当然通用する。
「これに伴い、協会に提出されていた懲罰動議は棄却されました」
 深雪の顔が一層の緊張に強張り、すぐに安堵のため息を漏らした。
「懲罰動議が出されていたとは知りませんでした」
 起伏に乏しい声で、風間がそう嘯く。深雪はともかく、風間がその可能性に思い至らなかったはずは無いのだが、それを指摘する声は上がらなかった。
「落ち着いていらっしゃるのね? 懲罰部隊が派遣されることは無いと確信していらっしゃったかのご様子」
「放射能汚染が観測されないのは分かっていたことですから」
 

【これが長期大戦で大発展()した艦載兵器のメイン!フレミングランチャーだ!!】

文庫8巻(Web 第4章) p243
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は設定が交通事故を起こした糞アニメ63の351 が初出
 
 二十年にわたる先の大戦期間中に、戦闘艦のメインウェポンは艦載ミサイルからフレミングランチャーに換わった。(当初はレールガンという呼び方をされていたが、大型化に伴い名称が変更された)
 現代の艦砲射撃はフレミングランチャーから爆弾を連続射出するスタイルだ。火薬砲より連射性が圧倒的に優れている上、推進剤と推進機関の重量を運ぶ必要が無いから爆薬類の積載量をミサイルより大きく出来る。(なお射程距離は火薬砲と変わらないか、寧ろこれに劣る。フレミングランチャーは連射性を重視した兵器だからであり、連射性を維持しつつ射程を延ばすと、反動が艦体に与える悪影響を無視出来なくなるからだ)
 最新鋭戦闘艦の対地攻撃力は百年前の十倍以上と言われている。フレミングランチャーの有効射程内に侵入されれば、単艦でも街は火の海となる。
 市街地攻撃だけでなく、ランチャーの連射性は陣地攻撃にも有効だ。二隻の巡洋艦から集中砲撃を浴びれば、並以下の魔法師ではひとたまりも無い。
 

【これが芝さんの初○○○です。   ん?仰角四十五度で最大射程って・・・】

文庫8巻(web 第4章) p245
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は設定が交通事故を起こした糞アニメ63の268 が初出
 
「敵艦有効射程距離内到達予想時間、残り十分」
 武装デバイスの準備を終えた達也に、真田が猶予時間を告げた。
「敵艦はほぼ真西の方角三十キロを航行中……届くのかい?」
「試してみるしかありません」
 真田の問い掛けに達也はそう答えて、武装デバイスを仰角四十五度に構えた。
 風の影響は度外視して、とにかく距離を稼ごうという構え。その体勢で魔法式を展開する。
 銃口の先にパイプ状の仮想領域が展開される。通り抜ける物体の速度を加速する仮想領域魔法。
 仮想領域の作成に時間が掛かっているものの、構築された仮想領域のサイズに、真田は満足して頷いた。
 加速効果を持つ仮想領域の長さが長ければ長い程、射程伸張の効果は上がる。
 この長さならあるいは、射程三十キロに届くかもしれない。
 だが、達也が展開している魔法は、それで終わりではなかった。物体加速の魔法領域のその先に、もう一つの仮想領域が発生した。
「なんと……!?」
 物体加速仮想領域の作用工程は三つ。
 その領域内に侵入した物体の見かけ上の慣性質量を引き下げる。速度を引き上げる。見かけ上の慣性質量を元に戻す。
 この慣性質量の操作と速度の操作の倍率が、魔法師の入力する変数となっている。
 今、達也が追加した仮想領域の性質も、基本的にはこれと同じ。
 だが、慣性質量操作の倍率がプラスに指定され、速度の倍率が等倍に、慣性質量の復元が無効化されていた。
 つまり、達也が追加した仮想領域は、真田が設計した加速の為の仮想領域魔法を、慣性質量増大の仮想領域魔法にアレンジしたもの。
 それを即興で成し遂げたということだ。
「信じられんことをする少年だな……」
 真田の呟きは、狙撃銃の発射音にかき消された。
 見えるはずのない超音速の弾丸を、目で追いかけるようにして沖を見詰める達也。やがて彼は、落胆したように首を振った。
「……ダメですね。二十キロしか届きませんでした」
 どうやって弾道を追ったのか。
 淡々とした声音だが、やはり、ガッカリしているのだろう。あるいは自分のことを、不甲斐無いと感じているのか。
「敵艦が二十キロメートル以内に接近するのを待つしかありません」
 その発言を聞いて、真田の顔色が変わった。
「しかしそれでは、こちらも敵の射程内に入ってしまう!」
 巡洋艦に搭載されるフレミングランチャーの有効射程距離は十五キロから二十キロ。
 ランチャーの射程距離は艦が許容する反動、つまり艦の形状とサイズに制限されるから、メーカーの違いを問わず、艦種からほぼ正確に予測できる。
 二十キロメートル以内というのは、その射程内だ。
 

【トップクラスの防御力でもミサイル無効は出来ないね】

文庫8巻(Web 第4章) p249
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は二科生差別を取り繕う糞アニメ69の357 で初出
 
