「第9話」

Last-modified: 2014-03-09 (日) 14:48:28

人生の落とし穴に嵌った時、貴方はどうするでしょうか
ここで抗う事を選択できなければそもそも聖杯に選ばれる事はないでしょう
しかし、問題は如何に抗うか!
ランサーのマスター:ケイネス・エルメロイ・アーチボルト
前面に挑むは彼にとって最悪最低の敵「衛宮切嗣」

 

「この程度のリスクは呑むべきだ」

 

そんな彼の後面を追うはアーチャーのマスターであり、キャスターと同盟を組み恐ろしい罠を仕掛け、万全の態勢で挑む「遠坂時臣」
これから始まるは阿鼻叫喚の地獄絵図!それに気づいていないのはケイネス・エルメロイ・アーチボルトただ一人!

 

さぁて!今回のカードは・・・

 

遠坂時臣が必勝を期して呼び寄せたアーチャー:キラ・ヤマトと青い羽根のガンダム、ストライクフリーダム
そして彼をバックアップするキャスター:リボンズ・アルマークの使い魔である人造生命体イノベイド達と数々の兵器群

 

           VS!

 

幸運の男ランサー:パトリック・マネキン・コーラサワーのジンクスⅢ・・・は大破中

 

果たしてどんな戦いになるのでしょうか!いや、戦えるのでしょうか?
しかし現実はどこまでも無常、ケイネスは生き残る事ができるか!?

 

それではFate/stay GUNDAMfight・レディィィィゴォォォォオオオオ!

 

無人の街を歩く青年がここに一人、歳は20前後
ここは昨日まで普通に、ごくこく普通な平穏の中で暮らしていた人々がいた、だけど今は誰もいない
猫の子一匹いない、鼠一匹いない、いるのは自分一人・・・他にいるとしたら聖杯戦争に関わる人間だけであろう
この惨事を招いたのは聖杯戦争の参加者による物だ、他の参加者や監督役は「神秘の露呈」というものを恐れて事態の収拾にあたっているだろう
だけど僕は違う、この戦いに参加した者の責任としてこの悪行を阻まねばならない
たとえ自身が己の望みのために、他の六つの願いを踏み潰すロクデナシだとしても、それでも曲げてはならない矜持というものがある
「僕はサーヴァントだ、この聖杯戦争において最小限の流血で済ませるための猟犬だ」
僕…、僕は…、殺したくなんかない、だけど殺さなければ願いは叶わない、聖杯戦争とはそういう戦いだ
アーチャー:キラ・ヤマト、虚空を見つめたその目は些細な違和感も逃すまいと辺りを見回す
探す相手はこの神隠しの要員、そして先ほど聖杯戦争のためにホテルを破壊したアインツベルンのマスター、衛宮切嗣
彼にとって優先すべき相手は勝利への最適解ではなく、卑劣な悪行を行う外道の討伐からだ
そんな彼に来訪者が一羽、使い魔である、この無人の静寂と化した街において見逃すはずもない存在、自身のマスターである遠坂時臣からの伝達であった
「キラ・ヤマト元帥、そのお力を貸して頂きたい儀がございまして・・・」
畏まった遠坂時臣の言動、彼はキラ・ヤマトに対し常に完璧な態度で振る舞う
その内容はケイネス・エルメロイ・アーチボルトの補足、そして彼が挑むであろうアインツベルン勢諸共一掃するという内容であった
「そうか、それはマズイ事をしたみたいだ、アインツベルンの城ならもう・・・」

 

そのアインツベルン城の前で一人の男が茫然とたたずんでいた、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト
そんな彼に声をかける男が一人
「おい先生!しっかりしろ、ケガはねーか?・・・おっし大丈夫みたいだな、さすがに肝が冷えたぜー・・・」
コーラサワーは自身のマスターの身の安全を確認し安堵する、彼らの目の前にはアインツベルン城・・・だったもの、跡形もなく砕け散った瓦礫の山が存在していた
先のハイアットホテルの爆破について激怒したアーチャー:キラ・ヤマトによってアインツベルン城は跡形も無く粉砕されていたのだ

 

