リリカルクロスSEEDAs_第04話

Last-modified: 2007-12-28 (金) 10:18:16

数日が過ぎ、なのはやフェイトたちは本局でなのはの検査に向かっている。
デバイスの修理も終わったらしくそれの受け渡しもあるそうだ。
キラはというとはやてからメールが来て、はやての家に向かう途中だった。
鍋を皆で食べようというものだった、すずかちゃんも来るようだ。
「寒くなってきたな」
空を見上げながらキラは呟いていた。
そう言って視線を戻そうとした時視界の隅に何かを見つけた気がした。
「ん?」
一瞬だったため、何だったか分からなかったがキラには何か惹かれるものがあった。
「何だろ?」
そう言うとキラは何かが飛んでいった方向に走り出していた。
追いかけても姿が見えなかった。しかし、キラにはそれがどっちに飛んでいるかが分かった。
「一体なんだっていうんだ」
キラはそんなことを言いながらも追いかけるのをやめることが出来なかった。
自分でもなんで止められないのか分からない、ただ漠然と追いかけなければという気持ちだった。
そして、かなり走ったところでキラは魔力の反応を感じた。
「!?・・・これは、あの時の!!」
キラはすぐにそちらに走り出す、もうさっきのことに気にしていられなくなった。
「上か!」
キラは近くのビルに入ると屋上まで走っていった。
途中、空間結界が張られたのを感じる。どうやらここで戦闘が始まるようだった。
キラが屋上へ着いた時、向こうのビルになのはたちが転送されてくるのを見た。
「なのはちゃん、フェイトちゃん!」
キラの声が届いたのか二人はキラのほうを少し見たが、すぐに空を見上げている。
上にはあの時の赤い服の女の子と青い服の男がいた。こちらには気付いていないようだ。
さらに上にはクロノ、なのはとフェイトより奥にはユーノとアルフがいる。
(キラくんは危ないから下がっていて)
(そうだよ、キラ。怪我治っていないんでしょ?)
二人が念話でキラに話しかけてきた。
(でも!)
(それにキラくんのデバイスはもう・・・・)
(うん。だから、キラは・・・・・・)
(・・・・・・分かった)
キラは渋々了承をした、今のキラには剣がないのだ。
「想いだけでも力だけでもだめって、自分で言ったじゃないか」
いつの日かカガリに言った言葉を思い出していた。
『気持ちだけで何が守れるって言うんだ!!』
「自分で言ったじゃないか・・・・・・くそっ!!」
キラは悔しそうに握りこぶしを作る。
骨折していた腕が痛んだ。

 

「あいつら!」
なのはたちを見てヴィータは驚いていた。
「レイジングハート!」
「バルディッシュ!」
「「セーーット!アーーーップ!」」
すると二人から天を突くような魔力の光が一筋空に伸びていく。
なのはとフェイトはその光を昇っていく。
『Order of the setup was accepted.』
『Operating check of the new system has started.』
『Exchange parts are in good condition, completely cleared from the NEURO-DYNA-IDENT alpha zero one to beta eight six five.』
「え・・・こ、これって・・・・」
「今までと・・・・違う」
『二人とも落ち着いて聞いてね』
エイミィからの通信だ。
『レイジングハートもバルディッシュも新しいシステムを積んでるの』
『The deformation mechanism confirmation is in good condition.』
『Main system, start up.』
「新しいシステム?」
『その子たちが望んだの、自分の意志で自分の想いで』
『Haken form deformation preparation: the battle with the maximum performance is always possible.』
『An accel and a buster: the modes switching became possible. The percentage of synchronicity, ninety, are maintained.』
「呼んであげて、その子たちの新しい名前を!!」
『Condition, all green. Get set.』
『Standby, ready.』
「レイジンハート・エクセリオン!!」
「バルディッシュ・アサルト!!」
『『Drive ignition.』』
二人をピンクの光と黄色の光が包み込む。
そして、その光が消え現れたのは新しいを持ち、デバイス新しいバリアジャケットを身を包んだ二人だった。
「あいつらのデバイス・・・・あれってまさか!」
ヴィータが二人のデバイスを見て驚きの声を上げる。
『Assault form, cartridge set.』
『Accel mode, standby, ready.』
二人がデバイスを構えた。

 

シグナムは結界の外で空中からそれを見下ろしていた。
「強装型の捕獲結界・・・・・ヴィータたちは閉じ込められたか」
『Wählen Sie Aktion!』
「レヴァンティン、お前の主はここで退くような騎士だったか?」
『Nein.』
それを聞くとシグナムはレヴァンティンを一振りし、魔方陣を発生させる。
「そうだ、レヴァンティン。私は今までもずっとそうしてきた」
カートリッジをロードし、レヴァンティンを炎が包み込む。
そして、シグナムはレヴァンティンを構える。

 

