クロスデスティニー(X運命)◆UO9SM5XUx.氏 第002話

Last-modified: 2016-02-14 (日) 01:08:13

第二話 『雇われてやるよ』
 
 
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ガンダムアシュタロンはアビスを捕えた状態で、戦艦に引っ込んで行った
ガロードはそれを見届けると、視線を地面にいる青年に移す

「ザフトの所属じゃないのか・・・・君は?」
「あのな、俺はどこの所属でもねぇよ。強いて言うなら、フリーデン所属で、今はエスタルドに雇われてるってとこか」

コクピットハッチを開けっ放しにして、ガロードはアスランを見つめた

「フリーデン? エスタルド?」
「ガロード・ランだよ」
「ん?」
「俺の名前。アンタ・・・・アレックス、だっけ? 一応、名乗っとくよ」
「あ、ああ・・・・ン?」

フィィィン

不意に周囲が騒がしくなった。と思ってガロードが周囲を見回すと、何機もの白いMSが銃を持ってこちらを囲んでいる
白いMSの名前をジンと言うが、当然ガロードは知らない

「な、こいつら、やろうってのか!?」

ガロードがコクピットハッチを閉めようとした瞬間、スピーカから声が聞こえた

『全機下がれ! これは我らザフトが秘密裏に建造したガンダム・・・ガンダムダブルエックス! 友軍だ!』

その声は聞き覚えのある声だった
同時にジンたちが銃を下ろす

「オルバ・・・・・?」

忘れるわけもない。敵であるが、何度か言葉も交わしたことがある。
まぎれもなくそれは、宿敵オルバ・フロストの声だった

『ガロード・ラン! 今すぐミネルバに戻りたまえ! いいな、港にある赤い翼の新造艦ミネルバだ! ティファも待っている』

スピーカーを介したオルバの声が鳴り響く
ミネルバという単語がわからないガロードに、配慮した言葉であることは明らかだった

「ティファが!? くそぉ、オルバの野郎! いつの間にティファを人質に取りやがったんだ!」
「お、おい、君!?」

アスランの声を無視し、ガロードはコクピットを閉めると、DXのブーストを全開させた
目指すミネルバはすぐ視界に入ってくる。ようこそと言わんばかりに、カタパルトは受け入れ態勢を整えていた
DXが着艦する

(なんだってんだ・・・・!? 見たことのない機体ばかりだ・・・・新連邦はいつの間にこんな・・・・)

ミネルバのモビルスーツデッキに入ったガロードの感想はそれだった。
ガロードの目からは、ここにいるMSはだいたい、ジェニスタイプに似た新型に見える
しかし新連邦にしては奇妙なことに、DXへ武器を向けてくるものはいない
武装解除も勧告してこないし、むしろ軍人たちは丁重にDXを誘導しているのだった
てっきりオルバがDXを拘束してくるのだと思っていたガロードは、かすかに拍子抜けする

(こいつら・・・新連邦じゃないのか? オルバ・・・・なに考えて・・・・)

ガシャン・・・ガッ、ガッ・・・

いきなり後方で音がした
ガロードが振り返ると、赤い一つ目の機体が煙を噴き出しながら、ミネルバに飛び込んでくる
機体はよろめいていて、そのまま倒れそうになったので、思わずDXの腕を伸ばして抱き止めていた
赤い機体がこちらを見た。ガロードは相手の機体を直立させると、そのままMSデッキの奥に進んで行った

(ティファ、無事でいろよ)

この少年の頭には今、それしかなかった

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そのころ、新造艦ミネルバのブリッジでは・・・・

「デュランダル議長。アビスガンダムの奪還、並びにガンダムDXの誘導、完了しました」

ザフトのエリートパイロットの証、赤服に身を包んだオールバックの男、オルバ・フロストが敬礼する
それを受け、プラントの最高評議会議長、ギルバート・デュランダルはこくりとうなづいた

「うむ・・・・ガンダム・・・・ダブルエックスか。オルバ、アビスに乗っていたパイロットは?」
「すでに拘束しました。抵抗しましたが、なんとか」
「上出来だ、オルバ。ではついてきてくれ。ガロード・ランと話がしたい」