端的に言うとケイネスの襲撃は空振りに終わった、いや・・・空振りに終わったからこそ生き永らえた
彼が挑もうとした瞬間、青い羽根の鉄巨人が天上から色とりどりの光を降り注ぎ、瞬く間にアインツベルン城を粉砕した
自身は冷静さを欠いた状態でアインツベルン勢に挑んだ、全てはあのランサー:コーラサワーのせいだ、奴が召喚されてからというもの何一つ上手くいかない
その苛立ちからかアインツベルンの結界やその他トラップの排除を行うに総計10分程の遅れが生じていた、しかし・・・それゆえに助かった
「いったい何なんだ・・・私は・・・卑賤な輩を招きこんだアインツベルンに懲を下そうと・・・なのに・・・」
キラ・ヤマトは熱心な行動力で聖杯戦争に挑んでいた、位置を掴んだ敵は速やかに排除する、たとえいなくても拠点を破壊する事によって対象を炙り出す
事実アインツベルン城は近代兵器で改装されたトラップが施され、さらには日本では反乱罪に相当する重火器の類もあった
それら全てを拠点もろとも破壊し戦闘力を奪う、誤算があるとしたらたった今、襲撃しようとしていた他勢力を巻き込む機会を失った事だ
キラ・ヤマトはその場に居合わせていたケイネスに認知していなかった、魔術的に隠密を施していたケイネスを特に注意せずに見つけるのは至難である
そんな事情は誰にも知る由も無い
「いやー派手に吹っ飛んだな先生、これもまたアインツベルンって奴らにとっちゃ自慢の魔術工房なのかねぇ、とりあえず生きててなによりなにより」
コーラサワーはいつも通りの軽快さでケイネスに声をかける
「ま、先生が手を下すまでもなかったって話だろ?とっとと戻ろうぜ?ソラウちゃんが心配すっぞ?」
後者の話題についての真実はどうだろうか、もっともそうなるように仕向けるようこれから策を講じるわけだが
そもそも、今の状況は危険極まりない、彼の経験則での判断だが窮地を抜けきってない
コーラサワー基本的に楽天家だ、策謀といった難しい話は遥か専門外だ・・・専門は彼の妻のほうだ
しかし、付き合いが長いとどうしても身に付く物があるのだ

 

Automatoportum quaerere
「自  動  索  敵」
ケイネスが魔術の詠唱を紡ぐ、すぐそばに大きな水銀の球体が現れ、そこから細い触手なようなものが張り巡らされた、そして―――
「おーい何やってんだ先生、とっとと帰っちゃうおうぜ?・・・」
まずい、まずいッ!ここは知らないフリをして速やかに去る場面なんだ、しかし感じるのは些細な違和感でしかないが絶対的な危険
これを上手く説明するのはコーラサワーには不可能
「みつけたぞ?ドブネズミめ・・・!」
ケイネスがサディスティックな笑みと共に標的を補足する
そこにいたのは人形めいた風貌の赤毛の男だった、コーラサワーにはこの男の正体がわかっている、人造生命体:イノベイド・・・ッ!

 

Scalp!
「斬ッ!」
詠唱と共に水銀の触手が刃のなって振り下ろされる、声を挙げる間も無く両断されるイノベイド、真っ赤な鮮血をまき散らしたあと胡散霧消と消えて失せる
魔力によって存在されている者はその霊核を破壊される事によってこの世から消滅するしかない
「ばっきゃろーーーーーーー!」
コーラサワーはケイネスを後ろから担ぎ上げ、押し込む、自身も乗り込む
その先は突如出現したMS、彼は軍人である、その彼がこの世界にサーヴァントとして呼ばれた際に
望むMSを自身の権限の及ぶ範囲で呼び出すする能力を持っていた、そのなかでも現在呼び出したMSは彼にとって最高のMSジンクスⅣ指揮官特機!
「いったい何をする!止めろランサー、私の言う事を・・・それになんだ貴様!他にもMSとやらを隠し持っていたのか?」
そんな腹芸はコーラサワーには不可能、ただ話題に出なかったので言っていなかっただけである
「悪いが問答は後だぜ先生、敵さんが雲霞みたいにやってくるぞ!」
ジンクスⅣのドライブから赤い光が発生し、宙を舞い、空を駆ける、早く!早く!このアインツベルンの結界から抜け出して雲隠れする!
されどそんな事はさせまいと別の赤い光がジンクスⅣに接近する、その数20機、コーラサワーの知る機体である
それは彼がかつていた西暦の世界、そしてイノベイドと呼ばれた人造生命体がアロウズという組織を形成していた時に駆ったMS:ガラッゾだ
ケイネス、引いてはコーラサワーを逃がさぬと包囲網を敷くため立ちふさがる
「な、なんだあのMSの軍勢は、どこの陣営なのだ?」
予想外と狼狽するケイネス、彼の頭の中にはキャスター陣営が死んだフリをしているという事実は予想の範囲外である
「というわけだ先生、悪いがこのまますっ飛んで逃げろっていってくれねーか?背中が痒いんだわ・・・」
ケイネスも自身がどこかの陣営に謀られ窮地に居る事を理解した、そしてコーラサワーに私を連れて撤退せよと命ずる

