シンとヤマトの神隠し PRIDE?をかけて 前編

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:17:18

それは新人たちの何気無い一言で始まった。

昼休み。食堂。
「機動六課の部隊長たちって何で女性ばかりなんですか?」
とティアナ。
「そう言えば…部隊長ははやてさん、スターズの隊長はなのはさん。ライトニングはフェイトさんだよね?」
とスバル。
「あと副隊長さんも、シグナムさんとヴィータさんですよね?」
とキャロ。
「キラさんははやてさんの護衛、アスランさんはフェイトさんの執務官としての仕事の補助。
シンさんはライトニングの隊長、副隊長を、レイさんはスターズの隊長、副隊長補佐ですよね?」
と最後にエリオがパンを飲み込んでから言った。
「それがどうかしたのかよ?」
水を飲み干したシンが言いだしっぺのティアナに、何でそんなことを聞くのか理由を問い正してみると
「ってことは、なのはさんたちよりも、シンたちは弱いってこと?」
カチャンと今まで黙々とスープを飲んでいたレイがスプーンを置いた。
一斉に振り向く新人たち。その様子に
「…何だ?」
とレイは口許を拭いつつ新人たちを見る。
「強い、弱いなどと言ってないで、訓練に精進したらどうだ?」
「レイ…、けど同期から魔法習ってるのに確に、キラやアスランも隊長じゃないぞ?」
一同沈黙。
「気にするな、俺は気にしない。」
「…そこは気にするべきじゃないのか?」

まぁそんなこんなで、シンはキラとアスラン、それからレイ、エリオ、キャロの六人で風呂につかりながら、
今日あった出来事をキラとアスランに話した。
「別に、気にするようなことじゃないだろう?」
アスランはタオルをたたみ、頭の上にのせながらシンの疑問に答えた。
「はやて隊長に、何か考えがあってのことなんだから…、僕は、あまり気にしてなかったけど…」
キラもアスランも興味なさそうに目をつぶって、湯船のはしに背中を預け、リラックスしている。
―こいつら、悔しくないのかよ?
と内心思いつつ、シンはあることを思い付いた。
そう、用は悔しいと思わせればいいのだ。

「じゃあ、キャロ、髪洗おっか?」
「はいっ」
とシンに促され、湯船をでてシャワーの前の椅子に座るキャロ。
そしてその後ろに椅子を据えて、キャロの髪をわしゃわしゃと洗い始めるシン。
「そーいえば、キラさんてスーパーコーディネイターなんですよね?」
キャロの髪を優しく丁寧に洗いながら唐突に口を開くシン。
「…あんまり、そう呼ばれたことはないけど…、そうだよ。
それがどうかした?」
「いや、はやて部隊長がね?
言ってたんですよ、『スーパーコーディネイターってのは人の女を寝とるのがスキルなんよ?』って…。」
「まさか…、はやて隊長に限ってそんなことを言うはずが…。」
すかさずエリオにアイコンタクトを送るシン。
「あ~、確か、なのはさんとのことですよね(棒読み)」
引きつった顔をしながら言うと、ザバッと音をたて、立ち上がるキラ。
「エリオくん、…それは…本当なの?」
「へっ…、あっ、はい。言ってました。」
「…そんなこと言われたら、許せないじゃない?
何で僕が…、はは、あんな白い悪魔を?」
そう言い残し、風呂を出ていった。
(一人目、着火完了!)

キャロの髪を流し、今度はリンスをしてやる。
「あっ、そうそう、そう言えばなのはさんが言ってたこと…シンさん知ってます?(棒読み)」
すると今度はエリオが言う。
「あぁ、確、『レイくんの泣き声っておもしろいよねぇ』だったけ?」
ビクッと肩を震わせるレイ。
「先に上がるぞ、シン。」
表情は相変わらずだが、恐らく
(高町なのは、お前の発言だけはゆるさない!)
とか思っているのだろう。(二人目、完了。)
シンはくっくっくっ…と笑いながら、さて最後はとアスランへと視線を移すと、
まだゆったりと湯船のはしに持たれ、目をつぶってリラックスしていた。
「じゃあ、シンさん、背中を洗いますね?」
とキャロがシンの背に回りこみごしごしと擦り始めた。
まぁ、力が弱いせいか、何だかくすぐったいが、それはさておき…。
どうしたものかと考え込むシンであった。

「お前たち、ほどほどにしとけよ?」
湯煙立ち込める風呂場にアスランの声が響く。
ビクッとするエリオ、キャロ、シン。
「大方、シン、お前が首謀者だろう?
エリオはシンに抱きこまれ、キャロはティアやスバルの密偵と言ったところか?」
はぁっと溜め息をつくアスラン。
「シン、お前が二人を先導してどうするんだ…仲間うちで隊長の座をかけて戦うなんてことにー」
「でも、フェイト隊長、アスランがヅラじゃないかって疑ってますよ?」
「なら戦うしかないじゃないか!!」
(三人目、着火完了!あとはティアとスバルが巧くやってくれれば、隊長たちと本気で戦える!!)

翌日、早朝訓練。
片眉を痙攣させるなのは、フェイト、はやて、ヴィータ、シグナムと、同じくキラ、アスラン、レイが向き合って睨みあっている。
それをよそに念話でシンがティアとスバルに話しかけた。
(巧くいったみたいだな?)
(うん、まぁ…ね。)
(つか、シグナム副隊長に凄い形相で睨まれてるんだけど…俺は何て言ったことになってるんだ?)
するとティアが顔を背け、少しだけ頬を赤らめる。
(その、シグナム副隊長は……だけ…。)
(はぁ?聞こえないぞ?)
(い、一回しか言わないからよく聞きなさい。
シグナム副隊長は胸がでかいだけで役にたたないって。)
シン、絶句。
(ちょっと待て、何でそっちに走ったんだ!俺は変態か!!)
エリオも念話を使い、スバルに話しかける。
(聞きたくないけど、スバルさん僕は一体…何て?)睨んでくるヴィータに恐怖しつつ、スバルに聞く。
(大丈夫、私はティアみたいに変なことは言ってないよ?ただ一言「存在意義がわからない」としか。)
エリオは未来に絶望を見た。騎士になる前に殺されることを覚悟したという。

予告

「マユ、ステラ、俺も、もうすぐそっちに…。」

次回 シンとヤマトの神隠し短編 ~PRIDE?をかけて~戦いの果てに散りゆくのは…