「私たちはあなたたちと戦いに来たわけではない」
フェイトはヴィータとザフィーラに話しかける。
「まずは話を聞かせて」
「闇の書の完成を目指してる理由を」
まずは言葉を伝えること、それは三人で誓った時に話したいたことだ。
言葉を伝えること、想いを伝えることは絶対に無駄じゃないということ。
しかし、ヴィータは不機嫌そうに二人を見つめ言う。
「あのさぁ、ベルカのことわざにこういうのがあんだよ。和平の使者なら槍は持たない」
その言葉になのはとフェイトは困惑してしまう。
ヴィータはグラーフアイゼンを二人に突きつけて言葉を続ける
「話し合いをしようってのに武器を持ってやってくるやつがいるか、バカ。って意味だよバーカ」
「なぁ!?」
その言葉になのはが驚くが少し怒ったような顔になり言い返す。
「いきなり有無を言わさず襲い掛かってきた子がそれを言う!」
「それにそれはことわざではなく小話のオチだ」
ザフィーラが冷静にヴィータにツッコミをいれた。
「うっせい!いいんだよ、細かいことは」
キラはそんな会話を苦笑いをしながら聞いていた。どうも赤い子は憎めないキャラの気がした。
すると、結界を突き破り一つの紫の雷が近くのビルに落ちてきた。
そして、落ちた場所の煙が晴れるとそこにはシグナムがいた。
「!?・・・・シグナム」
フェイトは驚いてその姿を見る、強装結界を破ってきたのだ。
シグナムは肩ひざをついた状態から起き上がるとフェイトを見つめる。
「ユーノくん、クロノくん。手ぇ出さないでね。私、あの子と一対一だから!」
なのははヴィータと睨み合う。

 

「マジか」
「マジだよ」
その言葉にクロノはユーノに聞いてしまう。
(アルフ、私も・・・・彼女と)
アルフはフェイトの言いたいことを理解した、シグナムと一対一をしたいということを。
「あぁ、あたしも野郎にちょいと話がある」
そう言うとアルフはザフィーラを見据える、ザフィーラもその意図を汲み取っていた。
そんな三人の話を聞きながらクロノはユーノに話しかける
(ユーノ、それなら丁度いい。僕と君で手分けして闇の所の主を探すんだ)
(闇の書の?)
(連中は持っていない。恐らくもう一人の仲間か、主かがどこかにいる。僕は結界の外を探す。君は中を)
(分かった)
ユーノはその言葉に頷いた。

 

『Master, please call me “Cartridge Load.”』
レイジングハートがなのはに呼びかける。
その言葉になのはは頷くとレイジングハートを構える。
「レイジングハート!カートリッジロード!」
『Load Cartridge.』
レイジングハートはカートリッジをロードし魔力を上げる。
それをなのはは両手でしっかりと構えを取った。
『Sir.』
バルディッシュもフェイトに呼びかける。
「うん、私もだね」
フェイトはその言葉に頷くとバルディッシュを構える。
「バルディッシュ、カートリッジロード」
『Load Cartridge.』
バルディッシュもカートリッジがロードされ、魔力が高まる。
そして、構えを取る。
それを見ながらザフィーラは冷静に喋りだす。
「デバイスを強化してきているな、気をつけろヴィータ」
「言われなくても!」
シグナムは何も喋らず、無言で構える。
次の瞬間、八色の魔力の光が空を舞っていた。
赤、ピンク、紫、黄、白、オレンジ、青、緑の光が空を彩る。
そして、キラはそれを見守ることしか出来なかった。

 

ヴィータは追ってくるなのはを後ろから見ながら言った。
「ふん、結局やんじゃねぇかよ」
「私が勝ったら話を聞かせてもらうよ!いいね!」
「やれるもんなら!」
ヴィータは急停止すると指の間に鉄球を挟むと足元に魔方陣を展開する。
鉄球が宙に浮き、赤い光に包まれる。
そして、ヴィータはグラーフアイゼンを大きく振りかぶる。
『Schwalbefliegen.』
そして、それを振りぬき鉄球へぶつけなのはに向かって飛ばす。
四つの赤い光がなのはに向かい直線に飛んでいく。
『Axelfin.』
なのはの靴の羽が羽ばたきその攻撃を難なく避ける。
そこにヴィータはグラーフアイゼンを構え、なのはに突っ込んでいく。
「アイゼン!」
『Explosion.』
グラーフアイゼンはカートリッジをロードする。
『Raketenform.』
ハンマーヘッドの片方が推進剤噴射口に、その反対側がスパイクに変形する。
魔力をロケットのように噴射させ、自らも回転し遠心力を使い突っ込んでくる。
「でえぇぇぇぇぇぇぇい!」
『Protection Powered.』
なのはは突っ込んでくるヴィータに向かい手を掲げ障壁を発生させる。
なのはの障壁とヴィータのグラーフアイゼンがぶつかり合い火花が散る。
「・・・・硬ぇ」
「ほんとだ」
ヴィータ呟きになのはも驚いてしまう。
『Barrier Burst.』
レイジングハートの障壁のパワーを上げた。
すると、障壁の魔力が高くなり、お互いの魔力が爆発し双方とも吹き飛ぶ。
なのははすぐに態勢を整えるが、ヴィータは吹き飛んだままだ。
『Let's shoot it, Accel Shooter.』
レイジングハートがなのはに呼びかける。
その言葉になのはは頷き、答える。
「アクセルシューター!」
『Accel Shooter.』
なのはの足元に魔方陣が展開し、レイジングハートに光が集まる。
「シューーーット!!」
なのはがそう叫んだ瞬間、十二発の光の弾がヴィータに向かい飛んでいく。
その数にヴィータだけではなく撃ったなのは自身も驚いてしまう。

