クロスデスティニー(X運命)◆UO9SM5XUx.氏 第001話

Last-modified: 2016-02-14 (日) 01:07:50

第一話 『ガンダムDX、行くぜ!』
 
 
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『過ちは繰り返すな』
その言葉が、耳の奥でまだ消えない—————

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アスランは、叫んだ。叫び、自分の姫の手を取った

「こんなところで君を死なせるわけにいくか!!」

慣れた手つきでパネルをたたき、アスランはモビルスーツを起動させる
かつて、慣れ親しんだザフトの機体。世代が変わっても基本は変わらないようだ

ザク・・・・ユニウス条約締結後、プラントで開発された次世代モビルスーツ
モニターに示されたスペックは、かつての友が使っていたMS、ストライクガンダムをも上回っている

(どうする・・・・?)

ピッ、ピッ、ピッ、ピッ・・・・・

パネルに入力しながら、アスランは瞬時に思考をめぐらせた
プラントのデュランダル議長と、オーブ代表カガリ・ユラ・アスハの非公式会見の途中、
突如起こったこの混乱状態。謎のモビルスーツが出現し、周囲は破壊の嵐に襲われた
この混乱状態における、アスラン・ザラ絶対の最優先事項、それは姫の生存
自分の背中にしがみついている、オーブ代表、カガリ・ユラ・アスハの生存
断じて争いに介入することではない。オーブ所属の自分が下手にMSを撃墜すれば、それは外交問題になりかねない

(逃げることだ)

ガシャン・・・・・・

にぶい地響きをあげ、ザクは立ち上がった

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オペレーターのメイリン・ホークは思わず血相を変えて叫んだ

「インパルス!? 発進が遅れています! どうしたんですか!?」
『そんなこと言ったって! 合体調整がずれてたんだよ!! プログラムを修正する、少し待ってくれ!』

そして、『運命』も、ずれた

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ブィン・・・フィンッ!

アスランとカガリを乗せた、ザクの目前をビームサーベルがかすめていく
アスランのプランはもろくも崩れ去った
ザクが起動したのは、よりによって新型・ガイアガンダムの目の前だったのだ
そのおかげで目をつけられ、いきなり戦闘状態に巻き込まれる羽目になる

(なんで・・・・ガンダム!? どこが作った・・・誰が動かしてる・・・・!)

アスランの胸に湧き上がる疑問。その謎を解くより、ガイアの攻撃の方が早い

迫り来る、ビームサーベル。自機のザク、押されている。性能差、明らか、つまり苦戦

「ッ・・・・! カガリ・・・・!」

叫ぶ。敗北の予感がする

「うわ・・・アスラン!」
カガリの声。振り返れば
「もう一機・・・!?」
また、新たなガンダムが背後から迫ってくる

ザシュゥ!

突如あらわれたザフトの新型機・カオスガンダムのビームサーベルに、
アスランのザクは腕を無残に切り落とされた

(パイロットでカバーできる戦力差じゃないッ! このままじゃ負ける!?)

アスランが思った、その瞬間だった

フィィィィィン・・・・・・

聞きなれない音がした。まるでレーザーの発射されるような音だが、奇妙に静かな音だった

空。そう、空からその音がする

アスランは不覚にも空を見上げた。よそ見は戦闘の最中にやることではない
アスランほどのパイロットが、不覚にもその禁を破って、空を見上げた

そこにあったのは、一機のMS
背には巨大なキャノン砲と思われるものを二つも背負い、全体的に重量感を感じさせるMS
顔は、ガンダムだった
それがガンダムダブルエックスと呼ばれるものであることを、この世界の人間は知らない

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最初は光に包まれた
次に目を開けた時、世界は変わっていた

「ここは・・・・・どこだよ!?」

ガンダムDXのコクピットで、Gコンを握り締めながら、ガロード・ランは目を見開いた

(エスタルドじゃない・・・・!?)

