クロスデスティニー(X運命)◆UO9SM5XUx.氏 第036話

Last-modified: 2016-02-15 (月) 23:55:50

第三十六話 『母さん』
 
 
==========================

深夜のスエズ基地。サイレンがけたたましく鳴り響いている

ガロードは急いでMSデッキに向かうと、白いブレイズザクファントムに乗り込んだ
同様にレイも白のグフイグナイテッドに乗り込んでいる

脱走した、バルトフェルド、シャギア、ロアビィの三人がなにをするつもりかはわからない
ただ逃げるだけならいいが、ひょっとしたら基地の爆破などを行うかもしれないのだ
さすがにそれは、見逃せない

「ロアビィ・・・・なに考えてるんだよ、バカヤロウ!
  これ以上はかばえねぇぞ・・・・ガロード・ラン、ブレイズザクファントム! 出るぜ!」

『それにしてもこのタイミングで脱走か・・・・。レイ・ザ・バレル、グフイグナイテッド! 発進する!」

ヤタガラスから二機のMSが勢いよく飛び出す。スエズ基地は照明があちこちを照らし出し、
真昼の明るさだった。ざっと見渡してみるが、今のところどこかが破壊されたとか、
戦闘状態になっているとか、そういうことはない

『ガロード、俺たちはエターナルを固めよう。MSはロックされているが、念のためだ
  だが無理はするなよ。今は実戦で、おまえはまだ、怪我人だ』
「わかった!」

港で静かに駐留しているエターナルへ、二機のMSは向かう
エターナルは動力を完全に落としている上に、厳重にロックされているため、
侵入することさえ難しいはずだ。
すでにエターナルの周りにも、歩兵たちが集結していた

ガロードのザクが港に降り立つ。レイのグフが続く

『すでにエターナルは厳重に固められていたか・・・・・』
「なぁ、レイ。これじゃ近づきっこねぇぜ?」
『・・・・・ガロード。ラクスをどう思う?』
「は・・・・? いや・・・・うまくは言えねぇけど、危ねぇ感じがするな・・・・」

さすがに魅了能力があるから危険だとは言えなかった。なんの確証もないことなのだ

『そうだな。俺も同じだ。彼女は爆裂弾だ。なら、ここで殺すべきかもしれない』
「・・・・・・・・・・・・」

ガロードには返す言葉がなかった。実を言えば、ガロードも心のどこかでそれを考えている
ロアビィの真意はわからないが、もしもラクスに魅了されてしまったがゆえにあんな行動を取ったなら、
ラクス・クラインは言葉にできないほど危険な存在と考えられる

『彼女は危険だ。核以上にな。彼女の存在は、平和の歌姫でありながら、戦争を作る
  邪気がないだけに余計始末が悪い・・・・・』
「・・・・・レイ、それぐらいにしとこうぜ。そんなことは俺たちが考えることじゃねぇ
  それに・・・・今はそんな場合じゃない」

そんなやり取りをしていた時だった。

ドゥン!

閃光が基地に走る。見上げると、一機のMSがエターナルとはまったく逆の方向から飛び出してきていた

『バビ・・・・強奪されたのか!?』
「バビ?」
『ディンに代わる、大気圏用の新型可変MSだ。格闘能力はないが、機動性と火力がある』
「んなッ! なんでそんなもんが簡単に強奪されるんだよッ!」
『どうせクライン過激派の内通だろう・・・・ザフト軍にはいまだに多い。追うぞ!』
「畜生! なに考えてんだよロアビィのアホ!」

MS戦になれば、死の危険が出る。ガロードはキラではない
コクピットだけを狙わずに戦闘不能にする、などという芸当ができるはずもなかった

(でも、やるしかないか!)

ザクとグフで、バビの前へ立ちふさがる

「ロアビィ、それに乗ってんだろ! なにやってんだ、このアホ、ボケ、ナス!」
『おいおい、ひどい言いようじゃないの、ガロード。
  それに俺は操縦してないぜ? 動かしてるのはバルトフェルドの旦那だ』
「どうするつもりなんだよ! せっかくどうにかなりそうだったのによ!
  おまえがこんなことしたせいで、全部パァじゃねぇか!」
『仕方ないだろぉ? もらった金の分は働かなくちゃさ。それがMS乗りの義理ってもんでしょ?』
「馬鹿野郎ッ!」

ザクファントムのビームライフルを構え、放つ。コクピットは狙わない。
狙うのは、バビの羽根

バシュゥゥン!