 

本来ならば遠坂時臣はこの状況を指を銜えて見逃しただろう、しかし脱落したと見せかけたキャスターの存在が露呈させられたと全力で仕留めにかかった
双方共に不幸なぶつかり合いが始まった

 

ランサー:パトリック・マネキン・コーラサワー マスター:ケイネス・エルメロイ MS:ジンクスⅣ指揮官特機
筋力:B 耐久:B 敏捷:B+ 魔力:B 幸運:EX 宝具:C
クラス能力 対魔力:B

 

ジンクスⅣ、それはコーラサワーが生前乗った機体で最も優秀なMS、そしていかなる脅威にも退かず地球連邦軍という組織を体現した正義の象徴
対するイノベイド達が乗るMSはガラッゾと言われるイノベイター専用機、この戦いの先手を取ったのは?
「おっしゃー!それじゃ張り切っていくぜーーーーーーーーイヤァァァァッホーーーーーーーーゥ!」
緊張感とは無縁の叫びをあげてGNビームライフルを連射するコーラサワー、それはビームの槍となって正確無比にガラッゾのGNドライブを撃ち抜き爆発四散させる
対するガラッゾを駆るイノベイド達はGNバルカンを一糸乱れぬ連携でジンクスⅣを射撃、非人間的統一感で距離を詰めながら戦う
しかし、攻撃のほとんどをコーラワサーが駆るジンクスⅣは回避、たとえ命中してもGNシールドで防御、全くの無傷である
正式なサーヴァントとして召喚されたコーラサワーと使い魔に過ぎないイノベイド達、さらにはMSの性能差を合わさって数の利を覆していた
これでは時間稼ぎにしかならない、イノベイド達はGNバルカンを放ちながら接近、近接戦闘に入ろうとする
ランサーとしての対魔力、それはビーム兵器に対しても有効とされていた、これではGNバルカンは目晦ましが限度の豆鉄砲である
接敵するまでガラッゾの半数はジンクスⅣのGNビームライフルの餌食となっていた

 

接敵と共にジンクスⅣの全面に展開したガラッゾの三機がGNフィールドを展開する
移動力の確保と出力の問題からこう運用する他無かった、残りのガラッゾはGNビームクローを最大出力で展開し側面、または背面へ回り込む
そうしなければジンクスⅣの装甲を打ち破る事ができない、全て命を顧みない決死の特攻である
GNフィールドを展開した三機が足止めと隙を造り出し、側面背面に回り込んだ残りが攻撃を仕掛ける・・・が
「ハッハー!同じ顔の能面野郎め、どいつもこいつも考えがまるわかりだぜーーーー!」
一番先頭のガラッゾをGNフィールドごと踏蹴、さらに舞うように二の足で二機目も踏蹴、三機目は跳躍と共にすり抜ける
前方三機を踏み台にして易々と突破してしまった、ビームクローを携えたガラッゾの攻撃は空振りに終わる
たとえ後方からGNバルカンによる攻撃を仕掛けようともジンクスⅣがGNフィールドを展開しながら逃亡すればダメージは完全に打ち消せる
生き延びる事を勝利条件とするなら完全勝利だ、そう・・・彼さえいなければ

 

青い羽のガンダムが突如姿を現す、アーチャー:キラ・ヤマトのストライクフリーダム
彼の世界で言うミラージュコロイドと呼ばれるカモフラージュ装置の力だ
いや、カモフラージュ等の比ではない、もはやインジビリティ(透明化)といっても良い程優れた隠密システムだった
たとえ移動中ですらその姿の揺らぎですら感知する事は不可能、その姿の現すと共にかのガンダムはその青い羽をジンクスⅣに向けると
「またかよーーーーーー!」
コーラサワーが現在の窮地に似つかわしくない緊張感の欠如した叫びを発する
突如ジンクスⅣはコントロールを失い地面へと滑り落ちるように落下したのだ
それと共にガラッゾがジンクスⅣを包囲せんと取り囲み、コーラサワーは状況から悟る
「いててて、そういう事かい、あんたらグルだったってワケか」

 

それはアーチャー:キラ・ヤマトとストライクフリーダムの宝具
あらゆる兵器を無力化し行動不能にさせる因果操作宝具

 

チョイスアローウィング・オブ・フリーダム
「自 由 を 許 す 者」

 

彼のいる戦場で自由に動けるMSは彼に許された者のみ・・・

 

