リリカルクロスSEEDW_第01話

Last-modified: 2008-03-17 (月) 08:33:34

闇の書事件から2年が経ち、なのはたちは5年生となっていた。
全員相変わらず管理局の手伝いをしながら学校に通う毎日を送っていた。
そんなある日、ホームルームも終わり、生徒が帰宅の準備を始める。
「キラ、今日はお休みなんだよね?」
「あ、うん。フリーダムの燃費の向上を昨日中にどうにか終わらせたから」
そう言いながらもキラは大きなあくびをしてしまう。
「また夜更かししたの、キラ?ちゃんと寝ないと体に悪いよ?」
「そういうフェイトちゃんだって執務官の勉強夜遅くまでやってるじゃないか」
「私は時間を決めてやってるから大丈夫だよ。キラは時間とか気にしていないと思う」
「そ、それを言われると・・・・」
フェイトにそう返されてしまっては反論を言えなかった。そして、キラはまたあくびをしてしまう。
なのはとはやてがキラとフェイトのところへやってくると話に加わる。
「あはは、大きなあくびだね~」
「ちゃんと寝らなあかんよ」
「うん、帰ったら寝るとするよ」
本当に眠そうなキラを見てなのはたちはおかしそうに笑っていた。キラは苦笑いを浮かべていた。
「はやてちゃんはデバイス作りに本局に行くんだっけ?」
「うん、この前キラ君訓練でシュベルトクロイツぶっ壊してもうたからな」
「長く保ったよね、今回のは・・・・」
フェイトの言葉にはやては頷いた。
「まぁ、丈夫なのを作らなあかんし、管制人格のほうも頑張らなあかんな~」
忙しいはずなのだが、はやての顔はとても楽しそうだった。
「でも少し送れて行くことになってるんよ」
「あ、今日は病院なんだっけ?」
はやての言葉にキラが聞き返す、はやては笑いながら足に手を当てながら言った。
「あれから2年経ってもう完璧治ってるんやけど・・・・・」
多分、石田先生が時々診断しに来なさいと言っているんだろう。
彼女は何かとはやてちゃんを気にかけてとても可愛がってくれた人なのだ、心配な部分があるんだろう。

 

「私たちは今日は任務だからこのまま行かないといけないんだ」
「そっか。いつ頃帰ってこれるのかな?フェイトちゃん」
「そんなに時間は掛からないはずだから夕飯までになら帰ってこれるかも」
「分かった、じゃあ今日は僕が作るよ。何が良い?」
キラは一時、一人暮らしをしようとしたがリンディに止められて変わらずフェイトたちと暮らしている。
一度、キラをキラ・Y・ハラオウンにしようというのを上げられたがそれは断った。
「ロールキャベツ」
フェイトはすぐに答えを返した。
「あ、キラくんのロールキャベツおいしいんだよね~」
なのはがその言葉に反応する、前にキラたちのマンションになのはが泊まりに来てキラが作ったのだ。
「レシピ教えてもろうたけど、普通の作り方やし・・・・何が違うんやろな~」
はやてにはお裾分けという形で上げたことがある。どうやら2人からもキラのロールキャベツは好評のようだ。
「あ、そうや。キラ君、お願いがあるんやけど」
「え?何?」
「この前ヴィータがキラのロールキャベツまた食べたいって言ってたんや、せやから・・・」
「あ、うん。たくさん作っておくよ」
キラの唯一の得意料理なためおいしいと言ってくれることが嬉しいのだ。
帰りにスーパーに寄らないとなとキラは楽しそうに考える。
「いいな~。私も食べたいな~、キラくん」
「う、うん。分かった、じゃあ食べに来てね」
「じゃあ、アリサちゃんとすずかちゃんを呼ばないとね」
「え?」
「あ、えぇな~それ。今日は皆集まってフェイトちゃんの家で食べよか?」
「うんうん!」
何だかかなり頑張らないといけないようだ、とキラは覚悟した。
なのはとフェイトは校門でキラたちと別れ、人のいない場所に移った。
「エイミィさん」
『OK、転送するよ~』
その声と共になのはとフェイトの下に魔方陣が展開し、なのはたちが消えていった。

 