しかしあっさりとビームはかわされた

「ええい、こっちは飛べねぇし・・・・手加減はしなくちゃいけないし・・・!」
『ガロード、ザクでは無理だ。グフがやる』
「殺すなよ!」
『わかってる・・・・!』

ロアビィを救いたいとかそういうこととは別に、捕虜は生かして連れ帰るのがベストだった

グフが飛び出していく。すぐさまスレイヤーウィップをグフは構え、バビを狙った

『チィッ!』

瞬時にバビが変形し、ウィップをかわした。かと思うと、一気にブースターを吹かし、飛び立つ
グフがあわててそれを追ったが、いかんせん機動力に大きな差があった

「なっ・・・! あいつらラクスを救うのが目的じゃなかったのか!?」
『だろうな・・・・これは意表を突かれた・・・・・・・。まぁ、バビ一機じゃとうていヤタガラスは制圧できないが・・・・』

そんなやり取りをしていると、ヤタガラスからアカツキとDインパルスが飛び出してくる

『あちゃー、もしかして遅刻かしら?』
「見ての通りだ、ルナ。つうか遅ぇよおまえら」

ガロードはザクのコクピットでため息をついた。結果として始めての実戦になったが、
満足できる結果ではない。自分がどれだけDXに頼ってきたかを改めて痛感させられる
もしもキラとやりあえば、瞬殺されるだろう

(どうすんだよ・・・・・。どうすりゃいいんだよ、こんなの・・・・。ロアビィ・・・・)

今になって傷が痛みだした。しかし、そんなことに構ってもいられない
ガロードはバビの去った方向を向く。空は徐々に明るくなってきていて、朝が近づいていた

==========================

デュランダルのクセや、思考法、あるいは細かな性格などはほとんどわかっている
そのために自分はいる。だから、議長をやるのも難しくはない
ロゴスの糾弾を行い、戦局はザフト優位に傾く。ありがたいことに親ロゴス派は抵抗してくれていて、
その無駄な抵抗のおかげでザフトは圧勝するだろう。つまり、戦後、プラントの発言力はかなり大きくなるということだ

プラントの自室で、デュランダルは報告を受けていた。ニコルからではなく、
正式なザフト諜報部からの報告である

「ほう・・・・・脱走した、と?」

デュランダルが笑うと、モニタの先にいるザフト軍人はうなずき、報告書を読み上げた

『はい。スエズ基地で、エターナルクルーの三名が脱走。しかしラクス、キラ、双方共に確保したままです』
「なるほどな・・・・。わかった、ありがとう」

ラクス・クラインやキラ・ヤマトがヤタガラスに捕えられたと聞いたのは少し前のことだ
面白い局面だとデュランダルは思っていたが、さらに状況は動いていた

報告を聞き終えて、デュランダルはイスに座った。テーブルにはチェスがある
ナイトの駒を動かし、クイーンの駒を取った

「クイーンはチェスにおいて最強だ。だが・・・・ポーンやナイトにあっけなくやられることも多い・・・・
  さて、君はどうだねラクス・クライン。まぁ、私としては君にここで消えてくれた方がありがたいがね・・・・」

つぶやくと、専用回線から通信が入ってくる。盗聴防止のため、かなり厳重なセキュリティがしかれた回線だ
デュランダルはそれをつないだ

『どうするんですか、あれを?』

声の主はニコルだった。あれとは、当然キラとラクスのことだろう

「フフッ・・・・。君には残念だが、オーブに殺してもらうとしよう」
『・・・・・どういうことですか?』
「正式なオーブの法で、ラクスとキラを処刑するのだよ。そうすればクライン派の憎しみはオーブに向く
  デスティニープランもやりやすくなるというものだ・・・・・」
『そううまくいきますかねぇ・・・・・?』
「オーブの議会や司法にもプラントの息がかかった者がいるのさ。これは私ではなく、
  前のデュランダルがやった工作だがね。フフッ、友好国とは、仮想敵国か・・・・世界は悲しいな」
『気に入らないですね。キラやラクスはもっと苦しむべきだと、僕は考えますけどねぇ・・・・』
「個人の怨念では、世界は平和にならんよ」
『チッ、そんなのどうでもいいですよ・・・・』

