リリカルクロスSEED_第02話

Last-modified: 2007-12-27 (木) 16:22:04

「キラ君は動物は大丈夫かい?」
「あ、はい。大丈夫です」
「なら、いいんじゃないかな」
高町家の夕食でなのはが怪我をしたフェレットについての話をして、それを飼ってもいいかという話になった。
キラとしても反対する理由はなかった。
そうして、キラは部屋に戻ると、帰り道に拾ったクリスタルを眺めていた。
(何なんだろうな・・・・・これ)
そう考えながら寝ようとした時だった。
『聞こえますか?僕の声が聞こえますか?』
「え?」
キラは辺りを見回したが誰もいない。
『聞いてください、僕の声が聞こえるあなた。お願いです、僕に少しだけ力を貸してください』
「・・・・・・誰なんだ、君は」
答えることはない、まるで受信しか出来ない通信機のようだ。
『お願い、僕のところへ、時間が・・・危険が・・・・もう!』
「!?」
何か危険な状態であることは分かったが声の主がどこにいるかが分からない。
「どうすれば・・・・・・・え?」
持っていたクリスタルが光りだし、宙に浮き・・・・窓から飛び出した。
「あっ!」
キラはすぐに外に飛び出していた。
「あれ?」
玄関から飛び出すと先を走るなのはの姿が見えた、その上をクリスタルが飛んでいる。
わけが分からないままだったがキラはそれを追いかけていた。
 
ドーーーン!
 
なのはがある建物の敷地に入ったとき大きな音と砂煙がした。
「なのはちゃん!」
「キラくん!どうしてここに?」
キラはすぐになのはの無事を確認すると音の原因を見て驚いた。
そこには木をなぎ倒した変な化け物がいた。
「なになに、一体なに!?」
「来て・・・くれたの?」
今度は別方向から声が聞こえてそれを見るとフェレットが喋っていた。
「喋った!?」
「なのはちゃん!」
喋ったことになのはが驚いていていたが、キラはすぐになのはの腕を掴むと走り出した。
 
「何が起きてるの?」
走りながらもなのははフェレットに話しかけていた。
キラは話を聞かず、後ろを確認しながらなのはに言った。
「先に逃げていて」
「そんな、キラくん!」
「いいから!!」
なのははキラの大声に驚きながらも走り出した。
それを見送るとキラは追ってくる化け物に目を向けた。それはキラが今までに見たことないものだった。
ただ、邪悪なものだということは分かった。
「なのはちゃんが逃げ切れる距離だけ稼げれば!」
キラはそう判断すると手近にあったゴミ置き場から鉄パイプを見つけて構えた。
一応、高町家にお世話になっている間、体を鍛えるということで恭也に剣道を教えてもらっていた。
ここでもコーディネーターのおかげかすぐに物にすることが出来て、恭也を驚かした。
キラは上段の構えからこっちに突っ込んでくる化け物に思い切り振り下ろした、しかし・・・
「うわっ!?」 
弾き飛ばされてしまった。
さすがにコーディネーターでも9歳の子供と木をなぎ倒すほどの化け物、力の差は歴然だった。
「うぅ・・・」
起き上がったキラが化け物を見たときには化け物はキラに飛びかかろうとしていた。
「!?」
咄嗟に目をつぶってしまう。
しかし、いくら待っても化け物が来る気配がない。
そっと目を開けると盾が目に入った、それはとても懐かしく見えた。
「ストライクの・・・・・シールド?」
それが自分の目の前に現れ、化け物の攻撃を防いでいた。それと同時にいつの間にかクリスタルが手に収まっている。
「これって・・・・・・」
ストライクのシールドを手に取る、間違いなくストライクのシールドだ。大きさは今のキラのサイズに合わせてあるようだった。
わけが分からないが、どうやら自分に力があることには自覚が出来た。
「これなら・・・・・・」
どうにかなると思ったが、化け物は進路を変えると物凄い勢いで飛んでいった。
「あっちはなのはちゃんが逃げた方角・・・・・・くそっ!」
キラはすぐにその後を追った。
 