「あのMSは、時臣さんの屋敷に強襲を仕掛けた物と同系統の機体?」
声の主はキラ・ヤマト、以前仕留めたはずの突撃槍のMSではないかと疑問をもっている
彼は油断なくジンクスⅣを注視する、まさかとは思うがあのパイロットはあの砲撃の中生き延びたというのだろうか
それともあれも使い魔の一種なのかと、それとも群態的要素を持つ存在なのか
「キラ・ヤマト様、たとえそうであろうともあのMSの中にはこの機体の主となったマスターがおります
彼を仕留めてしまえば特異な能力もたない限りサーヴァントは消え去る他ありません」
ならばやる事は一つだ、このまま仕留めてしまえばいい
コクピットから飛び出すならそのまま塵に変える、そうでなくてもMSごとマスターを爆散させる、勝利は疑いようもない

 

「な、なんだこれは?因果律操作によるフリーダム・パーソン(自由束縛)だと?これはあの青い羽のMSがやっているのか?」
ケイネスは自身の失策を悟る、遠坂邸強襲の際のランサーの不可解な行動はこれだったのだ、もし事前に看破していれば対抗策はあった
少なくても完全に動きを捕らわれるような結末にはならなかった、この状況を突破する手段があった、しかしもう遅い、この場を無理やり脱出しようとするなら
令呪による強制、しかしここまで強力な因果律操作を打ち破るのに一つの令呪で足りるだろうか、自身の術者としての力をあわせても未知数
二画消費するならば確実に突破できる自信はある、しかし・・・それでは全ての令呪を消費し尽くす事となる、それは
聖杯戦争のマスターとして決定的敗北・・・その認識がケイネスの決断を遅らせた、そして生き残ったガラッゾに完全包囲されるジンクスⅣ
ガラッゾのマニピュレーターからGNビームクローが光る、それは次の瞬間にも対象を串刺しにするであろう

 

「あ・・・、あ・・・」
もはや声にもならないケイネスの悲鳴、自身は敗れたのだ、彼の脳裏に浮かぶのは栄光の日々
その能力と家柄によってケイネスを注目せぬものなど誰一人としていなかった、魔術師としての研究成果、時計塔での政治的手腕、権力、
講師としての尊敬、さらには魔術師同士の決闘でも相手に畏敬と恐怖を抱かせると共に葬り去ってきた、彼に敵う者など誰もいなかった
それらが全て過去となって消え去る時がきた、彼が今描いた光景は走馬灯といっていいだろう
だとすれば重要な事が抜けている、彼ですら血反吐を吐いても欲しいと願った物がある、それは彼の婚約者、ソラウ・ソフィアリの愛情
一目見た時から全ての心を奪われた、彼女の親である時計塔の学長から彼女との結婚の申し出を受けた時などどれほど歓喜したか
彼女こ愛を得られるなら何を支払ってもいい、彼女の心が動かないのは自分に足りない物があるからだ、もし自分が聖杯戦争に勝利して
その武功をも魔術師として飾ればきっとソラウは自分に微笑んでくれるに違いない、だから・・・ッ!

 

「・・・死にたくない」
ケイネスが恐怖に引きつった顔であらん限りの力で声を絞り出す
死にたくない、死ぬわけにいかない、何故なら何としてでも手に入れたい物がわかったからだ
自分は今まで努力という事は何一つしてこなかった、全てが結果として成果に出すことができた
だがこの愛だけは、叶うために全てを投げ打っても手に入れたいのだ、再度ケイネスが叫ぶ
「なんとかしろランサーーーーーー!」
そのランサーから帰ってきた言葉は
「あいよ、舌噛むから黙ってろよー♪」
いつも通りの軽快な口調で返ってきた

 

ガラッゾのGNビームクローがジンクスⅣを串刺し・・・いや触れた瞬間にジンクスⅣは爆発四散
木っ端微塵に手足を残し・・・それもやがて消え去った
「これは・・・?生体反応を探ってください、ほんの少しでも、マスターだった物の有機物の反応を逃がさず徹底的に」
どうかんがえても生きているハズがない、その可能性を否定してアーチャー:キラ・ヤマトはイノベイド達に捜索を命ずる
また別の可能性も想定する、あのMSが爆発した際にほんの一瞬電磁障害が起きた、それはモニター、センサー全てに知覚不能の障害がおきていた
包囲したガラッゾも同様である、それも全く同じ時間に、つまり誰も知覚不能だった一瞬という瞬間が存在していたのだ
まさかあの一瞬に逃げ出したと?天文学的な確立だ、しかしキラ・ヤマトに一切の油断も手心も無い
全ては聖杯戦争の勝利のために最良の手段を持って挑んだつもりだ、そしてその可能性は正しかった

