リリカルクロスSEEDW_第05話

Last-modified: 2008-03-17 (月) 09:18:06

「どうだ、仲間同士戦う気分は?」
「ふざけんな!自分が戦いやがれ!」
ヴィータは怒鳴りながらもキラに連続で攻撃を加えていく。キラのほうが速いため攻撃が当たることはないが体力を消耗してしまう。
「戦っていいのか?だったら・・・・」
アッシュのライフルの照準がキラに向けられるが、発射の瞬間ヴィータに狙いを定める。
「危ない!」
キラはそれに直ぐに反応して、シールドでヴィータを守った。しかし・・・・・。
「キラ!」
ヴィータの声が聞こえた途端、バリアジャケットを通して脇腹に強い衝撃を受ける。そして、そのまま吹き飛ばされ建物の中に突っ込んでいく。
「ははははは!可哀相にせっかく助けてくれたのによぉ」
「お前・・・・・」
ヴィータはアッシュを睨む。自分が操られてしまい、キラの足を引っ張っていることにも不甲斐なさを感じた。
「まぁ、いいか。そろそろ俺があいつと戦う、お前は・・・・・死ね」
そう言うとアッシュはライフルをヴィータに照準を合わせる。ヴィータは逃げようにも体が動かなかった。
次の瞬間、ヴィータの目の前を蒼い光がアッシュへと向かう。
「チッ」
アッシュはすぐに距離を取り魔力弾を回避したが、直ぐ後ろに影が迫っていた。
その気配を察知して振り向いた時、アッシュは顔をキラに思いっ切り殴られていた。
「ぐはっ!」
そのままキラと同じように建物の中にアッシュが突っ込んでいく。
キラはアッシュのほうに行かず、ヴィータのところへといく。今はアッシュが怯んだためウイルスの効果が低くなっていた。
「キラ、大丈・・・・」
ヴィータがそれを言い終わらないうちにキラはヴィータを両手で持ち上げる。
「な・・・・おい、キラ・・・一体何を・・・・」
「ごめん、ヴィータ・・・・ちゃん!!」
そう言うとキラはヴィータを結界の範囲外まで思いっ切り投げ飛ばした。
「うあぁぁぁぁぁぁっ!?」
ヴィータは物凄いスピードで空へと投げられ、範囲外になると体の自由が効き止まることが出来た。
「キラ!お前!」
「ごめん!でも、これしか方法思いつかなかったから」
ヴィータとしてもキラの邪魔になってしまわないのはいいが、これでは手伝えない。
憮然とするヴィータにキラは笑いかけるとアッシュのほうへと飛んでいった。
ヴィータはそれを見送ることしか出来なかった、この結界に入ってしまえばまた操られてしまう。
「キラ・・・・・負けんじゃねぇぞ」
ヴィータは悔しそうにキラとアッシュの戦いを見つめるしかなかった。

 

レヴァンティンが1発のカートリッジを消費し、刃が炎に包まれる。
「紫電一閃!」
レヴァンティンの刀身に炎の魔力を乗せた斬撃が甲冑を襲う。
しかし、甲冑のハルバードもカートリッジを1発消費する。
『Ax Slash.』
強力な魔力刃が斧の形をとり、雷の魔力が付加される。
「はぁっ!」
「・・・!」
両者の刃がぶつかり合い、火花が散る。そのまま押し合いとなる。
「お前は何者だ。何故こんなことをする」
「・・・・・」
甲冑は答えない。シグナムは構わず言葉を続けていく。今自分たちの周りの様子を目で追わせながら言う。
「お前の周りには死体も建物も破壊された様子はなかった。それはお前がそれを望んでいないからだろう」
「・・・・・」
「他の2人はどうかは知らんがお前はこんなことは望んでいないのではないのか?」
甲冑は無言のまま、シグナムの剣を弾いた。それは拒絶の意思なのだろうか。
「なるほど、お前にも望んでいなくともやらねばならぬことということか」
甲冑は答えない。ただハルバードを構えを深く取る。
「やらなければならぬことというのなら聞きはしない、だが・・・・・・」
シグナムはレヴァンティンの持つ手に力を込める。
「容赦はせんぞ!!」
シグナムが飛び出すと同時に甲冑も飛び出していく。
交錯。お互いの肩の部分が軽く斬れた。別段戦うことに支障はない。
甲冑は速く、重い攻撃だが小回りが利かない。シグナムはバランスが良く戦うため力が拮抗している。
大振りの斧を避け、突きを放つが重い大斧なため遠心力をうまく使い突きを避け、遠心力により一回転してもう一撃が飛んでくる。
シグナムは剣の腹で打撃点をずらし、受け流す。
ヴィータのラケーテンハンマーに似ていたため、すぐに反応が出来た。
何となくだが戦い方がフェイトとヴィータを足して割ったようだ考える。
2人の実力は良く知っているためそれがやっかいだということは間違いなかった。

