ルナマリア◆yb4dHGjFao 02

Last-modified: 2017-02-22 (水) 02:41:34

ルナマリア爆走記_第2話
 
 
【諸君!このような不条理を許していいのか!?】
「「「「「NO!!」」」」」

格納庫の中央に置かれた演題の上でルナマリアが吼える度湧き上がる男いや漢達の叫び。

【色欲魔人アスラン・ザラを断固討つべし!】
「「「「「討つべし!討つべし!」」」」」

なんでこんな事になったんだろう・・・キッドの天才的頭脳をもってしても答えは出なかった。

事の発端は2日前、ルナマリアの言うところの天罰『ゴースト〜ヤタガラスの幻』作戦から3日目の事だった。

「我々に足りないのは頭数よ!」

キッドにはルナマリアが何を言っているのかわからなかった。

「クルーの多数の声があれば艦長だって反省するはずだわ!」

なるほど・・・前回搦め手が失敗したから正攻法の力攻めを試すのか・・・

「確かに有効かもしれないな・・・」
「でしょう!?さっそくクルーの署名を集めるわよ!」

すでに戦力にされている・・・信頼されていると言うべきだろうか?複雑なキッドであった。

「つまり艦内の風紀が乱れると。そう言いたいのね?」

目の前に積み上げられた署名の束(内8割が独り身の男)に目を通しながらサラは言った。

「そうです!艦長は日がな一日艦長室でメイリンと・・・これでは他の者に示しが付きません!」
「確かに・・・雑務はリー副長が担当されているからいいとしても、問題よね」

艦長が色ボケ状態、副長は「自分は外様なので重要な決定はしたくない」の一点張りな現在のヤタガラス。
実質指揮を取っているのはジャミルであり、サラを通せば上手くいくはずだ。

「問題だな・・・」
「キャ、キャプテン!いらしたのですか?」
「ああ・・・これだけの署名を集めたのか・・・ふむ、以後艦内での恋愛は禁止としよう」
「「ええ!?」」
「なにか問題があるのか?」
「「い、いえ・・・」」

ルナマリアはジャミルが苦手だ。あのサングラスが発するプレッシャーに押されてしまうのだ。
(くう!墓穴を掘った!でも艦長も恋愛禁止だし・・・肉を切らせて骨を断つってね!)

「問題あるぞ」
「テクス・・・」
「今の艦長は女性(メイリン君だね)に頭皮・・・ゲフンゲフン逃避する事で精神を保っている」
「ふむ・・・」
「また、ステラをシンから引き剥がすのも危険だ」
「うむ」
「さらにティファもガロードと共にいさせるべきだろう」
「うむ。ならば三組を例外として恋愛を禁止としよう」
「「ええ!?」」

上が無理なら下の者の規律を厳しくする。力で押さえつけるやり方だ。
とは言え決定者のジャミルも規制対象になっている為文句も言えない。

「これじゃあ何の意味もないじゃないの!」

ルナマリアの叫びが格納庫に木霊する。あれから2日間、艦長とメイリンは相変わらずだ。

「こうなったら最後の手段よ!」

こんどはどんなしょーもないイタズラを仕掛けるつもりなのやら・・・もはやキッドは反応しない。

「実力行使!蜂起するわよ!」

ブーーーッ!キッドは思わずスタミナドリンク・ミハシラ(背が伸びるカルシウム入り)を噴き出した。

「ゲホッゲホッ・・・クーデター起こす気かよ!?」
「そんな大それたもんじゃないわ!ただ女とスル気が起きないようにするだけよ!」

(危険だ・・・この人を放って置くのは危険だ・・・今すぐ止めなくては!)
決心したキッドの見たものは・・・格納庫の真ん中に置かれた演台と、多数の漢達だった・・・

「まずは生活班の・・・次に医療班・・・そして最後に整備班が・・・」

なにやら着々と準備が整っていく格納庫をキッドは別世界のように感じていた。
(このままどこか遠くに行きたい・・・)
そう考えながらも手はルナマリアに頼まれた(強要された)装置を製作している。
もはや逃げられない・・・頭ではわかっているのだが、認めたくはなかった。

「ジャミルさんがいない今日中に勝負をかけるわよ!全員!気合を入れなさい!」
「「「「「オー!!!」」」」」
「真に平等な恋愛の為に!全てのクルーの幸せの為に!」
「「「「「真に平等な恋愛の為に!全てのクルーの幸せの為に!」」」」」