 

宝具というものの在り方はいかようにも存在する
たとえば伝説となった生き様ですら宝具になる事もある、それは生涯いかなる戦場でも無傷で生き延びた男の伝説
敵がいかに巨大で強くても撃墜されるまで戦い抜いた、幾度撃墜されても、駆った機体を損傷させられても無傷で生き延びた男の伝説

 

  イモータル・コーラサワー
「不死身のコーラサワー」

 

これはルールとルールの潰し合い
いかなる盾を貫く矛といかなる攻撃を防ぐ盾がぶつかりあったらどうなるか、人はそれを矛盾と言う
いかなる兵器を行動不能にさせる宝具、それはかのMSの動きを縛り手も足もだせない状態に陥らせた
しかし何事にも例外は存在する、その結果どんな状況でも確実に生き延びる能力とぶつかりあえばどうなるか
それはたった一瞬、電磁障害という形でかのアーチャーの力を断絶させ、機体の脱出装置を起動
さらには知覚装置も不能状態にさせその脱出を知る手段を失わせた、つまり追跡不可能という事である
いかなる死を回避する、それが・・・撃墜されたMSからの脱出ならば尚の事
その生き様こそがランサー:パトリック・マネキン・コーラサワーの宝具であった
いかなる兵器も無力化する力で脱出装置をも無力化するも、コーラサワーの生き様を体現した宝具はそれを覆した
これは矛盾か?否、ただただ「より強い神秘によって上書きされる」だけである

 

状況予測でしかないがキラ・ヤマトは対象が生き延びている事を確信していた
「時臣さん、言峰神父から霊気盤の状況を確認してください、そしてもし生存していたのなら・・・」
ゾっとする程の冷たさを持ってこう告げる
「僕の最大宝具をもってあのMSのパイロットとマスターを仕留めます、そのために令呪によるバックアップを要求します」
その力こそ彼の真の宝具、それは一流の力を持つ遠坂時臣をして令呪のバックアップなしでは使用不可能な程の大規模展開宝具
それに対して遠坂時臣は表面には出さずとも狼狽し、アーチャーを諌めようとする
「お待ちください元帥、この聖杯戦争は最後の一人を仕留めれば事足りる戦いです、どうか・・・最終局面に至るまではご自重ください・・・ッ!」
その理由は令呪の消費を惜しんでの事だった、彼が描く最終目的のために一つでも多くの令呪を残しておきたい
対するアーチャー:キラ・ヤマトは速やかに敵を仕留めたい、派手に飛び回り相手が自分相手に大同盟を組んだ所で意に介する必要はない
更にはキャスターが裏切って6対1の勢力になったところでまとめて叩き潰す、それだけの力が自分にはある
この戦いを傍観すれば無辜の人々がただただ被害に晒されるだけ、現に人を攫い続けているアサシン陣営、衛宮切嗣という街の被害を省みない魔術師殺し
今しがた逃したケイネスというマスターも魔術師にふさわしい冷酷な存在と聞く、熟達した魔術師は時間と共に工房に力を蓄え様々な力を体現する
それがこの聖杯戦争で最大の力を持つ魔術師ならば即撃たねばならない相手、そもそもあの状況で生き延びる相手を他の誰が仕留めれるというのだ
その上で僕の意にそわないというならばと怒りの表情を見せるキラ・ヤマト

 

「どうか今しばらくのお時間を、元帥のために全てのマスターを誘き出す算段がついておりますゆえ、何卒ご辛抱を」
それは先のアサシン陣営による神隠しへの対処も兼ねてあった、積極的に聖杯戦争に参加する気があるのは心強いが
いささか猪突猛進のキライがある、だが今のところは目論見どおり、上手くいけば多くの敵対勢力をリスク無く仕留め
更には切り札を手に入れる事ができる、遠坂時臣の聖杯戦争への必勝の確信は一切揺らいでいなかった

 




「いやー酷い目にあったな先生、ほら先生も食えよ、この国名物のジャパニーズスッシーだ」
本来サーヴァントは食事を取る必要は無い、マスターからの魔力によって現界するためその魔力のみあれば事足りる
ましてや超一流の魔術師であるケイネスがその魔力を不足させるわけがない
いわばこれはコーラサワーの趣味、美味い物を食べて気分転換、彼はそういいながら大トロマグロ寿司を一度に二つ食べた
さらにはウニ、イクラ、ウナギ、なんでもござれ・・・ケイネスの財布に物を言わせた高級寿司店での大豪遊である
一方ケイネスは精も根も尽き果てた形相、コーラサワーからすればこんな時こそ食べて食べて力をつけるべきだと思っているのだが・・・
とりあえず話さなければいけない事は数多くある

