リリカルクロスSEEDAs_第03話

Last-modified: 2007-12-28 (金) 10:16:22

キラは翠屋から出ると一人で病院に向かった。
骨折のため病院で検査をしないといけないらしいのだ。
キラが病院の廊下を歩いていると一人の車椅子に乗った少女がいた、足が不自由なようだ。
彼女は床に落ちた携帯を拾おうとしていた、するとバランスを崩して倒れそうになる。
「危ない!!」
キラはすぐに彼女を支えることが出来た。
「大丈夫だった?」
「あ、はい。大丈夫です」
近くで見ると関西弁のかわいい少女だった、なのはたちと同い年くらいだろうか。
キラは携帯を拾うと彼女に手渡す。
「ありがとうな・・・・えっと・・・・」
「キラ、キラ・ヤマトって言うんだ。よろしくね」
キラは彼女に笑いながら自己紹介をした。
「わたしは八神はやて言います。こちらこそ、よろしくな。キラ君」
二人は笑いながら握手を交わす。
するとさっき拾ったはやての携帯が鳴り、はやては「ごめんな」と言って電話を取る。
「うん、終わったで。それじゃあ、今からそっちに向かうな」
はやては電話を切ると残念そうに言った。
「迎えが来てしもうた」
「それじゃあ、早く行ってあげないとね」
「うん、キラ君はこれからなん?」
「そうだね」
「それじゃあ、ここでお別れやね。キラ君、お大事にな」
「はやてちゃんもね」
キラとはやてはバイバイとお互いに手を振りながら別れた。
これがキラとはやての出会いだった。

 

「ロストロギア、闇の書の最大の特徴はそのエネルギー源にある」
キラが帰ってくるとモニターを見ながらクロノとエイミィが闇の書についての話をしていた。
「闇の書は魔導師の魔力と魔法資質を奪うためにリンカーコアを食うんだ」
「なのはちゃんのリンカーコアもその被害に?」
「あぁ、間違いない。闇の書はリンカーコアを食うと蒐集した魔力の資質に応じてページが増えていく」
なのはのリンカーコアを食べたということはかなりのページが埋まったと考えられる。
「そして、最終ページまで全てを埋めることで闇の書は完成する」
「完成するとどうなるの?」
エイミィが不安そうにクロノに聞く。
「少なくとも・・・・ロクな事にはならない」
「・・・・・・・・」
キラはモニターに映っている闇の書を黙って見ていた。

 

海鳴市早朝
なのはは桜台林道で、フェイトは市街地のビルの屋上で自主訓練をしているらしい。
キラはというと訓練が出来る体でもないためリンディと朝ごはんの準備をしていた。
「キラさん、怪我の具合はどうかしら?」
「まだ治ってはいないですね。少し痛いくらいには回復しましたけど」
「キラさんはこれからどうするんです?」
「デバイスがなくても補助くらいは出来ると思います。ユーノ君やアルフも教えてくれるようですし」
「そうですか、学校ではフェイトさんやなのはさんをよろしくお願いしますね」
「う、リンディさん。僕の事は聞いているでしょう。僕は・・・・・」
キラ自身はもう大学生だし、小学校にもう一度通うのは遠慮したいのだ。
だが、リンディはそれを笑いながら流してくる。
「まぁまぁ、決まったことは仕方ないでしょう。キラさん」
「そうですけど・・・・・って、勝手に手続きしたのはリンディさんじゃないですか!」
「あら、気付いちゃいましたか」
そんなリンディにキラはため息をつきながら料理を再開した。
「って、リンディさん。卵焼きに砂糖入れすぎですよ!!」
そんな会話をしながらキラは思った。
(この人・・・・黒いかも)
「何か言いましたか、キラさん?」
「べ、別に何も言ってませんよ」
キラは冷や汗をかきながら朝食作りに戻った。

 