キラが追いついたときには全てが終わっていた。
何故か服装の変わったなのはが杖、レイジングハートを青いクリスタルのようなものに触れている場面だった。
「なのはちゃん?」
「あ、キ、キラくん!?」
驚いているうちになのはの服装が元に戻っていた。
「あ、あれ?終わったの?」
「はい、それにそこの人も・・・魔力持ちだなんて・・・・・それより、ありがと・・う」
フェレットは喋り終えるとそのまま倒れてしまった。
「ちょっと・・・・大丈夫、ねぇ」
「なのはちゃん!心配する前に今はここを離れよう!」
周りは電柱は倒れているわ、塀も崩れているわ、地面には大きな穴まで出来ていた。
キラがそういうと遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
「う、うん」
2人はすぐに走り出し、近くの公園へ入った。
 
そこでなのはとキラはフェレットのユーノと自己紹介を交わす。
「すいません、2人を巻き込んでしまいました」
ユーノは顔をうつむかせてしまった。
「えっと、私は多分平気だよ」
「僕は・・・・・わけが分からないことばかりだけど・・・・大丈夫」
「ともかく、一旦家に戻ってからにしよ」
「そうだね、もしかしたら心配かけてしまってるかもしれないし」
その後、2人は恭也に怒られながらも美由希に助け舟を出してもらったり、ユーノの可愛さに大喜びの桃子のおかげで話をしそびれてしまった。
 
次の日、なのははレイジングハートをキラは拾ったクリスタルで会話、念話というものができることをユーノに教えてもらっていた。
ユーノ曰く、キラの持っているものは少しレイジングハートとは違うものデバイスには変わりないものらしい。
「と、いうことはキラくんも魔法使いになれるのかな?」
「そうだね。魔力も凄いし、使い方を後で教えるよ」
「うん、分かった」
そうして、二人は学校へと向かった。
 
「おっはよう~」
「おはよう」
なのはとキラが入ってくるとアリサとすずかが直ぐに話しかけてきた。
「なのは、夕べの話聞いた?」
「へ?夕べって?」
「昨日行った病院で車の事故か何かあったらしくて壁が壊れちゃったんだって」
「あのフェレットも無事かどうか心配で・・・・」
「うん」
(キラくん、それって・・・・・)
(間違いない、あの化け物のことだ)
二人は念話で相談した結果、話を合わせてフェレットが逃げ出して自分たちと道端であったことにしておいた。
嘘は付いてないが大きなところは語られることはない。
その後、なのはとキラはジュエルシードのこと、その危険性、ジュエルシードがこちらの世界に来てしまった理由を話してもらっていた。
(別にユーノ君悪いわけじゃないんじゃ?)
(だけど、あれを見つけてしまったのは僕だから)
(なんとなくだけど、ユーノ君の気持ち分かるかもしれない)
(うん、そうだね)
(夕べは助けてもらって本当に申し訳なかったけど、この後魔力が戻るまで休ませてくれないかな?5日もあれば元に戻るから・・・)
(戻ったらどうするの?)
(また一人でジュエルシードを探しに出るよ)
(それはダーメ)
(ダメって・・・・)
(学校と塾の時間以外は手伝えるから)
(僕も手伝うよ、少しでも役に立ちたいしね)
(だけど、昨日みたいに危ないことだってあるんだよ?)
(でも、話も聞いちゃったし・・・)
(うん、ほっとけるわけない)
なのはに続いてキラも答えた。
(ユーノ君、ひとりぼっちなんでしょ。ひとりぼっちは寂しいもん・・・わたしにもお手伝いさせて)
(僕もなのはちゃんの意見に賛成かな)
(ありがと、キラくん)
(二人とも・・・・・ありがとう)
キラにとっては全くもってファンタジー以外の何物でもなかった。しかし、昨日や今日の事を見る限り信じなくてはいけないようだった。
そして、ユーノを手伝うことが今の自分に出来ることだと感じた。
(ところで、ユーノ君)
(え?何?)
(あ、とりあえずなのはちゃんごめん、二人で話していいかな?)
(うん、いいけど・・・・・どうしたの?)
(ちょっと・・・・・)
なのはは後ろに座っているキラを見たが、キラは苦笑いを浮かべていた。
(あのさ、ユーノ。さっき言ってた時空間船って、もしかして違う世界に行けたりするのかな?)
(はい、そうですけど・・・・・どうして?)
(あの・・・・・これは嘘じゃないんだ。真剣に聞いて欲しい)
キラはユーノに自分が体験したことを全て話した。
(そんなことが・・・・・)
(うん、どうにか元の世界に帰る方法があるならどうにかできないかな?)
(キラさんが別の世界から来たなら、魔力を持っているのも分かる気がします)
(・・・・・・・)
(でも、今の僕にはキラさんを帰す方法は・・・・・・すいません)
(そうなんだ、ありがとう。あ、それと年上だからって「さん」付けしなくてもいいよ)
(分かりました、でもお役に立てなくてすいません)
(いや、いいんだ。少し希望が持てたから。後、このことはなのはちゃんには・・・・・)
(分かりました)
(お話終わったかな?)
なのはが喋りかけてきたのでこの話題は終了となった。
 