 

「なぁ先生、こんな馬鹿な事から降りちゃえよ」
まずはこれ、コーラサワーはどことなく優しい声で、されど真剣な声でケイネスを諭す
そんなわけにはいかない、私は魔術師の栄誉のため、ましてやソラウの愛を勝ち取るため聖杯を取らなくてはならない
いつものケイネスなら真っ向から反論、言う事を聞かせるために使った令呪の力で黙れと一蹴していたであろう
もっとも今のコーラサワーがそれで黙るかどうかはわからないが
「先生ってさ、やっぱソラウちゃんにいいとこ見せたくてこんなことやってるの?」
図星である、ならばなんだというのだ
「それだったらさーーー、完全に逆効果だわーーー」
ランサー:パトリック・マネキン・コーラサワーはそう一蹴した

 

「良くあるんだよねー、シュチエーション的に女の子と一緒にいるときにチンピラにからまれて
自分は強いからって撃退するパターンで女の子の心をゲット!なんて妄想」
要は聖杯戦争でカッコいいとこ見せて気を惹こうなんて愚の骨頂
現実は血生臭い凄惨な結末、勝ち負けは関係ない、大概の女性はその結果にドン引きである
大概以外の女性はその血を見て興奮するパターンもあるかもしれないがソラウ・ソフィアリはどうだろうか
コーラサワーの見立てではどちらでもない無関心を貫く、である

 

「先生さ、ソラウちゃんに愛してるって言ったことある?」
無い・・・自身への愛は魔術師としての成果と共に注目され、自分への眼差しを向けてもらう事だった
だから今では足りないと聖杯戦争で武勲をたて・・・
「やっぱりか、女性の心は複雑怪奇に見えて単純なんだぜ?なんで愛しているって言わない、言わなきゃ一生彼女に気づいてもらえないままだぞ?」
そんな方法は知らない、そんな軟弱な生き方はできない、ただ・・・それは価値観の違い

 

「とりあえずだ、今回の件でわかったろ?俺たちは無敵のヒーローじゃねぇ、まー俺はそれに近い生き方をしたけど・・・それでも嫁さんがなー」
惚気話に脱線する、不死身のコーラサワーの異名、世界に突如現れたガンダムと呼称されたオーバーテックMS、彼がその戦いで幾度となく敗北しつつも
無傷で生き延びた・・・しかし彼の妻は「次こそ本当に戻ってこないかもしれない」と心配していたという・・・
「あれだ、たとえ勝ってもこんな魔術師っぽくない戦いでその栄誉がえられるのか?更には負けたら討たれ損、いい事ないよなー」
そして軽い口調だったコーラサワーが一際真剣さを込めて次の言葉を放つ
「それでこれ以上、ソラウちゃんを危険に晒して聖杯戦争ってのを続けるつもりか?先生」
ハっと顔を上げるケイネス・エルメロイ・アーチボルト、そう・・・自身が描いた完全勝利の絵図は崩れて消えたのだ
「仮にソラウちゃんの身の安全と、自分の体以外の全財産、どっちを捧げて片方取るといったら先生はどうするよ」
聞かれるまでも無く前者だ、たとえ更に命を差し出してもそうする・・・だが・・・それでも
その中でケイネスは一つの妥協案を出す

 

「ランサー、私はお前との契約変更を望む」
契約、それは聖杯戦争でのマスターとサーヴァントとしての関係を構築する物である
もっともコーラサワーはその契約内容を全く理解していない、書類を見るのはとことん苦手なタイプなのである
「マスターとの変則契約、それを通常の物に戻す、具体的にはソラウからの魔力供給を私からに変更する、いいなランサー」
これにはコーラサワーもハっとする、だとすれば、この事実がわかればいよいよもってソラウ・ソフィアリは
聖杯戦争で討たれなければいけないマスターの一人という事になる、それから降ろすのはいいとして先生はどうすんのと詰め寄るコーラサワー
「私は・・・魔術師だ、それだけは絶対に譲れない、お前がMSのパイロットという事であり続ける以上に譲れない」
確かに、生き様取られたら後は抜け殻である、他にも大切な事はいろいろあるだろうけど
多くを構成している物をそれ簡単に捨てろというのは不可能だろう
「私は魔術師としてこの聖杯戦争で成し遂げたい、それこそ何もわからないまま降りる事なんて出来ない」
愚か者の選択、しかしコーラサワーは
「OK、自己責任でがんばるってんなら仕方ないな、俺も手伝ってやるよ、先生の自分探し」
新たな契約は結ばれた、そして彼らは追加注文した大トロマグロ寿司を一度に二つ食べた
それを熱い緑茶で流し込む、おおよそケイネスに似つかわしくない豪快な食べ方
しかし今までを吹っ切るかのように彼は次々と追加注文した寿司を貪り続けた