「さて、皆さん。実は先週急に決まったんですが、今日から新しいお友達と懐かしいお友達がこのクラスにやってきます」
なのは、すずか、アリサは嬉しそうにそれを聞いている。
「まずは新しいお友達から、海外からの留学生さんです。フェイトさん、どうぞ」
「失礼します」
フェイトが教室に入ると教室が賑やかになる。
「あの、フェイト・テスタロッサと言います。よろしくお願いします」
そうして、フェイトがお辞儀をすると拍手が沸く。
「それから、懐かしいお友達です」
キラが教室に入るとまた教室が騒がしくなる。
「えっと・・・この前は突然の転校でしたが、またここで勉強することになりました。またよろしくお願いします」
キラはフェイトの横に並んでお辞儀をし、フェイトと同じように拍手が沸いた。

 

休み時間になるとフェイトはクラスの子達に質問攻めだった。
キラは軽く皆と挨拶しただけだったのでそこまで集まることはなかった。
なのはたちのところへ行きフェイトの様子を見ている。
質問攻めに四苦八苦しているようだ、キラも同じ経験があったから大変さが良く分かる。
「フェイトちゃん、人気者」
「でも、これはちょっと大変かも」
「そうだね、フェイトちゃんの気持ちが良く分かるよ」
「はぁ、もう・・・しょうがないな~」
アリサはなのはたちから離れてフェイトのほうへ向かう。
「はいはい!転入初日の留学生をそんなに一気に質問しないの」
「アリサ」
「それに質問は順番に、フェイト困ってるでしょう」
「はい、それじゃあ俺の質問から」
「はい、いいわよ」
そんな感じで質問に答えていくフェイトと順番をつけるアリサを見ながらキラは言った。
「何か、アイドルとそのマネージャーみたいだね」
「あはは、ほんとだ~」
「だね~」
そうやってなのはたちはそれを見ていた。

 

キラやなのは、フェイトは授業中に念話で話をしていた。
(それにしても本当にまたここに通うなんて思いもよらなかったよ)
(キラくんって16歳なんだよね。高校生なの?)
(いや、僕は工業カレッジに通ってて・・・・大学生なんだ)
(じゃあ、何でリンディさんはキラをここに通わせたんだろう?)
(さぁ、僕には分からないけど・・・・・)
(キラくん、ここに通うの嫌なのかな?)
なのはが不安そうにキラに聞いてくる。
(あ、いや・・・・そういうわけじゃないんだ。また通えてよかったと少し思ってるから)
(そうなんだ、良かった)
(私も、キラと一緒でよかったよ)
(えっと・・・・ありがとう。なのはちゃん、フェイトちゃん)
とはいえキラは真面目な性格の所為かしっかりノートを取るのであった。

 

昼休み
なのはとフェイト、アリサにすずか、そしてキラの五人で弁当を食べることにした。
「フェイトちゃん、初めての学校の感想はどう?」
「歳の近い子がこんなにたくさんいるの初めてだから何だかもうグルグルで・・・」
「あはははは」
「まぁ、すぐに慣れるわよ。きっと」
「うん、だといいな」
アリサはその後、キラに話を移した。
「それにしてもキラは私たちと一緒で良かったの?」
「え?キラがどうしたの?」
フェイトは何のことなのかさっぱりと言う顔だが他の三人は苦笑いだった。
「あ、あははは。だ、大丈夫だよ。断ってきたから」
「わたしはファンクラブがまだ在ったことに驚きだったよ~」
「ファンクラブ?」
なのはの言葉にフェイトはさらに?マークが増える
「キラ君は勉強とかスポーツとか上手だし、カッコイイし、優しいからファンがいるの」
すずかが補足する。
「そんなにかっこよくないよ」
キラは苦笑いを浮かべるばかりだ。
「キラはもう少しは自分が凄いこと自覚しなさいよ」
「そう言われても・・・・アリサちゃんたちはどうなの?」
「へ?あたしたち?」
「この四人だって可愛いんだからファンクラブ出来ててもおかしくないと思うよ?」
「「「「か、可愛い!?」」」」
その言葉に四人の声がハモり、顔が真っ赤になってしまう。
「あ、あれ?どうしたの?」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
そして、キラは自分の発言が原因だと分かっていなかった。

 