・・・今度はデスティニープランですか?実は政治家に向いているんじゃないだろうか。

「作戦、開始!!」

カガリ亡霊事件から5日、やっと悪夢を見なくなったアスランはえらく空腹な事に気付いた。
(そりゃこの5日間メイリンばかり食べてたからな・・・)
自分の思考のいやらしさに苦笑しつつ、食事を頼む。職権の乱用だとは思ったが、食堂まで行くのも億劫だ。
食事を持ってきたクルーがいつもと違い、男であったが空腹なアスランは気にもしなかった。
扉が閉まる直前見えた男の顔には歪んだ笑顔が浮かんでいた・・・

3人前の食事を30分で平らげたアスラン。いつも通りの食後の運動の為、メイリンを呼び出した。

(?あれ?)

始まってすぐに違和感に気付いた。数々の武勇伝を残した必殺のスキュラが反応しないのである。

「どうしたんですか?」
「い、いや、なんでもない・・・」
(どうしたって言うんだ?おまえはラクスの瀕乳にも反応した勇者だろうが!)

だがスキュラは全く反応しない。

「すまないメイリン・・・ちょっと気分が悪いんだ。医務室に行って来る」
「はあ・・・お大事に」

頭上に?マークを浮かべたメイリンを残してアスランは医務室へ向かう・・・

『第一段階終了・・・ターゲットは医務室へ向かった』

背後に潜む黒い影にも気付かずに・・・

「テクス先生、相談したい事が・・・?テクス先生は?」
「先生は居住区に回診中です。どうかなさいましたか?」
「い、いや・・・なんでもない」
(美人看護婦にスキュラの相談なんて出切る訳ないじゃないか!)

アスランはやや慌てて医務室を後にし、テクスを探して居住区に向かった・・・

『第二段階終了・・・ターゲットは居住区へ向かった』

凄惨な笑みを浮かべた看護婦に気付くことなく・・・

「まいったな・・・テクス先生はどこにいるんだ?」

通りがかりのクルーにテクスの居場所を聞いて回っているうちに、居住ブロックの奥に迷い込んでいた。
ここまで来るとほとんど人通りが無く、不気味な雰囲気が漂っている。

「こんな奥にいるわけ無いよな・・・ん?」

人影が見えた気がする。

「テクス先生・・・?」

近づくにつれ輪郭がはっきりしてくる。その姿は・・・

「カ、カガリ・・・いや、ステラだな!?2度はだまされないぞ!」

カガリ?の腕を取ろうとするアスラン。しかし・・・

「す、すり抜けた??・・・まさか本当に・・・」
『アスラン・・・裏切ったのか・・・?』

震えるような響いてくるような声が聞こえる・・・

「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」

パニックに陥り、逃げ出したアスラン。しかし通路を曲がった先には・・・カガリがいた。

「●○◎☆!!!???」
『裏切ったのか・・・?』
「すまない!カガリ!俺は馬鹿だから・・・」
『裏切ったのか・・・?』
「もう浮気はしない!誓ってしない!だから許してくれ!」

アスランが顔を上げると、カガリの姿は消えていた・・・

「許してくれるのか・・・?カガリ・・・」
(スキュラが反応しなかったのもたたりだったのか?)

翌日から真面目に仕事に打ち込むアスランの姿が見られるようになった。
恋愛禁止令も艦長権限で廃止になり、艦内に平和が戻った。

「どう?私の作戦はいつだって完璧なのよ!」

ルナマリアがキッド特製、携帯型ホログラム投影機を弄びながら胸を張る。

「確かに今回は上手くいったけどさ・・・」

アスランに興奮物質の生産をストップする薬を飲ませ、居住区に誘い込んでカガリの幻影で脅す。
「オペレーションヤタガラスゆうれい」は大成功だった。

「なによ?」
「結局ルナ姉ちゃんには恋人いないまんまじゃん」
「あ・・・ぅぅぅ不条理だわ!!」

終わってみれば元通り。ルナマリアに春は来るのだろうか?

おまけ
携帯型ホログラム投影機はユウナ代表にプレゼントした。カガリの姿を見て決意を新たにしたようだ。

アスランは・・・

「俺はもう浮気はしない!これからはメイリン一本だ!」