 




場面は変わり、ここは長く主の居ない武家屋敷風な日本の邸宅
そこに似つかわしくない、いや・・・ある意味とびきり美しい組み合わせともいえる女性が一人
長い銀髪をなびかせるアイリスフィール・アインツベルン
ここはアインツベルン陣営の新しい拠点だ、その位置は遠坂、間桐との邸宅に歩いていける程近く
ある意味無謀、ある意味大胆、そして確実に盲点となる場所だった
彼らが拠点を移したのは今回の聖杯戦争が場所を看破された拠点など紙屑のように吹き飛ばされる事を懸念した事だ
事実アインツベルンの城は速やかに破壊された、今回のサーヴァントとして召還された「ガンダム」によって
そんな中、聖杯戦争の最中といえどもかつて彼女が日本の邸宅を見てみたいと切嗣にねだった事を覚えてくれたのだと浮いた心でソワソワしていた
本当は切嗣のために聖杯戦争の事のみ考えて彼をサポートしたいのだけど、本能には逆らえない
そして当の切嗣は聖杯戦争の次の布石を打つ為に準備中
彼は遠隔操作仕様に改造したタンクローリーを言峰綺礼が潜む冬木教会に突っ込ませる手はずを整えていた
威力はバイクで体当たりをする比では無い

 

その切嗣が戻ってきた、舞弥さんという女性も一緒・・・彼女はどうにも苦手だ、とアイリスフィールは思う
つい切嗣との関係を考え込んでしまう、彼女から見た切嗣はどういう人?切嗣とは何時出会ったの?切嗣の事をどう思う?
最後の一つだけは彼女も理解してしまった・・・舞弥という女性は、切嗣を深く愛しているという事を
そんな彼らを迎えるのはアイリスフィールだけではない、ワーといいながら飛び出してくる丸い物体
「キリツグ、オカエリ」
「マイヤ、オカエリ」
「ニイサン、オカエリ」「ニイサマ、オカエリ」「オニイチャン、オカエリ」「アニキ、オカエリ」
それはセイバー:刹那・F・セイエイが残したバスケットボールくらいの大きさの丸いロボット・・・のようなもの
彼はハロと呼んでいたっけ
「タダイマ、タダイマ、ヒドイメニアッタ」
バイクから飛び出すバスケットボール・・・もといハロ、これらは全て金属生命体ELSが小型化して人間社会に溶け込んだ物だ
本来ELS達が形成できる最小単位は人間サイズであったが、知力を引き換えに小型化し、彼が元いた世界で数多くの子供達を見守っていた

 

これから始まるのは作戦会議、大きく形相を変えた聖杯戦争に対応するため大幅なプラン変更がなされる
参加者は切嗣、舞弥、そしてアイリスフィール・・・とハロが一体
正直アイリスフィールは全くついてこれない世界だ、何より恐ろしいのは自分の夫である切嗣の姿
感情を浮かべず淡々と作戦内容を示すその姿は初めて出会った時を思い出した、それから10年の月日は
そんな彼の姿は嘘偽りだと言わんばかりに優しい男として自分を愛してくれたのだ、しかし今の姿はかつての切嗣そのもの
愛するイリヤスフィールのために、娘の体に良くないと煙草はやめたと禁煙した切嗣、今の彼にはベットリと煙草の匂い、それともこれは硝煙の匂い?
怖い、とアイリスフィールがこわばる、巻き戻っていく、私と切嗣の時間が・・・
作戦会議は終わり、ただただ呆然とするアイリスフィール、そんな彼女に声をかける者
「アイリ、アイリ、キリツグ、アッチ、アッチ、」
ハロの一体が彼女の廻りを跳ね周る
そうよね、こんな時だからこそ思い切って話しかけにいかないと、意を決して向かい、彼女が見た夫の姿は
今までに見たこともない姿だった、そこには優しい男でも、冷酷な男でも無い、怯えきった男の姿だった
男が女を抱きしめる、震える手で、今にも泣き崩れそうな男がその心を曝け出す
「アイリ・・・もし僕が、何もかも放り出して逃げ出しても、ついてきてくれるか?」
恐怖に震える男が搾り出すように語る、それに女は
「逃げられるの?私達、それにあの子は、イリヤはどうするの」
そう問いかけた・・・