 沖合いに、水柱が立った。

 敵の艦砲射撃の、試し撃ち。
 達也は仮想領域魔法を発動し、続けて四回、引き金を引いた。

 達也は銃弾の行方を追うだけで精一杯だった。
 風間と真田は、何らかの大規模な魔法を行おうとしている達也の邪魔をしないように距離を取っていた。
 だから、当然予想された、そして予想していたその事態に、二人の魔法を以って対処する以外の選択肢は無かった。
 敵は既に、試射を済ませている。
 ならば次に来るのは、弾道を修正した砲撃だ。
 達也の射撃より低い弾道で撃ち込まれた爆弾は、達也の銃弾が届くより早く、彼らに襲い掛かった。
 古式魔法の術者である風間は、対物干渉力がそれ程高くない。(寧ろ低い)
 本質が魔法師ではなく魔工師である真田は、対物干渉力自体は高くてもスピード面で追いつかない。
 このままでは達也が敵艦隊を撃破する前に、こちらが限界に達してしまう――
「援護します!」
 雨と降り注ぐ爆弾の中に、バイクで割り込んで来た人影があった。
 女性用のアーマースーツに身を固めたライダーは、バイクを乗り捨てるや否や、そう叫んで全身からサイオン光を迸らせた。
 敵艦隊を殲滅する魔法に精神を集中していた達也は、その声を聞いて心の片隅で驚き、安堵していた。
 驚きは、桜井が母親の側を離れたことに対して。
 安堵は、彼女の庇護の下で自分の術式に専念できる事に対して。
 調整体魔法師「桜」シリーズ。
 その特性は、強力な対物・耐熱防御魔法。
 伝え聞く十文字家の「ファランクス」の様な、高度にテクニカルな魔法は使えないが、一つ一つの対物・耐熱魔法の単純な防御力は国内魔法師中トップクラス。
 穂波はその中でも頭一つ飛び抜けた性能を少女の頃から発揮していた。
 それ故に、ただ一人の精神構造干渉魔法の使い手である、貴重な魔法師の護衛役として選ばれたのだ。
 直撃コースの砲弾が、海の上に叩き落された。
 陸に届く砲撃は無くなった。
 運動量を相殺する魔法が数百メートル先で次々に発動しているのだ。
 その様子を肉眼で見ながら、達也は銃弾が敵艦隊のすぐ上空に到達したのを心眼で識った。
 達也は右手を前に突き出し、西を指差し、その掌を力強く開いた。
 

【芝さん感情無いんじゃ? というかオートリレイズする芝さんを守って無駄死にするなんて…】

文庫8巻(Web 第4章) p254
 
彼の前には、力なく横たわる桜井の姿。
ヘルメットを脱いだ達也の顔は、紛れも無い哀しみをたたえていた。
「….いいのよ、達也君。これは寿命なんだから」
無力感に苛まれ救えぬ命を前に、失っていたはずの感情に苦しむ達也に向けて、
桜井は、力なく、濁りのない微笑みを向けていた。
「貴方の所為じゃないわ。私たち調整体は、いつ寿命が尽きてもおかしくないの」
それは違う、と達也は言いたかった。
確かに調整体魔法師の寿命は一般人に比べて不安定だが、彼女が衰弱しているのは明らかに、
短時間で大きな魔法を連続行使した負荷によるものだ。いくら「桜」シリーズといえど、
艦砲連続斉射を防ぎきるのは、負担が大きすぎるのだ。
しかし、達也がそれを口にすることを、桜井は望んでいない。
彼はそう思って、歯を食いしばった。
「本当に、貴方の所為じゃないの。私は生まれる前から盾となる役目を負わされて、
今日その役目を果たし終えたの」
だが桜井には、達也の考えていることなどお見通しだったようだ。
「それを私は、誰かに命じられてじゃなく、自分の意思で果たしたのよ」
達也は「再生」を行使しようとして、すぐに無駄だと覚った。
物質の時間を巻き戻すことはできても、命の時計を逆回転させることは、彼の力では不可能だった。
「止めてちょうだい?」
それを勘違いしたのか、桜井は甘えるような声と微笑みで、達也にそう囁いた。
「今まで生き方を選ぶ自由なんて一つも無かった私が、自分の死に場所を、選ぶことができた。
こんなチャンスを逃す気はないわ。私は人に作られた道具としてじゃなく、人間として死ぬことができるの」
彼女が心の中にこんな暗闇を抱えていたなど、達也は夢想だにしなかった。
だが自分でも意外なほど、驚きは無かった。
「だから、このまま死なせて?」
桜井の言葉に、達也は無言で頷いた。
桜井は安心した顔で、瞼を閉じた。
そのまま、呼吸が止まる。
傍らに立つ真田が経文を唱えている。
達也の肩に、風間の手が置かれた。
肩に手を乗せたまま、達也は立ち上がった。
彼の目から涙は零れない。
達也の心から、不思議なくらい、哀しいという感情が消えていた。
桜井穂波の「遺言」を聞いて、彼は、哀しむ必要は無いと納得していた。

――哀しみを納得で消すことが出来る、それが異常なのだと、この時の達也には解らなかった。
 

来訪者編

【これが師走の語源は~です。さらにXmasと続き、芝さんageも忘れずに】

文庫9巻(Web 第5章) p24 師走部分は文庫でカット
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生が糞アニメだと気づいたのは私が見た所71スレだけだ の39,63,65, で貼付け
 