デュランダルが立ち上がろうとすると、ミネルバの艦長タリアが思わず声をあげた

「待ってください、議長! プラントから宇宙に追撃に出た、インパルスまで失うわけにはいきません!
  そのため、この艦もまもなく発進します! 下船してください!」
「タリア、とても残って報告を待っていられる状況ではないよ。」
「しかし、議長!」
「私には権限もあれば義務もある。私も行く・・・・それに、
  ザフトの新型機・ガンダムDXは君たちも知らないトップシークレットだ 
  あれは私がいなければいろいろと問題のある機体でね・・・・・」

デュランダルはそう言い残すと、オルバに従うよう目線を向け、ミネルバのブリッジからデッキに向かった

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「新型機だってな・・・・」
「インパルスは知ってるけど、こんな機体は始めてだぜ」
「見ろよあの背中にあるでっかい砲身。」
「パイロットはなんで私服なんだ?」

誘導された先で、ガロードは身動きできずにいた。
やはり周りの軍人たちは攻撃もしてこず武装解除も求めてこない
軍人たちはちらちらこっちを見ながら、
それでも緊急事態らしくつぎつぎとミネルバに飛び込んでくるMSの対処に忙殺されていた

『ガロード・ラン』

突如DXの回線が開かれ、モニターにオルバがあらわれる。見慣れない赤服を着ていた

「てめぇ、オルバ! ティファはどこだ!」
『彼女はいないよ』
「なんだと!」
『君をミネルバに招待させるための方便さ。ああでも言わないと来てくれないだろう?
  だいたいティファ・アディールの居場所なんて、僕が聞きたいぐらいだね」
「オルバぁーッ!!」

マイクロウェーブが受信できればサテライトキャノンでもぶっ放しかねない勢いでガロードが激昂した瞬間、
ピッとモニタが切り替わった。映し出されたのは長髪の男性だ。ひどく落ち着いた雰囲気を持っている

『始めまして、ガロード・ラン君。私はプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルだ』
「なんだよ、てめぇら! 俺をだましてこんなところに連れてきて! なにたくらんで・・・・」
『ストップだ、ガロード・ラン君。君がオルバ・フロストと浅からぬ因縁があることは知っている。
  しかし戦うのはこちらの話を聞いてからでも遅くはないのではないかね?
  我々が信用できないというなら、MSの動力は起動させたままでいい。ライフルも抜いて構わない』
「・・・・・・・・・。」

ガロードはふんっと鼻息を吐いて、コクピットシートにもたれかかった

『うむ、話を聞いてくれるようだね、ありがとう。ではまず重大なことを伝えよう。ここは君のいた世界ではない』
「は・・・・?」
『君の知る新連邦もエスタルドも、宇宙革命軍もない世界なのだよ。ここはプラント・・・・まぁ、君たちの言う所のコロニーに当たるのかな
  で、最高評議会議長が政治の運営を行っている。地球では・・・・・』

デュランダルが淡々と説明を行っていく。ガロードは開いた口がふさがらなかった
しかし反論しようとしても、声が出ない。心のどこかが、体のどこかが、ここは今までいた場所とは別の世界だと叫んでいた

『とまぁ、現在の世界や政治形態に関してはおおまかなところでこんなところだ。』

デュランダルが簡単な、本当に簡単な説明を終えたところだった

ゴゥゥン・・・・ゴゴゴゴゴ・・・・・

「なんだ!?」

ガロードが叫ぶ。ミネルバが動き出していることが、コクピット越しにもわかった

『ああ、ミネルバが、強奪された新型ガンダムの追撃に向かうのでね』
「新型ガンダム? 俺を襲った奴らのことか!」
『うむ。こういう時で無ければ、君を歓待したいところなんだが・・・・・。なにしろ緊急時だ。戦闘に巻き込んでしまうが、許してくれ』
「もう巻き込まれたよ。で、おっさん」
『なんだね?』
「俺とDXをどうするつもりだ?」