「警備任務?」
「そうだ、今回は君たちには警備をお願いしたいんだ」
アースラの会議室にはなのは、フェイト、シグナム、ヴィータ、アルフ、クロノ、リンディ、エイミィがいる。
今回の任務についての説明の真っ最中だ。
「しかし、過信しているわけではないが警備にこんなにも戦力が必要なのか?」
シグナムが質問をする。ただの警備にしてはこの人選は物々しい。
「それだけの必要があるんだ。多いに越したことはない」
「何を守ればいいの?」
「今日、ある重罪人の封印魔法を定期的に変えるんだ」
「封印?」
「そうだ、その犯罪人は封印でないとどうにも出来ないやつなんだ」
「物凄く強いってこと?」
封印というのはかなり物々しいものだ、それを考えればかなり強いのだろうと全員が考える。
「いや、確かに強いんだが・・・・・戦うには色々厄介なんだ」
「厄介?」
フェイトが聞き返す。
「あぁ、だから封印という方法を取らざるを得なかった」
「そいつの名前は?」
ヴィータの言葉にクロノは嫌なものを思い出すように言った。
「アッシュ・グレイ」

 

時空管理局・拘置所
「うわぁ~、本当に警備が厳しいよ」
周りには武装局員が何十人も警備に当たっていた。
『あぁ、何やらアッシュ・グレイの力を狙うやつがいるという情報が入ったからね』
「何も起こらなければいいけど・・・・・」
クロノの通信を聞き、フェイトは心配そうに呟く。
「大丈夫だっつーの!あたしらがいればどんな敵でもギタギタにしてやるよ」
「そうだな。それにこの警備体制で何かしてくるほどの馬鹿でもあるまい。まぁ、油断大敵だがな」
ヴィータとシグナムがフェイトの言葉に答える。
「そうだね。あっ・・・・そうだった。リンディ提督、クロノ、エイミィ」
「どうしたの、フェイトさん」
「こんな時になんですけど・・・・今日の晩御飯、キラが作って待っているそうなんです」
『あらあら、それなら早く帰らないとね。それで献立はもしかして・・・・』
「ロールキャベツか!!」
ヴィータがフェイトに顔を近づけながら聞いてくる。
それにフェイトは驚きながらも、苦笑いをしながらも頷く。なのはもその様子を見ながら笑っている。
「今日は皆で集まって食べようって話になってるんだよ」
「ほんとか!」
なのはの言葉にヴィータは目を輝かせる、シグナムも少しばかり嬉しそうに見える。
「おっしゃ~っ、俄然やる気出てきたぞ~!」
ヴィータはグラーフアイゼンをぐるぐる回しながら気合を入れる。
『それじゃあ、皆さん。警備には十分な警戒を』
リンディの言葉に全員の表情が強張る。
『そして、早く終わらせてキラさんのロールキャベツを食べましょう』
その言葉で全員が笑いながら頷き、持ち場へと散っていった。

 

「ふむ、あれか?」
「・・・・・・・」
警備の様子を物陰から見つめる姿が二つあった。
「全く、一犯罪者に物々しいものだな」
「・・・・・・・」
「了解だ。そろそろ時間のようだ」
その瞬間、時空管理局が大きく揺れた。

 

『どうしたの?』
リンディがエイミィに状況の確認を行う。
『かなり強力な次元魔法です。それと・・・・・・各ブロックに傀儡兵出現!』
『こちらヴィータ確認したぜ。うじゃうじゃいやがる』
『こちらシグナム。私のほうも確認した』
ヴィータとシグナムたちは封印を行うブロックの周辺警備だった。
『さっさと終わらせてキラのロールキャベツ食いてぇんだから邪魔すんなー!』
『いくぞ、レヴァンティン!』
どうやら二人のほうでは戦闘が始まったようだ。
「すぐに援護に行かないと!」
「待って、なのは」
なのはが二人の援護へ行こうとしたがフェイトが止める。
「フェイトちゃん?」
「多分、あれはオトリ。本命は・・・・・・そこっ!」
『Haken Saber.』
フェイトはバルディッシュを大きく振りかぶり三日月形の魔力刃を飛ばし、それが建物の一部に当たり爆風を上げる。
その中から、人影が現れ逃げ去っていく。
「逃がさない!」
フェイトはその影を直ぐに追っていく。
なのはもそれを追おうとしたが、封印が行われている場所で突如爆発が起こった。
「あっちが本命!?」
『なのはさん!』
「はい!」
リンディに言われ、なのはは直ぐに爆発が起きた場所へと向かっていった。
そこに到着すると局員が大勢倒れている。死んでいるものもいるようだ。
「う・・・そ・・・・」
通常なら非殺傷性のはずだがこれは殺傷設定に変えられた魔法が使われた証拠だった。
爆煙の中から誰かが現れる。

 

