「第3話」

Last-modified: 2014-02-19 (水) 23:55:32

皆様、自身は誰よりも優れていると思っていた事はありませんか、誰よりも強いと思っていたことはありませんか
そのほとんどが大人になるにあたって現実をわきまえていくことでしょう、しかし・・・彼、ライダーを召喚した少年は己の分をまだわかっていない子供なのです
これを愚かと笑うでしょうか、それでも大人になろうとしている少年の心こそ最も熱いと言えるのではないでしょうか

 

「小僧、貴様がワシの、東方不敗マスターアジアのマスターか」

 

聖杯戦争に参加した少年「ウェイバー・ベルベット」とライダーとして召喚された「東方不敗」の出会いは何をもたらすのでしょうか!
それではFate/stay GUNDAMfight・レディィィィゴォォォォオオオオ!

 

「馬鹿にしやがって馬鹿にしやがって馬鹿にしやがってッ・・・あれが講師のやることか!」
ウェイバーが魔術協会の総本部、通称を『時計塔』にて憤慨の中歩いていた・・・今より一年前の事である
構想三年・執筆一年、魔導の血脈の差を埋めるべく作り上げた論文は彼の講師、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトによって破り捨てられた
九代を重ねる魔導の名門アーチボルト家の嫡男、学部長の娘とも婚約し若くして講師の座を手に入れ魔術師として磐石な地位を手にした鼻持ちならない男・・・
「ボクの才能に嫉妬しているんだ!血脈に胡坐をかくだけが能の偏屈魔術師め・・・ぐわっ」
何かにつまずくウェイバー、何もない廊下で何が・・・と思うなか声をかけられる
「大丈夫かいキミ、ところで今は講義の時間だと思うけど何をしているんだい?」
ここで初めて人の存在の気付く、どうも頭に血がまわって廻りが見えていなかったらしい
「あ・・・えっとアーチボルト先生に用事を申し付けられて」とっさに言い訳を並べるウェイバー
「だったらこれをアーチボルト先生に届けてくれないか?」そして手渡される一つの小包、それは・・・
「聖杯戦争?」手渡された小鼓の中身は征服王イスカンダルが所有していたとされるマントの切れ端
それは聖杯戦争で呼び出すサーヴァントのための聖遺物にほかならなかった、そういえば近々極東の地で行われる儀式に参加すると聞いたことがある
それは魔術師同士の殺し合い、肩書きなんて何も意味を成さない正真正銘の真っ向勝負、そしてその戦いに勝てば誰も僕の力を疑うこともない!
そう思うや否やウェイバーはありったけの金をかき集めて日本へ、冬木の街へ飛び立って行った

 

かくして現在、右手に宿した三つの令呪、召喚に応じたサーヴァント「僕は聖杯に選ばれたんだ!ざまぁみろ!僕を馬鹿にした魔術師どもめーーーーっ」
しかし様子が変だ、最初の違和感は召喚したサーヴァントの傍らに立つ鉄巨人、何よりもどうみても東洋人だということ
「えっと・・・イスカンダル・・・さん?」ウェイバーがおそるおそる問いかける
自身が用意した台本は威厳に満ちた少年魔術師を演じる予定であったが彼にはその器量はなかった
「東方不敗マスターアジアといっておろう小僧 もう一度問う、おまえがワシのマスターか」
・・・失敗した?いや、サーヴァントの召喚そのものには成功したんだからまるっきり失敗したわけじゃないんだ、それならそれでこの聖杯戦争を勝ち抜いてやる
自身の采配と共にライダーが他サーヴァントを蹴散らす幻想を抱きながらウェイバーは自身を奮い立たせる
「ぼっ ぼくがお前のっ じゃなくて ワタシがおまえのマスターです!じゃなくてマスターなのだ!なんだってば!」
どうしてこうなるんだよ、思い描いた理想と行動が噛み合わない、失態である、それに意を介さぬ東方不敗
「ならば契約は成立だ、では小僧 お前の聖杯戦争に賭けるのぞみを聞かせてもらおう」
こんどこそ失態は冒さない、次こそマスターとしての威厳を見せてやる
「僕が聖杯戦争に賭けるのはな・・・・・・・・・・ひとえに・・・正等な評価だけだ」
その答えに対する東方不敗の返事は鉄拳であった、その一撃に吹っ飛ばされるウェイバー
「馬鹿者!おまえは己の沽券を示すためだけにこの戦いに参加したのか! そんなもの、真に己を鍛え上げれば良い話ではないか!」
ウェイバーは何も言い返せない、むしろ先ほどの鉄拳で景色がぐるぐる回っている
「真に強くなればおのずと評価も変わる!それをなんだお前は、そんなものを聖杯に賭けるというのかこの馬鹿弟子が!だからお前はアホなのだ!」
どうしてこうなる、マスターから弟子へ格下げである
「まぁ、それほど他人に畏敬されたいというならばまずは己の背丈を30cmほど伸ばすのだな」
ウェイバーの身長は150cm程、一般から見ても小男の部類である
(馬鹿にしやがって馬鹿にしやがって馬鹿にしやがってッ・・・!)己のサーヴァントの度し難い行為に目にものみせてやると怒りに燃えるウェイバー
(令呪に告げる!この者ライダー、東方不敗に・・・・)三つの令呪、それはサーヴァントに対する絶対命令権
(おちつけウェイバー、もし全ての令呪いを使いきってしまったら僕はこいつを制御できなくなるんだ、だから・・・)すんでのところで冷静さを保つウェイバー
こんなことで令呪は使えない、そんなことをすれば聖杯戦争そのものを戦い抜くことがおぼつかない
「・・・ライダー、僕は聖杯が手に入るなら文句はない、その後でお前が何をしようとしったこっちゃない、だから優先順位はわかってるんだろうな」
「もちろんわかっておるわい、まずは未熟な小僧を鍛えなおすことからだな」
・・・どうしてこうなる
「心配そうな顔をするな、初心者向けの極々やさしい修行だ、さぁ!時間は待ってくれぬぞ小僧」
・・・どうしてこうなるんだよ!今夜何度目になるかわからない嘆きと共にウェイバーとライダー:東方不敗の聖杯戦争は始まりを迎えた

