勇敢_第14話

Last-modified: 2007-12-24 (月) 11:43:33

・駆動炉進行ルート

 

プレアはヴィータを抱え、駆動炉を目指して飛行をしていた。
途中、妨害として出てくるがジェットをガンバレルで破壊しながら、プレアは説明を続けた。
「なっ・・・レリックにそんな効果があるなんて・・・・」
プレアから真相を聞いたヴィータは目を見開き驚く。そして次々と語られる真実。
レリックの効果・スカリエッティの本当の目的・この事態をけしかけた黒幕
「それに・・・・・・お偉いさんが関わっていたんかよ・・・・・」
今回の事件も管理局が関わっていた事に、ヴィータは十年前の闇の書事件の事を真っ先に思い出す。
あの事件も、前の主と上層部が関与しており、逮捕した時には一大スキャンダルに勃発した。
そして、今回の事件も管理局の上層部が関わっていた事にヴィータは顔を顰める。
「だけど・・・・これで地上本部の襲撃の鮮やかさには納得が言ったな・・・・・内通者がいたんだ・・・・当然だ。
それに、あたし達が苦労して確保したレリックが横流しされてたなんて・・・・・クソッ!!」
「そのことに関してはロッサさんが今捜査に当たってくれてる。なんでも、情報を持った『協力者』が現れたらしくて」
「協力者?」
「うん。一番関与していた『最高評議会』っていう人達はもう殺されてしまったらしんだけど、
関与していた人達は、まだいるから。その人たちの情報なんかを持った人が現れたんだって」
「そいつらをとっ捕まえて吐かせれば、スカリエッティの目的は達成されて、
この事件も終るってワケだ。この船を止めなきゃいけないことに変わりはねぇけどな」
ヴィータの言葉に、プレアは無言で頷き、飛行を続ける。
その後、ガジェットも現れなくなり、言葉を交わさないまま順調に移動を続けるヴィータ達。風を切る音だけが静かに響く。
「なぁ・・・・・プレア・・・・・いいか?」
ヴィータが沈黙を破り、プレアに問いかける。その声は小さく、耳を澄まさなければ、風を切る音で消えてしまうほど、か細い声だった。
「・・・・・なにかな?」
だが、プレアはヴィータの声をしっかりと聞き、尋ねる。
「なんで・・・直に知らせてくれなかったんだよ・・・・・」
正直、今のヴィータの心境はプレアに会えたという嬉しさと、『どうしてもっと早く知らせてくれなかったのか』という不審感に支配されていた。
最初はアコース査察官がプレアに口止めをしたのではないかと思ったが、その考えを直に否定する。
話を聞く限り、アコース査察官が口止めをする理由が思いつかない。プレアを人造魔道師として蘇生させた研究機関も、
既に摘発されているため、ヴィータは勿論、関わった人達が危険に去らされることは無い。だから、どうしても秘密にしなければいけないという事は無い。
アコース査察官がプレアのことを知らなかったのか、と考えたがその考えも直に否定する。
彼も、クロノやはやてからプレアのことを聞いている筈。知らない可能性の方が低い。それ以前にプレアについて聞く筈だし、
アコース査察官の能力からして、プレアが嘘を突き通すことは不可能と言っていい・・・・・・・そうすると、残る選択肢は一つ。

 

「・・・・・・おまえ・・・・・・自分から・・・・・口止めするように・・・・」
ヴィータが声を絞り出すように尋ねる。するとプレアは数秒間を置いた後、頷き、呟くように話し始めた。
「・・・・・・・本当は・・・僕は・・・・・ここには・・・この世には・・・・もういない存在だから・・・・・
会う勇気が・・・・起きなかった・・・・・・皆に会って良いのか・・・・・本当に迷った・・・・・・
だけど・・・やっぱり会いたかった・・・・もう一度皆の顔が見たかった・・・・・どう思われようと・・・・・・・」
自身の気持ちを吐き出す様に呟いたプレア。それを黙って聞いていたヴィータは
「プレア・・・・・止まれ・・・・・」
飛行をやめる様に言う。その否定を許さない物言いにプレアは飛行を止め、ヴィータを下ろす。
プレアから見て、背中を向けているヴィータは無言のまま立ち尽くす。
「ヴィータ・・・ちゃん・・・・?」
背を向けたまま黙っているヴィータに声をかけるプレア。すると
「・・・・・・いてぇぞ・・・・・・・歯ぁ・・・・食いしばれぇ!!!」
ヴィータは叫びながら振り向き、そして

 

               パシッ!!!

