シロ ◆lxPQLMa/5c_子ネタ1

Last-modified: 2008-06-19 (木) 22:01:48


 「行って来い赤頭きんよ。お前が何を見て何を考えるか、ワシにはわからん。しかし今は
知識ではなく経験こそが必ずお前の力になる。力の限り・・・弁当を届けてこい。」

 

 母親が威厳をもって娘に接する、しかしその目の奥には隠しきれない愛情がにじんでいた。

 

 あずき色の頭巾をかぶった赤頭きんが「はいっ」と元気よく返事をして家を飛び出していく。

 

 「もう日本語おかしい!!」ザフィーラが即座に突っ込む。
「だいたいにしてずきん赤くないし・・・タイトル変わるだろ!いやそもそも母親がおかしいだろ!
母親はワシって言ワン!」

 

 一息に突っ込みを入れたザフィーラにヴァイスが注意を促す。

 

 「あのなあ、レジアス中将は前回お前をピエロにしちまったって責任を感じてわざわざ来て
下さったんだぞ!だいたい別に中将エピソードなくたってピエロだったくせに。それに・・・。」

 

 「ひでえ・・」、シンがそこでなおも言い募ろうとしたヴァイスに待ったをかける。
レジアスに媚を売って出世しようというヴァイスの魂胆が裏に見え始めたからだ。

 

 2人のやり取りを無視して疲れたように問いを発する。
 「だいたい配役はどうなってるんだ?」

 

 「赤頭きんがエリオだ」 「それ頭きんかぶらない方がそれらしいんじゃないのか!!髪の色的に。」

 

 「母親レジアス中将」 「だからなんでだ!!」 

 

 「あのなあ中将におばあさんの役なんかあわないだろ。」

 

 「そうじゃねえ!!猟師あるだろ!!」

 

 「中将ともあろうものにそんなみすぼらしい役をやらせられるか。」

 

 「それ明らかに本末転倒だろ!明らかに一番なってはいけないものになってしまっただろ!!!」

 

 「ちなみに狼は?」 「俺だ」 ヴァイスが言う。

 

 「ちょっと待て、目の前に狼がいるのに自分が狼役だと言い張る気か?まあある意味似合っ
ていると言えなくはないが。」

 

 「・・・ああ、確かに狼がいたな。頼んでいいか、よく考えたらお前のための話だし。」

 

 「だったら最初に呼べよ!他にも突っ込みたい所が残っているが、まあいいだろう。」

 

「一応俺にも狼役としての誇りがある、よってテストさせてもらうぞ。次の場面を完璧にこなして見せろ。」「いいだろう。」

 

赤ずきんを前にした狼

 

 「ぐっへっへ~、食~べちゃぁうぞぉおお」

 

 「すげえうめえな!本心から言ってるとしか思えないほどの迫真の演技だ!
それだけできればレギュラー即決定だよ。俺の負けだ、かなわねえよ。」

 

 「じゃあ本番行こうぜ。 んーーアクション!」

 

 猟師役でもあるシンが撮影現場を指揮し狼役のザフィーラに指示を出す。
 「ザフィーラ、そこにある石を食って湖に水を飲みに行ってくれ。」

 

 「??」

 

 「そしたら俺とヴァイスであんたをマシンガンのフルオートでハチの巣にするから、ミンチ
になりながら湖に沈んでくれ。」

 

 「ふざけろ!!!どういう童話なんだ、聞いたことどころか想像したことすらないぞ!」

 

その発言にシンは仕方なしに説明をはじめる。

 

 赤頭きん知らないのか!簡単に説明してやるよ。
いやしんぼの狼が食い物と間違えて石を食べ、水を飲みに来たところを元スペシャルチーム
所属の猟師2人に撃たれる。
 湖に落ちる狼の肉片。赤く染まっていく湖。そうすると血をかぶった湖の精霊があらわれ
る。まるで赤い頭巾をかぶっているよう。こいつも赤頭きんと呼ばれることとなる。

 

 そこにやってきた真赤頭きんとおばあさんが精霊に問いかけられる。あなたが落としたの
は狼の心臓ですか、それとも脳みそですか?