そう吐き捨て、ニコルは通信を切った。不機嫌そうな声だ。よほど自分で、ラクスやキラを殺したかったのだろう

デュランダルはそれから、現状の戦況を確認した。ロゴスメンバーはあれから、指名手配犯のような存在になり、
いくらかの人間が住民のリンチで死んでいる。残ったメンバーたちは一同に集まって、
大西洋北部アイスランドにある要衝、ヘブンズベースに篭城した。これも面白い

(そろそろ頃合かな・・・・)

デュランダルは笑った。デスティニープランをそろそろ発表すべきと考えたのだ
民衆は、敵がいると為政者の言うことをよく聞いてくれる
戦後に発表するより、戦中に発表した方が効果的だろう

ピッ

また、専用回線から通信が入った。ややこしい相手からだった
デュランダルはけだるげに回線へ手を伸ばす

『デュランダル』

モニタに映し出される、一人の男。眼差しはあくまで悲しげであり、初老の紳士という風情があった

「命乞いですか、ブルーノ・アズラエル?」
『バカを言え』

デュランダルの声を聞き、ブルーノ・アズラエルと呼ばれた男はため息をついた
彼はロゴスメンバーの一人である

「フッ・・・・。冗談ですよ。あなたは我々にとって恩人です。ちゃんと命は助けます
  名は変えてもらいますがね・・・・・」
『そんなことはどうでもいい。・・・・・本当にデスティニープランを実行するつもりか?』
「なにをいまさら・・・・。私はそのために、デュランダルなのです」
『あんなものを実行すれば、ナチュラルのほとんどがコーディネイターの下につくことになる
  そんなことをすれば、また繰り返しだ。争いごとはもうたくさんだ・・・・・・』
「ほう、ずいぶん弱気ですな」
『・・・戦争で、息子を亡くせばそうもなる。残された孫など、特に不憫だ・・・・』
「まぁ、よろしいではありませんか。戦争は無くなりますよ、デスティニープランでね
  デスティニー、レジェンド、サザビーネグザス、そしてネオジェネシス。必要な戦力は整っています
  それにザフトもプラントも、私の正体を疑ってもいません。問題はクライン派の、
  ラクス派とでも言うべき人間たちぐらいですか」
『デスティニープランが本当に平和を生むか? あれはもともとそのためのものではない』
「フッ・・・・・。では、あの物語を信じますか、あなたは?」

デュランダルが皮肉な笑みを向けると、ブルーノは少し黙った

『・・・・物語を信じる信じないは別だ。だが、本来のデスティニープランは、
  宇宙鯨の来襲を想定して考えられたものだ・・・・・。平和を生み出すためのものではない』
「ブルーノ・アズラエル、勘違いしてもらっては困ります。私にとっての優先順位は、
  平和の構築ではなく、あくまでもデスティニープランの実行ですよ」
『・・・・・わかってる。無駄話だったな・・・・。まぁいい。わしもこの船に乗ったのだ・・・・ 
  後は平和となることを願うのみ、か・・・・・』
「全力を尽くします。あくまでもプラン実行が第一ですが、平和も目指しているのですからね、私は」
『だといいがな。確かに、平和であればいい・・・・』
「早急にヘブンズベースから脱出を。デスティニーを迎えに行かせます」
『頼む・・・・。ジブリールのバカが、この期に及んでまだ主戦論を主張しているからな・・・・
  もはや付き合いきれんよ』

そう吐き捨て、ブルーノは通信を切る。どうも通信に出る人間たちは不機嫌な者ばかりだと、
デュランダルは心中で苦笑した

(チェックメイトは、近いか・・・・)

