キラ様第8話

Last-modified: 2009-10-31 (土) 15:01:26

廊下に出るとけたたましいアラートの音が鳴り響いている、放送で第一戦闘配備を
呼びかけていた。フレイが俺の元へ走ってやってくる。
「キラ、戦闘配備ってどういう事?先遣隊は?大丈夫だよね?
パパの船やられたりしないわよね?」
「うん、大丈夫、大丈夫。俺に!まかせとけぇぇぇええ!!」
俺はそう言って再び走り出した、今回は流石にマリューにおしゃぶりを頼む暇は無い。
しかし、大丈夫じゃ無いんだよなぁこれが。まぁお約束でしょ♪更衣室でパイロット
スーツに着替えストライクへ乗り込む、装備はエール、よし、行くか。
「キラ様のストライク出るぞ~、道を明けろや」
出撃し、先遣隊の戦艦を探す、居た。地球軍のショボイ艦隊が満足に反撃も出来ずイージスに
潰されていく、流石は凸だ、しかしパパンの船はやらせんぜ。暇なので少し運命に逆らって
みましょうかね。敵はジン3機とイージスの計4機か、楽勝だな。俺は後ろからイージスへ
斬りかかった、俺の振り下ろしたビームサーベルはイージスの頭部を完全に捕らえていた。
しかしイージスは半端無い反応速度でシールドを構え、俺のビームサーベルを薙ぎ払うと
俺の機体に蹴りを入れてきた、機体が揺れる。しかし決定打となる武装を多数揃えている
くせに何故蹴りなんだ?甘いぜ凸!だがそれでも初めて蹴りを貰った、俺は少し屈辱だった。
機体のバランスを直しシールドとビームサーベルを構える。どうする?先にジンを殺るか?
しかしイージスの猛攻は凄まじく俺にターゲットチェンジを許さない、しかもパパンの船を
気にしながら尚且つジンにも目をやり、今日もムウは引きこもりという状況だったが
俺とイージスは互角、いや僅かながら少し俺が押されている・・・凸は、こんなに強かったか?
それに今日は凸が一度も話しかけてこない、いつもはペラペラとうるさい位に話しかけて
くるのに。俺が変な事ばっか言うからへそ曲げたか?それとも、殺る気か?俺を。
パパン船は搭載していたメビウスも全てやられ、ほぼ無防備の状態だった。取り付こうと
するジンを俺がビームライフルで狙うが、何故か当たらない。照準は完璧のはずだったが
ジン3機はジンらしからぬ機敏な動きで俺の攻撃を回避する、ジンってこんなに強かったか?
そしてジンに気を取られていると、前からはイージス、なので俺は凸に対して防戦一方だった。
どうこうしている内に水色のナスカ級が接近してきた、ナスカ級の主砲が火を噴きパパン船の
主砲の砲身がトイレットペーパーの芯の様に吹き飛んだ、ジンが対空砲火を軽々避けパパン船に
取り付こうとしている。やっぱり無理か、結構がんばったんだけどねぇ・・・。ジン二機が
パパン船にミサイルとバズーカを撃ち込み、パパン船は爆発した。恐らく今頃AAの中は
フレイがヒスを起こして大変な事になってるんだろうな・・。しかし、何故この俺が今日は
一機も落せない?どういう事だ?今日はやたらと敵が強く感じた、残りのジン3機もこちらへ
目標を定め攻撃してくる、だがそろそろここでバジ子が助け舟を出してくれるはず・・・。
俺がそう考えていると放送が入った。

 

「ザフト軍に告ぐ、こちらは地球連合軍所属艦アークエンジェル、当艦は現在プラント最高
評議会議長シーゲル・クラインのご令嬢、ラクス・クラインを保護している。偶発的に
救命ポッドを発見し、人道的立場から保護したものであるが、以降本艦に攻撃が加えられた
場合、それは貴官らのラクス・クライン嬢への責任放棄と判断し、当方は自由意志でこの件を
処理するつもりである事をお伝えする!!」
さすがバジ子、こんな長い台詞を噛みもせずぺらぺらと、しかし初めからこの手法を使えば
良かったのに・・・。と思った。凸は「卑怯な!」と叫んでいる。フン、戦争なんじゃ
卑怯もクソもあるかボケ。大体お前らも色々とヒデェ事はしただろ、コロニー壊したり。
「彼女は助け出す、必ずな!」
凸はそういい残すと離脱していった、俺は去り行くイージスの背中に発砲した、命中したのか
背中が爆発し、イージスは振り返りこっちを見ている。しかし、また何事も無かったかの様に
退散していった。凸怒ったかな?でもこれが戦争なんだよ、敵に背中向けるってそういうことだ。
お前らがやってるのは卓上の遊戯なんだよ。俺はそこには居ない凸へ向かって言った。