 十二月は「師走」の語源のとおり、慌しく過ぎていった。(但し師走の「師」は魔法師の「師」ではない。言うまでもないことだが、念の為。
また万葉以前は師走という字が見られないことを以って広く流布されている師走の語源を否定する向きもあるようだが、
それは「しはす」の語源が「師馳せ」ではないという意味であって、「師走」の語源を否定するものではない。閑話休題)
 定期試験の結果はまたしても、筆記試験で達也が圧倒的なトップを取り一科生(の男子)を盛大に口惜しがらせたのだが、ここでは横に置く。
 十二月二十四日、土曜日。今日は二学期最後の日であり、クリスマスイブである。
 三度目の世界大戦を経た今も、日本人は相変わらず宗教に対して無頓着だ。それはきっと無宗教という意味ではなく、潜在意識下において一神教の絶対神すらも神々の一柱として認識しているということなのだろう。
だから正月もクリスマスも、さして変わらぬ感覚で祝う。街はクリスマス一色。
 クリスマス商戦一色、と言い換えた方が、もしかしたら正確かもしれないが、そんな風に斜に構えて一人あぶれている方が余程、愚かしいというもの。誰にも相手をしてもらえないというならともかく、
可愛い(!)女の子に囲まれていながら天邪鬼を気取って、楽しんでいる友人たちに水を差すのは単なるバカのやることだ。
(もちろん、 一般的には男性に当てはまることで、女の子であれば「カッコイイ男の子に囲まれて」と言うべきかもしれない)
 そう……例え「送別会」のはずなのに、日にちをわざわざ十二月二十四日に持って来て、目の前には大きな生クリームのホールケーキが置かれていて、
ケーキの上には「Merry Xmas」と書かれたホワイトチョコレートの板が飾られていても、それを「おかしい」などと言ってはならないのである。
……そもそもこの店の流儀に従えば「Xmas」ではなく「Weihnachten」のはずだが、これもまあ、ご愛嬌というべきか。
「お兄様、何か、気掛かりなことでも?」
 制服なのに、艶やかにドレスアップしているような華やかさを振り撒く妹に、達也は何でもないよ、と首を振った。
 そう、何でもないこと、でなければならない。主賓に不快感を与えるようなことがあってはならない。今日の彼は、もてなす側なのだから。
「飲み物は行き渡った?
 じゃあ、いささか送別会の趣旨とは異なるけど、折角ケーキも用意してもらったことだし、乾杯はこのフレーズで行こうか……
 メリー・クリスマス」

【権力者(一般人)の魔法師へのファッション認識設定】

文庫9巻(Web 第5章) p98
2chアンチスレでは 魔法か高校の劣等生は回りくどさエクストリームな糞アニメ67の865 で初出
 
「そんなことないわよ!
 これでも大統領のお茶会に招かれたことだってあるんだから!」
 勢いに任せて、自分がどれだけハイソか主張するリーナ。
「ほぅ……」
 それを聞いて、達也はニヤリと笑った。その笑みから、ヒヤリとする冷気が漂い出す。
 リーナは反射的に手で口を押さえた。
 彼女には達也の浮かべた表情が、メフィストフェレスの笑みに見えていた。
「大統領の、ね……」
 銃もナイフも無しに人を殺せる魔法師を忌避する権力者は多い。
 日本はこの垣根が寧ろ低い方で、国によっては定期的に解毒剤を必要とする遅効性の毒物を自ら服用した魔法師でなければ、一定レベル以上の権力者に近寄らせないというところもある。
 USNAで大統領に直接面会可能な魔法師は、確か……
「はめたのね……?」
 上目遣いで悔しそうに達也を睨み付けるリーナ。
 しかし、これはリーナの穿ち過ぎだ。
「人聞きが悪いな。
 今の話の流れは全くの偶然だ。
 どちらかと言えば、リーナの自爆だろ?
 先に仕掛けてきたのはリーナの方なんだから」
 ぐうの音も出ないとはこの事だった。
 リーナに出来るのは、悔しそうに達也を睨み続けることだけだった。
 

【人種差別で荒廃する未来の日本・渋谷】

文庫9巻(Web 第5章) p103
 
渋谷・二十三時。
土曜日の深夜、路上に車の姿はなく、若者の姿で溢れていた。
車の姿が見えないのは、交通システムと勤務慣習の変化によるもの。
自動運転・個別輸送の電車は二十四時間止まることがなく、
渋谷キャビネットの様な大都会であれば、共用車両を使うまでもなく、
地下に張り巡コミューターらされた動力歩道に乗ればすぐに駅へたどり着く。
それに在宅勤務のインフラが整備された現代では、深夜まで事務所にしがみついている必要が全く無い。
そんな急を要する仕事があるなら、最初から出勤せずに自宅で処理して専用回線で
会社に提出する。今の事務所は商談の場であって事務処理の場ではないのだ。
堅気の商売をやっていれば、わざわざ深夜に商談をしなければならないことなど無い。
もっとも、渋谷以外の街でもこの時間帯、同じ光景が見られるかというと、そうでもない。
渋谷、新宿、池袋、六本木……戦前(第三次世界大戦前、という 意味)、
若者向けの繁華街として栄えた街の中で、今でも深夜に若 者がうろつき、集まる景色が見られるのは、
この渋谷だけだ。
二十年に及ぶ混沌の時代、時期をずらして、新宿、池袋、六本木 は外国人による破壊活動と、
それに怒った若者の外国人排斥活動に よって荒廃を極め、
所々に虫食いの様な廃墟が生じた。その復興の 過程で徹底した治安回復策が取られ、
これらの街はかなり窮屈な繁華街として再建された。
渋谷はその例外だった。
戦前から荒廃の度を深め、若者同士の抗争が激化し、いち早く外 国人の排斥が完了したため逆に、
他の街の様な徹底した破壊を免れることになった。
ただそれが故に、夜の無法状態が今でも放置されているのだから、
どちらが良かったのか一概には言えない。
これが昼も夜も無法地帯というなら、戦前に比べ無秩序に対して 非寛容となった政府や自治体による
「再開発」が進められただろう。 今の行政当局は、
不動産に関する私権の制限について、かなり乱暴になっている。
しかし渋谷は、昼と夜で全く違う顔を持つ。
昼は堅気の会社員が忙しく行きかうビジネス街。
夜はアウトロー気取りの若者が徘徊する歓楽街。
一斉に手を入れることが出来ないが故に、当局も中々再開発へ踏み切れずにいる。
そして今夜も、新年早々、多くの若者が路上に集まり、思い思いに騒ぎ、笑い、いちゃつき、殴り合っている。
 

