エイリアン124氏_第02話

Last-modified: 2008-01-06 (日) 15:40:21

「おふくろさん」を管理していた謎のアンドロイド。アッシュ。
エイリアンとそれが引き起こした惨劇の謎を解こうとしたミリを襲うが、
ディアッカの反撃に遭い、今は首と胴が外れ、白い体液と共に休憩室の床に、
転がっていた…

 

荒い息を吐くミリを椅子に座らせ、ディアッカは工作員としての訓練を思い出し、
証拠の隠滅を始めた。現場を綺麗にし、監視機器の工作をする。
本物の人間の血なら気が滅入るが、相手がアンドロイドである分、少しは気が楽だった。
さて、問題はアッシュの身体であった。

 

結局、防水シートにアッシュの首や身体をくるみ、ミリの車に乗せた。
施設を出るとき、管理者の交代がやってきたが、アッシュが何処へ行ったか知らないとだけ言い。
ミリは無理に笑顔を作って、取材のお礼を言うや、ディアッカはアクセルを踏み込んだ。

 

「グレイト…俺、こんな目にあったの初めてだ。これからどうする?」
「どうしよう…でも捨てる訳にはいかないよ…こいつ何か知ってるみたいだし…」
疲労感が漂う車内でディアッカとミリは後ろのアッシュの残骸を見ながら、
何度も同じような会話を交わした。ディアッカは溜息を付くと、道を港の方へ向けた。

 
 
 

「そこ、皆の合流地点と違う?!」
「ミリ。尾行されてるかもしれないだろ。安全が保証できるまで接触は避けよう。
 とりあえず俺達は自分達の身を守らなくちゃな。今、港に行けば大丈夫だ!」

 

港に着くと、プラントの生物テロ騒ぎで負傷したザフト艦が入っていた…
コントロールをやられて、仕方なく此処に来たらしい。
車止めると、ディアッカは、「このきしょぬけー!!」と修理の陣頭指揮を取る、
銀髪の少年に大声で呼びかけた。
「何だ?!ディアッカかァー!!」イザークは親友に怒鳴り返した。

 

「プラントの件な。あれはテロじゃない、最早戦争だ。あのエイリアン共め!!」
人気の無い食堂で、イザークは愚痴を零し始めた。副官のシホも頷く。
「で、なんだ?」と言うと、ディアッカとミリは事情を話し始めた。
エイリアンの事と聞いて、イザークもシホも黙って話しを聞いた。

 

最後に、食堂のテーブルにアッシュの残骸が置かれた。
「何だこれは?!」イザークもシホも絶句した。
ディアッカはこいつを直せないかと言った。
初めて見る、アンドロイド或いは合成人間?を前にイザークはしばらく考え込んだ。
「…シホ、あいつ…医学と技術の心得があるって言ってたよな。」
「はい。あの人は確か…何でも必要にかられて覚えたとか…」
「よし、ビショップの奴を呼んできてくれ。」

 
 

しばらくして 
イザークに呼ばれた“ビショップ”が現れた。痩せてはいるが、眼光は確かな男。
ディアッカはビショップにそんな印象を与えた。しかしミリは別の事を言った。
「あの…ビショップさんは、軍人じゃないんですか?」

 

「……現地採用だ。」イザークは顔をしかめて言った。

 

「私は、プラント周辺で仕事をしていた何でも屋さ。応急医療はそれで覚えた。
 正直、技術屋よりもそちらの方が儲かるよ。…エイリアンの襲撃までの話しだがね。」
ビショップは微笑した。

 

イザークは取り繕うように、技術や医療士官が死亡したからやむなく雇った云々とダラダラ言ったが、
シホがミリにこっそり打ち明けた。「…ビショップは隊長と私の命の恩人なんです。」
二人は成程と頷いた。ディアッカは「イザークらしいや」と呟いた。

 

「だ、だが、恩だけじゃないぞ!腕が確かだから雇ったんだからなァッ!!」
真相を知られたと悟ったイザークは真っ赤になって怒鳴った。

 

話を変えたいイザークは、早速、アッシュの残骸をビショップに見せて意見を求めた。
「コイツは医学の領域だと思うか?それとも技術の領域か?」

 