 

 いえ、私たちは何も落としていません。血濡れの精霊に怯える2人。
 正直ものですね、ではこれを落とした猟師2人にはたくさんの黄金をあげましょう。
そうして2人は地方領主となり税金で遊んで暮らせるようになりめでたしめでたし。 おば
あさんと赤ずきんちゃんは不思議な体験をすることができました。冒頭のレジアス母さんの
言う通りいい経験してよかったね。
 そんな話だ。

 

 「ちなみに精霊役はシャマルだ、はまり役だろ。」
 「照れますね(///)」
 「銃弾で倒しきれなかったら解剖して同じ展開に行くこともできる、ベストな配役だ。」
 「まかせてください、せっかくの大役ですからがんばっちゃいますね。」

 

 「ただのおまえらのサクセスストーリーだろ!教訓の一つも学べんわ!そんな童話がある
か!!グロいし黒い!
お前ら実は赤ずきんちゃん全然知らんだろ!!」

 

 「管理外世界にあるマイナー童話なんて知ってるはずないだろ。」

 

 「だったらやるな!知ってる奴に聞け。」

 

 「ほー、大した自信だな、そこまで言うならザフィーラは知ってるんだろうな?」

 

 「ああ。」

 

 「まじでっ!」

 

 「ヴィヴィオの情操教育になるものを探しているのでな、当然そういうものはチェックし
ている。」

 

 「何かなのはより保護者っぽいな・・。」シンがだれもが考えないようにしていたことを
つい口走ってしまう。

 

 「そもそも何であんなストーリーになった?」

 

 シン、ヴァイス、エリオが簡潔に答える。
―――赤ずきん 狼 石 猟師 おばあさん―――
 これら断片的な情報を入手した後、合理性や過去のデータを参照して導き出したストーリーだ。

 

 「どういうデータを参照すればそうなる、なにが合理性だ、合理性に土下座してこい。」
 「くっ、いつになく強気だな、ちょっと知ってるからって優越感バリバリか。」

 

そしてザフィーラに全権が委譲される。
 「では、正しいストーリーで改めてスタートだ。」

 

 草原を駆ける一匹の蒼き狼、その体躯はしなやかで、それでいながら力強さを感じさせる
奇跡のバランス。その獣が駆け抜けた後は、植物が風が虫がその王者を讃えるようにざわめいた。

 

 「おい、狼すげえかっこいいな。俺やりたいんだけど。」

 

 「お前には無理だヴァイス・グランセニック。」

 

 「俺じゃない、うちのシンがやる。」

 

 「まいったな。」

 

 「その辺にして次に進めないと小ネタの枠から外れちゃいますよ。」エリオが脱線しかけた
流れを元に戻す素晴らしい働きぶりを見せた。作者好感度+1

 

 「ああ、ではストーリーを再開する。」

 

 狼は強かった、三国に並ぶものなしと称され、挑む者さえ消えていった・・。強すぎたの
だ。その蒼い毛並みは海より深く空より輝きを放った。

 

 「狼ほめたたえるの多いな!」

 

 「当然だろう、誰かと違って主役で主人公、クレジットだって一番上だ。」

 

 「おまえを・・殺す。」

 

 「ストーリーがなかなか進まんな。」

 

 強すぎる故美しすぎる故・・孤独な狼、だがその狼と心を通わせる少女が現れた。それが
赤頭きんだった。赤と青、正反対の美しさを内包した一人と一匹は惹かれあった。そして明
かされる真実。蒼き狼は仮の姿、本来の姿とは人の姿であった。人の姿はもう究極美形であ
った。
 恋に落ちる2人。だが恐ろしい事実が判明する。おばあさんは実は2人を陥れようとした
魔女はやてだった。

 

 「おい!!何か実名でてんだけど!!!!おかしいだろ。それお前の主観だよ。っていう
かいろいろまずいだろ。」

 

 だが、なんか陶酔している様子のザフィーラは突っ込みに気付かず赤頭きんのストーリーを
語り続ける。

 

 はやては狡猾だった、手下のシグナム、ヴィータ、シャマルを放ってきた。
だがこの3人も実は究極美形に惚れていた。自分のものとするために迫ってきたのだ。卑劣
な奴ら許せん!

 

 ザフィーラはいずれかの存在に相当感情移入しているのか、常にない感情的な様子を見せた。

 

 だが俺の心を満たせるのは赤頭きんだけよ。意外にワイルドな性格、究極美形は3人の事
など歯牙にもかけず一蹴してしまった。かっこいいかっこよすぎるぜ狼。そして・・・

 

 さらに20分ほどそのサクセスストーリーは続いた。

 

 「フウッさすがに話し疲れたな。」

 

 「御苦労さん、だいたいどんな話か分った。」「でも人数が足りないよな、他にも何人か誘
ってくるか?」ヴァイスとシンが人数をあわせるためレジアスとエリオを引き連れ、知り合い
を誘いに劇場を出た。

 

 戻ってきた時には元ザフィーラであろう、ぼろきれが転がっていた。

 

 実はずっとその苦痛を呼び起こすストーリーを間近で聞いていてたシャマルが密告してい
た。特に残念ではないがとりあえず、この劇が上映されることは永遠にない。ちなみにシン
とヴァイス、エリオにレジアスは赤頭きんという物語をひどく誤解することとなった。