【一軍のトップを屈辱的なボディチェック っていうかCAD無くても魔法使えるんで意味ないよね?】

文庫10巻(Web 第5章) p129
 
リーナは人生初とも言うべき居心地の悪さを味わっていた。
 屈辱的といえば大統領主催の|茶会《ティー・パーティー》に招待された時の、女性にとって屈辱以外の何者でもない徹底したボディチェックを受けさせられた経験があるが、不快感で言えば今この時は、それに匹敵した。
「……では、スターズのシリウスともあろう者が、高校生相手に手も足も出せずに容疑者を奪われた、ということかね」
 ミアは自爆したので最終的には奪われていません、と抗弁したかったが、査問委員がそういうことを問題にしているのではないと、流石に理解していたので、大人しく俯いていた。
「しかもその容疑者は、同じ部屋で寝起きしていたオペレーターだということじゃないか。
 一ヶ月近く一緒に暮らしていて、気がつかなかったのかね」
 その「容疑者」をオペレーターとして潜入任務に不慣れな自分の下につけたのは貴方たちではないか、とリーナは今度こそ声を大にして言い返したかった。
 そんなことが言えるはずはない、と分かっているから余計、ストレスはが溜まる一方だ。
 更に、ネチネチ、ネチネチと嫌みが続く。
 USNA軍内部にも、若すぎるリーナに嫉妬している者は少なくない。実戦から縁遠い軍官僚ほどその傾向が強く、今、彼女の前にいる男たちは(何故か女性は査問委員に選ばれていなかった)、典型的な「実戦を知らない」軍官僚たちだった。
 真面目に考えたり腹を立てたりするのが馬鹿馬鹿しくなる意味の無い(少なくともリーナの主観では)嫌みをボーっと聞き流していたリーナだったが、
「ところで、少佐のメディカルチェックは万全なのか?
 感染者と一ヶ月同居していたのだろう?
 少なくとも噛まれた痕が無いかどうか、すぐにでも確認すべきではないか。
 もしまだであるなら、今この場ででも、確認すべきだ」
 流石にこの暴言というか暴論というか、セクハラもいいところな言い種には、目を覚まさずにいられなかった。
 今、ここで、裸になれというのか、この狒々オヤジどもは!
「それは少佐に対して、余りに失礼というものでしょう」
 激発寸前で踏みとどまることが出来たのは、このタイミングの良い援軍があったからだ。
 お陰でリーナは「若いのに冷静で思慮深い」という評判――評価ではない――を守ることが出来た。
 

【これが密室外交?本気ですか?】

文庫10巻(Web 第6章) p164
 
かつて、外交と言えば、砲艦外交か密室外交と相場が決まっていた。
 やがて、バランス・オブ・パワーの時代を経て大同盟が外交の基本方針となり、それと同時に外交スタイルも会議・セレモニー型が主流となったが、砲艦外交や秘密外交が姿を消したわけではない。
 秘密外交はセレモニーを成功させる為に欠くことの出来ない下準備として、これに携わる者は外交の花形から外交の職人として、今も世界を暗躍している。
 何時でも、何処でも。
 この世から陰謀の種が尽きることはない。
 今夜も。
 この国でも。

「……全く、狂信者という輩は度し難いものです」
「ハハハ……あの手の連中は、走らせるのは簡単ですが、手綱を取るのは困難ですから」
 テーブルを挟んで、スーツ姿の中年の男が、向かい側に座る、やはりスーツ姿の、但しこちらはモンゴロイドではなくコーカソイドの、中年の男に酒を勧めた。
 コーカソイドの男は在日期間が長いのか、あるいは趣味、もしくは教育の賜物なのか、差し出された徳利から注がれる透明な液体を小さな杯、つまりお猪口で受けると、作法に従いそのまま口元に運ぶ。
「改めて考えると実に不思議で、何と言いますか上品な酒ですな、この清酒という酒は……蒸留していないのに無色透明なのですから」
 そつなく、相手国に対するお世辞を挿むのも忘れない。
「いえいえ、ワインの鮮やかな赤に比べれば華やかさに欠けていることは否めません。
 無論、味の方はご満足いただける物をご用意したつもりですが」
 お世辞を受けた方も、謙遜とアピールを忘れない。
 向かい合う二人の共通点は、心の裡を、見せないこと。
「本当ですね……このまま心地良く酔いしれたいところですが、先程も申しました狂信者どもが無法を尽くしているものですから、なかなかゆっくりは出来ません」
「貴国滞在中の同胞の安全に、特段のご配慮をいただいている件につきましては、感謝にたえません」
 二人の声の調子に変化は無い。
 顔にも薄い笑みが浮かんだままだ。
 だが、この二人と同じ世界に生きる者なら、最前までとは異なる空気を感じ取れたはずだ。
「いえいえ、当然の義務ですから。
 とは言うものの、相手は理屈の通じない狂人ですからな……
例えば、中華連合艦隊を殲滅した大爆発は科学的に体系化された魔法技能によるもので、悪魔の仕業などではないと、いくら説明しても聞こうとはしないのですよ」
「相手が聞く耳を持たないからといって、保護すべき外国人に被害が出た時の言い訳にはなりませんからね……ご同情申し上げます」
 二人は交互に徳利を傾け(もちろん相手に向けてだ)、示し合わせたように、同時に杯を|呷《あお》った。
「これは愚痴と思って聞いていただきたいのですが、せめてあの“グレート・ボム”の概要でも明かしていただければ、彼らを大人しくさせることも出来ると思うのです」
「……これも愚痴と思って聞いていただきたいのですが、朝鮮半島南端で使用された兵器については、軍部が情報を握り込んでいるのですよ。
 いくら機密性が高いといっても、シビリアンコントロールは民主主義の基本なのですが……軍人というのは、何故ああも頑固なのか」
 二人の視線が瞬時、火花を散らし、刹那の後には、どちらの瞳も空っぽの笑みを浮かべていた。