 

プレアの頬に強烈なビンタを食らわした。頬を叩いた音が辺りに大きく響く。
突然のヴィータの行動に、痛みよりも驚きの方が大きいプレア。叩かれた頬を押さえ、ヴィータの方を向く、
「ヴィータちゃ・・・・・・ん・・・・・・・」
プレアは叩かれた理由を聞くために、ヴィータの名前を呼ぼうとしたが、呼ぶことが出来なかった。
自分を睨みつけながらも、肩を震わせ、瞳から涙を流しているヴィータの姿を見た瞬間、プレアの中に言い様の無い罪悪感が生まれる。
「・・・・・けん・・・・なよ・・・・」
声を震わせながら、プレアに近づき、両腕で胸ぐらを掴む。そして
「ふざけんな!!!!!」
涙で濡れた瞳でプレアを見据えながら、ヴィータはあらん限りの声で叫んだ。
「この世にはもういない存在?皆に会っていいのか迷った?ざけんな!!!!なんでそんな風に考えるんだよ!!!
はっきり言ってやる!!そんな考えを持ったお前はなぁ・・・・馬鹿だ!!!大馬鹿だ!!!」
胸ぐらを掴んだ状態で力任せに前後に揺さぶりながら叫ぶヴィータ。加減をしていないのか、プレアは思うように振り回され
「あっ!」
バランスを崩し、倒れこむ。揺さぶっていたヴィータも一緒に倒れ、自然とプレアの胸に顔をうずめる状態になった。
「・・・・・そんな・・・事・・・言うなよ・・・・」
先ほどとは違い、耳を澄まさなければ聞き取れないほどの声で呟くヴィータ。
その声は震えており、顔が見えなくてもプレアにはヴィータがとても悲しんでいると感じ取れた。そして
その原因は自分にあることも既に気付いており、どうしたら良いのか分からないプレアは、ただ、ヴィータの言葉に耳を傾ける事しか出来なかった。
「アタシはな・・・・・・今・・・すっげー嬉しい・・・・・お前が・・・・いる事が・・・・・だがらさ・・・・
そんな事・・・・・言うなよ・・・・・言わないでくれよ・・・・・」
「ヴィータ・・・ちゃん・・・・・」
「皆・・・喜ぶぜ・・・・・お前の事知ったらさ・・・・・スバル達にも・・・紹介してやらないとな・・・・・・お前の事・・・・・・・」
「・・・・・うん・・・・・」

 

「それにさ・・・・お前はさ・・・・・いて良いんだよ・・・・そうでないと・・・・皆が・・・・アタシが困る・・・・・・」
呟くのを止め、沈黙する。そんなヴィータをプレアはそっと抱きしめる。
「ごめんね・・・・自分勝手だったよね・・・・・・・ありがとう。僕は・・・・・とても・・・・幸せだ・・・」
ヴィータの心に語りかけるように、ゆっくりとプレアは呟いた。
そして、彼は今になって自分が泣いていることに気が付いた。

 

・地上迎撃ライン付近

 

降下を終え、迎撃ラインに参加するため、移動を開始するスバル達
途中、ビルの屋上でスバル達を見つめているルーテシアを見つけ、エリオ達ライトニングが真っ先に向かう。
ティアナは予定を変更、ルーテシアを先に捕まえる事をスバルに伝える。
スバルは頷き、ウィングロードを展開しようとするが
「IS発動・・・・レイストーム」
オットーのISレイストームが二人目掛けて放たれた。
その攻撃を咄嗟にかわす二人。ティアナは近くの廃ビルの屋上に着地する。その直後
ディードが着地した直後のティアナに斬りかかった。その斬劇を前転で避け、直にクロスミラージュをダガーモードに変装
ツインブレイズの斬撃を全て受け流していく。
「(・・・・・・・この魔道師・・・・・すべて受け流して・・・・・)」
自身の斬撃を全て受け流されてしまっている為、戦闘機人特有のパワーを引き出す事ができないディード
「(やっぱり・・・スバル同様とんでもない馬鹿力ね・・・少しでも鍔競り合いになったら、パワーで押される・・・・・)」
斬撃をすべて受け流しながら、ティアナは唐突にカナードとの訓練を思いだしていた。