 

翌朝、呻きと共にウェイバーは目蓋をあける、ここは冬木に在住している外国人老夫婦、マッケンジー家
慎重に慎重を期すため孤独な老夫婦に目をつけ暗示魔術を行使し彼はこの夫婦の孫として偽の身分と住居を手に入れていた
ホテル代も浮いて一挙両得である、本当は自分専用の魔術工房を設置したかったがなにぶん先立つ金がなかった、ないものは仕方ない
目蓋をあけるが起きられない、全身の筋肉が悲鳴をあげていた
「ウェイバーちゃん~、朝ごはんですよ~」1階から呼びかける老婆の声、行かなくてはならない
息子夫婦、孫から顔どころか便りすら途絶えた老夫婦にとって理想の孫を演じなくてはならない
「とっとと行かんかウェイバー、食べることも修行の内ぞ、実戦において最後に物を言うのは体力ぞ」
「筋肉痛で動くわけないだろライダー」
急かす東方不敗に地獄の亡者が呻くような返事を返すウェイバー
「またライダーか、ワシのことは師匠と呼べといっておるだろう」
ライダー、それは聖杯戦争における騎乗兵のクラス、それは最速の英霊の称号
「自分のことを師匠とよばせる英霊ということで真名がバレるかもしれないだろ、そもそも聖杯戦争のしきたりみたいなものなんだ、これだけは譲らないぞライダー」
聖杯戦争において英霊はその真名を隠すものである、たとえ無敵の肉体を持っていたとしてもその正体がアキレスとわかれば踵を狙われる
また数多くの英霊において自身の死に様は弱点へとつながるのだ
「そうか、しきたりならば仕方ない、ワシをライダーと呼ぶことを許そう、わかったから食事を取りに行けウェイバー」
気力を振り絞り上体を起こすウェイバー、その様は酔っ払った熊・・・いや、小熊の如く
その日も治療をほどこしては修行、治療をほどこしては修行、昏々とふけていく夜、これはどこの武侠小説の1シーンだろう
僕は武道家になりたいんじゃない、魔術師なんだ、魔術師として聖杯戦争に・・・そうだ聖杯戦争だ、僕は聖杯戦争をしにこの冬木にきたんだ
「ライダー、お前はこの聖杯戦争に勝算はあるのか」
その言葉が意味するところは一つ
「つまり、ワシの力が知りたいと」
抑揚のない口調で返す東方不敗
「そ、そうだよ、当然だろ?でないとお前のことをどう信用していいかわからないじゃないか」
ふぅ、と溜息をつく東方不敗
「仕方のない弟子だな、来い!風雲再起」
東方不敗の愛馬がけたましい鳴き声と共に現界する、ウェイバーの手がつかまれ、持ち上げたと思ったときにはウェイバーは東方不敗と共に馬上に跨っていた
「気分転換だ、座学の時間を始めるぞ、戦いにおいて地の利を知るのは必然!さぁゆくぞ」
そう言うや否や彼の愛馬は漆黒に染まった夜の冬木の空を疾駆していた、怖い、とても下を見ていられない、そして速い、目をあけていられない
「うわぁぁぁぁぁぁっ、ライダーーーーーー!」
どうしてこうなるんだよーーーー!ウェイバーの嘆きはもまた冬木の空に掻き消えていった
風雲再起は冬木の空を翔る、時には橋へ、ビルへ、森へ、風よりも、音よりも早く翔る
「ライダーぁ~、もうわかったよ、わかったからおりよう、そうだ地に足をつけて地に足ついた修行をしよう・・・」
その声は精神的に憔悴しきっていた、もうジェットコースターなぞ鼻で笑うレベルだ
そして速度を緩め地におりたつ風雲再起、場所は砂浜、ウェイバーは転げ落ちるように地面に落ち、転がった
そこには自分とライダーとその馬と一組の男女、中東風の青年と長い銀髪の女性・・・へ?意識をはっきりさせ体を起こすウェイバー、そして東方不敗が高らかに声を挙げる!
「我が名は東方不敗マスターアジア、この聖杯戦争においてライダーのクラスとして現界された」
声にならない悲鳴を上げるウェイバー、よりにもよってこのライダーは自身の真名をあっさりバラしやがったではありませんか

 

「聖杯に招かれしガンダムよ、貴様に、ガンダムファイトを申し込む!」
その先に見据えるのは金色の目をした中東風の青年、刹那・F・セイエイ
第四次聖杯戦争の火蓋が、今まさに斬って落とされようとしていた。

 
 

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