リリカルクロスSEEDAs_第05話

Last-modified: 2007-12-28 (金) 10:19:44

ビルの窓が一斉に爆破していく。
「うおぉぉぉぉっ!」
その原因の二人がぶつかり合い、大きな衝撃波が出来る。
「デカブツ、アンタも誰かの使い魔か!」
拳を叩きつけシグナムの障壁とぶつかり合いながらアルフは聞く。
「ベルカでは騎士に仕える獣を使い魔とは呼ばぬ!主の牙そして主の盾、守護獣だぁぁぁっ!」
「同じような、もんじゃんかよーーー!!」
その瞬間、お互いの魔力が爆発、相殺する。
ザフィーラは後ろに後退すると上の仲間を見上げる。
(状況はあまり良くないな、シグナムやヴィータが負けるとは思わんがここは退くべきだ。シャマル何とか出来るか?)
ザフィーラは結界の外にいるシャマルに念話で話しかける。
(何とかしたいけど、局員が結界を維持してるの。私の魔力じゃ破れない)
強装結界を破るには強大な魔力が必要なのだ。
(シグナムのファルケンか、ヴィータのギガント級の魔力を出せなきゃ)
(二人とも手が離せん、已むを得ん。アレを使うしか)
(分かってるけど、でも・・・・・)
その瞬間、シャマルの後ろで何かが構えられる音がした。
(あっ!?)
その後ろでは外を探索していたクロノがS2Uを構えていた。
(シャマル?どうした、シャマル)
「捜索指定ロストロギアの所持、使用の疑いであなたを逮捕します」
その状況を見ていたリンディとエイミィもそしてクロノもこれで詰んだと思っていた。
「抵抗しなければあなたには弁護の機会がある。同意するなら武装の解除を・・・・」
その瞬間、誰かがクロノたちの間に飛び込んできた。
「せぃっ!」
「うっ!?」
クロノはそれが予想外だったのか、その人物に蹴りをまともに喰らい反対側のビルに吹き飛ばされてしまう。
そこには仮面をつけた男が蹴りを放った態勢のまま立っていた。
「仲間?」
クロノは蹴られた腹部を押さえながら言った。
『エイミィ、今のは?』
エイミィはパネルを叩きながら色々調べているが、何も分からない。
『わ、分かりません。こっちのサーチャーには何の反応も・・・・何で?どうして?』

 

「あなたは?」
シャマルは仮面の男に何者なのか質問する。
「使え」
仮面の男はそれには答えず言った。
「え?」
「闇の書の力を使って結界を破壊しろ」
「でも、あれは!」
その言葉にシャマルが反論する。
「使用して減ったページはまた増やせばいい。仲間がやられてからでは遅かろう」
その言葉にシャマルは闇の書を見つめ、決意する。
彼女は仲間を救う道を選んだ。
(皆、これから結界破壊の砲撃を撃つわ。うまくかわして撤退を!)
「「「応」」」
シャマルは砲撃の用意を始める。
大きな魔方陣がシャマルを中心に展開する。
「闇の書よ、守護者シャマルが命じます。眼下の敵を打ち砕く力を、今、ここに」
その瞬間闇の書から膨大な魔力が溢れ出てくる。
そして、暗雲が集まり結界上空に膨大な魔力の雷が集まっていく。
「!?」
それに気を取られたクロノはまた仮面の男の蹴りを受けてしまう。
地面に叩きつけられる前に態勢をどうにか立て直すと仮面の男が喋る。
「今は動くな。時を待て、それが正しいとすぐに分かる」
「なにっ!?」
膨大な魔力が一つの塊となる。
「撃って、破壊の雷!」
『Beschriebene.』
その瞬間、巨大な魔力の雷が結界に落ち、結界が崩れ始めた。

 

キラはなのはやフェイトの戦いをずっと見ていた。
握り拳を作り、爪が肉に食い込み血が滴るほどに握っていた。
悔しかった、自分も彼女たちを守るために戦いたかった。
だが、キラには戦いたくないと思う時もあった。
キラはラウ・ル・クルーゼとの戦いで心ではもう戦いたくないと思っていた。
ストライクが壊れてしまったのもそれが原因だった。
最初の戦いで戦いを望まない心と守りたい心がぶつかりあい心にズレが生じた。
魔力の急激な消費やストライクの酷使にそれが重なり、ストライクは砕け散ったのだ。

 

分かっていた、自分は戦いには向かないことを
分かっていた、自分は戦いを恐れていることを
分かっていた、自分は誰かを傷つけてることを
分かっていた分かっていた分かっていた分かっていた分かっていた分かっていた分かっていた。

 