もっとも大切なことを、ガロードは聞いた。返答次第では即座にミネルバから脱出しなければならない

『ゲストとして、丁重に扱うつもりだ、ガロード君』
「見返りもなしにかよ? 本当のこと言えよ、オルバみたいなやつがいるところのお偉いさんが、そんな甘いわけねぇだろ」

DXは戦力として考えるなら計り知れない能力を持つ。この世界にマイクロウェーブ送信施設があるかどうかは知らないが、
サテライトキャノン抜きにしても、戦後開発されたMSの中ではトップクラスの性能を持つのだ。
それぐらいのことはオルバから聞いてるだろう

『もちろん、本音を言えばDXは欲しい。我々が最新技術を結集して作った、ガイアガンダムを圧倒した機体だ。
  だがね、私は同時に君も欲しいのだよ、ガロード・ラン君』
「は・・・・? あんたそっちの趣味があんのかよ、気持ち悪ィ!」

ガロードもそれなりに自分の容姿に自信はあった。悪寒を抑え、口元を引きつらせる
しかしモニターに映るデュランダルは、微笑を浮かべて首を振った

『勘違いしないでくれ、もちろん私も男より女の方が好きだ。ただ・・・・・私は、ガイアガンダムを圧倒した機体も欲しいが
  ガイアガンダムを圧倒したパイロットも欲しいのだ。』
「・・・・・・・・・・なるほど、ね」

完全に信用できる話ではないが、ガロードを丁重に扱うという言葉の説明にはなっている

『オルバから聞くところによると、君はもともとフリーのMS乗りだったらしいな。どうだね、私に雇われた傭兵と考えては?』
「・・・・・・・・・。」
『行く当てもないのだろう? それなりの待遇と金を用意するし、もちろんDXは君のガンダムだ。どうだね?』

ガロードは腕を組んだ。親も無く、戦後の荒廃した世界を腕一つで生きてきたガロードは、
金の重要性をよくわかっている
それこそこのままでは、DXをいつかのように売り払って食いつなぐ羽目になるかもしれないのだ

「わかった、あんたに雇われてやるよ」

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案内された部屋はひどく小奇麗で、士官用の部屋だとオルバからは説明された

「とにかく服を着替えろ、ガロード・ラン」

オルバが赤い服を投げてよこす。オルバが着ているのと同じ服だった
これがザフト軍エリートパイロットの着る服だというのは聞いている

「どうでもいいけどよ、なんでおまえはそんなのうのうと俺を案内できるんだよ、オルバ!
  おまえがティファをさらったり、フリーデンに攻撃かけたりしたこと、忘れたわけじゃねぇんだぞ!」
「今ここで争ってなんになる、ガロード・ラン。僕は君より早くこの世界に来た
  デュランダルにアシュタロンとMS操縦の腕を見込まれ、僕がザフト軍に参加してなかったら、
  君はこうもすんなりと暖かい食事や部屋を得ることもできなかった・・・・感謝しようとは考えないのかい?」
「クソッ!」

ガロードは部屋のベッドにどかっと座り、オルバをにらんだ
オルバは平然とした顔でそれを受け止めている

「とにかく元にいた世界に帰るのが先だろう。僕は君が嫌いだが、お互いの目的は一致している」
「それまで組もうってのか、オルバ。冗談じゃねぇや。
  へへっ、いつおまえのアシュタロンに、後ろから撃たれるかわかんねぇーっての」
「チッ。馬鹿になにを言っても無駄か」

いらだちをはき捨てたオルバ尻目に、ガロードはごろんとベッドに寝転がって天井を見つめた
その時ふと、思い当たる

「そういやおまえ、兄貴はどうしたんだよ。」
「兄さんは・・・・・」

不意にオルバの顔がくしゃくしゃになっていく。ガロードは驚いて、ベッドから跳ね起きた

「おろろろーーーーん。にいさーーーーんん! なんで返事してくれないんだぁぁぁ!!」

なんとぼろぼろとオルバが涙を流し始めたのだ

「あいたいよぉぉぉぉ・・・・声が聞きたいよぉぉぉぉ・・・・兄さぁぁぁぁん!!」

その後、兄さん兄さんと泣きわめきながらオルバは、ガロードに割り当てられた部屋から出て行く
ガロードは声をかけることもできず、呆然とその後ろ姿を見送った

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始めにガロードが感じたのは何度かの揺れだった
その後、揺れは衝撃や閃光となり、この戦艦ミネルバは戦闘に入ったことを教えられた
戦闘が終了した今では揺れもいくらかおさまり、艦内放送で二機の新型ガンダムを奪った戦艦を追うことを教えられた