◇◆◇◆◇◆◇

「今、聞いてもらったとおりよ」
 盗聴した会話の再生を止めて、藤林が顔を上げた。
「今回はウチの外交官連中も、結構頑張ってるみたい。
 流石に『戦略級』の重要性と特殊性は理解出来ているんでしょうね」
「それに」
 何事か言い淀んだ達也に向かって「んっ?」と小首を傾げ、藤林が続きを促す。
「……それに、外務省にも面子があるのでしょう。
 三年前、一方的な侵攻を受けて、日本中から腰抜けの罵倒を受けながらも必死で非軍事的解決を探り奔走していたというのに、その努力を真っ向から虚仮にされたんですから」
「それは中華連合のやったことですよね……?」
 

【十師族の私的な影響力が公的機関を動かす、腐った体制】

文庫11巻(Web 第5章) p121
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は視聴者が呼吸止素(コキュートス)な糞アニメ42の734 で初出
 
市ヶ谷の一角にある中層ビルの地下。
 ここには知る人ぞ知る、国防軍情報部の分室が置かれている。
 防衛省内の本部が表向きの国防軍諜報活動の中枢なら、この「地下分室」は裏側の、真の中枢の一つ。
 中枢であるなら「一つ」という言い方は本来おかしいのだが、「本部がやられて機能麻痺」という事態に陥らない為の、リスクコントロールの産物である。
 無論そこには、普通ではない組織形態を作った事の副作用として、大きな弊害が生じている。
 諜報組織には「右手が何をしているのか左手は知らない」という側面がつきまとうものだが、ここではそれが特に顕著だ。
 自分たちだけで好き勝手をやらないのはまだ救いがあると言えるが、各セクションに別々の後援者がついて、その意向に従いバラバラに活動しているのが実情だった。
 国防軍情報部は、組織内に酷い不統一を抱え込んでいるのである。
「監視対象は都心方面へ移動中。同行者は妹他二名」
 この地下分室のパトロンは大手電機メーカーの業界団体で、それは同時に国内第二位の軍需産業グループだ。
 そして、その連合体に七草家が深く食い込んでいるのだった。
 

【傾向があるから、で納得する劣等科学者の導き出したあまりにキモい推論】

文庫11巻(Web 第6章)p74
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は効率よりもお兄様の感情を最優先して世界を歪める糞アニメ213の744 で初出

現在、魔法師は早婚であることが求められている。
特に女性魔法師は、早くに結婚して、早くに子供を産むことが求められている。
何故なら魔法師は、代が新しくなる程、先天的に高い能力を持っている傾向があるからだ。
科学者はそれを「魔法が遺伝子に馴染む」という言い方をしている。
トップクラスの能力レベルに世代間の差異は見られないが、平均的な能力を比べれば確かに、祖父の世代より父の世代、父の世代より自分たちの世代の方がレベルが高い。
いずれは均衡点が訪れるだろうが、今はまだ、次の世代を早く産み出すことが強く期待されている。
魔法大学を育児休学する女子学生が珍しくない程に。

【執事と金庫番を馬鹿にしてるだろう?】

文庫11巻(Web 第6章) p161
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は引き金を引くだけで終わる糞アニメ81の681 で初出
 
青木は四葉の資産管理を任せられている金庫番。彼に声が掛かるということは、単なる買い物ではないということだ。
 四葉にとっても安くない(世間にとっては大層高価な)物か、購入自体が難しい希少品や非売品の類か。
 だがそれでも、青木の顔に緊張の色はなかった。そういうリクエストに答えてこそ自分の存在意義があると彼は思っているし、
 性格面で問題を抱えているとはいえ、実力の方は合法的な面でも非合法的な面でも確かに一流と言えるだけのものを備えていた。

 青木も、相手が達也だから、こうも易やすと心情を露わにするのだろう。地下経済に巣食う魑魅魍魎を相手に
十年以上四葉の金庫を守り続けてきた青木に、仮面の一枚や二枚被れないはずはなく、舌の三枚や四枚使い分けられないはずはない。
 感情を露わにしていることが彼の仕事を困難にしていると、青木にわかっていないはずもなかった。
 だが彼は、四葉家における序列、自分が拠り所とする組織内部の階級に意識を縛られていた。
 階級意識は、人をかくも愚かにする。
 

【ザ・デストロイはここで出ます。 にしても、未来作品でビデオゲームってセンスw】

文庫11巻(Web 第6章) p224
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生はエリカスが冷たい尊師を誉めて温める糞アニメ70の369 で初出
 
『それは、僕の望むところじゃない。
 ……ロマンチストと笑ってくれても良いけど、魔法は人類の革新につながるものだと僕は思っているんだ』
 向こうに聞こえていないと分かっていてこそだが、達也は実際に噴き出していた。
 どうも、この少年とは根本的な部分で意見が合わないようだ。
『そんな訳で、僕は今後、継続的に、君に必要な情報を提供しようと思う。
 タツヤ・シバ――戦略級魔法師“|破壊神《ザ・デストロイ》”』
 レイモンドが口にした大袈裟な二つ名に、達也は思い切り顔を顰めた。
 安っぽいビデオゲームのボスキャラに出てきそうな名前ではないか。
 もしかしてこの少年、世界共通語となった「オタク」なのだろうか。
 

【劣等星では鉄砲伝来と明治維新は無かったんです。近未来で刀剣術?】

文庫11巻(Web 第5章) p278
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は視聴者が呼吸止素(コキュートス)な糞アニメ42の757 で初出
CQBやCQCを根本的に勘違いしてると思います
 
