リリカルクロスSEEDAs_第13話

Last-modified: 2007-12-28 (金) 10:44:06

最後の戦いが始まった。
「チェーンバインド!」
「ストラグルバインド!」
アルフとユーノがバリケードの触手を捕獲魔法で縛り断ち切る。
「縛れ!鋼の軛!てぇぇぇいやっ!」
バリケードの触手を一気に薙ぎ払っていき、防御プログラムが悲鳴を上げる。
「ちゃんと合わせろよ、高町なのは!」
「ヴィータちゃんもね!」
ヴィータとなのははお互いに構えを取る。なのははヴィータが名前を間違えず呼んでくれたことに笑みがこぼれる。
「鉄槌の騎士、ヴィータと!鉄(くろがね)の伯爵グラーフアイゼン!」
カートリッジが一つ消費される。
『Gigantform.』
赤い光を放ち、グラーフアイゼンのハンマーヘッドが巨大化する。
「轟天爆砕!」
一振りするとそれはもっと巨大になり、防御プログラムと同じくらいの大きさとなる。
「ギガント!シュラーーーク!!」
その質量と込められた魔力による、単純ゆえに強力無比な一撃を防御プログラムに叩きつける。
それは魔力と物理の複合四層式バリアでさえ叩き割る力があった。
第一層目破壊

 

「高町なのはとレイジングハート・エクセリオン、いきます!」
なのはの足元の大きな魔方陣が展開される。
レイジングハートを天に掲げ、なのはは目を瞑り集中する。
『Load cartridge.』
カートリッジを四発消費、レイジングハートから三対の翼が現れる。
目を開き、なのはは大きく砲撃の構えを取る。
「エクセリオン、バスターーー!!」」
砲撃が開始される前に再生した触手がなのはに向かう。
『Barrel shot.』
レイジングハートから放たれた衝撃波と不可視のバインドにより触手の動きが止まる。
バレルショットにより砲撃の道がなのはから一直線に作られる。
「ブレイク!」
レイジングハートの先端に魔力が集中し大きな塊となり、四つの大きく強い光の矢がバリアに直撃する。
「シューーーット!!」
その瞬間、四つに分かれていた光の矢を飲み込むほどの大きさの矢を放ち、合体し巨大な光の矢となり直撃、バリアを破る。
第二層目破壊

 

「次、シグナムとテスタロッサちゃん!」
シャマルが二人に攻撃の合図を送る。
「剣の騎士、シグナムが魂・・・・炎の魔剣、レヴァンティン」
紫の魔力を体から放ち、レヴァンティンを抜き放ち天に掲げるシグナム。
レヴァンティンの刀身の輝きが強くなる。
「刃と連結刃に続く、もう一つの姿」
柄の下の部分と鞘を合わせると、カートリッジを一発消費する。
そして、紫の魔力の輝きを放ちながらレヴァンティンの形状が変化していく。
『Bogenform.』
それは大弓の姿と化した。
シグナムは狙いを定め魔力の弦を引くと、レヴァンティンの刀身から生成される矢が現れる。
魔方陣が展開し、カートリッジを二発消費し矢に魔力が集束していく。
「翔けよ!隼!」
『Sturmfalken.』
その瞬間、矢を放つと烈風の隼が空を翔け防御プログラムのバリアへと直撃、破壊に成功する。
第三層目破壊

 

「フェイト・テスタロッサ、バルディッシュザンバー、いきます!!」
魔方陣が展開され、フェイトは大きく大剣を振りかぶる。
カートリッジを三発消費する。
大剣を振りぬき、魔力による物理的破壊の衝撃波を飛ばし、触手を斬り飛ばす。
そして、バルディッシュを天高く掲げ、そこに魔力の雷が落ちる。
「撃ち抜け、雷神!」
『Jet Zamber.』
魔力刃を大きく振りかぶると魔力刃が伸び、防御プログラムのバリアを斬りつけ破壊する。
第四層目破壊

 

「キラ・ヤマト、フリーダム、いきます!!」
キラの足元に蒼の魔方陣が展開し、キラは目を閉じSEEDを発動させる。
『High power saber mode ,standby.』
カートリッジを二発消費する。
両篭手から出た魔力刃をキラは両手を合わせ一つの巨大な剣とする。
「うおぉぉぉぉっ!!」
そのままバリアへと突っ込んでいく。
触手たちがそれを防ぐために進路を塞ごうとキラに向かい伸びていく。
『Erinaceus. Full burst shift. Target multi lock.』
キラの周りにいくつもの小さな魔方陣が現れる。
『Fire.』
魔方陣から魔法の矢が飛び出し、触手たちを破壊して進路を作る。
そのままバリアに直撃、火花を上げる。
『Buster mode. Standby.』
二発のカートリッジを消費し、両篭手が合体して巨大な砲門と化す。ほぼ零距離。
「ミーティア、フルバスター!シューーット!!」
バリアを突き破り、本体にもダメージを与えた。
第五層目破壊

 