微笑を浮かべたその先に、何枚かに重ねられた演説用の原稿があった

==========================

プラントの墓地である。人口の風が、鳴っていた
そして目に映るのは人口の黄昏。夕焼けが、世界を染める

ニコルは松葉杖をついて、立っていた。自分は、表立って姿を出せる人間ではない
しかしどうしてもそうしなければ気がすまなかった

向こう側から一人の女性がやってくる。花を、持っていた
顔に深く刻まれたしわ、ひどく増えた白髪。ニコルは思わず、目を伏せた

「・・・・・・あなたも、お墓参りに?」

女性が声をかけてくる。ニコルは目をそらし、うつむいた

「あら・・・・すいませんねぇ。それにしてもひどい怪我をしてらして・・・・。大変だったでしょう?」
「・・・・・・・」
「私も、前の戦争で息子や夫を亡くしてしまってね・・・・。
  本当に、いつになったら戦争のない世界が来るんでしょうか・・・・
  あら。私だけ一方的にしゃべってしまって・・・・。すいません、では・・・・」

女性がニコルに会釈して、花を持ったまま去って行く。

「・・・・・・・きっと、いつか。いつか平和になりますよ」

ニコルはつぶやいた。同時に、木の陰から少年が飛び出してくる。アウルだった

「で、あの人の後をつけて、これを渡せばいいのか?」

アウルの手には、分厚い封筒がある。中には金が入っていた
一人の女性が暮らすだけなら、十年は生きていけるだろう

「ええ。くれぐれも僕のことは悟られるんじゃありませんよ? 
  あなたは、ユーリ・アマルフィゆかりの者を名乗るのです」
「めんどくせー・・・・・。名乗りゃいいじゃん。あなたの息子ですって」
「こんな姿、見せられますか・・・・。では、頼みましたよ」
「はいはい、上官殿!」

アウルが不満そうに言って、走っていく。ニコルは松葉杖をついたまま、それを見送った
遠くでは、母が自分の墓に花を捧げている
その姿を見ていると、たまらなくなった

「母さん・・・・・。年を取ったんだね。白髪も増えて・・・・・ごめんなさい」

ニコルはつぶやく
前大戦、父であるユーリ・アマルフィは、元はクライン穏健派の議員だった
しかし自分が死んだことにより、ザラ派に転向した。フリーダムやジャスティスの開発にも影響を与えている

だが、フリーダムもジャスティスも、ザフトの敵に回った。それに責任を感じ、父は自殺した
それを許すことはできない。父は、ラクスやキラ、アスランのせいで死んだ
そして自分もまた、キラのせいで母親の前に姿を見せることさえできない

殺すしかなかった。八つ裂きにするしかなかった。この痛み、この絶望は、
キラやラクス、そしてアスランを不幸の底へ叩き落すことでしか癒せない

「さよなら、母さん」

ニコルは墓場から背を向け、松葉杖をつきながら、ゆっくりゆっくりその場を離れて行った

==========================

少し馬鹿馬鹿しいと思いながらも、アウルは女性の後をつけていた
女性、アマルフィ夫人は墓参りを終えると、プラントの居住区へと戻っていく
足取りは重々しく、体を悪くしているように見えた

やがて女性は、マンションに戻っていく。豪華でもないが、みすぼらしくもなく、
普通の中流家庭が住むような、小奇麗なマンションだった

その一室へ女性が入っていく。アウルは十分ほど時間をあけて、呼び鈴を押した

「はい。どちら様でしょう?」

扉越しに女性の声が聞こえてくる

「その・・・・昔、ユーリ氏のお世話になった者です。頼まれていたものをお届けに来ました」
「夫の・・・・?」

女性が扉を開けて、こちらを見つめてくる。アウルは軽く頭を下げた

「その、これです。生活費の足しにって」

金の入った包みを手渡す。すると女性は、目を大きく見開いて驚いていた

「これは・・・・・?」
「ユーリ氏のお金です。・・・・・とにかく、渡したからな・・・・!」
「あ、ちょ、ちょっと待ってください。どうかあがっていただけませんか? せめてお茶だけでも」
「んな・・・・いや・・・・。そんなつもりじゃねーんだって!」
「いえ、せめてお礼をしなくては」