 剣の魔法師。
 千葉家に与えられたこの二つ名は、かの家がいち早く、刀剣と魔法を併用する近接戦闘技術を確立したことに由来する。
 魔法による近接戦闘技術、と言うなら別に、千葉家の専売特許ではない。
 しかし、日本以外で生まれた魔法併用型近接戦闘技術は、知られている限り全てが、銃器や「飛び道具としての魔法」を補助するものとして開発された。
 その主な形態は接近された状態において、銃器に匹敵する攻撃力や銃器を無害化する防御力を発揮することにある。
これに対して千葉家が体系化した「剣術」は、刀剣による白兵戦闘をメインに据える技術体系だ。
 自分自身に魔法を掛けて銃器の間合いから刀剣の間合いへ飛び込み、素手やナイフより攻撃力に勝る刀剣を以って静かに、速やかに敵を斃す。
 奇襲性と隠密性に優れたこの技術は、都市ゲリラ戦、対テロリスト作戦における日本軍、日本警察の大きなアドバンテージとなった。
 剣術自体は千葉家が編み出したものではない。
 日本において魔法の軍事利用が研究され始めるのとほぼ同時に、刀剣術との併用というアイデアは様々な魔法師の手で試行錯誤された。
 千葉家はそれを、修得しやすく体系化しただけだ。 
 しかし、伝達しやすい形に体系化するという行為は、「技」を「技術」に昇華する。
 技術の普及にとって、画期的な意味を持つ。
 千葉家の先代当主は「現代の(上泉)信綱」と称賛され、その功績に対する敬意を以って千葉家は「剣の魔法師」と呼ばれるようになったのだ。
 

【剣術道場の序列が軍の階級より上だと…?なんて国だ。あ、『抜刀隊で笑ってはいけない24H』なのか】

文庫11巻(Web 第5章) p279
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は視聴者が呼吸止素(コキュートス)な糞アニメ42の738 で初出
 
千葉家の先代当主は「現代の(上泉)信綱」と称賛され、その功績に対する敬意を以って千葉家は「剣の魔法師」と呼ばれるようになったのだ。
 そうした歴史的経緯を背景に、陸軍の歩兵部隊と警察の機動隊に所属する魔法師の実に七割から八割が、一度は千葉の剣術を学ぶと言われている。
 陸軍第一師団・遊撃歩兵小隊、通称「抜刀隊」。
 彼らは九島家の派閥に属する集団だが、同時に刀剣と近距離魔法を使った近接戦闘の部隊であり、歩兵部隊の中でも特に千葉一門の教えを受けた時間が長かった。
 彼らにとって千葉家はいわば、師匠筋である。
 公の席に顔を出すことが無かったエリカのことは知らなくても、「千葉の麒麟児」として有名な修次のことは当然知っている。
 いや、知っているどころか、この分隊の指揮官からして、修次に剣の手解きを受けた経験を有していた。
 従って、
「師範代……」
 修次が突然姿を見せて、彼らが硬直してしまったのは、理由のある反応だったのだ。
 軍の階級で言えば、まだ学生の修次より正規の士官である分隊指揮官の方が上
 だが今、この場を支配しているのは、武門の序列だ
 修次は、動きを止めた彼らの脇を通り抜け、エリカと向かい合わせに立った。
 

【ホノカスの気持ち悪い隷属遺伝子設定】

文庫11巻(Web 第6章) p292
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は圧倒的なトップ糞アニメ72の379 で貼付け
 
 魔法師開発研究の最初期。魔法に対する権力者の怖れが迷信的なほどに強かった時代。
 エレメンツ開発を決定した権力者たちは、作り上げられた「魔法使い」や「魔女」が、自分たちに決して牙を剥かない保証を求めた。
 主に対する絶対服従の因子を、遺伝子に組み込むことを科学者に命じたのだ。
 性格は遺伝するのか?
 それは、今尚答えが出ない、遺伝学者と心理学者を悩ませているテーマだ。
 一卵性双生児でも、全く異なる性格に育つ。この事実を前にすれば「性格は遺伝しない」という結論に飛びつきたくなる。
 しかし一方で、親と子、祖父母と孫、曾祖父母、曾孫、そうした縦の血縁で見たならば、単に「環境によるもの」では片付けられない類似性が表れる傾向も、確かに否定できない。
 遺伝子工学者は権力者に与えられた課題に沿って、出来る限りの措置を施した。
 その結果(と言い切って良いのかどうか)、「エレメンツの末裔」には高い確率で、ある性向が見られる。
 それは、依存癖。
 誰か特定の人間、多くの場合、異性を定めて、その人間に徹底的に依存する傾向が大きな割合で共通して観測されるのだ。
 彼らエレメンツの末裔は、それが遺伝子に刻まれた自らの宿命と考えている。
 もしかしたら、そういう言い訳で、他者に依存する自分を許しているのかもしれない。
 しかし彼ら、彼女たちの「依存」は、世間一般に見られる「弱い」感情では無い。
 彼らの「依存心」には、もっと適切な別の言葉が有る、と主張した学者もいる。
 即ち、「忠誠心」。
 揺るぎなき「自分は彼のものである」という意志。
 