キラの攻撃を受けながらも直ぐさま再生した触手から砲撃が放たれようとする。
「盾の守護獣、ザフィーラ!砲撃なんぞ、撃たせん!!」
海底から伸びた拘束条が触手を貫き、砲撃を止める。
「はやてちゃん!」
シャマルははやてに合図を送る。
はやては書を開き、詠唱を開始する。
「彼方より来たれ、宿り木の枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け」
杖を横に振るとはやての足元に白の魔方陣が展開する。
闇の中から白い魔力が集まり、七つの月の輝きが現れる。
「石化の槍、ミストルティン!」
杖を縦に振りぬき、銀月の槍が防御プログラムに突き刺さり、その部分から石化が広がる。
石化された部分が崩れていくが、すぐに防御プログラムは再生していき、姿がおぞましくなっていく。
「うわ、うわぁ~」
「何だか、凄いことに・・・・」
アルフとシャマルがあまりの気持ち悪さに声を上げる。
『やっぱり並の攻撃じゃ通じない。ダメージを入れたそばから再生されちゃう!』
「だが、攻撃は通ってる。プラン変更はなしだ!」
エイミィが状況を報告し、クロノはプランの続行を伝える。
「いくぞ、デュランダル!」
『OK, Boss.』
クロノはデバイスの返事を聞くと詠唱に入った。
「悠久なる凍土 凍てつく棺のうちにて 永遠の眠りを与えよ」
クロノの足元に蒼の魔方陣が展開する。
白く雪のような魔力が広域に広がり、防御プログラムの周りの海を凍らせ防御プログラムをも飲み込み、凍らせる。
クロノはデュランダルを振りかぶり、防御プログラムへ向ける。
「凍てつけ!!」
『Eternal Coffin.』
デュランダルが輝き、防御プログラムは完全に凍りついた・・・・かに見えた。

 

防御プログラムは一瞬凍りついただけですぐに動き出そうともがき始める。
「いくよ・・・・なのはちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃん!」
「「「うん!」」」
キラたちは四方向に分かれ、防御プログラムを囲むようにして蒼・ピンク・黄・白の魔方陣を展開する。
『High MAT full burst. Meteor shift.』
『Starlight Breaker.』
『Plasma Zamber Breaker』
三人のデバイスが一斉に声を合わせる。
「ハイマットフルバースト、ミーティアシフト!!」
「スターライトーッ!!」
「雷光一閃!プラズマザンバーー!!」
蒼い羽根のような魔力、ピンクの星のような魔力、黄色の雷のような魔力が集束していく。
そして、白い月のような魔力がはやての杖へと集まっていく。
はやては防御プログラムを見ながら悲しそうに口を開いた。
「ごめんな、おやすみな」
はやては自分の力ではどうにもならなかった力に別れを告げる。
いくらまがまがしくともこれもリインフォースの一部分であることには変わりないのだ。
はやては一度目を瞑り、決意する。
目を開いた時のはやての顔にはもう悲しみも迷いもなかった。
「響け終焉の笛、ラグナロク!」
四人は声を合わせた。
「「「「ブレイカーーーーー!!」」」」
四つの巨大な光の流れが唸りを上げ、防御プログラムに直撃する。
蒼・ピンク・黄・白の光は防御プログラムを飲み込み、爆散させた。
「本体コア、露出」
シャマルはクラールヴィントの旅の鏡によりその鏡の中の内側の空間を目標の場所に直接繋げる。
そこにはまがまがしく邪悪な漆黒の光があった。
「捕まえ・・・た!」
それに向かいユーノとアルフが叫ぶ。
「長距離転送!」
「目標、軌道上!」
緑とオレンジの魔方陣が上下でコアを挟み展開する。
「「「転送!!」」」
シャマル、ユーノ、アルフが声を上げ、手を振り上げると同時にコアは軌道上に転送される。

 

軌道上のアースラではすでに準備が整っていた。
「コアの転送、来ます。転送されながら生体部品を修復中、凄い早さです」
「アルカンシェル、バレル展開」
アースラの前に三つの環状の魔方陣が展開され、中央に青白い光が集束していく。
「ファイアリングロックシステム、オープン」
リンディの声に反応し、リンディの目の前に鍵穴が着いた球体を立方体で囲んだものが現れる。
「命中確認後、反応前に安全距離まで待避します、準備を!」
転送されながら、まがまがしい姿で再生していく防御プログラム。
それが到達直前まで来る、リンディはアルカンシェルの鍵を鍵穴へと差し込む。
立方体が赤く染まり、発射準備が完了する。
その瞬間、防御プログラムが軌道上に到着、アルカンシェルの射線上に現れた。
「アルカンシェル!発射!!」
リンディは鍵を回し、引き金を引いた。
魔力でレンズ状の物体が生成され、それを通して青白い魔力が撃ち出される。
防御プログラムに着弾する。
一定時間を経過すると、発生した空間歪曲と反応消滅で防御プログラムが消えていく。
そして、巨大な爆発が起こった。
爆発が集束していき、赤い光が消え映像から防御プログラムが消滅したのが分かる。
「効果空間内の物体、完全消滅!再生反応、ありません!」
「うん。準警戒態勢を維持。もう暫く、反応空域を観測します」
「りょうか・・・・」
その瞬間、アースラに赤いエマージェンシーコールが鳴り響く。
「え?うそ、そんな!?」
「どうしたの?」
エイミィが信じられないといった声を上げ、リンディが状況の説明を促す。
「本体コア、微量ながらも健在!アースラに向かってきています!」
「何ですって!?こちらを取り込む気?」
「本体コア再生は遅いものの尚も急接近、後五十キロメートル!」
「アルカンシェルのチャージは?」
「再チャージ・・・・・間に合いません!」

