リリカルクロスSEEDAs_第12話

Last-modified: 2007-12-28 (金) 10:40:39

「名前をあげる。もう闇の書とか呪いの魔導書なんて言わせへん。私が呼ばせへん」
闇の所の目から涙が零れ落ちる。
「私は管理者や、私にはそれが出来る」
「無理です、自動防御プログラムが止まりません。管理局の魔導師が戦っていますがそれも・・・・」
「止まって」
はやての魔方陣の光が大きくなっていく。

 

闇の書が動きを止めた。
キラとなのはは不信にそれを見上げる。
『外の方!管理局の方!こちら・・・その、そこにいる子の保護者八神はやてです』
「「はやてちゃん!?」」
『キラ・・・・君?それになのはちゃん?ほんまに?』
「うん、なのはだよ、キラくんもいるよ。色々あって闇の書さんと戦ってるの」
『ごめん、キラ君、なのはちゃん。何とかその子止めたげてくれる?』
「「!」」
『魔導書本体からはコントロールを切り離したんやけどその子が圧してると管理者権限が使えへん』
そのままはやては説明を続ける。
『今、そっちに出てるのは自動行動の防御プログラムだけやから』
「う・・・うん?」
なのははいまいち良く分かっていないようだ。
「つまりは・・・・・思いっきりやっていいってことだよね。ユーノ」
(その通り、それをやればはやてちゃんもフェイトちゃんも外に出られる)
その言葉になのはが頷く。
(どんな方法でもいい。目の前の子を魔力ダメージでぶっ飛ばして!全力全快、手加減なしで!)
「さっすがユーノ君、分かりやすい」
『It's so.』
「全くだね」
なのはとキラはすぐに構えを取る。
「エクセリオンバスター、バレル展開!中距離砲撃モード!」
『All right. Barrel shot.』
レイジングハートから放たれた衝撃波と不可視のバインドにより闇の書の動きを止める。
「ミーティア、サーベルモードからバスターモード!」
『Buster mode. Standby.』
レイジングハートが六枚の羽根を広げ、キラの両篭手が砲門へと変わる。
そして、ピンクと蒼の魔力が集中して集まっていく。

 

はやては闇の書の頬を撫で語る。
「夜天の主の名に於いて汝に新たな名を送る。強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール。リインフォース」
その瞬間、はやてとリィンフォースを白い光が包んだ。

 

「バルディッシュ、ここから出るよ。ザンバーフォーム、いける?」
『Yes, sir.』
「いい子だ」
フェイトはバルディッシュを上に掲げ、バリアジャケットを着る。
そして、大きく構えを取る。
『Zamber form.』
カートリッジを二発消費。バルディッシュが変形し、魔力刃を持つ大剣へと姿を変わる。
振り上げた魔力刃が雷の魔力を帯び、フェイトの足元に魔方陣が展開する。
「疾風、迅雷!」
バルディッシュを横に振り、周りに雷の魔力が舞う。
そして、大きく振りかぶる。
「スプライト、ザンバーーーー!!」
そして、力の限り振り抜き、その空間を引き裂いた。

 

「エクセリオンバスター、フォースバースト!」
「ミーティア、ツインバスターアンドエリケナウス!」
二人の砲口に蒼とピンクのそれぞれの魔力が集束していき、大きくなっていく。
キラの周りには小さな魔方陣が総勢七十七個現れる。
「「ブレイク、シューーーート!!」」
蒼とピンクの魔力が二重螺旋となって闇の書を飲み込み、その中心から黄色の魔力が天を突いた。
そして、なのはたちの上空に闇の書から脱出したフェイトが姿を現した。

 

「リインフォースを認識、管理者権限の使用が可能になります。」
「うん」
「ですが、防御プログラムの暴走が止まりません。管理から切り離された膨大な力がじき暴れだします」
「うん、まぁ、なんとかしよ」
はやての目の前に夜天の書が現れ、それをはやては優しく抱きしめる。
「ほな、行こうか。リインフォース」
『はい、我が主』
「管理者権限発動」
『防衛プログラムの進行に割り込みをかけました。数分程度ですが暴走開始の遅延が出来ます』
「うん、それだけあったら十分や」
その瞬間、はやての周りに赤・紫・緑・白の光が現れる。
「リンカーコア送還、守護騎士システム破損修復」
四つの光がさらに強くなる。
「おいで、私の騎士たち」

 