【横浜事変の呆れた真相。不自然に遅かったのはUSNAじゃなくて似本軍であろう】

「日本とUSNAは同盟国だが、同時に西太平洋地域における潜在的な競合国でもある。
 日本の適度な弱体化は、USNAの利益に適っているんだ。
 一方、中華連合は大国といっても、日米同盟と正面からやり合う力はない。そんな博打を打たなければならない程、国内状況も追いつめられてはいない。
 では何故、中華連合は横浜侵攻という暴挙に出たのか」
 達也は一旦言葉を切って、深雪に考える時間を与えた。
 彼は妹を、綺麗なだけで頭が空っぽなお人形にしたくなかった。
「……中華連合には日本とアメリカを同時に相手取る力はない……
 アメリカは日本の同盟国だけど、日本が今よりも少し弱くなれば良いと考えている……」
 独り言のようにそう言って、深雪は「あっ!」とばかり口元に手を当てた。
「まさか……中華連合とUSNAが裏で手を結んでいたのですか?」
 達也は「よくできました」と満足げに微笑み、藤林はその二人の様子に見て、苦笑を漏らしていた。
「手を結んでいた、というのは言い過ぎかもしれないけれど、一種の共謀関係にあった可能性は、かなり高いんじゃないかな」
 達也が藤林の方へ目を向けると、彼女は苦笑を消して小さく頷いた。
「例えば、中華連合の軍事侵攻に対し、USNAは太平洋艦隊の出動を故意に遅らせる、とかね」
「実際、あの時のUSNA艦隊の反応は、後から思い返してみれば、不自然なくらい鈍いものだったわ」
「おそらく中華連合軍の目的は、領土の占領や重要施設の破壊ではなく、技術者と技術の拉致強奪にあったのではないでしょうか?」
「そうでしょうね。場所と戦力から考えると、それ以上の戦果は望めないもの。
 艦隊の動員は、あくまでも作戦失敗に備えたものだったのでしょう。
 結果は彼らにとって、薮蛇もいいとこだったけど」

スティープルチェース編

電撃公式13巻試し読み

【ヤクザ部族による蛮行の例・高校生を戦闘実験の材料に】

文庫13巻 p29
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は積極的平和主義をfuりかざす糞アニメ65の123 で初出
 
「毎年八月に魔法科高校同士の対抗戦が行なわれているのは知っているな?
 今年はそこでスティーブル・クロスカントリーという種目が採用されることになった。
 物的障碍物と共に、魔法による妨害を乗り越えてゴールを目指す長距離障碍物競走だ」

「その障碍物としてパラサイトドールを使うのですね?」

「高校生の競技会に人数を割く余裕は、国防軍にも乏しいだろうからな。
 パラサイトドールを使えば生徒から反撃を受けた場合も軍の魔法師が負傷することも無いし、
 忠誠術式で妖力の強さに制限を掛けておけば生徒に大きな怪我を負わせる心配も無い
 実験室から出して最初の運用試験を行なうには格好の機会だ」

 万が一、パラサイトドールが制御を外れ魔法科高校生に被害が出た場合のことは、烈も真言も口にしなかった。
 

【前年より一人増えたのに、芝がいないと生徒会の仕事が回らない?エリート校じゃないの?】

文庫13巻 p38
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は引き金を引くだけで終わる糞アニメ81の699 で初出
 
生徒会書記就任直後の芝さんage

 

【他人(仲間も)がどうなろうと知ったことか!キモウトの身勝手な言動】

文庫13巻 スティープルチェース編 p252
ヤクザ部族の実験 を防ごうとする芝さんへ発したセリフ
 
「お兄様は、わたしを守ってくださればそれで良いのです。お兄様が責任を負う相手は、わた
しだけで良いのです」
 ただ彼女の声だけが、今にも泣きだしそうに震えていた。
「お兄様がわたし以外の者を、一高の生徒ばかりか他校の生徒までもを、お気遣いになる必要
は無いのです!」
 

【何でも一人でと考える幹比古ごときの悩みは解決済みです!(キリッ って一年前に言ってませんでしたか?】

文庫13巻 p253
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は十文字家でもウィキ工作を隠蔽できない糞アニメ61(実質62)の103,105 で初出
出来もしない仕事を多数パラに抱え込んでパンクする人を見ているようですね。なお、入学から散々焚き付けたのは、他ならぬ キモウト/司波深雪 自身である。
24時間365日勤務の超ブラック企業四葉のガーディアンとしてお勤めのはずですが、仕事抱え過ぎつれーわーですか?
 
睨む様に、挑む様に、深雪が達也と視線を合わせる。彼女の目は、涙を流していなかった。
「それでも行くと仰るなら、僭越ながら力尽くで止めさせていただきます」
達也は今度こそ、本気で狼狽した。
深雪の中に、禁断の力が満ちたのを感じて。
「止せ、深雪!お前まさか、俺の『眼』を封じるつもりか!?そんなことをしたら、お前まで魔法が使えなくなってしまうぞ!」
「明日の競技は危険しなければならないでしょうね。もしかしたら一高もたがくしなければならないかもしれません。ですがお兄様にこれ以上ご無理をさせるよりましです!」
深雪は初めて、興奮を露わにした。泣き声で、本心をむき出しにした。
「お兄様、お兄様はご自分がどれ程無理を重ねているのかお気づきですか!朝から夕方まで選手のCADを調整して、試合が終われば他の技術スタッフの相談を聞いてアドバイスをして、夜は遅くまで後輩を指導しながら翌日の準備。その側らで九島家と国防軍を相手に……これではいくらお兄様でも、もちません!お兄様が壊れてしまいます!」
 

古都内乱編

電撃公式14巻試し読み
電撃公式15巻試し読み

【これが最高レベルの防御力です(ただし芝を除く)】

文庫15巻 p59
横浜編冒頭で エリカス/千葉エリカパンツ・アッー!/レオンハルト が拳銃突きつけられて詰んだ件をネット上で突っ込まれまくった結果、言い訳的に追加された。
 
 千倉朝子が得意とする魔法は「ベクトル反転」。撃たれることがあらかじめ分かっていたな
ら、対物ライフル弾を跳ね返すことも彼女の事象干渉力を以てすれば可能だ。不意打ちで狙
撃されてはどうしようもないが----それは朝子だけでなく大抵の魔法師にも言えることだ--例
えば目の前で拳銃を突きつけられているといった状況には滅法強い。
 それに彼女の魔法が通用するのは飛び道具相手だけではない。人間が突っ込んで来ても、そ
の運動量を跳ね返す。普通乗用車程度までの質量なら余程の高速、例えば時速二百キロメート
ル超とかでない限り対処できる。
 