 

リインフォースとクルーゼの戦いはほぼリインフォースの優勢の形だった。
「刃以て、血に染めよ」
『Blutiger Dolch.』
その瞬間、クルーゼの周りを血の色をした実体化した短剣が現れる。
「穿て、ブラッディダガー」
『Dragoon System. Standby.』
クルーゼは舌打ちをするとドラグーンを射出してダガーを全て撃ち落とす。
爆煙で周りが見えなくなったため煙の外に出ると魔方陣を展開しているリインフォースが見えた。
『Photon lancer, genocide shift.』
雷の矢がクルーゼを襲う。クルーゼはシールドを張りながら回避に集中する。
その時、クルーゼは視界の端にあるものを見つけそこに飛び出す。
「しまった!」
リインフォースはクルーゼの向かう方向を見て叫んでしまう。
そこには逃げ遅れてしまった、小さな子供がいたのだ。
クルーゼはその子供を抱え上げるとライフルをその子供の頭に向ける。
「動くな、動けばどうなるか・・・・分かっているな」
「くっ!」
リインフォースは動きを止めてしまう。クルーゼが本当に殺せるということは周りを見れば良く分かることだった。
「さすがは管理局、甘いものだな」
クルーゼは面白そうに笑いながら、リインフォースへ向けドラグーンを飛ばした。

 

シグナムとリヴァイヴァーとの戦いは拮抗した状態だったが・・・・・。
「ラケーテン・・・ハンマーーーッ!」
「!?」
ヴィータのグラーフアイゼンを甲冑はハルバードでどうにか防いでいた。
そのまま数メートル後ろに下がって、止まった。
「ヴィータか、キラはどうした?」
ヴィータはキラと共にアッシュ・グレイのほうへと向かったはずだ。もう終わったのだろうか?
シグナムの言葉にヴィータは首を横に振る。
「あたしがいるとキラに迷惑をかける。それにフェイトが来たからあたしがこっちに来たんだ」
「迷惑?」
ヴィータはアッシュ・グレイの結界の能力について簡単に説明した。そして、自分たちにとっては厄介な相手だと。
「なるほど、分かった。それならば私たちはこいつを倒すぞ」
「応っ!」
甲冑から少し焦りの様子が浮かんだように感じられた。

 

「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍、ミストルティン!」
その声が聞こえた瞬間、7本の光の矢がドラグーンとクルーゼのライフルへと直撃する。
「何だと!?」
ドラグーンとライフルが石化していく。クルーゼはすぐにライフルを放した。
「でえぇぇぇぇぇいっ!」
クルーゼの直ぐ横に拳を固めたザーフィラが突っ込んできていた。
「ぐぅっ!」
シールドで防ぐが、ザフィーラの勢いに吹き飛ばされてしまう。人質の子供は空中に放り出される。
しかし、それをシャマルが優しく抱きとめていた。
「主、シャマル、ザフィーラ!」
リインフォースは思わぬ援軍に驚いて声を上げる。
はやてはリインフォースの近くに来ると、にっこりと笑ってリインフォースの頭を撫でる。
「よぅ頑張ったな、リインフォース」
「主、そのデバイスは大丈夫なのですか?」
リインフォースははやての手にある書を見つめながら聞いてくる。
「まだよぅ分からんのやけど、今までのよりは大丈夫や」
それを持ち上げながらはやては笑うとクルーゼの方を見る。
「これだけの人数、相手に出来ると思ってますか?」
「いや、さすがに無理だろうな」
そう言っているクルーゼの顔には焦りの色などなかった。

 

キラはアッシュが突っ込んだ大きなビルの中にいた。
ゆっくりと中を歩いていく。どう考えても待っているのは明白だった。
廊下の角を曲がろうとすると血の色の魔力弾が連射されてきた、キラはすぐに角に隠れると奥の様子を伺う。
遠くから走る音が聞こえる、どうやらもう奥にはアッシュはいないようだ。
キラはすぐに後を追う。静かなため足音が響いた。
「くそっ・・・・どこに行ったんだ」
キラはアッシュを見失っていた。現在位置も分からない、フロアが広いのだ。
エレベーターの前にキラは立つとキラはボタンを押していた。

 