「誰っ!!」
なのははレイジングハートを構え、その影に聞いた。
「ほぉ、周りの局員たちよりは強そうなものがいると思ったがまさか子供とは」
その男は仮面をつけていて顔が見えない。
そして、その男は一人の男を担ぎ上げている。アッシュ・グレイだろう。
「私はこの男を連れて帰るように言われているのでね」
仮面の男がデバイスを取り出す、それは大きなライフルだった。まるでキラが持っていたような・・・・・。
「見逃すというなら命までは取らないでおいてあげよう」
「お断りします」
なのははレイジングハートを仮面の男へと向ける。
「ふむ、まぁ、私としてもどちらでも良かったんだがね」
『Protection Powered.』
なのはの防御魔法が男のライフルから放たれたグレーの魔力弾を防ぐ。
「簡単には通しませんよ」
「そのようだ」
仮面の男はアッシュ・グレイを方に担いだまま左腕の小型の盾から大型の魔力刃が伸びる。
なのははレイジングハートを構え、タイミングを計った。
次の瞬間、ピンクとグレーの魔力がぶつかり合っていた。

 

「待てっ!!」
フェイトはその影を未だ追っていた。それは甲冑を付けた人物だった。
スピードのあるソニックフォームでも離されることはないが追いつけない。
『Photon Lancer.』
バルディッシュの先から雷の閃光が走り、先を行く逃亡者に当たり、爆発が起きたかに見えた。
しかし、爆煙が晴れるとそこには青紫の魔力で作った防御魔法が展開されていた。
「・・・・・・・」
何も喋っていない。しかし、甲冑の人物からは少し余裕を感じられた。
「・・・・・・・」
その甲冑の人物はデバイスをフェイトに向ける。そのデバイスはバルディッシュに似ていた。
『Photon Lancer.』
そのデバイスの発言後、フェイトと同じ技が繰り出される。
フェイトと違うところは色が青紫であることと威力がフェイトと同じくらいあるということだった。
「!?」
フェイトはそれを咄嗟に避けることに成功し、相手を見る。甲冑を着ているため男か女かも判別が付かない。
「あなたは誰!何でこんなことをするの!」
「・・・・・・・」
甲冑の人物は答えず、デバイスを構える。それを見てフェイトも構えを取る。
『『Load Cartridge.』』
お互いのデバイスがカートリッジを1発消費する。
『Haken Form.』
『Ax Form.』
フェイトのバルディッシュは鎌に相手のデバイスは斧へと変わる。
「はぁっ!」
「・・・!」
お互いの魔力刃がぶつかり合い、大きな火花を上げた。

 

「よし、後は煮込めば終了だね」
キラはロールキャベツをどうにか作り終えていたところだった。
『キラ君、大変なの!』
「?・・・・エイミィさん、どうかしたんですか?」
『管理局に侵入者が現れた、現在なのはたちが交戦しているんだが・・・・・』
「なのはちゃんたちでも不利ってことですか?」
『それは分からないが、応援が欲しい。来てくれるか?』
クロノの問いにキラは迷わず頷いた。
『そこからだと管理局は遠い。アースラから中継してきてくれ。はやてたちも拾っていく』
「わかりました」
キラはコンロの火を止め、自分の部屋からフリーダムとマガジンを取り出す。
その瞬間、キラの足元に魔方陣が展開されアースラへと転送された。
「キラ君!」
すぐ横には同じように転送されたはやてとリインフォース、シャマル、ザフィーラの姿があった。
『はやてさんはまだデバイスが出来ていないからキラさんやリインフォースさんたちに向かってもらいます』
「「「「はい」」」」
「皆、なのはちゃんたちやヴィータたち守ってな」
はやては自分が助けにいけないのが悔しいのか目に涙を貯めている。
「大丈夫だよ」
キラははやてに笑いかけ、リインフォースたちも頷く。
「戦況は?」
リインフォースはリンディに現在の状況の説明を促した。
『現在、ヴィータさんとシグナムさんは管理局に転送された傀儡兵と交戦中よ』
キラたちの目の前にヴィータたちが傀儡兵をどんどん破壊している姿が見える。こちらの心配はなさそうだ。
『そして、フェイトさんは謎の甲冑の人物と交戦中』
そこには鎌を構えたフェイトと打ち合う斧を持った甲冑の姿があった。
『一番抑えないといけないのはアッシュ・グレイを抱えているこの人物。なのはさんと交戦中よ』
その映像を見たときキラは自分の目を疑った、映像から目が放せないでいた。
小刻みに体が震えて動かない、息も出来ないくらいだった。
キラの様子がおかしいことに気付き、全員がキラを見つめる。
そして、キラはどうにか口を動かした。
「ラ・・・ラウ・・・・ル・・・・クルーゼ」