シスター№プリンセス_01話

Last-modified: 2010-07-20 (火) 20:39:40

「今度こそ決着を付けようぜ、フリーダムのパイロット!!」

 

「そうだね、いいかげん君の顔も見飽きたよ、デスティニーのパイロット!!」

 

 落ち逝くメサイアを背景に、二人の男は今正に最後の対決を始めようとしていた。何度も何度もぶつかり合い、殺し合い、
相手をむさぼり食わんとする様な獰猛な二体の肉食獣は互いに痛手を与えながらも健在だった……

 

だがこの戦いが最後だ!戦うがいい己の存在意義をいや己の総てを賭けて!!

 

「お互い名乗りでも挙げるか?フリダームのパイロット」

 

「冗談でしょ?」「ああ、冗談だ」

 

 運命を冠する機体と自由を冠する機体は周囲に影響を与える程の殺気をばら捲き、臨戦態勢に移行する。周りは驚く程静かである、
まるで宇宙そのものが二人のいや二体の獣に恐怖しているように。

 

「君とは同じ天を抱けやしないよ」「アンタは俺の不倶戴天の敵だ」

 

 オープン回線で言葉を交わしていたストライクフリーダムのパイロットのキラと、デスティニーのパイロットのシンはお互いを憎々しげに睨み付けると、
これ以上顔を見るのも御免だと回線を切ってしまう。

 

ストライクフリーダムのコックピット内で一人の青年が不適な笑みを浮かべていた、コックピット内は他のMSとはまるで違う作りになっていた、モニターも無ければ、
レバーの様なモノも一切無い、有るのは多数のキーボードとバイザーを下ろすと前がまったく見えなくなる様な重厚なヘルメットのみであった。

 

 青年、キラは先程までの通信でデスティニーのパイロットにぴったりくっ付いていた幼女を思い出していた。

 

「デスティニーは複座式、それはいいとしよう、でも毎回毎回違う女の子のサブパイロットを取っ替え引っ替え、しかも今度は幼女……許せないじゃない!!」

 

 デスティニーのコックピット内も他の機体とはまるで違う、一番の違いは何と言っても複座式であることであろう、シンの体を背もたれ代わりにピッタリと幼女が一人
くっついていた。

 

 シンはフリーダムのパイロットの常に見下した態度を思い出し、怒りを静かに燃やしていた。

 

「はっ!彼女持ちは常に余裕ってかぁぁ?!年齢=彼女居ない歴のこの俺が地獄に送ってやる!!」

 

 二人はこれまで何度も戦ってきた、純粋な機体出力ならストライクフリーダムが上、しかしマシンインターフェイスの違いから機動性はデスティニーの方が上、
デスティニーのインターフェイスは他のMSとは一線を画する、だがそれも仕方がないだろう、シンが駆るデスティニーはMSでは無いのだ。

 

 試作型小型魔力炉ヒュードラⅡ及びハイパーデュートリオン送電システム搭載式、MS型ブーストデバイス、デスティニーが正式名称である。

 

 機体出力こそストライクフリーダムが上だがパイロットの反応からのレスポンスが違いすぎる為、キラは従来の操縦システムを全てオミット、7つのキーボードと
ヘルメットに直接写るレーダーのみで対処している、正にストライクフリーダムはキラ・ヤマトにしか操縦出来無い機体である。

 

   まあ、正直この二人は正に才能の無駄使いであるが。

 

 二人は今日も全世界の彼女が居ない寂しい男達の代弁者として恋の孤児を見下すリア充を滅ぼすため、尻に敷かれマン同盟の代表者として男の敵ハーレム野郎を討つため、
戦うのだ。

 

「お兄ちゃん達、余りにも馬鹿過ぎるよ……一回死んだ方が良いんじゃないかな~?」

 

「マユ、何か言ったか?」

 

「ううん、何も言ってないよ」

 

 ストライクフリーダムとデスティニーはそれぞれの何処か間違った主の気迫と思いを受け取り、宇宙を震撼させる程にぶつかり合った。

 

「ハーレム野郎はこの世に生きていたらいけないんだ!!うらやま、いやそんな男の敵は許せないじゃない!!」

 

「リア充は、俺が倒すんだ!今日!ここでぇ!」

 

「「くたばりやがれぇぇぇぇぇ!!」」

 

 C・E最高峰の水準を持つ二つの機体とパイロットは、銀河の隅っこ~の方で、悪く言えば周りの存在からハブにされながら、
他のパイロットが掲げる理由とは斜め135℃位かけ離れた理由でぶつかり合った。

 

 これは13人の姉妹を持つシスコンの息の根を止める程のシスコンとスーパーコーディネイターならぬスーパー尻に敷かれマンとの過酷なすれ違いの運命の物語である。

 シスター№プリンセス 第一部CE編 第一話シスコン、衝撃と共に

 

「わぁ!ご、ごめん」

 

 黒髪に赤目の少年シンは、アーモリーワンの街角でぶつかった金髪の少女の胸を後ろからわしづかみにしてしまった、
金髪の少女は始めはキョトンとしていたが少年を睨み付けると、街の雑踏に紛れてしまった。
 ばつが悪そうに頭をかく赤目の少年、シンの後ろから本来なら陽気さが溢れる声を怒りに滲ませた少女の声が掛かる。