(だけど、あの時戦えたのはなんだ)
キラは最初の戦いを思い出し、自問自答をする。答えは決まっていた。
(守りたいんだ)
そう、あの時彼女たちを見て守りたい思ったから自分は戦った。
昔、アスランにザフトに来いと言われた時のことを思い出す。
自分はこう答えたじゃないか、キラは自分に言い聞かせる。
(あそこには守りたいものが、ともだちがいるんだ)
そうだった、とキラは気付く。
自分には守りたい人が・・・ともだちが・・・大切な人たちがいたから・・・戦ったんだ。
彼女たちを守りたいから・・・・・そのためならば自分はもう一度剣を持てる!
だが、キラには剣がない。彼女たちを守るために見合う剣が。
空で未だに戦っている二人の少女を見つめる。
「僕は・・・・・もう一度守りたい。そのために力が・・・剣が欲しい!!」
キラは声を張り上げて叫んだ。
その時だった。何かが聞こえてきた。
羽ばたく音が、鳥の羽ばたきとは少し違う音が聞こえる。
『トリィ』
「!?」
キラは空を見上げる、空から緑色の小鳥型のロボットが降りてきたのだ。
「トリィ!?」
キラは驚いたが、手を差し出しトリィを手の平に乗せる。
「一体どうして、トリィがこんなところに・・・・・ん?」
トリィは何かを脚で掴んでキラに渡したのだ。
キラの手の平には蒼い翼の形をしたバッジのようなものだった。
それを見た瞬間キラの体が、心が震えた。
知っている、初めて見るもののはずなのにこれが何なのか自分は知っている。
忘れるわけがない、自分の想いと力が篭った剣の名を忘れるわけがないのだ。
キラはそれを握り締め、目を瞑る。
今一度自分に問おう。この想いは何のためにある、この力は何のためにあると。
「守りたいんだ、皆を・・・・・大切な人たちを・・・・」
それを答えるとバッジが蒼く輝き、キラは目を閉じSEEDを発動させる。
『Please call my name. My master.』
「フリーダム」
その瞬間、キラの周りを蒼い魔力が包み込んでいった。

 

「まずい、個別防御」
ユーノは今にも結界を突き破りそうな雷を見て呟くとすぐに準備に掛かる
あれを防ぎきれるかは分からないが守らなければならない。
シグナムとフェイトもお互い雷を見上げていた。
「すまん、テスタロッサ。この勝負、預ける」
「シグナム!」
なのはとヴィータもお互い向かい合ったままだった。
「ヴォルケンリッター鉄槌の騎士、ヴィータ。あんたの名は?」
「なのは、高町なのは」
お互いの名前を名乗りあう。
「高町なぬ・・・・なにゅ・・・・えぇーい!呼びにくい!!」
「逆ギレ!?」
「ともあれ、勝負は預けた!次は殺すかんな、ぜってぇーーだ!!」
そういうとヴィータは飛び去っていく。
「あ、えっと・・・・ヴィータちゃん?」
ザフィーラは撤退しながらアルフに言った。
「仲間を守ってやれ、直撃を受けると危険だ!」
「えぇ?あ・・・・あぁ」
その言葉に驚きながらもアルフはフェイトたちのところへ向かった。

 

(ユーノ!)
(分かってる、アルフと二人でどうにか!!)
しかし、なのはとフェイトがいた場所は丁度雷の真下だった。
「フェイトちゃん!」
「なのは!」
二人はお互いの名前を呼び合った。
お互いも防御の障壁を張り、ユーノとアルフの障壁も張られる。
あの魔力の直撃・・・・防ぎきれるか難しいところだった。
雷が目の前まで来てなのはとフェイトは目を瞑ってしまいそうになる。
その時、蒼い翼が天に昇り、彼女たちの前に現れる。
二人は青年のその後姿を見たことがあった。
「フリーダム、カートリッジロード。ハイマットフルバースト・・・・・いくよ」
『All right. Load Cartridge. High MAT full burst mode. Set up.』
その瞬間、翼の片方から二発ずつ、計四発のカートリッジを消費。
そして、背中のバラエーナ、両腰部のクスィフィアス、ライフルのため五発のカートリッジが消費される。
青年は大きな翼を広げ、雷に向かい全ての砲門を向ける。
『Target lock. Ready.』
その瞬間、キラが咆哮を上げ引き金を引く。
「いけえぇぇぇぇぇっ!!」
次の瞬間、五つの砲口から発射された蒼い魔力が唸りを上げて雷とぶつかり合う。

 

雷は青年の魔力によって分散し、なのはたちとの直撃を避けている。
しかし、雷に段々と青年の魔力が押されてくる。
「ぐぅっ・・・!」
「キラくん!」
「キラ!」
なのはとフェイトが青年に向かって叫ぶ。
青年は後ろを振り向くと心配そうに見る二人に笑いかけた。
「大丈夫だよ」
キラはそう言うと前を向き直る。
彼女たちの声が、キラの想いと力を強くなっていく。
(絶対に・・・・守ってみせる!!)
その瞬間には蒼い魔力が勢いを上げ、雷が終わった天を突いていた。
キラの魔力によって分散された雷は周りに落ち大きな爆発が起こる。
『状況は?』
リンディがエイミィに聞いている。
『魔力爆撃、物理被害はありません!でも、ジャミングされてサーチャーとレーダーが』
エイミィたちの見るモニターに映ったのはアルフとユーノの結界に守られているなのはとフェイト、アルフ、キラの姿だった。