アッシュは色々動き回ってキラを殺す方法を考えていた。
「ん?」
エレベーターが自分のいる階に上がってきているのが分かる。アッシュはハンドガンと翼の砲門をエレベーターへと向ける。
そして、エレベーターが自分のいるフロアに到着してドアが開いていく。
「いらっしゃ~い」
そう言ってアッシュは引き金を引こうとしたときだった。エレベーターの中に誰もいなかったのだ。

 

『High MAT full burst mode. Set up.』
薬莢が落ちる音がフロアに響いていく。それはアッシュの後ろから聞こえてきていた。
「慢心しすぎだよ」
キラはそう言うと引き金を引いた。蒼・赤・黄の魔力の光がアッシュを飲み込んでいった。
探索魔術を使い、アッシュの場所を特定したキラはオトリとしてエレベーターを使ったのだ。
キラ自身は階段を使い、上に上がり隙が出来るのを待っていたのだ。
「ふぅ」
作戦が成功してキラが溜め息をついた時だった、ビシリと音が響いた。
その瞬間、キラの足元の床が割れ、巨大な熊手状のクローが飛び出してくる。
「しまっ・・・・がっ!?」
キラはそれに挟まれて捕まってしまう、アッシュが先ほどいた場所には床に大きな穴が開いていた。
そのままキラは持ち上げられる、アッシュはそれを見ながらニヤリと笑った。
「慢心がなんだって?お前の方じゃねぇか」
「あ・・・・ぐぅ・・・あ、ああぁぁぁぁっ!」
クローの挟む力が強くなり、キラが悲鳴を上げる。骨が軋む音が聞こえてくる。
「最高のコーディネーターとはいえただのガキか、つまらん。死ね」
そうして、キラを握りつぶそうとした時だった。
半月状の魔力刃がクローに当たり、爆発する。その瞬間、キラは床に落ちる。
「げほ・・・ごほ・・・・」
キラが咳をしている横にフェイトがやってきた。
「キラ、大丈夫?」
「フェイトちゃん、ごめん。ありがとう」
キラはどうにか立ち上がり、フェイトと共にデバイスを構える。
アッシュは突然の敵に対して焦りもせずにいた、むしろ嬉しそうに笑っていた。
「面白そうなのが増えたな。いいぜ、相手をしてやる」
明らかに自分が不利だというのにアッシュは気にせずにハンドガンを構える。
キラ・フェイト・アッシュは外に飛び出した。
先に飛び出したキラがアッシュへとライフルを連射する。
アッシュはそれをクローのトリケロス改を盾にして防ぎながら向かってくる。
「あのシールド、かなり硬いみたいだね」
フェイトがそれを見ながらバルディッシュを構える。

 

「だったら・・・・・」
「なのはみたいに・・・・・」
『Baraeina.Target lock.』
『Plasma smasher.』
フリーダムとバルディッシュから1発ずつカートリッジが消費される。キラはSEEDを発動させ、狙いを定める。
「「火力で押し切る!!」」
赤い魔力と黄の魔力がアッシュを飲み込んでいく。
アッシュはクローを展開して、防御面積を広げどうにか直撃は避けたが衝撃で大きく吹き飛ばされる。
「はぁはぁ・・・・」
「キラ、大丈夫?」
「うん、ありがとう。助かったよ、でも・・・・・」
「まだ起きてくるみたいだね」
キラとフェイトは起き上がってくるアッシュを見て表情を引き締める。
「くそっ、あの野郎。仲間が1人増えただけで強くなりやがった」
アッシュはキラを見る。フェイトが来たことで魔力、反射神経、目の色が変わっていた。
キラの大切な人を守るという考えはそれだけキラ自身に大きな影響があるようだ。
「あの小娘もやっかいそうだな」

 

そんな時、キラたちに通信が入った。アラート音が聞こえてくる。
『第15、16、17、19、20管理世界に傀儡兵の大群出現!』
『同時に6世界も攻撃?どうやってそんなに傀儡兵が出てこれるの?』
『分かりません、私たちの技術力を上回っているとしか考えられません!』
「リンディさん!一体どうなってるんですか!?」
『分からないわ、管理局が今、全力を持って問題に当たっているわ。あなたたちは自分の戦いに集中して』
「分かりました」
キラは嫌な予感がしてならなかった。何かが動き出していると。
「っ!?」
「キラ?」
「ううん、なんでもないよ。大丈夫」
一瞬、眩暈がした。少し血を流しすぎたのかもしれない。
そう判断するとキラはそれを周りには言うことはなかった。
今は戦いに集中すべきだった。