勇敢_短編

Last-modified: 2008-02-19 (火) 01:33:44

バレンタイン

 

恋人たちの愛の誓いの日とされ、なのは達の故郷、『第97管理外世界』では様々な祝い方がある。
欧米では男女関係無く花やケーキ、カードなど様々な贈り物を恋人に贈ることがある日であり
日本では女性が意中の相手や親しい相手にチョコレートを贈る日である。
大韓民国や台湾ではその逆で、男性が意中の相手にチョコレートを送るなど、国によって様々な風習がある。
ちなみに、この日は『お菓子会社が喜ぶ日』と言われるほどチョコレートの消費が激しく、この日で年間の4分の1が消費されていると言われている。
どんな偶然か、ここミッドチルダにもバレンタインという風習があり、日時も同じ2月14日。
ミッドチルダは今正にバレンタインデーであった。

 

場所は変わって機動六課隊舎
ぶっちゃけ、ここは女性隊員が多い、比率からすると男性2に女性が8、そのため
数名を除いた男性隊員はこの日を待ちわびていたと言っても過言ではない。
義理とはいえ、美人が多いここの女性隊員からチョコレート(義理と覚悟して)を貰えると思っているからだ。
そのためなのか、この日の男性隊員は朝っぱらニヤニヤしながら仕事をしていた・・・・・気味悪い事この上ない。
まぁ、彼らの気持ちも理解できる。
この作品を呼んでくださっている皆様、想像していただきたい。
もし義理とはいえ、高町なのはやフェイト・T・ハラオウン、八神はやてやスバル達、
広い範囲ではヴィヴィオやアイナさんからチョコを貰えるとしたら、貴方はどんな顔をする?決してゴ○ゴ13の様な鉄面皮ではあるまい。

・・・・・はい、ニヤケた顔を治しましょうね。

 

・機動六課隊舎廊下

 

時刻は午前9時、早朝訓練も終わり、今は各自自主練や書類整理などに明け暮れている時間。
傭兵として雇われているカナード・パルスは、数枚の書類を持って廊下を歩いていた。
「・・・・・やはり・・・フォルファントリーは二つもいらんな・・・・その分のスペースを魔力カートリッジに・・・・・・」
ブツブツと呟きながら歩くカナード。その時
「カナード!!」
ふと、後ろから呼ばれたため振り向く。すると、早歩きでティアナがこちらに近づいてきた。
「ん?なん(これ!!!!」
自身の手前で止まったティアナに用件を尋ねようとした瞬間、破れかぶれな声と共に、ハート型の包みを差し出される。
「ん?これ(か・・・・・勘違いしないでよ!!たまたま板チョコが3枚150円で売ってたんで安かったから買ったんだけど。
レールウェイの暖房が暑すぎたせいで溶けちゃったのよ!いくら安く買ったからってそのまま捨てるのは勿体なかったから、
中身だけを取り出して冷蔵庫に入れたんだけど、溶けたチョコを入れた器がたまたまハート型だったから困っちゃって!!
ハート型のチョコなんて恥ずかしくてあげられないし、そういえば私ダイエット中だったから仕方なく捨てようかと思ったら
丁度偶々偶然カナードを見かけたから処分してもらうつもりで渡したわけ!!!本当よ!!!」
息を荒げながら一気に捲し立てたティアナとは逆に、カナードは冷静に話し出す。
「・・・・・・だったらスバルにでもあげればよかっただろ?久遠やヴィヴィオでもいいのでは?」
「なっ・・・・・スバルにこんな恥ずかしいチョコなんか渡せるわけ無いでしょ!!久遠やヴィヴィオにはこのチョコは大きすぎるし、
そもそも、カナードに渡さなかったら作った意味が・・・・・あああああ!!!!とにかくもらいなさい!!」
顔を真っ赤にしながら押し付けるように包みを渡したディアナは、魔力で身体強化でも施しているのではないかと言うほどのスピードで
その場から去っていた。
「・・・・・・なんだ?」
ティアナの行動に不審感を抱きながらも、カナードは歩みを再開した。

 

・数分後

 