フリーデンクルーは、新連邦軍と戦うエスタルドに、傭兵のような立場で所属していた
ガロードはエスタルドと新連邦の決戦の機運が高まる中、単独偵察に出ていたのだ
日没まで前線にいたが大した異変も見られないので、ガロードはエスタルドに帰ろうとした
その帰り道を、突如異変が襲ったのだ

月から、光が落ちてきた

サテライトキャノンは月からのガイドレーザーを受け、次にマイクロウェーブをチャージしてから発射する
だから月から光が落ちてくるのは、このガンダムDXという機体にとっておかしくないことのはずだった
しかし今回、受けた光は少し違っていた
マイクロウェーブの受信操作はしてないし、なにより受けた光の量が膨大だった
そして急にガンダムDXの操縦ができなくなり、次に世界は変わっていたのだ

「戦・・・・・場・・・?」

ガロードはモニターに広がる光景を、呆然とした瞳で見つめた
そこにあるのは、もうもうと立ち昇る煙。破壊された施設たち。戦闘中のMSと、逃げ惑う人々だった

そこは紛れもなく戦場だった

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ザクの腕を切り落とし、ガンダムDXを視認した瞬間、
カオスガンダムパイロットのスティングは通信回線を開いた

「ガンダムがもう一機!? どういうことだ・・・・あんな機体の情報は・・・・ アウル! こっちに来い!」

自分たちが受けた命令は、ガンダムの強奪だ
しかしパイロットの乗ったガンダムを捕獲するには戦力がいる
スティングはアビスガンダムを呼ぶことにした

「ステラ・・・・!」

スティングが通信回線を閉じた瞬間、ステラのガイアがガンダムDXに向かって行くのが見えた

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ガシュゥン!

迫り来るガイアのビームサーベルを、DXはハイパービームソードを抜き放ち、受け止めた

「なんだよ! いきなり、おまえら! 新連邦か!?」

ガロードはスピーカーに通信を切り替え、周囲へと思いっきり叫ぶ

エスタルドにガンダムがいるなんて話は聞いたことがないから、
相手が新連邦である可能性は高いとは思う
しかしガロードはさっきから違和感を感じていた
ニュータイプ能力がどうこう、という違和感ではない。普通の人間が感じる、普通の違和感である

(まるで・・・・・)

世界が変わってしまったような

ガロードは胸に浮かんだ想いをあわてて打ち消した
先ほどの呼びかけにも関わらず、目前のMSは攻撃の気配を止めない

「問答無用かよ!」

ガロードはガイアガンダムをにらめつけ、覚悟を決めた

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ガシィィン!

ソードインパルスの合体が完了した。演習でイヤと言うほど繰り返したことだった

「また戦争がしたいのか、あんたたちは!」

インパルスガンダムパイロット、シン・アスカは戦場に降り立ちながら、叫んだ

インパルスの背からレーザー対艦刀の『エクスカリバー』を引き抜き、合体させ、構える
しかしそこで見たのは奇妙な光景だった

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(こいつ・・・・操縦は上手いけど、なんか慣れてない!)

ガロードはコクピットで奇妙な確信を持った。それがガイアガンダムとの戦いの感想だった

ガシュゥン!

DXのハイパービームソードと、ガイアのビームサーベルがぶつかり合う

「ソードの出力は、こっちの方が上なのに! まだ格闘戦にこだわるように見せて・・・・!」

ぐぐっと、DXがガイアのビームサーベルを押し込んでいく。瞬間、ガイアの形が変わった

ガシャン! ビュゥゥゥン!

突如犬のような形になったガイアの背から、ビームが放たれる

「ミエミエの罠なんだよ! その手のガンダムとはイヤというほどやってるからなァ!」

上空にブーストし、それを避けた。同時にバスターライフルを引き抜き、ビームを放つ

バシュン、ドゴォォン!

犬のようなガイアの右前足が、粉微塵になって砕け散る

「もういっちょッ!」

バシュン、ドゴォォン!