『Control, please.』
驚いているなのはにレイジングハートは呼びかける。
その言葉になのはは集中するために目を閉じる。
十二発の光の弾がヴィータの周りを飛び始める。
「アホか、こんな大量の弾全部制御できるわけが!!」
ヴィータは鉄球を取り出し、なのはに向けて発射する。
四つの赤い弾は四方向から一気になのはに向かい飛んでくる。
『It can be done, as for my master.』
なのははそれでも目を閉じ集中する。
ヴィータの鉄球が当たる前になのはによってコントロールされた弾がそれを撃ち抜いた。
その光景にヴィータは絶句してしまう。
なのはは目を開けるとヴィータに言った。
「約束だよ。私たちが勝ったら事情を聞かせてもらうって!」
なのはは手を上に掲げる。
「アクセル・・・・・・」
なのはの魔力が高まる。
『Panzerhindernis.』
グラーフアイゼンがヴィータの周りを障壁で囲む。
「シューーーット!!」
その声と同時に十二発の弾が次々と障壁にぶつかっていく。
その障壁さえも連続にぶつかってくるためヒビが入り、その威力のほどが良く分かる。
「こんのおぉぉぉっ!」
ヴィータはグラーフアイゼンを構えるとなのはを睨んだ。

 

フェイトとシグナムは交錯し接近戦で勝負をしていた。
「はあぁぁぁぁぁっ!!」
「うおぉぉぉぉぉっ!!」
フェイトはバルディッシュを、シグナムはレヴァンティンを大きく振りかぶりぶつかり合う。
すぐに両者が後ろに飛び距離を取る。
『Plasma Lancer.』
その瞬間、フェイトの足元に魔方陣が展開し、フェイトの周りに八つの雷の弾が出来る。
「プラズマランサー・・・・ファイア!!」
その瞬間、雷の弾がシグナムに向かう。
シグナムはレヴァンティンの一振りでそれを弾き飛ばす。
だが、弾き飛ばされた雷の弾は一時停止する。
「ターン!」
フェイトのその言葉に反応し、雷の弾は向きをシグナムに変え再び襲い掛かる。
それを上に飛んで避けるが、すぐに向かってくる。
シグナムは避けることは得策じゃないと判断すると、レヴァンティンに呼びかける。
「レヴァンティン」
その言葉にレヴァンティンはカートリッジをロードする。
『Sturmwellen.』
『Blitz Rush.』
バルディッシュが弾のスピードをさらに速くする。
「えぇぇぇぇぇいっ!!」
シグナムはレヴァンティンを大きく振り衝撃波を作り出し、弾を全て相殺した。
それに一瞬驚いたフェイトだったがすぐにシグナムとの距離を縮める。
『Haken Form.』
バルディッシュはカートリッジをロードし、ハーケンフォームへと形状を変える。
『Schlangeform.』
レヴァンティンもカートリッジをロードする。レヴァンティンの刃に節が現れ、刃が伸びる。
両者の武器がぶつかり合い爆発が起こり、二人が飛び出してくる。

 

お互い後ろに下がり、また距離を取る。
フェイトの左腕にはかすり傷が、シグナムの胸にもかすり傷が出来ている。
「強いな、テスタロッサ」
『Schwertform.』
シグナムは剣の形状を元に戻し、構える。
「それにバルディッシュ」
『Thank you.』
バルディッシュも素直に賛辞の言葉を受け取る。
「あなたと、レヴァンティンも・・・・・シグナム」
『Danke.』
レヴァンティンもその言葉を受け取る。
「この身に成さぬことがなければ心躍る戦いだったはずだが・・・・」
シグナムは鞘を出し、レヴァンティンを収める。
「仲間たちと我が主のため今はそうも言ってられん」
その言葉にフェイトは表情を引き締める。
「殺さずに済ます自信はない、この身の未熟を許してくれるか」
シグナムは魔方陣を展開し構えを取る。
フェイトも構えを固め、答える。
「構いません。勝つのは・・・・私ですから」
嬉しそうに口の端を持ち上げるシグナムとフェイトだった。

 

キラは全員の戦闘を見ていた。
二人のデバイスはさらに強力になり、互角またはそれ以上の強さを誇っていた。
これなら何とかなるかもしれない・・・・・・・でも。
「こんな時に・・・・何も出来ないなんて・・・・」
一瞬、自分がやらなくても大丈夫だ・・・・・戦わなくていい、そんな声が聞こえた。
キラは首を横に振ってその考えを捨てようとした。
「僕は・・・・・」
なのはとフェイトの戦いを見上げながら問いかけた。
「・・・・・・・どうすれば」
それに答えてくれるものは誰もいなかった。