俺はAAへ帰り、着替え、廊下を歩いていた。聞いた話によればフレイはブリッジでラクスの
指を3本折ったらしい、覚醒したフレイはSの塊だ。恐ろしい話だぜ全く・・・。部屋から泣き声が
する。フレイか。俺は泣き声がする部屋へ行ってみた。しかしその部屋にはフレイしか居ない
フレイはベッドにもたれて一人で泣いていた。俺は一言フレイに。
「あ~・・・悪かったって」
と謝った、それを聞いたフレイはいきなり飛び掛って来る。突然の事で俺は回避できず
フレイに馬乗りにされ、首を絞められた。くっ、こんなあばずれごときに・・・。しかしフレイの
握力は半端な力ではなく、先日ラクスに掴まれた時の事を俺は思い出した、あの時も
ラクスはすごい力だった、それにミリアリアもだ・・・。どいつもこいつも一晩でレベルアップ
しやがったのか?フレイは俺の首を絞めながら叫ぶ。
「大丈夫って言ったじゃない!僕たちも行くから大丈夫だって!何でパパの船を守って
くれなかったの!何でアイツらをやっつけてくれなかったのよ!!」
フレイはさらに俺の首を絞める力を強めてきた。クソっ!すげぇ力だ・・・・・スパコディの
俺が・・・こいつほんとにナチュラルか?
「アンタ・・自分もコーディネーターだからって本気で戦ってないんでしょう!!」
俺はフレイのわき腹に何とか膝蹴りを食らわせ、体勢が崩れたフレイを投げ飛ばした。

 

フレイは投げ飛ばされた拍子に二段ベッドの柱に頭を打ちガクリと気絶した。ふぅ・・。
ここまで凶暴になり、さらにその刃を俺にまで向けてくるとは・・・、金玉潰しはやっぱ
マズかったんかな?でも済んだ事を言っても仕方が無い、ここで後悔すればサイの
金玉が復活するわけじゃ無いんだ。そう、今俺に出来る事と言えば・・・。俺はフレイを見た。
スカートから伸びる太もも、なかなか良い体をしている・・・。しかし、ここでフレイに
欲情するのは危険だ、行為の途中でフレイが目を覚ました場合、サイの二の舞に
なる可能性がある、と言うより絶対そうなる。フレイが目を覚まさない内に俺は
外に出た。しかし、疲れた・・・。何だか今日はキラになってから初めて全く思い通りに事が
進まなかった。俺は通路の踊り場へ出る。ここは艦首の真下、外の景色が良く見える。
俺がボーっとしているとどこからとも無くラクスが現れ俺に話しかけてきた。
「どうなさいました?」
「あなたを待っていたんですよ~でも勝手に出歩くと危険ですよ?この船には
危ない人がいっぱい居ますから」
「でも、このピンクちゃんは、お散歩が好きで・・・というか、鍵がかかってると
必ず開けて出てしまいますの」
見ると足元でラクスのハロが「ミトメタクナイ」と叫びながら転がっていた。
「戦いは終わりましたのね」
「どうやらそうみたいですねぇ・・・」
「なのに、悲しそうなお顔をしてらっしゃるわ」
「凸がいきなり強くなってしまったので少しムカついてました」
「・・・凸?」
「アスランザラです」
「そうでしたの・・・彼も貴方もいい人ですもの。それは悲しいことですわね」
「アスランヲシッテイルンデスカ?」
「アスラン・ザラは、私がいずれ結婚する方ですわ、優しいんですけどもとても無口な人」
「そうですか、アスランは・・・・・」
ここで俺は大きく息を吸い込んだ。
「僕の大親友でぇぇぇえええす!!!!!」
お前の耳に届いたか、カズイ?なら走れ!さっさとフレイへ告げ口しに行けや。
「失礼しました、んで、凸とはもうヤったんですか?」
「でも、このハロをくださいましたの!私がとても気に入りましたと
申し上げましたらその次もまたハロを」
「つまり同じ物しかくれない凸にはプレゼントのセンスが無いと・・?」
「お二人が、戦わないで済むようになれば、いいですわね」
「うん、次は殺すけどね」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「うん、戦わずに済むとイイネ」
「そうですわね」

