サンタ 氏_未来の子供たちへ_第00話

Last-modified: 2009-12-14 (月) 23:35:56

第00話‐闇の中‐

 

C.E.74年、12月25日。
プラントのフェブラリウス・フォーにある、とある研究所。
研究所と言っても表向きは一般的な病院だ。
その地下にある、特殊なベッドにシンは横たわっていた。

 
 

―――ゆりかごの歌を
 カナリアが歌うよ―――

 

(母、さ……ん……?)

 

小さい頃、母親が歌ってくれた子守唄が聞こえた。

 

(心地、いい……でも、ダ……メ、だ……)

 

僅かに抵抗するが、その装置にとってそれは無駄なことだった。

 
 

* * *

 
 

「やあ。やっと起きたみたいだね」

 

同時刻。
太陽に近いL1宙域。
そこで長い時間眠っていた"彼"は目覚めた。

 

「驚いたよ。ボロボロになってるザフト軍のMSがこの辺り宙域を漂ってたんだからさ」
「貴方が俺を……?」
「いや、ボクの仲間たちが見つけて、君を回収したのも仲間たちだ。礼なら彼らに言ってくれ」
「そうか。……失礼だが、貴方の名は?」
「あぁ、自己紹介がまだだったね。ボクはクロード・アシルだ。よろしく。君は?」

 

クロードと名乗った20代後半に見える男は手を差し出し、"彼"に握手を求めた。

 

「俺は……」

 

白金色の髪の青年は名を名乗ると、クロードの握手に答えるのだった。

 
 

***

 
 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

L2宙域に漂う資源衛生。
その中から少女の痛々しい悲鳴が聞こえた。

 

「またです、博士」
数十人の研究員はガラス越しに少女の様子を見ている。
初老の男性はその痛々しい少女から目を逸らした。
「鎮静剤を。それから、彼らと連絡を取る」
「博士!?」
初老の男性の発言に、他の研究員たちはどよめく。
「もし失敗したらどうするのですか!?それにこの事がラクス様に知られれば……!」
「彼らを信じよう。不満があるのなら、上に報告して構わない」
「博士……」
場が静まる。

 

沈黙を破ったのはまだ若い……20歳にも満たない研究員だった。
「俺は博士に着いていくと決めてます」
「アーガイル君……」

 

「……っ、俺だって!」
「私もです博士!」
次々と初老の男性を支持する声。
初老の男性は目頭が熱くなった。
いい部下たちを持ったと。

 

「ありがとう、みんな。……ステラ、もう少しの我慢だよ。頑張るんだ」

 

初老の男性は部下たちに礼を言うと、ガラスの向こう側で鎮静剤を打たれ
おとなしくなった金髪の少女を見る。

 
 
 

C.E.74年。
偽りの平和が破られる時まで、あと5年。

 

To Be Continued.

 
 

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