 

・約一ヶ月前

 

:訓練施設

 

「きゃあぁぁ!!」
ロムテクニカの斬撃を受け止めるも、パワーで押され、吹き飛ばされるティアナ。
直に立ち上がろうとしたが、既に目の前にはカナードが目先にロムテクニカを突きつけていた。
「言いたいことは?」
ニヤ付きながら尋ねるカナードにティアナは
「・・・・参りましたコンチクショウ・・・・・・・」
遠慮なく言い放った。

 
 

「あ~も~・・・・また負けた~」
体躯座りをしながら項垂れるティアナに
「早々勝てると思うな、馬鹿者」
微笑みながらカナードは隣に座り、よく冷えたスポーツドリンクを差し出した。
短く礼を言った後、受け取り、一気に飲み干す。

 

「ふぅ・・・・やっぱり・・・・・力で押されたらどうしようもないわね・・・・」
空き缶だけを返すように差し出しながら、ティアナは空を見上げカナードに尋ねるように呟いた。
「わかっているようだな。それと、缶は自分で始末しろ」
「・・・いいじゃないの・・・・・・ケチ」
「奢りだったのだが・・・・・金額を請求するか」
「・・・・・・鬼」
空き缶を地面に置き、肩を落としながら溜息をつく。
「そう溜息をつくな。上達しているのは確かだ。自身でも解っている筈だ」
「ええ、おかげさまで。まぁ、生傷が絶えないし、Tシャツの代えなんか無くなりかけてるけどね~。気にしないでおくわ」
ジト目でカナードを見つめるティアナ。その目線をカナードは軽く笑いながら受け止める。
「だけど・・・やっぱり・・・力不足ね・・・・・簡単に押し負けちゃった・・・・・」
「まぁ、ナイフ戦術には力はあまり必要ない。シグナムのような長剣での一撃に対する破壊力に頼る戦術とは違う。
スピードを生かしての斬撃を連続して行なうのが基本だ。鍔競り合いなどのパワー勝負は普通は行なわない」
「だけど・・・・・接近戦での攻撃を受け止める時にはどうしても鍔競り合いになっちゃうし。そうなった場合は力ずくで払うしか・・・・・」
「言いたいことは理解できるが、お前にはスバルのような力は無い。もし相手が戦闘機人だった場合、
そういうわけにもいくまい。パワー勝負では向こうの方が圧倒的に有利だ」
「そうよね・・・・・スバルやカナードみたいに力があればね」
再び溜息をつくティアナを見たカナードは急に立ち上がり、話しながら歩き出す。
「力に頼らずとも、方法はある。試してみるか?」
数メートル移動した後立ち止まり、ティアナの方を向く。すると、ティアナも立ち上がり、クロスミラージュのダガーモードを両腕に構えた。
カナードも両腕にロムテクニカを構える。そして自身の魔力強化を解いた。
その行動に驚くティアナ。魔力による身体強化を止めてしまえば、能力は普通の人間と同じになってしまう。
いくらカナードがコーディネーターとはいえ、魔力による身体強化を施してる自分とでは力の差は歴然、圧倒的にカナードの方が不利になる。
だが、カナードは普段通りにロムテクニカを構えた。
その姿にティアナは考えるのを止め、顔を引き締める。そして軽く腰を落とし、突撃態勢に入る。そして
「はぁああああ!!!」
叫びと共にティアナはクロスミラージュを振るう。その斬撃をカナードはロムテクニカの斬撃で受け流した。
続けて斬りつけるが、カナードはその攻撃をすべて受け流し、捌いていく。
「(・・・・・・攻撃が当たらない、受け止めてる?・・・・・・・違う・・・・受け流してる!)」
「気が付いたようだな」
攻撃を受け流しながら話し出すカナード。身体強化を行なっていないため、余裕があまり無いのか、額から汗がにじみ出る。
「攻撃を受け止める必要など無い。ナイフでの戦闘の場合は、このように受け流し」
十数回目の斬撃を受け流すカナード、力を入れすぎたのか、受け流した瞬間バランスを崩してしまう。
その瞬間を見逃すカナードではなく、ティアナのわき腹に回し蹴りを放った。
「ぐぅ!!」
吹き飛び、地面に叩きつけられる。
「隙が出来た瞬間に一撃、こういう戦い方もある。わかったか?」
「ええ・・・よ~くわかったわ・・・・ご丁寧に蹴る瞬間に身体強化をするなんて・・・・」
ふらつきながらも立ち上がるティアナ。再びクロスミラージュを構えた。

