リリカルクロスSEED_第01話

Last-modified: 2007-12-27 (木) 16:20:45

「キラァァァァァッ!!」
「アァスゥラァァァァァン!!」
 
僕らはお互いを見失うほどに・・・・・憎みあい、戦った・・・・殺す気で・・・・。
 
「くそっ」
イージスに組み付かれたストライクは身動きが出来ないでいた
スキュラの発射口が目の前に見えたが、イージスのエネルギーが尽き、フェイズシフト装甲もダウンする。
しかし、身動きが取れない。何とか抜け出そうとしていたキラに見えたのはコックピットから飛び出した友人の姿だった。
その瞬間、目の前が真っ白になった。
イージスが自爆したと判断した時、キラの意識が途切れた。
 
高町なのは私立聖祥大附属小学校三年生。
今日は彼女の父の高町士郎と朝の散歩に出かけているところだった。
「朝の散歩は気持ちいいもんだな、なのは」
「そうだね~」
二人はそんな会話をしながら進んでいくと、なのははふとあるものに目に入ってきた。
「あれ?」
「どうした、なのは?」
「えっと・・・・・あれって・・・・・!!??」
なのはの目に見えたのは、草むらに倒れている少年の姿だった。
「お父さん!男の子が倒れてる、凄い怪我だよ!」
「何だってっ!?」
士郎はすぐに駆け寄ると携帯で救急車を呼んでいた。
それが、キラ・ヤマトと高町なのはの出会いだった・・・・・・。
 
「うっ・・・・・・」
キラは全身の痛みで目を覚ました、まず目に入ったのは白い天井だった。
それから身を起こそうとするが、痛みの所為か思うように体が動かない。それに何か体に違和感があった。
「あ!気がついた!」
すぐ横で元気そうな女の子がこっちを覗き込んでいた。
「こ・・こ・・・は?」
「病院だよ、大怪我していた君をウチのなのはが見つけて私が救急車を呼んだんだ」
女の子から視線をずらしたところに大人の男性がいた。
どうやら、自分はこの女の子、なのはちゃんとそのお父さん?の人に助けられたようだ。
「そうなん・・・・ですか、ありがとうございます」
「しかし、何で君はそんな大怪我をしていたんだい?」
「それは・・・・・・・!?」
(そうだ・・・・僕はアスランと・・・戦って、トールが死んで・・・殺し合った・・・・)
思い出した瞬間に、キラの目から涙がこぼれてきた。
「あ・・・あ゙ぁ・・・ぼ・・くは・・・・・ぼくは・・・・・・」
「どうしたの?どこか痛いの?」
女の子が心配そうにキラの顔を覗き込んだ。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
キラは我慢が出来ず、大声で泣いた。友達を失い、そしてそれを殺した親友を憎み、殺しあったという事実を理解してしまったから・・・・・。
 
「落ち着いたかい?」
「はい・・・・・・すいませんでした」
キラは涙が枯れるくらいに泣くと少し落ち着くことが出来た。
隣ではなのはが心配そうに見ている、キラはこんな子にまで心配させるわけにもいかないと思い、彼女に不器用ながらも「大丈夫だよ」と微笑んだ。
「それで、もう一度聞くけど君みたいな小さな男の子が何であんな大怪我を?」
「それに着てた服、ぶかぶかの宇宙服みたいだったけどなんでなの?」
「え?」
そこでキラは二人が言っていることの一部の意味が分からなかった。
小さな男の子?キラは16歳決して小さな男の子と呼ばれる歳ではないこと、そしてぶかぶかの宇宙服?
それはパイロットスーツだろうが、あれは体に密着するものであるし、パイロットスーツを知らないのもおかしい。
「何を言ってるんですか、僕は・・・・・・・」
そう言って、今までの違和感が分かった。
まずはベッドが異様に大きく感じること、そして四肢が何だか妙な感じがすること。
キラはそっと自分の手のひらを見てみた。
「!!??」
キラが見たものは自分の手じゃないと言えるほど小さな手だった。
キラは体の痛みが走るのも構わず身を起こした、目の前に鏡があった。
そこには・・・・・・昔の・・・・小さな頃の自分が映っていたのだった。
 