 

「この、シンのラッキースケベ!!しらない!」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ、セイン!!」

 

 シンは、一緒に買い物に来ていた同い年で幼なじみな義妹である水色の髪をショートカットにした少女、セインが頬を膨らませ機嫌が悪くなった理由も分からずに
走り去って行くセインを追いかけた。

 

「セイン何怒ってるんだよ?俺何かしたかよ」

 

「怒って無い!(オノ三中で一緒のクラスだった時だって、何時も何時も私の目の前でラッキースケベして、私には一回だってした事無いのに!)」

 

 二人は言葉を交わしながらアーモリーワンの街道を歩いて行く、そこに緊急警報がけたたましく鳴り響いた。

 

「警報!?こんな所に敵襲かよ!!?行くぞ、セイン!!」

 

「わ、わ、そんなに引っ張らないでよシン!」

 

 シンはセインの手を確りと握りしめると走り出す、目の前に見える自分とセインが配属されている戦艦ミネルバに向かって、
前を確りと向いているため、ほんのりと頬を紅くしたセインに気が付かずに。

 

 時間を少し巻き戻す

 

 オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハとプラント評議会議長、ギルバート・デュランダルは、二年前の戦争後プラントに流れたオーブの難民処遇に付いて
秘密裏に会談を設けていた。

 

「だが強すぎる力は、また争いを呼ぶ!!」

 

「いいえ姫、争いが無くならぬから、力が必要なのです」

 

 まだ若く青いカガリと高い政治能力を持つデュランダルとでは役者が違っていた。

 

 そんな二人をみるサングラスの男、アレックス・ディノ、アスラン・ザラは表情を押し殺しながら胸中で苦々しい思いを零す。

 

(役者が違いすぎる、それに何より俺には何も出来ないこの状態こそが、なによりも不甲斐ない)

 

 そこに飄々とした雰囲気を持つ白衣の男が扉を開け入室してきた。

 

「ギルバート、おっと今は取り込み中だったかな?」

 

「ジェイル……姫、此方はドクタージェイル・スカリエッティ、色々な製品開発を担当している優秀な科学者です」

 

「おっとそんな堅苦しい紹介は止してくれたまえ、私と君は只の友人、それでいいじゃないか」

 

「このとうり飄々とした人物ですが、これでも14人の子供を持つ男なのですよ」

 

 先程とは打って変わって砕けた声色で話すデュランダル議長にカガリとアスランは面くらいながら、生返事を返すがお互いを掛け替えのない友人だと思わせる態度と口調に
カガリとアスランの表情も少し和やかになる。

 

「ギルバート、奥方と息子さんと娘さんがもう下に来ているぞ、今日はセレモニーが終わった後家族水入らずで食事に行くんじゃ無かったのかい?」

 

「何!?メガーヌとルーテシアとレイが?もうそんな時間なのか!?」

 

 ギルバート・デュランダル議長夫人である、メガーヌ・デュランダルと二人の実の娘であるルーテシア・デュランダル、そして養子であるレイ・デュランダルがやって来て
いると聞いて、ギルバートは気色ばむ。

 

「議長には娘が居るのか?」

 

「ええ、もうあれですよ、可愛すぎて目に入れても痛くないと言いますか、妻に似て将来美人になること間違い無しな「おおっと気をつけてくれよ、ギルバートは娘の話
になると長いんだよ」ジェイル……これからが良いところなんだぞ、だいたい君だって娘の話になると長いじゃないか」

 

「それはそれ、これはこれだよ」

 

 先程までの緊迫した状態が嘘の様に崩壊したこの場所で、カガリとアスランはそのギャップの酷さに呆然と立ち尽くした。

 

 ギルバート・デュランダル、その真の姿は愛妻家にして究極の娘馬鹿である。

 

 その時足下を揺るがす様な揺れと共に閃光が辺りを埋め尽くした。

 

【ミネルバ 格納庫】

 

 パイロットスーツに着替え、戦闘機コアスプレンダーに乗り込むとシンは整備主任のマッド・エイブスに話しかける。

 

「一体何があったんですか!?」

 

「敵襲だよ、セカンドシリーズが強奪されたらしい」

 

【工廠地区でMS強奪事件発生、インパルスに出撃要請、繰り返す】

 

「どうやらマジらしいですね、出ます!!」

 

「わかった、コアスプレンダーが出るぞー!」

 

 艦内放送で裏付けがとれたシンは気持ちを落ち着かせ、コアスプレンダーの操縦桿を握る。

 

【シン、気をつけてね、コアスプレンダー発進どうぞ】

 

 オペレーターであるメイリン・ホークの声を受けシンはコアスプレンダーのスロットルを握り込む。

 

「シン・A・スカリエッティ!コアスプレンダー 行きます!!!」

 

 発進したシン・A・スカリエッティは後に発射されたシルエットフライヤー、チェストフライヤー、レッグフライヤーとドッキングしソードインパルスとなり、
強奪された三機のセカンドシリーズの目の前に降り立つ。

 

「また戦争がしたいのか!アンタ達は!!」

 

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