 

その通信を聞いていたなのはたちは焦っていた。
「どうにかしないと!」
「どうにかって、どうするっていうんだ!」
なのはの言葉にクロノが反論した。自分もどうにかしたいのは山々だが方法がない。
「このままじゃリンディさんたちが!」
「くそっ!」
フェイトが悲痛な叫びとアルフが悔しそう声を上げる。全員が諦めかけた時だった。
「ユーノ君、アルフさん」
一人冷静なキラがユーノとアルフに声をかける。
「どうしたんだい、キラ?」
「僕をアースラの前に転送してくれないかな?」
キラの言葉に全員が驚いた顔でキラを見る。
「アースラの前って・・・・宇宙空間だよ?」
ユーノが驚いたようにキラに問いかける。
「うん。僕が行って、コアを破壊する」
その言葉に全員が耳を疑った、宇宙空間で戦うことなど不可能なのだ。
「大丈夫だよ」
だが、全員の心配をよそにキラは穏やかに笑顔で答える。その笑顔には何か物言わせぬ力があった。
「分かったよ、私はキラくんを信じる」
「私も信じるよ」
「私もや」
なのはとフェイト、はやてが同意すると全員がその後に続き頷いた。
「あと、お願いがあるんだ。皆のカートリッジを僕に渡してくれないかな?僕が持ってる分じゃ足りないんだ」
なのはたちは自分たちのカートリッジをキラに渡す。自身も今まで貯めていたマガジンを取り出す。
総勢八十発分。
「フリーダム、いけるかい?」
『Yes, sir.』
「ユーノ君、アルフさん!」
「分かった」
「了解」
キラに言われ、ユーノとアルフは魔方陣を展開する。
「「「キラ(くん)」」」
なのはとフェイトとはやてはキラを呼んだ。そして、笑顔で言った。
「「「いってらっしゃい」」」
「あ・・・・うん、いってきます」
キラは笑顔で答えると蒼い光となり転送されていった。

 

転送される中、キラはフリーダム喋りかける。
「何分?」
『Ten minutes.』
「充分だ」
キラはバリアジャケットをパージする。
(僕の・・・・本当に・・・・一番戦いやすい服は・・・・・・)
キラの頭の中に浮かぶものは一つだった。
三十発分のカートリッジをロードする。魔力が抑えきれないほど溢れてくる。
そして、キラの周りを蒼い光が包み込み、それが巨大な光となっていく。
「いこうか、フリーダム」
『Yes, sir.』
光は宇宙(そら)に向かい巨大な蒼い翼を広げた。

 

「何々?今度は何なの!?」
エイミィはアースラの前に転送されてくる物体の反応に驚いていた。
「どうしたの?」
「本艦前に転送されてくる巨大な物体あり!あと防御プログラム残り二十キロきりました!」
リンディの問いにエイミィは焦りながらも答えていた。
アースラ内の緊張が走った。
防御プログラムに対する打開策もないまま、新たな脅威かもしれないのだ。
そして、転送されてきたものがリンディたちの前に姿を現した。
二十メートルほどの物体はアースラに背中を向けていた。
それは蒼い翼を大きく広げる、まるでアースラを守るように。
リンディは傀儡兵のようなものかと思ったが、この蒼い翼は・・・・・・。
「キラ・・・・さん?」
「はい!」
リンディの声にキラが通信で答える。アースラスタッフに驚きが広がる。
そう、キラはバリアジャケットのもう一つの状態を見つけていたのだ。
これこそキラの最も戦いやすい服(スーツ)なのだ。
「キラ君、それは・・・・・」
「すいません、後でちゃんと説明します。フリーダム!」
翼を広げた状態でライフル・バラエーナ・クスィフィアスを構える。
『Load Cartridge.』
向かってくる防御プログラムを見ながらキラは言った。
「生きたいって気持ち、死にたくないって気持ちは一緒かもしれない」
渡された残りの五十発を一気に消費する。
「でも、僕は皆を守りたいんだ・・・・・だから!」
『High MAT full burst mode. Set up.』
五つの砲口がアースラに向かってくる防御プログラムへと向けられる。
『Target lock. Ready.』
「詫びるつもりはない!!ハイマットフルバースト!!」
キラが引き金を引き、五つの砲口から蒼・ピンク・黄・白・紫・赤と色を変え虹を作る。
その光が防御プログラムを飲み込み蒸発していく。
「終わりだあぁぁぁぁぁ!!」
その瞬間、防御プログラムは虹の光と共に完全に消滅した。
戦いが・・・・・・終わった。