ほとんどアマルフィ夫人に押し切られる形で、アウルはマンションの中へ案内された
部屋の中は家具があまりなく、どちらかと言えば質素な印象がある

「もう来客もほとんどなくて・・・・。お客様用のカップを使うの、いつ以来かしら」
アマルフィ夫人は、そうつぶやきながらお茶を入れている。紅茶のいい匂いが、アウルの鼻をくすぐった
「俺・・・・・・・・」
「ユーリと、あなたは親しかったのかしら? お金を届けてくださるなんて」
「いや、むしろ・・・・・息子の方、かな?」

あははと微妙な笑みを浮かべて、アウルはごまかした。ユーリ・アマルフィと面識があるはずがない

「まぁ。ニコルと・・・・? じゃああなたは、ニコルのお友達なの?」
「そ、そんなもんかな・・・・・。あははは・・・・」
「そうね。少し、ニコルより年下に見えるわ。お名前、教えてもらえるかしら?」
「あ・・・・アウル・ニーダ」

名乗ってから、少し名乗るのはまずいかもしれないと思ったが、手遅れだった

「そう。アウル君ね。さぁ、召し上がれ」

言って、アマルフィ夫人が紅茶をアウルの前に置く。それから、クッキーが並んだ

上品にアマルフィ夫人が紅茶を飲む。アウルはそれの真似をしようとしたら、ズズッと下品な音が立った

「あれ・・・? なんか上品にいかねーの」
「フフッ。別にそんな緊張しなくてもいいのよ? 私はもう、最高評議会議員の妻ではないのだから」
「・・・・・あのピアノは?」
アウルは、部屋の片隅に置かれてある、グランドピアノを見つめた。演奏会に使われるようなそれは、
この部屋に似つかわしくないものだった

「息子のものなのよ。前大戦で息子が死んで、もう何度も捨てようと思ったけど・・・・。
  ダメね。なかなか捨てられなくて・・・・・」
「・・・・・・・・」
「あら、ごめんなさい。おかしな話をしてしまったわね。でも・・・うん、なんだかニコルを思い出すわ
  マザコンって、言われるかもしれないけど・・・本当に優しい子でね。いつも、母さん、母さんって・・・」
「『母さん』・・・・?」

アウルの頭が、不意に白くなった。混乱し、まともな思考ができなくなる
手に持った紅茶のカップがかたかたと震え、中身がこぼれた

「あら?」
「母さん・・・・あ・・・・母さん・・・・・」

アウルの両目から涙があふれていく。カップがテーブルに落ちて、中身が割れた

「大丈夫? どうしたの?」

アマルフィ夫人は立ち上がり、アウルのそばにやってきた。そして背中を、優しくなでてくれる
アウルはほとんど反射的に、その胸へしがみついていた

「アウル君・・・・?」
「母さん・・・! ああ、母さん! 母さん・・・・・!」
「・・・・・・・・」

アマルフィ夫人は、それを拒絶することなく、アウルを抱きしめ、微笑んだ
それからゆっくりと背中をさする

「大丈夫よ。大丈夫・・・・・。ほら、大丈夫だからね・・・・?」
「母さん・・・・・・? うう・・・・・母さん・・・・・」

しばらくアウルは、そのままその胸にしがみついていた
ひどく懐かしい匂いがした。母親の匂いだと、思った

==========================

秘密のプラントに戻る。すぐに出撃だった
しかし今度はレジェンドは連れて行かず、アビスとデスティニーだけの戦いになる

出撃前に、アウルはニコルを呼び止めた

「なぁ、今度俺にピアノを教えてくれよ」
「・・・・・どういう風の吹き回しですか?」
「そういう気分なんだよ。じゃ、頼んだぜぇ?」

言って、アウルはアビスに乗り込んだ
ニコルは少し、首をかしげただけでデスティニーに乗り込んでいる

任務は、ヘブンズベースから要人を助け出し、護衛することだった