 

「今度は力ずくで攻めていく・・・・・怪我をしたくなかったら、先ほど俺がやった事と同じ芸当をするのだな!!」
カナードはロムテクニカを逆手に持ち直し、腰を軽く落とす。
「上等・・・今度は私は蹴り飛ばす番よ!!」
同じく腰を落とし、戦闘態勢に入るティアナ。
数秒後、互いの声と、魔力刃がぶつかる音が訓練施設に響いた。

 
 

ツインブレイズの斬撃を受け流し続けるティアナ。業を煮やしたのか、ディードはさらに力をいれ
『斬る』のでは無く、『叩きつける』ように刃を振るう。
「(チャンス!)」
内心で呟くと同時に、攻撃を受け流した瞬間バランスを崩すディード。その隙に、ティアナは自分がやられた様に
「痛いわよ!!」
わき腹に回し蹴りを放った。ディードは吹き飛び、屋上の入り口の壁に叩きつけられる。
「(くっ・・・油断・・・・した・・・・以前収集したデータより・・・確実に強くなっている・・・・)」
油断していたことを素直に認め、歯噛みするディード。
起き上がり、攻撃を再開しようとするが、既にティアナが目の前まで来ており、クロスミラージュを突きつけていた。
「チェックメイト!武器を捨てなさい」
自身を見据え、投降を呼びかけるティアナにディードは沈黙、そして
「避けた方が良いですよ」
そう呟いた瞬間、レイストームの砲撃がティアナに襲いかかった。
舌打ちをしながらも、どうにか回避する。だが、その隙にディードは接近、ツインブレイズの片方を横薙ぎに斬りつける。
それをクロスミラージュでどうにか防ぐが、受け流す事が出来ずに隣の廃ビルまで吹き飛ばされた。

 

「ティア!!」
ティアナの叫び声を聞き、叩き付けられたと思われるビルに顔を向けるスバル。だが、
「何よそ見してんだぁ!!」
ノーヴェの叫びと共に放たれる攻撃に対処するため、再び目の前の相手に顔を向ける。
「お前とは!サシで勝負したかったんだよ!!鉢巻!!」
放たれた正拳突きをバックステップでかわし、距離をあけようとするスバル。
だが、正拳突きをかわされたノーヴェは腰を軽く落とした後、跳ねるように突撃
「こいつぁヴェイアの分だ!!受け取れぇ!!」
ジェットエッジのノズルが火を噴き、威力を増した回し蹴りがスバルに叩き付けられた。
両腕でガードするも、道路の壁に叩きつけられる。衝撃で舞った粉塵がスバルを包み込む。
「ここで、気の利く妹の登場っス!!」
そこに、明るい声と共にウェンディが廃ビルの上に着地、直に砲撃のチャージを開始する。
「これで昏倒確実ッス!エリアルキャ(リボルバァァァァ!!!」
ウェンディがエリアルキャノンを放とうとした瞬間、スバルはリボルバーナックルのカートリッジをロード、
ナックルスピナーが激しく回転し、粉塵が一気に払われる。

 