「ここが・・・・宇宙・・・・」

ガロードはぼんやりと窓を見つめる。目前にある、巨大な銀色の物体。この世界の人間がプラントと呼ぶものだった
そしてその先に広がるのは、無限の闇。宇宙。

ピッ・・・・いきなり部屋のモニタがつき、赤い髪の少女が映し出された

『始めまして。ガンダムDX正規パイロット、ガロード・ランですね? 私はメイリン・ホーク。戦艦ミネルバの通信士です
  ミネルバの主要な通信業務は主に私が受け持ちます。以後、よろしくお願いします』
「あ・・・・ああ」
『士官学校の特別養成クラスを卒業した、きわめて優秀、かつ特殊なパイロットだと聞いています』
「ま、まぁ・・・・特殊っちゃ特殊だけど・・・・・」

あいまいにうなづくガロードは、すでに赤服に着替えていた
ここでは自分は表向き、ザフトの士官学校を優秀な成績で卒業したエリートパイロットとして振舞えと教えられていた
ガロードにはオルバのその言葉が、無理難題にしか聞こえなかった

(学校すら行ってない人間に、エリートパイロットなんてできるかよ)

とにかく、エリートとして振舞うなんてごめんだった。ガロード・ランはガロード・ランにしかなれない
だから言葉遣いはそのままでいようと思うが、いざとなると緊張してしまう

『でも、思ったよりエリートらしくないっていうか・・・・それに背も低いし・・・・ひょっとして私より年下ですか?』
「あー、いや、まぁ・・・・うーん・・・・・」
『あ、すみません。無駄話でした。MSデッキへ行って、ガンダムDXの調整作業をお願いします』
「調整? なんの調整だよ?」
『通信を、ミネルバおよびその所属MSと繋げてください。DXは特殊な機体で、ザフトの識別さえないようですから、
  その調整をお願いします。それにいつ実戦になるかもわからないので・・・・』
「オッケー。わかった、すぐ行くよ」

ピッ・・・・そして部屋のモニタが消えた。
懐にしまってあるGコンを取り出す。コレが無ければDXは動けない
デュランダルやオルバを完全に信用してない以上、当然の用心だった
ベットから起き上がり、扉を出る
ふとガロードの頭に、メイリンが使った実戦という単語が思い出された
普通のMS乗りならそんな言い方はしない。戦闘、と言うはずだ

(案外、ここの連中、戦いに慣れてないのかもな)

ガロードはそんなことを考えながら、MSデッキについた

(・・・・・!?)

ふわっとガロードの体が浮く。それは初めての感覚だった

(そっか、ここって無重力地区で・・・宇宙は重力が無いんだった・・・!)

手足をばたばたさせながら、近くの手すりにつかまる

「おまえ、なにやってるんだ?」
「え?」

ガロードの背中から声がかかる。振り返ると、ガロードと同じ赤服を来た少年がいた
年の頃はほとんどガロードと同じようだ。無重力空間に慣れているらしく、軽い動きでこちらに来る

「赤服なら、パイロットなんだろ。無重力空間での訓練はやってないのか?」
「う、うるせーな。俺は陸戦専門だったんだよ!」

我ながら苦しい言い訳と思いながら、手すりを離さぬ状態でガロードが叫ぶ

「はぁー、俺はこんなのと一緒に戦ってたのかよ。MSに乗ってた時はどんな凄いヤツかと・・・・」
「うるせー! おまえ、誰だよ」
「俺? 俺はシン・アスカ。インパルスのパイロットだ」

言ってシンは、デッキに格納されているインパルスガンダムを指差した
次にDXを指差して

「おまえがあの、ガンダム・・・ダブルエックスとかいうMSのパイロットなんだって? 
  特殊訓練を受けたMSパイロットだって聞いたけど、陸戦専門かよ
  宙間戦闘大丈夫なのか?」
「・・・・・・・ッ!」