 

「助け出す、邪魔する者は殺す、追っ手も全て殺す、今ならまだ間に合う!
そして逃げきって・・・残り全ての時間を君とイリヤのために使う・・・」
だが、そんな願いは叶わない、彼女は誰よりも切嗣の業を知っているつもりだ、だから拒絶する
「だめよ切嗣、そうすれば貴方は決して自分を許せなくなる、
今まで積み重ねた業に耐え切れなくなって最後の断罪者として自分自身を殺してしまう」
きっと、それが夫の末路だ、彼は幸せな自分を許すことが出来ずに死んでしまう

 

「怖いんだ・・・この聖杯戦争はあまりにイレギュラーすぎる・・・」
それはガンダムという存在、彼らは一体何者だ

 

ライダーを名乗った東方不敗マスターアジアというサーヴァントとウェイバー・ベルベットという少年
前者はその気になれば街の一つや二つ瞬時に塵芥に変える力の持ち主、本来サーヴァントが戦闘機一機に例えられる事が多い
しかしそのライダーの火力は戦略核弾頭にも匹敵する
ライダーのマスターである少年、その魔術工房を一切露呈させない手腕の持ち主
その実態が金がないから諦めたなどという理由は切嗣の及ぶところではない
彼らの移動戦略は高速移動を用いて使い魔を振り切り、衛星ジャックによる監視も振り切り神出鬼没
どちらの手腕か知らないが戦力、戦略共隙の無い難敵だ

 

ケイネス陣営、今回の聖杯戦争に参加した中でもっとも優れた魔術師、その力は脅威だ
しかし魔術師的思考に拘ってその行動は読みやすい・・・ハズだった
さしもの彼も居場所が割れた拠点に篭る愚に気づいたのか、それともサーヴァントの手腕か雲隠れした
厄介なのはその後の彼らの動向が全く読めなくなった事、ピックアップした拠点候補は全て空振りに終わっている
またサーヴァントが健在なのは間違いない、もし脱落しているならばアインツベルンによって用意された小聖杯になんらかの異常が出ている

 

遠坂陣営、最初の撃退劇の後から穴熊を決め込んでいる模様、また彼の邸宅はサーヴァントの力か魔術工房を超えて神殿と化していた
もはや踏み込むのは自殺行為、撃破するならばなんとしても外に追い出す必要がある

 

間桐陣営、その邸宅は大きなクレーターと化し、そのマスターたる間桐雁夜も魔術師の範疇を超えた怪物と化していた
そんな彼を打ち破る火力は切嗣の手には無い

 

いまだ姿を見せぬアサシン陣営、今までの状況から鑑みるにガンダムという鉄巨人とその担い手が召還されたのではないだろうか
あの鉄の塊が姿を見せずに襲い掛かってくると思うと震えが止まらない

 

そして、脱落を装ったであろう言峰綺礼陣営、当然のごとくサーヴァントが健在、そしてそれは当然の如くガンダムであろう
何より脅威なのは{作戦を読まれた}という現実
自身を炙り出すためにケイネス陣営を張っていた、後ろを取られた
それは暗殺者にとって死も同然、何を考えているか予想する事すらできない、僕との接点は何一つ無いはずだ
なのにそいつはもう僕に狙いを定めている、絶対に会いたくなかったアイツが・・・
「僕は負けるかもしれない・・・」
切嗣は搾り出すように声を吐く
「君を{犠牲にして}戦うのに、敗れ・・・そうなったらイリヤはどうなる?次の聖杯戦争の聖杯?」
嫌だ、絶対に嫌だ、それだけはなんとしても阻止しなくてはならない
そんな切嗣を見てアイリスフィールは悟る{私達}が切嗣を弱くしてしまったのだと
彼が苛烈な戦士でいられたのは守るべき者がいなかったから、自分自身の命すら容易くドブに浸せたから
もしも神様がいるのなら、夫の心を救って欲しい「助けて」と儚い願いを胸に抱くアイリスフィール

 

「それがお前の望みならそうするべきだ」
声の主は銀の男、瞬く間にその場に姿を現す、今まで雲隠れしていた衛宮切嗣のサーヴァントが今になって姿を現す
その表情には明らかな怒りを湛えていた、その理由はいったいどのような物なのであろうか

 

そして
「今すぐこの戦いから降りろ、衛宮切嗣!」
セイバー:刹那・F・セイエイ、彼はハッキリした声で聖杯戦争への決別を宣言した

 
 

「第8話」  「第10話」?