 

「はぁ~っ」
アルフは大きくため息をついた、寿命が縮んだ気分だった。
(なのは、フェイト、アルフ大丈夫?)
ユーノが心配そうに聞いてくる。
「う、うん。ありがとう、ユーノ君。アルフさん・・・・それに」
なのはは上を向くと青年の姿をしたキラがなのはたちのところまで降下してくる。
「キラくんも」
「どういたしまして」
キラはにっこりと笑ってみせた。
「それにしても、キラ。その姿・・・・・」
「あ、何か元に戻っちゃってるね。気が付かなかったよ」
「それもだけどキラのデバイスが」
「うん、これは僕の新しい剣・・・・フリーダムっていうんだ」
『Nice to meet you.』
「あはは、よろしくね」
なのはが嬉しそうにフリーダムに答える。
「それにしても皆が無事でよ・・・か・・っ・・・・」
さっきまで笑っていたキラがそのまま力なく落ちる。
「「キラ(くん)!」」
なのはとフェイトがキラを支えて飛ぶ。
「ご・・・ごめん・・・・ちょっと力を使いすぎた・・・みたい」
キラはおぼろげに思い出していた。
(あ・・・そうだ・・・あとではやてちゃんに謝っておかないと・・・・)
その瞬間、キラは気を失った。

 

「う・・・・ん・・・」
「あ!気が付いた!」
ベッドで寝かされていたキラが目を覚ましたことになのはが気が付いた。
「あれ?僕は・・・・・・」
「あれだけの魔力爆撃を防御じゃなくて攻撃で防いでいたんだ、魔力を大量に消費したに決まってるでしょう」
その質問にクロノは呆れて答えていた。
「そっか、ごめんね」
「何で謝るの?キラは私たちを助けてくれたんだよ?」
「そうだよ。あたしとユーノだけでなのはたちを守りきれたかどうか」
「だから、キラくんは謝らなくてもいいんだよ。ありがとね、キラくん」
「皆・・・・・うん、ありがとう」
なのはたちの言葉にキラは笑って答えた。
「あれ?」
「どうしたの?キラくん」
「戻ってる」
キラは自分の姿を見て、驚いていた。さっきまでは元の姿に戻っていたのに今は子供姿のままだ。
「あぁ、キラが気絶したらバリアジャケットと一緒に元に戻っていたよ」
アルフが先ほどのことの説明をする。
「元に戻っていた、っていうか元の姿があれなんだけどね」
キラは苦笑いをしながら答えた。
「それで・・・・・なんだけどキラ」
「なに?フェイトちゃん」
フェイトがキラの近くまで来るとフェイトの肩にトリィが乗っていた。
『トリィ』
トリィはフェイトの肩からキラの肩に飛び移る。
「やっぱりキラくんのだったんだ」
「私たちがキラを運んでいる時にずっとそばにいたの」
「そうなんだ、ありがとう」
『トリィ』
そう言うとトリィは部屋の上をくるくると飛んだ。
「ねぇねぇ、キラくん。この子って何なの?」
なのはが興味深そうに飛んでいるトリィを見ながら喋る。
「僕の友達・・・・・向こうの世界の親友が作ってくれたものなんだ」
「あ・・・・・・」
その言葉になのはたちの顔が暗くなる。
「なんで皆が悲しい顔をするの、僕がこの世界に来たのは別に君たちの所為じゃないよ」
「それに・・・」とキラは言葉を続ける。
「言ったよね、また皆に会えて嬉しいって」
その言葉になのはたちは嬉しそうに笑った。

 

「そういえば・・・・・キラくんの世界はどうなったの?」
なのはたちはユーノやアルフからキラの世界について説明してもらっていた。
その世界では未だ大きな戦争が続いていてキラも軍に入って戦っていたという話だ。
聞きにくい話題だが今のキラの世界がどうなったか知りたいのだ。
人が人を殺しあう世界が続いていて欲しくなかったのだ。
「終わった・・・・のかな?」
「え?」
「僕は多分、終わる直前にここに来たんだ。だから詳しいことは分からない。でも、ラクスがうまくやってるよ」
「ラクス?」
「あぁ、ラクスはね・・・・・・・」
なのはやフェイトたちからの質問攻めにキラはゆっくり答えていった。
キラの言葉に、驚いたり、笑ったり、時々涙ぐんだりとなのはたちの表情は豊かだった。
何故かラクスのことを詳しく聞かれたキラは不思議に思いながらもそれに答えていた。
今は彼女たちとこうして話すことが何より楽しいと思うキラだった。