 

ラクスはにっこり笑った、優しく可憐な笑顔、あぁ、壊したい。・・・おいおい、俺はフレイか?
この場を去っていくラクスの後姿を見ながら俺は一人ボケ突っ込みをしていた。
しかしお前が来てからマジで散々だよ・・・・・。俺はそう自分で言ってハッとした。そうだ
あいつが来てから周りの奴らがいきなりパワーアップしやがったんだ!フレイとか凸と
ジンがいい例だ。ホントだったらあの戦闘も俺が敵を皆殺しにして、パパンも死なずに済ませれた。
いつもなら・・。しかし、ならば何故俺もパワーアップしない?何故俺だけ・・・・。違うな・・。
回りが強くなったんじゃない・・・・俺が弱くなってるんだ・・。あの疫病神がっ・・・。
俺の中で段々と怒りが込み上げてきた、あの糞電波のせいで俺は散々な目に、そう思うと
いてもたってもいられず、俺は猛烈ダッシュを決め込みラクスを追いかけた、居た、廊下を
フラフラ歩いてやがる。俺はそのまま猛烈ダッシュでラクスへ急接近しラクスが振り返る直前に
首元に渾身の力を込め蹴りを入れた。ラクスはその反動で吹き飛び廊下の壁の角に激突
俺はそこでサッと物陰に隠れラクスの様子を伺う。倒れたラクスは首が曲がってはいけない
方向、ちょうど後ろへ180度ひん曲がっていた。やばいぞ・・・少し力を入れすぎた・・・。
能力が落ちているとはいえこの俺の渾身の一撃だ、殺っちまったぞ、どーすんだよ・・・。
しかし次の瞬間、俺はとんでもない光景を目の当たりにする。ラクスは何事も無かったかの様に
むくりと起き上がり、両腕で首を掴むと、グキゴキャゴキという凄まじい音を鳴らしながら
強制的に頭の位置を元に戻した。・・・ありえない。俺は物陰から見ていて恐怖を覚えた。
やはりあれは人間ではない。だって折れた首の骨を自分で治したもん・・・。過剰とも思える
補正と言う名の加護により、奴は人という存在を超越し、もはや神にも近い状態だ。この時俺は
ラクスはすぐにでも返還すべきだと悟った。元々今の俺に手に負える相手じゃない。俺は
そのまま部屋に戻って寝る事にした。今の内に寝ておいて夜中に起きる、そしてあのバケモノを
凸に返してやる。

皆が寝静まった深夜、と言っても宇宙には夜も昼も無く基本24時間交代制のAAに全員が
寝静まる時など存在しないわけだが、俺の時間感覚で行くと今が丁度その時だ。俺はラクスの
寝ている部屋の入り口を廊下の角から覗く、よし、周りに人は居ないな、じゃあ今の内に・・・。
しかし俺が部屋へ踏み込もうとドアの前に立った瞬間、いきなりラクスの部屋のドアが開き
カズイが出てきた。しかしカズイはズボンとパンツを下げ、一物を丸出しの状態で入り口に
立っている。何だこいつ?ラクスとヤリやがったのか?しかしカズイの様子は少しおかしかった。
カズイはヨダレを垂らしながら口をパクパクしている、目の前の俺に気が付くと声にならない
声で一言
「・・・キラさ、ま・・・・俺は・・・・」
と言ってそのままドサッと倒れこんだ。何だ?夜這おうとした所をラクスに返り討ちにされたのか?
しかしカズイに目立った外傷は無い。俺は意を決して部屋へ入ってみた。一番最初に俺の目に
飛び込んできたのは無残にも破壊されたハロ。俺はベッドを覗いてみる。そこには下半身裸で
大股を開いて寝ているラクスが居た。プラント人がラクスのこの光景を見たらどう思うんだろう?