「こんにちは~、キラ君」
「お見舞いに来たよ~」
「あ、なのはちゃんに美由希さん。こんにちは」
キラはベッドにあるテーブルのノートパソコンから顔を上げた。
そこにはなのはと彼女の姉の美由希の姿があった。
「またパソコン?好きね~」
「えぇ、まぁ・・・・何かこういうことが好きみたいで」
キラが入院して一週間が経った、当初キラは自分が今おかれている現状に混乱していた。
自分はアスランと戦い、そしてイージスの自爆に巻き込まれたはずなのだが・・・・・。
起きてみると体が縮んでいて、さらにはオーブやザフト、地球連合なんて単語すら知らない世界にいたのだ。
訳が分からない質問攻めで医師を困らせた。
状況確認のためにキラが医師に頼んだことはパソコンを貸して欲しいというものだった。
まず驚いたのはそのパソコンのスペックの低さだった。
これも自分がいた世界と違うという事実の一つとなり、パソコンを起動し色々調べていくうちに自分の世界とは違うことを決定付けられた。
夢か死後の世界かと思っても、ちゃんと傷は痛むし、死後にしてはリアルすぎた。
その後、キラは散々悩んだ挙句、こう医師やなのは達に答えた。
自分は記憶喪失で何も覚えていないと・・・・・。
自分が違う世界の人間だと言っても信じてくれるわけがない、ならこうしたほうが一番だと判断したのだ。
 
「それにしても、もうちょっとで退院なんだっけ?」
「はい、こんなに治りが早いなんて信じられないと言われました」
これもコーディネーターというものの特徴の一つなんだろうなとキラは苦笑いで答えた。
すると、なのははキラのすぐ横の椅子に座るとパソコンの画面を覗き込みながら聞いてくる。
「キラくん、記憶戻りそう?」
「ううん、分からないかな」
「そっか」
なのはは少し悲しそうな顔を見せたが、やがて笑顔で「すぐ思い出すよ」と言った。
「さて、今日はキラ君に聞きたいことがあってきたんだ」
「え?何ですか?美由希さん」
「キラ君は退院したらどうするの?」
「どうするって言われても・・・・・・・」
最近のキラの悩みの一つだ。もちろん元の姿、元の世界に戻るのが一番の悩みだが、退院後のことは考えるべきことである。
「当てもありませんし・・・・・そういう施設を紹介してくれるとは先生に聞きました」
それは孤児の子達を保護する施設のことだ、多分そこに行くことになるだろうとキラは思っていた。彼女たちと別れることが嫌な気がした、彼女たちが暖かいから。
しかし、自分はこの世界の人たちにとっては他人、あってはならない存在・・・・・世界に一人だけ。
 
・・ひとりぼっちなのだ、仕方ないことなのだ、とキラは思った。
 
「それなんだけどね、高町家でキラ君のことを相談した結果」
「キラくんをなのはの家で預かることに決まったの!」
「え?」
この発言にキラは驚きを隠せなかった。
「どう・・・して?」
「キラ君、またひとりぼっちになるのはかわいそうだって、なのはがね。みんなその意見には賛成だったから」
キラの目から涙がこぼれてきた。
「こらこら、男の子が泣くもんじゃないぞ」
「でも・・・・うっ・・・ひっく・・・・」
キラは頭を下げると声を殺して泣いていた。
自分だけ世界の違うものだと思っていた、世界でひとりぼっちだと思っていた。
でも、違った。
目の前の人たちは暖かく自分に手を差し伸べていてくれることがとても嬉しかった。
「ありがとう・・・・・ございます」
キラはその差し出された手を握った。
「よし、決まり。早速家に帰って準備しないとね。なのは」
「うん!キラくん、またね」
「うん、また」
2人に手を振って別れると、キラは窓から空を見上げた。陽がとても暖かく感じた。
 
「そんな!いいです!僕にそこまでしてくれなくても!」
なのはは学校から帰るとキラが珍しく大きな声を出していることに驚きながらもリビングに入った。
「だけど、キラ君もなのはと同じくらいだし勉強をしないと」
「悪いです、そこまでしてもらうわけには」
テーブルでキラと士郎が何かの言い合いをしていた
「あ、なのは、おかえり」
なのはに気付いたのは兄の恭也だった。
「ただいま、お兄ちゃん。どうしたの?キラくんとお父さん」
「あぁ、父さん達がキラも学校に行くべきだと言ったんだが、それをキラが反対してるんだよ」
「そうなんだ」
「まぁ、キラのやつ変に大人びてるからそこら辺かなり遠慮してるんだろうな」
「ふ~ん」
すると外に出ていたらしい桃子が帰ってきた。
「ただいま~、キラ君キラ君!見て見て~♪」
「どうしたんですか、桃子さ・・・・・・・」
後ろを振返ったキラの目が丸くなり、口も開いたままだった。
「キラ君の制服買ってきたわよ~」
「さすが、母さん。準備がいいね」
「もちろんよ~」
キラは最初の顔のまま固まってしまっている。
「こりゃ、詰みだな」
「あ、あはははははは」
その様子を呆れたようになのはたちは傍観していた。
 