さらのガイアの左前足が、粉微塵になった。その衝撃でガイアは地に落ち、力ない老犬のように横たわる

しかし援軍が飛来し、犬の前に立ちふさがった
カオスガンダム、アビスガンダム
その名をガロードが知るよしもないが、ガンダムタイプに油断が禁物なのはいやというほどわかっている

「まとめて面倒見てやるよ! ガンダムDX、行くぜ!」

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ガイアガンダムは圧倒された。カオスに乗るスティングには、少なくともそう見えた

「持って帰るガンダムが、撃墜されちゃ意味ないだろ!」

幸い、ガイアのスラスターは破壊されてないようだ。なら空は飛べる
スティングは謎のMS、ガンダムDXを捕獲しようという考えをすぐに捨てた
そういう生半可な考えでやりあえば、自分がやられる相手だということを、
背後に横たわるガイアが雄弁に教えてくれている

その時、空から一機にMSが舞い降りた。巨大な対艦刀を手に持ち、そして、その顔は・・・・

「もう一機ガンダム・・・・!? どうなってるんだ!」

ソードインパルス。秘密裏に建造されたそれは、カオスのデータにない謎のガンダムだった

『どーすんの、スティング! あんなの予定にないぜ! ステラももう役立たずになっちまったしよ!』

アビスから、アウルの通信が飛び込んでくる。

「逃げるしかないだろ。追撃されるのを覚悟してな!」
『冗談! 相手も二機、こっちも二機! それをステラ抱えて逃げるのかよ!』
「相手の体勢が整うまでに逃げるのが得策だろう! ステラ!」

スティングが通信回線を切り替える

「ステラ、動けるな!」
『うご・・・・ける』

どこか負傷したのか、うめくようなステラの声が聞こえた

「よし、逃げるぞ!」

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ソードインパルスが、カオスガンダムに切りかかっていく

「敵じゃないのか?」

突如あらわれたソードインパルスにガロードは戸惑いつつも、敵を攻撃していることに少し安堵した

(敵の敵は味方、ってか?)

エスタルドにガンダムが建造されたという話はやはり聞かないが、そんなことは忘れてDXを動かす

バシュン、バシュン、

バスターライフルでけん制しながら、もう片手にあるハイパービームソードでアビスに斬りかかる

ビームソード、避けられた。相手のビーム。避ける。ライフル、放つ。
アビスが両肩の装甲でビームをガードした瞬間、
後方にいたガイアガンダムがMS形態になり、大空高く飛び上がった。中破してるため、やや不恰好だった

(逃げる・・・・・?)

ガロードがそう思ったとき、アビスが両肩の装甲を開いた。

(ヤバ・・・・・!)

なにというわけでもない。長いMS戦闘の経験が、ガロードに危機を感じさせた。同時に、飛ぶ
その直感は正しく

バショォォォォ!

いくつものビーム砲が、アビスの両肩から放たれていく
それは凄まじい威力で、後方の施設や、起動しかけのMSをいくつも破壊していった

その隙にアビスも飛び立ち、インパルスと戦っていたカオスも離脱していく

「終わった・・・のか?」

深く息をつき、ガロードはつぶやいた。追撃するつもりはもちろんない、状況もわからないのだ
モニター越しに飛び立った三機のガンダムを見つめる。インパルスがそれを追い、
さらに別のMSもガンダムを追撃していく。
ガロードが傷を負わせたガイアガンダムの動きは悪く、出力が上手く出ないようで、
他の二機がそれをごまかしごまかし逃げているようだ

……!

瞬間、モニターを見つめるガロードの目が大きく見開かれた

三機のガンダムを追撃するMS群の中にそれはいた
見覚えのある、一つ目のMA。カニを思わせるようなシルエット

「ゲテモノガンダム・・・・・!?」

それは、オルバ・フロストの愛機、ガンダムアシュタロンだった

MA形態のアシュタロンから放たれたビーム砲が、ふらふらのガイアを狙う
ガイアは出力不足でうまくよけられない。直撃かに見えた
しかしアビスが突如ガイアの前に出て、ビームの直撃を受ける
その隙は致命的で、アシュタロンはMS形態に変形したかと思うと、
アビスの両腕を背後からカニの腕でがっしりとつかみ、捕獲したのだった・・・・・

「君!」

呼びかける声がする
思わぬ機体の出現に呆然としていたガロードは、その呼びかけで我に返った
モニターを見ると、一人の青年が手を振っている。コクピットを開けろと手で伝えていた

「なんだ・・・・誰だよ、アンタ?」
「アス・・・・いや、アレックス、という。君、ザフトのパイロットか? さっきは危ないところを・・・・」
「ザフトって・・・・はぁ? ザフトってなんだよ」

ガロードは空を見上げ、アシュタロンを見た。アビスをしっかりと捕獲したそれは、近くの戦艦に帰っていくところだった

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