 

しかしこいつは就寝中、じゃあカズイは一体誰にやられたんだ?いや、ラクスしかこの部屋には居ない。
どういう事だ?俺はラクスの頭を軽く小突いた、それでも起きる気配は無くスヤスヤと寝ている。
ラクスの性器からは恐らくカズイのものだろう精液が垂れていた。やっぱりヤリやがったか。
俺はカズイが手をつけたラクスをヤル気などさらさら無かったがこのまま起こすのは勿体無い
この際カズイの事は保留にしておいて、散々煮え湯を飲まされた仕返しをしてやる。ちょっと
悪戯してみよう。机の引き出しを探って見ると油性マッキーハサミが出てきた、こいつでラクスを
美容整形してやろう。まず額に「肉」は基本だな、ラクスの額に肉と書く。次に髭を書いてやろう
鼻下と顎部分を黒く塗りつぶす、おぉ!なかなかいい女だぞ。さらに目の周りも黒くしておこう
パンダみたいだ。次は髪型を今よりもっとイケてる髪型にしてやるぜ。さてどんながいいか・・。
モヒカンか角刈りだな・・・・。モヒカンだ、俺のセンスがそう告げている。俺は歌いながら
ラクスのピンク色の髪の毛をサクサク切り落としていく「静かな~この夜に~アナタは~モヒカン~」
・・・・・しかし、こいつは誰だ?出来上がった作品を見て俺は思った、この目の前の作品を
文字で表現する程、俺には文章力は無い、ご想像にお任せしよう、だが一つ言えるのは
こいつはあれだな、ヤベェ・・。散らばった髪の毛をキレイに片付け、俺はラクスを起こした。
「お客さん、終わりましたよ」
ラクスは目頭を擦りながら「フニャ?」という顔をしている。悪いけど全然可愛くない・・・・。
「あら?キラ様?どうなさいましたの?」
「ここに居ると遅かれ早かれアナタは殺される、だから逃がしてあげます。一つ貸しということで」
俺はラクスを毛布で完全に包み、ハロの残骸を持つと、ラクスをひっぱり部屋を後にした。
廊下で人とすれ違うたびにモゾモゾ動く毛布の塊を奇妙な目で見ていた。しかし毛布が無ければ
もっと奇妙な視線が彼女を襲うだろう、それはここでは無く、ヴェサリウスの中でお願いしますね。
更衣室にラクスを連れて行き、宇宙服に着替えさせる。これで万事オッケーだ、見張りの
整備員へ後ろから近づき首の骨を折り始末し、俺とラクスはストライクへ乗り込んだ。ストライクの
中から遠隔操作でカタパルトハッチを開放、ストライクは発進シークエンスも無しのまま飛び立った。
俺はAAから飛び立つと同時にヴェサリウスに通信を入れた。
「こちら地球連合軍、アークエンジェル所属のMSストライク!ラクス・クラインを返してやろう
ありがたく思え。ただし、ナスカ級は艦を停止、イージスのパイロットが、単独で来ることが条件だ。
この条件が破られた場合、この女の腸を引きずり出して、それで大縄飛び大会を決行する
その時は奮って参加してくれ」

 

俺の脅しに乗り、イージスがこちらへ近づいてきた。早くね?まぁいいや。イージスはストライクの
前でぴたりと止まるとビームライフルを向けた。アラートが鳴らないという事はロックはして無い。
相変わらず甘いな凸、ストライクもイージスへビームライフルを向けておいた。
「凸か?」
「・・・・・・・・・・」
「えー、そちらにアスラン・ザラ様はいらっしゃいますでしょうか?」
「・・・そうだ」
「じゃあコクピット開いて出てこようか、手は頭の上だよ?」
「その前に彼女が本物かどうか確かめさせろ」
「はぁ?信用無いなぁ~、俺ら友達だろ?んで、確かめるってどうやって?」
「彼女の顔を見せろ」
「あぁ、そんな事かいいよいいよ・・・・・・」
って顔はヤバイじゃん!!!俺が美容整形しちまったよ!!!どーすんだよオイ!!
「・・・・どうしたキラ?」
この状況はひじょ~にマズイ・・・・どうする、俺?

 

○つづく