キラは押しに弱い性格のため、最後にはやはりキラが折れてしまった。
「はぁ、まさかもう一度学校に通うことになるとは」
「どうしたの?キラくん」
「ううん、何でもないよ」
「そうだ、バスの中で私の友達を紹介するね」
「アリサちゃんとすずかちゃん・・・・だっけ?」
「うん、覚えてたんだ」
病院で何度かその子たちの話を聞かされたのを覚えていたのだ。
なのはは嬉しそうに二人についての説明をする。
それを見ながらその二人がなのはにとって大切な友達なんだというのが良く分かった。
(僕やアスランみたいな・・・・)
キラは親友の顔を思い出し、少し暗い気分になった。
「どうしたの?キラくん?顔色悪いよ?」
そんなキラをなのはは心配そうに覗き込んできていた。
「あ、うん。大丈夫、ちょっと緊張しちゃって。あ、バス着たよ」
キラはとっさに嘘を言って誤魔化した、なのはたちを心配させるのは嫌だったのだ。
 
「おはようございま~す」
「お、おはようございます」
二人はスクールバスの運転手に挨拶するとバスに乗り込んだ。
「なのはちゃ~ん」
「なのは~、こっちこっち~」
二人の女の子がなのはに手を振っていた。
なのははすぐに二人のもとに向かった、キラもそれに続く。
「すずかちゃん、アリサちゃん」
「おはよう」
「おはよう、なのはちゃん」
「おはよ」
「ところでさ、なのは」
アリサはなのはの後ろにいるキラを見ていた
「その子がキラ君?」
「うん、そうだよ。この前メールで話したよね」
「えっと・・・・はじめまして、キラ・ヤマトです」
キラは二人に軽く頭を下げる。
「アリサ・バニングスよ、よろしくね」
「月村すずかです、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
握手をし、とりあえず最初の挨拶は無難に終了した。
「へぇ~、記憶喪失の人って初めて見た」
「あの・・・・・大丈夫ですか?」
興味津々な顔でキラを見るアリサと心配そうな顔をするすずか
「う、うん。大丈夫、今はなのはちゃんの家で預かってもらってるから」
それからアリサやすずかから色々な質問を受け、バスが学校に着いた
「同じクラスになれるといいね」そんなことを話しながらキラは三人と別れた。
しかし、すぐに教室で会うことになったのだが・・・・・・・。
 
・・・お昼休み
「まさか本当に同じクラスになるとはね」
「でも、良かったですね」
アリサとすずかが笑いながら話している
「多分、僕の事情を士郎さんたちが話してくれたからなのはちゃんのクラスに入れてもらったんじゃないかな」
「なるほどね」
「これからよろしくお願いしますね」
「うん、こちらこそ」
キラは笑いながらそう答えた。
(ここに来て僕、たくさん笑ってるな)
元いた世界と今の世界のギャップがキラにはとても大きく感じだ。少し沈みそうになったのでとりあえず話題を振ってみた。
「そういえば3人は将来の夢とか決まってるの?」
キラは今日受けた授業のことを思い出しながら3人に聞いた。
アリサは自分の親の家業を継ぐこと、すずかは機械工学系の専門職と答えた。
「そっか、二人とも凄いよね~。私も何かやろうとは思うけど特技も取り柄も特にないし」
なのはは少し沈んだ顔をしたが、なのはの頬に薄切りのレモンが投げられた。
「バカチン、自分からそういうこと言うんじゃないの!」
「そうだよ」とすずかも言う
キラは弁当を食べるのを止めて笑いながらなのはに言った。
「なのはちゃん、特技も取り柄もないから自分にはなにもできないなんて思っちゃダメだよ」
言葉を続けるキラ。
「何もできないからって何もしなかったら、もっと何もできない・・・何も変わらない、何も終わらないんだ」
「うん、それは分かるんだけど・・・・・」
「あぁ~、もう!私より理数の成績上の癖に取り柄がないなんてどの口が言ってるの」
「ゔあぁうあ~、だってなのは文型苦手だし体育の苦手だし~」
「二人ともダメだよ~」
「あははははは」
そんな三人をキラは笑いながらに見ていた。
 
キラは塾があるという三人と別れて一人で帰っていた。
すると自分が倒れた場所が見えてくるとキラの足は自然とそちらの方に向かった。
「ん?」
自分が倒れていた場所に何か引かれた気がして草むらを掻き分けると白と青のクリスタルのようなものを見つけた。
それを持つと何故だか、自分がコレの持ち主だということが分かった。
でも、自分にはこんなものを持っていた覚えもなかった。
しばらく考えたが、それでも手放すことは出来なかった。
何かに呼ばれたような気がしたが、遠い所為か聞き取ることは出来なかった。
不思議に思いながらもキラはそれをポケットに入れると高町家に帰った。