【民間人を巻き込むのに一切の躊躇なし!どっちが悪役?やっぱり十師族は国家の癌】

文庫15巻 p292
2chアンチスレでは 魔法科高校の劣等生は緻密()な設定で自縄自縛の糞アニメ176の119 で説明
 
 周公瑾は背筋に悪寒を覚えた。こんな感覚は、黒羽貢を相手にしても、名香三郎を相手にしても、経験しなかったものだ。
 九島光宣は、車を爆発させることに一切の躊躇を持っていなかった。
 彼を爆殺することだけではなく、通りかかった歩行者やすれ違う対向車を巻き添えにすることも一切躊躇っていなかった。
 通行人がいなかったからではない。他の車が通らなかったからでもない。この少年は、最初からそれを眼中に入れていない‥‥。
 その非情さが彼の非現実的な美しさと相俟って、光宣を人にあらざる妖の者に見せていた。

【認識って?精神って?細かいところが気になって仕方ない。そして論文コンペで万雷の拍手、新たなスターって・・・】

『魔法科高校の劣等生』15 古都内乱編〈下〉 p307~309
アンチスレでは 魔法科高校の劣等生は教養捨てて殺人を習う糞アニメ210の884~ で初出
 
「――この観測結果からわかるとおり、人間が何かを認識すると同時に、想子情報体が新たに形成されています。そしてこの情報体は、対象が認識されなくなると同時に崩壊します。ここで注目すべき点は、認識によって形成された想子情報体は認識者が能動的に消し去る、例えば瞬間的に焼却したりする時、実際の消滅に先んじて崩壊を始めるということです」
「――ご覧いただきました多くの観測結果は、想子が意思や思考を形にする粒子であるという仮説に合致します。人間の受動的な認識が想子情報体を作り出すのではなく、能動的な精神作用が想子情報体を作り出していることを示しています」
「――人の意思が、言い換えれば精神がこの物理次元に何らかの働きかけを行う為には。意思を想子情報体に変換しなければならないと考えられます。この仮説を採用すればテレパシーをはじめとした知覚系『超能力』も想子情報体を理容した魔法として解釈可能です」「――意思、即ち精神活動により形成される想子情報体はただ今見ていただいた通りの特徴を持つと考えられます。無論、これですべての特性を解明できていると申しませんが、ここにお示ししたファクターを起動式として記述できれば、精神干渉系魔法の定式が飛躍的に加速することでしょう。それと同時に、精神干渉系魔法を無効化する対抗魔法の開発にもつながります。それは精神干渉系魔法に対する迷信的な恐れを払拭するきっかけになるでしょう」
(承前)
「――このように精神干渉系魔法もまた、四系統八種の魔法と本質的に変わるところはありません。『精神』もまた物質世界とのかかわりを持つ限りにおいて想子情報体を形成します。それは意思の形を示した想子情報体です。ですから、この想子情報体を改変する魔法式を構築すれば、少なくともこの世界に対する具体的な意思、顕在意識を改変できます。この魔法は人の認識を改変し、能動的な意思を改変します」
「――人の精神が顕在意識と潜在意識に分かれているのではなく、一つの意識の中で顕在化している部分と潜在化している部分があるのだとすれば、全ての精神干渉系魔法は意思の形成により作り出させる想子情報体を観測し分析することにより真の技術としての魔法として発展することが出来ると考えます。
 光宣はプレゼンテーションをこう締めくくった。
 一瞬の静寂。
 会場は、万雷の拍手に包まれた。
 二〇九六年度全国高校魔法学論文コンペテシション。優勝の栄冠は、一年生、九島光宣を主発表者に起用した第二高校の上に輝いた。
 第一から第九までの魔法高校に、新たなスターが誕生した瞬間だった。

四葉継承編

電撃公式16巻試し読み

【叔母上の口ぶりから察するに、大事なことなので2度言いました 本当にプロの物書きですか?】

文庫16巻 p250
アンチスレでは 魔法科高校の劣等生はおなる芝兄妹を真顔で迎える糞アニメ(187)の967 で初出
 
「お前には、遺伝子異常を引き起こす因子が全くないらしい」
 
「お前は、調整体なのだそうだ」
 
 深雪が目を見張り、両手で口を押えた。
 長い髪が揺れる。
 怯えた顔が年相応に見えて、達也はそんな場合ではないと知りつつ少しホッとした。
「わたしが調整体……」
「お前は母さんと親父の生殖細胞から作られた受精卵をベースに、四葉の科学、魔法学の粋を
 集めて作られた『完全調整体』。調整体の持つ全ての欠陥を克服し、人間以上に人間として
 完成された四葉の最高傑作なのだそうだ」
達也の説明は、自分が自然に生まれた人間ではないという事実に対する慰めにはならない。
だが深雪は何故か、目に見えて落ち着きを取り戻した。
 深雪が動揺したのは、怯えたのは、自分が人工的に作られた人間だということに対してでは
なかった。深雪は今の自分の身体を、命を、達也から授かったものだと思っている。思い込ん
でいる、と言い換えた方が相応しいほど強く確信している。だから元々の肉体がどのように作
られたものなのかは、あまり気にならなかった。
「ではわたしは……お兄様を置いて、突然冥府へ落とされるようなことは無いのですね?」
 彼女が怯えていたのは、調整体の不安定な寿命。自分がある日突然息絶えて、それ以上達也と共にいられなくなる恐怖。
叔母上の口ぶりから察するに、魔法の連続行使による耐性は、おそらく俺より高い」
「わたしは……お兄様と共に生きていけるのですね」
叔母上の口ぶりから察するに、お前の方が寿命が長そうだ」