スバルの行動を瞬時に理解したウェンディは、チャージの完了を待たずにエリアルキャノンを放つ。それと同時にスバルも
「シュート!!!!」
近代ベルカ式射撃魔法、リボルバーキャノンを放った。カートリッジを余分に一発消費したため、
距離による減衰を起こす事無く放たれた衝撃波は、エリアルキャノンのエネルギー砲とぶつかり爆発。衝撃で発生した衝撃波が辺りを襲う。
「くっ・・・やっくれたっスねぇ~!!」
迫り来る衝撃波をライディングボードで防ぎながら苦々しく呟くウェンディ。
衝撃波が収まり、今度は連続射撃を行なおうと再びライディングボードを構えようとしたウェンディが見たのは、
自身の目の前まで伸びているウイングロードと、それに乗り、猛スピードで自身に迫り来るスバルの姿だった。
驚きの表情をしているウェンディを見据えながらもカートリッジをロード、渾身の一撃を放つために拳に力を入れる
「(・・・・いける!!)」
このままのスピードなら、あの戦闘機人が盾を構え直す前に懐に入る事ができる。そうすれば勝機はこちらに向く。
ナックルスピナーを回転させ、ヴェンディに『リボルバーキャノン』を放とうとするスバル。
あと数メートルで拳が届く距離に達しようとしたその時、
スバルの目の前に、ノーヴェの固有能力『エアライナー』が、展開していたウィングロードに真横から突き刺さるように出現、
それに乗ってノーヴェが猛スピードで接近、途中エアライナーからウィングロードに乗り換え、正面からスバルに接近する。
「だぁからぁぁぁ!!!!」
ジェットエッジのスピナーを回転させジャンプ、さらにノズルが火を噴き、攻撃力を増す。
「お前の相手はぁ!!!」
スバルも目標を目の前の戦闘機人に変更、渾身の一撃を放とうとする。
「リボルバァァァァァァ!!!」「アタシだって!!!!」
互いの距離がゼロになる瞬間
「キャノン!!!!」「言ってるだろうがぁぁぁぁ!!!」
互いの攻撃がぶつかり、再び衝撃波が辺りを襲った。
それぞれの武装のスピナーが高速回転をしながら、互いのスピナーにぶつかり、激しい音と、スパーク、火花が発生する。

 

                  「「おおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」

 

互いに叫びながら純粋な力勝負をする二人。そして弾ける様にして二人は離れ、廃ビルの屋上に着地。
それぞれ身構え、次の攻撃に備える。
「(ウェンディ・・・・・・ここはアタシが引き受ける。ディードの所に言ってくれ)
「(・・・大丈夫っスか?)」
「(ああ、むしろディードの方がやばそうだ。あの幻術使い、思ったよりも出来る
四人で一人前のヘッポコガンナーと思ってたけど、本気でやらないと・・・・・こっちがやられる)」
そう言い、スバルを見据えるノーヴェ。向こうも様子を伺っているのか、動く気配が無い事を確認し、念話を続ける。
「(あの幻術使いは指示を出していたからおそらくは四人のリーダーだろ・・・・・能力を含めて確実に仕留めとく必要がある)」
「(・・・・・わかったっス・・・・・・ノーヴェも気をつけて)」
「(ああ・・・・セインの台詞を取っちまうが、『お姉ちゃんに任せとけ!!』)」
そう言い、目線だけをウェンディに向け、小さく微笑む。
その微笑に、ウェンディはしっかりと頷き、ティアナが戦っている廃ビルに向かった。

 
 
 

「(ティア・・・・ティア!!)」
ノーヴェがウェンディと念話で話している時、スバルも必死にティアナに念話を飛ばしていた。
「(っつ~・・・・・やってくれたわね・・・・・スバル、無事!?)」
「(それはこっちの台詞だよ!!派手に吹き飛ばされて・・・・・・・・大丈夫!?)」
念話からでも自分のことを本当に心配しているスバルに、嬉しさから自然と笑みがこぼれるティアナ
「(大丈夫よ!こんなん、カナードとの訓練に比べたら生易しいもんよ・・・・・あいつったら・・・・・
容赦なく蹴ったり、斬りつけたり・・・・・・・ああ・・・・・思い出したら涙出てきそ・・・・・)」
嫌な考えを斬り捨てるため、数回頭を振り、新たに指示を出す。
「(とりあえず!この状況で個人戦はまずいわ。合りゅ)」
突如、ティアナとの念話が切れ、それ以降念話が通じなくなる。
スバルは迷わずにウィングロードを展開、直に向かおうとするが、道を遮るように放たれたガンナックルのエネルギー弾により、移動を阻まれてしまう。
「鉢巻!お前の相手はアタシっていったろ?」
ガンナックルを連射し、スバルの進行妨害を続けるノーヴェ。
「(だめだ・・・・進めない・・・・・あのサーフボードみたいな物にのった戦闘機人はティアナの方に向かった。早く行かないと・・・・)」
スバルは一度大きくバックステップをし、ガンナックの射程外まで退避する。
飛んでいる間に残りのカートリッジをロードし、直に新しいカートリッジと交換する。交換終了と同時に着地、直に戦闘態勢に入る。
「(この子を倒して・・・・・・向うしかない!!)」
内心で叫んだスバルはノーヴェに向って突撃、ウィングロードを翔る。
「お前となら、小細工無しの戦いが出来そうだからな・・・・・やりやすい!!」
ノーヴェもエアライナーを展開、スバルに向って突撃を開始した。