大きな地響きが、結界内の空間が大きく揺れ始める。
『皆気をつけて!闇の書の反応まだ消えてないよ!』
エイミィが全員に注意を促す。
『さて、ここからが本番よ。クロノ、準備はいい?』
『はい、もう現場に着きます』
(アルカンシェル・・・・・使わずにすめばいいけど)
リンディはアルカンシェルのキーを見ながら心の中で呟いた。
キラたちの目の前には大きな黒い闇の塊と小さな白い光の塊があった。
『闇の書の主、防衛プログラムと完全に分離しました』
『皆、下の黒い淀みが暴走が始まる場所になる。クロノ君が来るまでむやみに近づいちゃダメだよ』
「はい!」

 

白い光の塊の周りに赤・紫・緑・白の光がそれを囲むように現れた。
そして、白い光の塊は強い輝きを放ち始め、キラたちは思わず目を閉じそうになる。
そこには白い光の塊を四人の騎士が守るように立っていた。
「「「あ・・・・」」」
「ヴィータちゃん!」
「シグナム!」
「シャマルさん、ザフィーラさん!」
三人が騎士たちの名前を呼ぶ。
「我ら夜天の主に集いし騎士」
「主ある限り我らの魂尽きることなし」
「この身に命ある限り我らは御身の下にあり」
「我らが主、夜天の王八神はやての名の下に」

 

「リインフォース、私の杖と甲冑を」
『はい』
はやては騎士服に身を包み、目の前の杖を手に取る。
その瞬間、光の塊にヒビが入り、そしてそれが割れるとはやてが姿を現す。
「はやてちゃん!」
キラがはやてを呼び、はやてはそれに笑顔で答える。
そして、はやては杖を空に掲げ叫ぶ。
「夜天の光よ、我が手に集え。祝福の風リインフォース、セーット、アップ!」
はやての杖が光るとバリアジャケットに身を包み、リインフォースとの完全融合をした。
「はやて・・・・」
「うん」
ヴィータははやてを目を潤ませながらはやての名を呼び、はやてはそれに笑顔で答える。
「すみません」
「あの、はやてちゃん。わたしたち・・・・・」
全員が申し訳なさそうにはやてを見る。
「えぇよ、みんな分かってる。リインフォースが教えてくれた。そやけど細かいことは後や。今は・・・・おかえり、皆」

 

「うわあぁぁぁん!」
ヴィータが泣きながらはやてに抱きつき、はやてはそれを優しく抱き返す。
「はやて!はやて!はやて~!」
ヴィータとはやての姿を他の騎士たちは優しそうに見ていた。
そこにキラたちが近づいていく。
「なのはちゃん、フェイトちゃん・・・・それに・・・・えっと、キラ君なん?」
「うん、この姿で会うのは初めてだね。理由は後で話すけど・・・・無事でよかった」
「ごめんな。うちの子達が色々迷惑かけてもうて」
「ううん」
「平気」
「大丈夫だよ」
その言葉にキラたちは首を振り笑顔で答えた。

 

その後ろに到着したクロノが現れる。
「すまないな、水を差してしまうんだが時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。時間がないので簡潔に説明する」
クロノは下の黒いよどみを見ながら話し始める。
「あそこの黒い淀み、闇の書の防衛プログラムが後数分で暴走を開始する。僕らはそれを何らかの方法で止めないといけない」
クロノの言葉にキラたちは頷く。
「停止のプランは現在二つある」
クロノはカード形状の状態のデュランダルを見せる。
「一つ、極めて強力な氷魔法で停止させる。二つ、軌道上で待機している艦船アースラの魔導砲アルカンシェルで消滅させる」
クロノは二つの案を言うと全員の顔を見ながら続ける。
「これ以外に他に良い手はないか。闇の書の主とその守護騎士の皆に聞きたい」
「えぇ~っと、最初のは多分難しいと思います。主のない防衛プログラムは魔力の塊のようなものですから」
「凍結させてもコアがある限り再生機能は止まらん」
「アルカンシェルも絶対ダメ!!こんなところでアルカンシェル撃ったらはやての家までぶっ飛んじゃうじゃんか!」
シャマル、シグナム、ヴィータが二つ案を却下する。
「そんなに凄いの?」
「発動地点を中心に百数十キロ範囲を歪曲させながら反応消滅起こさせる魔導砲っていうと大体分かる?」
ユーノがなのはにアルカンシェルについて簡単に説明する。
「あの、私もそれ反対!」
「同じく絶対反対!」
「僕も皆と同じ気持ちだね」
なのは、フェイト、キラも異を唱える。
「僕も艦長も使いたくないよ。でもあれの暴走が本格的に始まったら被害はそれよりはるかに大きくなる」
「暴走が始まると触れたものを侵食して無限に広がっていくから」
ユーノがクロノに続いて説明を続ける。

 