学校が終わり、なのはたちと別れたキラは病院に向かった。
「あ、キラ君や」
そこには昨日会ったはやての姿があった。
「はやてちゃん、来てたんだね」
「うん。今、付き添いが先生に話を聞いてるところなんや」
「そっか、はやてちゃんは足が悪いの?」
「大丈夫や。キラくんは骨折みたいやな、痛ない?」
「うん、大丈夫!・・・・とはいかないけどね」
「無茶しちゃアカンよ」
「はやてちゃんもね」
そう言いながら二人は笑いあって話をしていた。
「それじゃあ、すずかちゃんの友達なんや?」
「うん、同じクラスメイトだよ。他にも仲の良い友達が三人いるんだ」
「そうなんや、それはえぇことやな」
「僕ははやてちゃんとももう友達だよね?」
「うち、キラくんの友達なってもえぇの?」
「もちろん!よろしくね、はやてちゃん」
「嬉しいわ。ありがとな、キラくん」
そう言ってお互い笑いながら握手を交わすとキラの名前が呼ばれた。
「それじゃあ、また今度やね」
「うん。あ、そうだ」
キラはノートを出すと端に何かを書いてそれを破って渡した。
「これ、携帯のメルアドと電話番号。何か困ったことあったら連絡してね」
「分かった、後でうちもメールするな」
「うん。じゃあ、また」
キラは手を振って別の診察室へと入っていった。
それと入れ違いでシグナムが部屋から出てくるとはやての嬉しそうな顔が目に入った。
「主、どうしたのです?何か嬉しいことでも?」
「うん、友達がまた出来たんや」
「それは良かったですね」
シグナムはその少年の話やすずかの話を聞きながらはやての楽しそうな顔を優しそうに見つめていた。

 

病院から戻る帰り道、なのはの家の前でアリサとすずかを見送るなのはたちに会った。
そのままなのはの部屋に上がり三人でこの前の戦いについて話していた。
「ねぇ、なのはにキラはあの人たちのことどう思う?」
「あの人たちって・・・・闇の書の?」
「うん、闇の書の守護騎士たちのこと」
なのはの言葉にフェイトは頷く。
「えと・・・・私は急に襲い掛かられて直ぐ倒されちゃったから良く分かんなかったんだけど」
「僕はいきなり戦っているところにやってきてそのまま戦闘に入っちゃったからね」
「フェイトちゃんはあの剣士の人と何か話してたよね」
なのははフェイトに同じことを聞き返す。
「うん、少し不思議な感じだった。うまく言えないけど悪意みたいなものを全然感じなかったんだ」
「そっか、闇の書の完成を目指してる目的とか、教えてもらえたらいいんだけど」
「話が出来そうな雰囲気ではなかったね」
なのはの言葉にキラが続いた。
「強い意志で自分を固めちゃうと、周りの言葉ってなかなか入ってこないから私もそうだったしね」
三人はプレシア事件のことを思い出していた。
「私は、母さんのためだったけど傷付けられても、間違ってるかもって思っても、疑っても」
キラはその姿を近くで見ていたので彼女の苦悩が分かる。
「でも、絶対に間違ってないって信じてた時は、信じようとしてた時は誰の言葉も入ってこなかった」
「「・・・・・・」」
それを寂しそうになのはとキラは見つめていた。
「あ、でも言葉をかけるのは想いを伝えるのは、絶対無駄じゃないよ」
フェイトはなのはやキラに話しかけられた自分を思い出しながら語る。
「母さんのためだとか、自分のためだとか、あんなに信じようとしてた私も二人の言葉で何度も揺れたから」
それを聞いて、なのはは少し微笑み、キラは優しく頷いた。
「言葉を伝えるのに戦って勝つことが必要なら、それなら迷わずに戦える気がするんだ」
「フェイトちゃん」
「なのはとキラが教えてくれたんだよ、そんな強い心を」
「そ、そんなこと・・・ないと思うけど・・・」
「僕も、なのはちゃんやフェイトちゃんに教えてもらったんだ」
キラは二人に笑いかけながら言った。
「だから、強くなるよ。想いを貫くためにも」
「うん、想いだけでも力だけでもダメだからね」
「「想いだけでも・・・・力だけでも・・・・」」
「そうだね、私ももっと強くなる。一緒に頑張ろう。フェイトちゃん、キラくん」
「うん、頑張ろう。なのは、キラ」
「僕も頑張るよ、なのはちゃん、フェイトちゃんと一緒に」
三人は新たな決意を胸に強くなることを誓った。