 

「くっ・・・念話が通じない・・・・」
スバルとの念話の最中、突如張られた結界により廃ビルに閉じ込められ、念話も遮断されたことに
顔を顰めるティアナ。
「念話は通じませんよ」
突如聞こえた声に、クロスミラージュを構えながら体を向ける。すると、先ほどまで自分と戦っていた戦闘機人が
ゆっくりと、ティアナの数メートル手前で降り立った。
「オットーが・・・私の姉妹がここを封鎖しました。合流するつもりでしょうが、そうはさせません」
そう言い、手に持った剣を構える。ティアナもクロスミラージュをダガーモードにするが
「(・・・・・相手は剣術による接近戦を得意としている・・・・こっちも訓練を積んだとは言え、接近戦はどう見ても不利ね
距離をとって幻術でかく乱、隙を見て中距離射撃で仕留める)」
頭の中で戦術を組み立てたティアナは距離を開けようとするが
「一つ・・・・いいですか?」
突如自分に投げ掛けられた質問に、無意識に行動を押さえてしまう。
「何?」
「名前を・・・教えていただけますか?正直、貴方を侮っていました。貴方は強敵です。
『自身が最高の好敵手だと思った相手には、先ずは名前を尋ねろ』とトーレ姉さまが仰っていましたので」
真顔で尋ねる目の前の敵に、ティアナは一瞬唖然としたが
「ティアナ・・・・ティアナ・ランスター。機動六課、スターズ分隊センターガードよ。」
ディードを見据え、しっかりと答えた。

 

「ティアナですね。私の名はディード。そして、あのライディングボードに乗ってる無駄に明るい人物が、姉のウェンディです」
「無駄は余計っス。明るさは大切っスよ~!」
明るい声と共に、ライディングボードに乗ったウェンディがディードの隣に降り立った。
「そういうわけでよろしくっス。2対1で悪いっスけど、私達も負けるわけにはいかねぇっスし、あの時の借りも返したいっスから」
ランディングボードを構え、獰猛に微笑みながら
「遠慮なくぶちのめすっス!!!」
エネルギー弾を連続して放った。

 

一方、ルーテシアを追ったライトニングの二人は空中戦を展開していた。
「貴方はどうして・・・・どうしてこんな事をするの?」
互いの攻撃を時には撃ち落し、時には避けながらキャロは問いかける。
「こんな所で・・・こんな戦いをする理由は何なんだ!?」
ガリュウと空中戦をしながら、エリオも問いかける。
「目的があるなら教えて・・・悪い事じゃないんなら・・・・私達・・・・・手伝えるかもしれないんだよ!!」
自分を真っ直ぐに見据えながら言葉を投げ掛ける少女に、ルーテシアは純粋に
『あの子のいっていることは嘘じゃない』と思えた。下でガリュウと戦っている子もそうなのだと思う。
あの子達は自分の話を聞いてくれるだろう。だから答えた
「・・・・・ありがとう・・・・・優しいね・・・・」
突然のルーテシアの言葉に、驚きづつも嬉しそうな顔をするキャロ
「それじゃ(だけど」
キャロの言葉を遮り、攻撃魔法を発射する。
「ストラーダ!!」
エリオはストラーダの噴射口から魔力をロケットのように噴射し一気に上昇、ルーテシアの攻撃を切り払い
フリードの首に着地、ストラーダを構え直す。
「どうして!?話を聞かせて!?」
「・・・・・無駄・・・・・」
普段の無表情とは違い、悲しげは表情を見せ、キャロの願いを否定するルーテシア。
「あなた達の・・・・・言葉は・・・信用できるよ。だけど、貴方達は時空管理局の人なんだよね」
ルーテシアの問いに、二人は互いを見た後にしっかりと頷く。
すると、ルーテシアの表情は急に険しくなる。
「だから・・・・貴方達とは・・・・話せない・・・・お母さんを傷つた・・・・・ドクターを悪者にした・・・・
管理局の・・・・・貴方達に・・・・話すことなんて・・・・ない!!!!」
感情のこもった叫びを上げ、ルーテシアは攻撃を再開した。