『は~い、皆。暴走臨界点まで後十五分切ったよ。会議の決断はお早めに!』
エイミィから時間の連絡がくる、時間がない。
「何かないか?」
「すまない、あまり役に立てそうもない」
「暴走に立ち会った経験は我らにもほとんどないのだ」
「でも、何とか止めないとはやてちゃんのお家がなくなっちゃうの嫌ですし」
「いや、そういうレベルの話じゃないんだがな」
クロノは守護騎士たちに聞くが、良い答えは期待できないようだ。
「あぁ~、何かごちゃごちゃ鬱陶しいな。皆でずばっとぶっ飛ばしちゃうわけにはいかないの?」
アルフがイライラしながら言う。
「ア、アルフ。これはそんなに単純な話じゃ・・・・・」
「う~ん」
ユーノに言われ、アルフも黙ってしまう。打つ手なしの状態だ。
「ずばっとぶっ飛ばす・・・・」
「ここで撃ったら被害が大きいから撃てへん」
「でも、ここじゃなければ・・・・・」
三人が唸っているとずっと黙っていたキラが「あっ」と声を上げる。
その声に全員がキラのほうを見る。
「宇宙(そら)だ」
キラの言葉に全員がハッとなる、皆も気づいたようだ。
「そっか、その手があるね」
「うん、いけるかもしれへん」
「そうだね」
なのは、はやて、フェイトはすぐさま同意する。
「クロノ君、アルカンシェルは宇宙空間で撃てるのかな?」
『管理局のテクノロジー、なめてもらっちゃ困りますな~。撃てますよ~、宇宙だろうがどこだろうが!』
エイミィからとても楽しそうに通信が入ってくる。
「おい、ちょっと待て。君ら、まさか・・・・」
クロノの言葉にキラたちは力強く頷いた。
『なんともまぁ、相変わらず物凄いというか』
リンディはキラたちの提案を聞いた時は本当に驚いてしまった。しかし、そういう子達だと納得してしまう自分がいた。
『計算上では実現可能ってのがまた怖いですね。クロノ君、こっちのスタンバイオッケー。暴走臨界点まで後十分』
エイミィの通信を聞いた後、クロノは全員を見渡して言った。
「実に個人の能力頼りでギャンブル性の高いプランだが。まぁ、やってみる価値はある」
「防衛プログラムのバリアは魔力と物理の複合五層式。まずはそれを破る」
「バリアを抜いたら本体へ向けて私たちの一斉砲撃でコアを露出」
「そしたらユーノ君たちの強制転移魔法でアースラの前に転送!」
『後はアルカンシェルで蒸発っと』
はやて、フェイト、なのは、リンディがプランを順に説明する。
『うまくいけばこれがベストですね』

 

「提督、見えますか」
『あぁ、良く見えるよ』
グラアムたちは本局からキラたちの様子を映像で見ていた。
「闇の書は呪われた魔導書でした。その呪いはいくつもの人生を喰らい、それに関わった人たちの人生を狂わせてきました」
グレアムたちには必死なはやての様子が見れた。
「あれのおかげで僕も母さんも他の多くの被害者遺族もこんなはずじゃない人生を進まなくちゃならなくなった」
それは半年前のプレシア事件のことをも思い出させる。
「それはきっとあなたもリーゼたちも。なくしてしまった過去は変えることは出来ない」
『Start up.』
デゥランダルが起動し、杖をクロノが手に取る。
「だから、今を戦って未来を変えます」
その言葉に全員が大きく頷いた。

 

『暴走開始まで後二分』
エイミィの通信にキラたちの顔が強張る。
「あ、キラ君、なのはちゃんにフェイトちゃん。シャマル」
はやてはキラたちの体を見てシャマルを呼ぶ。
「はい、キラ君たちの治療ですね」
はやての言葉に笑顔でシャマルは答える。
「クラールヴィント、本領発揮よ」
『Ja.』
「静かなる風よ、癒しの恵みを運んで」
シャマルの魔方陣から緑の暖かい光が溢れ出るとその光がキラたちを包む。
「うわぁ~」
キラたちの傷がみるみる内に癒えていったのだ。
「湖の騎士シャマルと風のリングクラールヴィント。癒しと補助が本領です」
「凄いです」
「もう完全に治ってる」
「ありがとうございます、シャマルさん」
「あたしたちはサポート班だ。あのうざいバリケードをうまく止めるよ」
「うん」
「あぁ」
アルフの言葉にユーノとザフィーラが頷く。
そして、黒い淀みの周りを囲むように黒い魔力の柱が天に突き上がっていく。
「始まる」
「夜天の魔導書、呪われた魔導書と呼ばせたプログラム。闇の書の闇」
周りの魔力の柱が消え、黒い淀みから大きな化け物、闇の書の防御プログラムが現れた。
最後の戦いの幕が開けられた。