ガロードははっと胸を突かれた。その通りだ。DXは宇宙でもなんらそのスペックが落ちることは無いが、
ガロード・ラン自身は宇宙での戦闘がまるっきりのど素人だった。
そのことをすっかり忘れていた

「あ、いたいたー。シンー!」

だらだらと冷や汗を流すガロードの横から、声がかかる
赤い髪の、ショートカットの少女がこちらに向かってきていた

「ルナ?」
「シン、ちょっと聞いて今この艦にさ・・・・・」

ガロードの耳にその声は入らない
人間はショックを受けると、足元がぐらつくような、貧血がおきるような感覚になり、また耳が遠くなる
今のガロードがまさにそれだった。このまま宇宙でMSの戦闘になればかなりまずい。下手すれば死ぬ

「あ、君、新型のパイロット!? さっきはまずいところ見せちゃったね」

赤いショートカットの、ルナマリアと呼ばれた少女がガロードに目を向ける

「え?」
「ほら、あたしの赤いザクが、ミネルバに着艦したとき!」

それでガロードも思い出した。よろけた赤いMSを、支えた時のことだろう

「あー、ああ! あの時の」
「あの新型、君のなんだって?」
「今から通信合わせろって言われてんだけどさ・・・・」
「そいつ、宇宙空間に慣れてないんだと」

ガロードの後ろからシンのからかうような声が聞こえる

「あー、だからさっきから君、手すりを離さないのね」
「仕方ない、ルナ! こいつをDXのコクピットまで連れてってやろうぜ」
「わかったわ。私も新型のコクピット、興味あるし」
「え? え?」

ガロードは捕獲された宇宙人よろしく、シンとルナマリアにDXのコクピットまで連れて行かれた

ガシュン・・・・

鈍い音を立て、ハッチを開く。ガロードはシンとルナマリアから解放され、DXのコクピットに収まった

「へぇ・・・・ザフトの機体なのに、コクピットの感じはぜんぜん違うのねー」
「確かにな。士官学校時代に見た、地球連合軍のやつとも違うみたいだ」

二人が物珍しげにDXのコクピットを見て回るのを無視して、ガロードはGコンをはめ込み、コクピットだけに電源を入れた

「えーっと、シン・・・・ええと、ルナ・・・だったっけ?」
「ルナマリア・ホーク。ルナでいいわよ。なに?」
「俺はガロード・ラン。とりあえず、シン、ルナ、よろしく」

やや距離を置くような感じでガロードが挨拶すると、操作パネルで通信設定を開いた

「ミネルバの通信設定ね。×××が、×××で・・・・・」

ルナマリアが適切に指示していく。幸い、通信機構はこの世界とのずれはないようで、設定はスムーズにできた
その作業を行いながら、ガロードがふと見上げると、
デュランダルが見覚えのある一組の男女を連れて艦内を歩いているのが見えた

「シン、ほら! さっきも言ったけど、あの金髪の人がオーブのカガリ・ユラ・アスハ代表なんだって」
「オーブの、アスハ代表・・・・・」
「で、横にいる男の人がさ、アスラン・ザラかもしれないのよ」
「え?」
「とっさにアスハ代表が、あの人のこと『アスラン』って呼んだのよ」

通信設定をしているガロードを無視して、ルナマリアがシンとなにやら会話をしている
ガロードにはよくわからない話なので参加するつもりは無かった
デュランダルと、カガリとか言われる女の人もなにか会話しているが、ガロードにはよくわからないし興味もない。
ところが、だ・・・・

「さすが! 綺麗事はアスハのお家芸だなッ!!」

突然、MSデッキに響く大声で、シンが叫んだのだった
ガロードが見上げると、シンの瞳はうるんでいた

ブー! ブー! ブー!

瞬間、緊急を知らせるサイレンがうなる。同時に艦内をオペレーター・メイリンの声が駆け抜けた

『敵艦捕捉、距離8000、コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機せよ。
  なお、DXパイロット、ガロード・ランのみブリッジにて待機すること』