アリサとすずかと別れた、なのはとキラは家に帰ろうと足を進めていた、その時だった。
一瞬、周りの空気が変わったのをなのはとキラはすぐに気がついた。
(新しいジュエルシードが発動している、手伝って!)
((うん))
なのは、キラ、ユーノは神社の階段を急いで登っていた。
「なのは、レイジングハートを!」
登りきると犬の姿をしたような化け物がいた。
「原住生物を取り込んでいる・・・・・実態がある分手強くなってるよ」
「なのは、レイジングハートの起動を!」
「え?起動って何だっけ?」
「「え?」」
はてなマークを出すなのはにユーノもキラも唖然としてしまっていた。
「!!??」
犬が飛び出そうとしているのに気がついたキラはなのはを庇うように前に出ていた。
「キラくん、ダメ!!」
「守りたいものがある・・・・だから・・・・僕は力が欲しい!!」
そういった瞬間になのはのレイジングハートとキラのクリスタルから光が溢れた。
「こ、これは・・・・」
『Please call my name. My master.』
『Stand by. Ready. Set up.』
「名前・・・・・・ストライク!」
「レイジングハート!」
二人が叫ぶとキラは白と青の光が、なのははピンクの光が包み込んだ。
光が止むと、キラはシールドとライフルをなのははレイジングハートを持っていた。
「二人ともパスワードなしで起動した!?」
驚くユーノを余所に化け物が二人に飛び掛ってきた。
「二人とも!防護服を!!」
『Barrier Jacket.』
化け物の突撃を受けたが、二人とも間一髪でバリアジャケットに身を包んでいた。
キラのバリアジャケットは白と青を基調にしたものだった。
化け物が二人に再度飛び掛るも自動的にプロテクションが発動。
ノーダメージで化け物を吹き飛ばした。
しかし、化け物犬はまだ立ってきていた。
「封印するにはもっと弱らせないとダメだ!」
「うぅ、弱らせるっていったって・・・・・」
「なのはちゃん下がって!」
言った瞬間キラは飛び出していた。
「ストライクと同じなら・・・・・・うおぉぉぉぉぉっ!!」
キラはライフルの引き金を引く、青い魔法の弾が犬型の化け物に当たり吹き飛ばした。
起き上がり、飛び掛ってくる化け物をすぐに避け、またライフルを放つ。
「すごい・・・・戦い慣れてる?」
ユーノはキラの戦いを見ながらそんな言葉を漏らしていた。
キラは腰からアーマーシュナダーを両手に持ち、化け物の前足に投げ、それが刺さり動きを封じた。
「グオォォォォォォッ!!」
「今だ!なのはちゃん!」
「いくよ、レイジングハート!シリアル16、ジュエルシード。封印!」
光が集まりやがて霧散していくとジュエルシードが現れ、なのははそれをレイジングハートに触れ、封印を完了した。
 
飼い主とジュエルシードに取り込まれていた子犬が帰っていく。
「お疲れ様、なのはちゃん」
「うん、キラくんも」
「二人とも凄いね、魔導師の才能があるよ」
ユーノは先ほどの戦いを見て、本当に驚いている。
なのはとキラの才能は他の魔導師より抜きん出ているといってもいいほどだった。
「まぁ、とりあえずさ。帰ろうか?」
「そうだね、私おなかペコペコだよ」
「あははははは」
二人と一匹は笑いながら帰途に付いた。