ビショップは衝撃を受けたような表情を見せた。ミリの襲撃の話を聞くとますます顔を曇らせた。
「…何とも言えないが、多分、両方だろうね。お嬢さんを襲撃した所を見ると、
 行動プログラムにも問題がありそうだ…これを直せと?」

 

「察しがいいな。それでこそ採用したかいがあるというものだ。ビショップ。
 両方の知識を持つお前なら可能だと思ったんだ。」

 
 

「…全てじゃなくていいの。彼と話しが出来ればいいの…お願いします。」
ミリの懇願に、ビショップはやってみようとだけ言って作業に入った。
白い体液にまみれながら、配線や管を次々に繋げていく。そして作業は終わった。

 

「…長年の修理の経験を生かして直してみた。これでいい筈だ。動かそう。」
ビショップは首の奥に手を入れ、アッシュを起動させた。

 

ブチブチっと言う電気音と共に、テーブルの上に置かれた、アッシュの首は生き返った。
ゴボゴボと体液を吐きながら、恐怖の表情を浮かべるミリ達に、にっこりと微笑む。
「やあ」

 

アッシュー正確にはアッシュの記憶をコピーされた同型のアンドロイドーは、
ノストロモ号遭難からエイリアン研究封鎖までを、平然と語った。
研究の結果、エイリアンは利用するにはリスクが高すぎると判明したのだ。

 

「一匹でも野放しになったら、人類という種の危機だ。封鎖は当然だな。理性的な判断だ。
 …だが、別のルートからエイリアンが出現した。研究者達もそこまで予見は無理だったようだな。」
今のAVPの状況を指して、アッシュは皮肉な笑いを浮かべた。

 
 
 

「そこまで調べていたのなら、その研究結果を教えてよ!生態とか!弱点とか!何かあるでしょ!!」
ミリはべそを浮かべながら、皆の思いを代表してアッシュに問いかけた!

 

アッシュは笑うのを止め、研究に直接関わってはいないと前置きをしつつ、
真剣な表情でエイリアンに対する私見を語り始めた…

 

「…完全生物だ。構造も攻撃本能も見事なものだ。すばらしい純粋さだ。
 生存のため、良心や後悔などに影響されることのない完全生物だ。」

 

そして、ナチュラルやコーディネーター関係なしに人類より、生存に優れた生命体と位置づけた。
アッシュのエイリアンへの賛辞は、皆を絶望に追いやっていた。

 

ミリは呟いた。「ねえディアッカ、もう止めよう…私、これ以上聞きたくない。」
イザーク達も黙って頷いた。ディアッカが止めようとすると、アッシュは「待ってくれ」と言った。

 

「最後に一つだけ言わせてくれ、彼らは弱点の無い完全生命体だ。
 例え、プレデターとかいう別のエイリアンが君らを助けても、結果は変わらないと思う。
 ・・・こんな事になって、君達には同情するよ。」

 

ニッコリ笑ったアッシュの首を、ディアッカは思い切り殴り飛ばした・・・

 

164 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 18:52:38 ID:???
ザフト艦の無人の甲板で、
「・・・すまなかったな、今回の事。」ディアッカはコーラを啜り、別の缶をイザークに渡す。

 

「お前達の事はいいんだ!気にするな!・・・問題はアンドロイドとエイリアンの件だ。
 母さま達に、この事を報告するのは気が滅入る。」とイザークは一気に飲み干した。

 

「・・・アッシュは?」というディアッカにイザークは吐き捨てるように言った。
「壊れたが、ビショップが修理してみるそうだ!・・・ビショップもビショップだ!
 ・・・人を見下したアンドロイドのどこがいいんだか!俺なら即刻焼き捨てるのに!」

 

激昂するイザークをディアッカは宥めた。
「まあまあ・・・ビショップは職人気質なんだろ。」
「多分な。・・・変わってるがいい奴だ。」珍しくイザークは人を褒めた。
「俺以上か?」ディアッカが突っ込むと、
「馬ー鹿!!」とイザークは答えた。

 

ビショップの臨時作業場では、
アッシュの修理を黙々とやっているビショップがいた。
「・・・旧型のハイパーダインか・・・人間を傷つけるとは・・・倫理回路に欠陥があるな。
 最初に再プログラミングするが問題ないな?」

 

「ああ。頼むよ」ビショップを見つめながら、アッシュの首はウィンクした・・・

 
 

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