「やはり・・・・・ザスタバ・スティグマトは標準装備で・・・・オリジナルと大差はなくていいな・・・・・ロムテクニカも・・・」
数分前同様、ブツブツと呟きながら歩くカナード。その時
「カナード!!」
ふと、後ろから呼ばれたため振り向く。すると、早歩きでシグナムがこちらに近づいてきた。
「ん?なん(くれてやる!!!」
自身の手前で止まったシグナムに用件を尋ねようとした瞬間、破れかぶれな声と共に、ハート型を包みを差し出される。
「ん?なん(勘違いするな!依然買っておいたチョコレートが余っていてな。中身を取り出してどうしようかと考えていたらな、
偶然チョコを置いていたボールが熱湯に浸かっていて、いい感じにチョコが溶けてしまったんだ。慌てた私は偶々手に取った器に
それを流し込んで冷蔵庫に入れたんだが、その器がはたまた偶然にハート型だった。その姿を見て食べる気も失せた私だが、
さすがに捨てるのは勿体ない、だが、こんな形をした者を他者にあげるのは恥ずかしい、そこで偶然お前が通りがかったワケだ!!」
息を荒げながら一気に捲し立てたシグナムとは逆に、カナードは冷静に話し出す。
「・・・・・・・他者に渡すのは恥ずかしいんじゃなかったのか?それに話に色々と無茶があるような・・・・」
「・・・ええい!!だまって受け取れ!!苦労して作った意味が・・・・・ではなく!!・・・とにかく受け取れ!!レヴァンティンの錆にするぞ!!!」
顔を真っ赤にしながら押し付けるように包みを渡したシグナムは、魔力で身体強化でも施しているのではないかと言うほどのスピードで
その場から去っていた。
「・・・・・・女とは・・・・わからん」
先ほどのティアナの行動を思い出し、同じく不審感を抱きながらも、カナードは歩みを再開した。

 

・数時間後

 

「・・・・・ということだったんだが・・・・・わからんな・・・・女という奴は・・・・・」
腕を組みながら真剣に考え込むカナード。
その話を聞いていたヴァイスと数名の整備員は黙って肩を震わせる。
「・・・ああ・・・すまんな。愚痴を吐いてしまって。はやてから頼まれた資料はこれだ、失礼する(まてや・・・」
その場から去ろうとするカナードを呼び止める整備員。めんどくさそうに振り向いたカナードは、はっきりと見た。
彼らから立ち上る嫉妬のオーラを。
「なぁ・・・・カナード・・・・おまえ・・・・他にチョコもらったか?」
愛用のライフルにマガジンを差し込んだヴァイスが、尋問するように尋ねる。
「ん?そういえば・・・はやてやなのは、フェイトやスバル達にも貰ったな・・・・・・なぜだ?」
本気で理解できないと言いたげに腕を組み考え込む。
カナードの行動には悪気は悪意は無い。だが、彼らにとっては挑発その物であった。
「おい・・・・・・おまえ・・・・バレンタインって知ってるか?」
自身の背丈ほどもあるスパナを尋ねる整備員その一。
「ん?『血のバレンタイン』なら知っているが?」

 

以前のクリスマス同様、カナードはこのような行事はまったくと言って良いほど知らない。『血のバレンタイン』に関しても、
「バレンタインの日に起こった惨劇」ではなく「そういう名前がついた」と自己解釈していた。

 

カナードの返答を聞いたヴァイスを含む整備員は経験を十分に積んだ兵隊のような俊敏な動きでカナードを取り囲む。そして
「そうか・・・・・なら・・・・・今日と言う日を・・・・・てめぇの血でバレンタインにしてらやぁら!!!」
一斉に襲い掛かった。

 

            「だが、チョコレートならヴァイス?お前も貰っただろ?」

 

カナードの発言に一時停止ボタンを押したかのように一斉に動きを止める一同。そして一斉にヴァイスの方を振り向く。

 

「なんだ?」「裏切り者か?」「影で俺達をあざ笑ってたのか?」「そういや、こいつティアナと仲いいよな?」
「妹もいたよな?」「シグナムさんともよく話すよな?」「アルトとも仲いいよな」「隊長・・・アンタって人は・・・」

 

ブツブツと呟き、目を輝かせながら目標を『裏切り者』へと変更した一同はヴァイスを取り囲んでいく。
「ま・・まて、諸君!!これは奴の卑劣な罠だ策略だ!!私は諸君と同じ!!決して抜け駆けは!!!」
命の危機とも言いたげな必死の形相で手を振り、自身の無実を訴えるヴァイス。だが、
「副隊長!!裏切り者のカバンからこのようなものが!!」
整備員その五がロッカーからヴァイスのカバンを持ち出し、副隊長整備員その三に渡す。
それを受け取った副隊長は中身を確認すると。すると、バレンタインのチョコと思われるものが二つ出てきた。
その二つのチョコと思われるものを苦々しく見つめた後、その目線をゆっくりとヴァイスに向ける。
「・・・・・・・・さて、裏切り者よ・・・・・・末路は理解できるな?」
「・・・ま・・・まってくれ・・・・どうせ義理だ!!俺は悪くない!!!」
「確かに・・・・・ティアナ・ランスターからと思われるチョコは駅前洋菓子店のバレンタインデーチョコ定価840円だ。
だが、このアルトからのチョコは・・・・どう見ても・・・・・手作り!!!!」

 

      「おおおお!!!」「死だ!!死だ!!」「い~の~ち~さ~ず~け~よ~」

 

ジリジリと狭まるヴァイスと狂信者達との距離。そして

 

   「「「「「「「「「「「死ねよやぁ!!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

   「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」